女の一生 の商品レビュー
あまり人生をつんでいないからわからないけど、人生ってこんなものだよな。 ジャンヌの描写が、時を経るにつれて、すぐ数年後とかになって時間的な解像度が減ったり、過去を振り返るシーンが増えていったり、またジャンヌの目に映る景色や日常の風景も暗く薄いものとなっていくのが印象的だった。逆に...
あまり人生をつんでいないからわからないけど、人生ってこんなものだよな。 ジャンヌの描写が、時を経るにつれて、すぐ数年後とかになって時間的な解像度が減ったり、過去を振り返るシーンが増えていったり、またジャンヌの目に映る景色や日常の風景も暗く薄いものとなっていくのが印象的だった。逆に、前半部分の無垢なジャンヌが人間の悪意や俗っぽさに触れていくにつれて失望していくシーンが読んでて辛くなったりすることもあったが、逆に自分がこの先こういった体験をしていくのかなとも思った。 一般的に歳をとると人間は錆びついてきて、空虚な日々を過ごすのだなということは分かっていたが、そういった認識に現実感を与えてくれるような作品だった。
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ジャンヌは自分のことを清廉潔白だと思っているけど、全然そんなことはない。少女のころから人の容姿や喋り方を陰で笑い者にしたり、金遣いが荒かったりと、同情できない部分は多い。 それなのに、自分以外の人はみんな悪魔みたいに汚いと思いこんで勝手に悲劇にはまりこんでいるのは滑稽だ。 と、思...
ジャンヌは自分のことを清廉潔白だと思っているけど、全然そんなことはない。少女のころから人の容姿や喋り方を陰で笑い者にしたり、金遣いが荒かったりと、同情できない部分は多い。 それなのに、自分以外の人はみんな悪魔みたいに汚いと思いこんで勝手に悲劇にはまりこんでいるのは滑稽だ。 と、思ってしまいます。 現場の光景が目に浮かぶほど細密で写実的な表現は当時の人々に衝撃を与えたのでしょうが、モーパッサンは、さらに人間さえも「風景の一部」のように考え、光と陰の部分すべてをひっくるめて活写しようとしていたのでは、と思いました。 だからなのか、主人公に共感するというよりも、神から見た1人の女の観察日誌を読んでいるようで、不思議な読後感がありました。
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ジャンヌ結婚までの流れが早すぎて、残りページ数を考えても、悲劇が起きる予感はしていた。 ジャンヌがジュリアンへの愛が揺らぐシーンから雲行きが怪しくなっていった。新婚旅行でチップをあまり渡さなかったり、急に態度を変えたり。 夫婦の仲がだんだん冷めていく様子がリアル。ジュリアンの...
ジャンヌ結婚までの流れが早すぎて、残りページ数を考えても、悲劇が起きる予感はしていた。 ジャンヌがジュリアンへの愛が揺らぐシーンから雲行きが怪しくなっていった。新婚旅行でチップをあまり渡さなかったり、急に態度を変えたり。 夫婦の仲がだんだん冷めていく様子がリアル。ジュリアンの行動がいちいち蛙化現象を誘う行動なの勘弁してくれ… ジュリアンもポールも控えめに言ってゴミクソ。ただ、ジャンヌの不幸を引き立てているという意味では一役買っている。 虚無な生活とはおそらくこういうジャンヌのような生活を指すのだろう。しかし、最後の最後でポールの赤ちゃんを連れてきたロザリのセリフからは、ほんの少しだけ希望が見えた気がした。
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「いわゆる女」の一生ではなく、「ある女」の一生。取り違えると気分を害しそう。「いわゆる貴族社会」における「ある女」の一生、という感じか。 貴族の中で主人公の人生が、とりわけ波乱万丈、とりわけ不幸なのかどうか自分にはは分からない。ただとりわけ純粋だったのが、ある意味不幸だったのかも...
「いわゆる女」の一生ではなく、「ある女」の一生。取り違えると気分を害しそう。「いわゆる貴族社会」における「ある女」の一生、という感じか。 貴族の中で主人公の人生が、とりわけ波乱万丈、とりわけ不幸なのかどうか自分にはは分からない。ただとりわけ純粋だったのが、ある意味不幸だったのかも。 自分も含め、今の時代日本人からは想像もつかないほどの教会の力、貴族のしきたり。固定観念や既得権の怖さを思い知る。 はて、最後に息を引き取るとき、彼女は幸せだったのか。そこは本人にしか分からない。
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夢あふれる貴族の少女ジャンヌ。幸せな結婚に恵まれて順風満帆に進んでいくかと思われた人生航路だが……。 世間知らずで受け身な女性主人公に、あまりにも男運がないとこうなる、というようなペシミズムあふれる一作。下世話な展開が興味を引くのと、ノルマンディーという舞台のゆえなのか風景描写が魅力的で、非常に読み応えがある。吝嗇すぎる夫と借金を重ねる放蕩息子の対比、夫にも息子にも恵まれたロザリとジャンヌの対比が、人生の真実の一端を見せてくれたと思う。 自らの不幸を宿命や運命のせいにし、生きる意欲を失うジャンヌを、ロザリが叱りつけるシーンが印象深い。年をとってもあまりに世間知らずなジャンヌに読者としては幻滅してしまうが、金の無心ばかりする息子を溺愛する姿は悲しくて責められない。夢破れて失望のままに生きる彼女の最後のよすがなのだ。いっぽうで夢を見ることさえない身分であったがゆえに、夢破れることもないロザリの堅実さ。女の一生とは、と考えさせられる。そして、最後の一文が深く胸にしみた。
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受け身で悲しい女の一生。 モーパッサンは絶対に女性だと思ったが、男性だった。 思春期の女性が感じる、訳もなく心がときめく瞬間の描写が女性的ですばらしい。
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ずっと読んでみたかった古典 最近この光文社古典新訳文庫の本をよく手に取ります すごく読みやすい 他の訳を読んだことないので、この作品が特に読みやすいのかもしれないけど 純潔に育てられたジャンヌが、恋をし結婚、夫の不貞行為に悩み、親の死も経験する 愛する息子は、手紙で金を無心して...
ずっと読んでみたかった古典 最近この光文社古典新訳文庫の本をよく手に取ります すごく読みやすい 他の訳を読んだことないので、この作品が特に読みやすいのかもしれないけど 純潔に育てられたジャンヌが、恋をし結婚、夫の不貞行為に悩み、親の死も経験する 愛する息子は、手紙で金を無心してくる ジャンヌが過酷な人生を生き抜く リゾン叔母さんが良い役どころで、 ジュリアンがジャンヌに優しく 「足が冷たくはありませんか」と尋ねたことに 「私は、誰からも、一度もそんなことを言ってもらったことがない」 と泣く姿が哀れな印象があったけど 最後の方になると、独り身は極端な不幸に会うこともなく、自由に動けることが、 もしかして幸せかもしれないと読んでいて思えました そして最後のロザリのセリフ 「人生ってのは、皆が思うほど良いものでも、悪いものでもないんですね」
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まさに激動の女の一生の物語。ジュリアンのくずっぷりにややイライラしながらも次はどうなることかとページを繰る手が止まらなかった! そうしたハラハラドキドキの波瀾万丈な人生に寄り添うレプープルの風景を甘美な情景にも寂寥とした情景にも描いているのが巧みだと思った。ジャンヌの心情の変化を暗示しているのはもちろんのこと、波乱に満ちた一人の女の人生とそこに変わらずあり続ける自然を対比しているのかしら。 それから、この作品の面白いところは19世紀の貴族の女性を主人公にしながらも、現代にも十分つながる物語であること。結婚後ふとした時に感じる夫との価値観の相違には「わかるわかる」と、まるで女友達と話す時のようにジャンヌに同調したくなったし(決して夫はあんなクズじゃないけど)、子どもを拠り所にするあまり過保護になる様子は今でいう「毒親」そのもの。橋田壽賀子が描くドラマにありそうだと思った(笑) 職業柄なのかつい物語に因果を求めて読んでしまう癖があるようで、ジャンヌの運命の残酷さの要因を清廉潔白さに求めたり、最後の結末に「なんとか報われたね」と思ったりした。だからこそ、ロザリの「人生は良いものでも悪いものでもないですね」という最後の言葉にはハッとさせられた。
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さいしょはとても希望に溢れている人生が、不幸なことが重なり人を変えてしまう物語。 それでも生きているだけジャンヌはえらいと思うし、よくがんばったと思う。旦那と息子に恵まれなかったが、最後にはすこし希望がうまれてよかった、、 どうかジャンヌが些細な幸せを感じていられますように。
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中学生の頃、こんなに面白い本があったのか!と思った女の一生。大人になって読んで、暗くて絶望しそうな内容だった。確か中学の頃は最後の場面に涙したのだが、今回はへぇといった感じで、感受性の強い時期の読書体験は貴重だったと思った。今は、何度も繰り返す展開の巧みさに気を取られてしまう。U...
中学生の頃、こんなに面白い本があったのか!と思った女の一生。大人になって読んで、暗くて絶望しそうな内容だった。確か中学の頃は最後の場面に涙したのだが、今回はへぇといった感じで、感受性の強い時期の読書体験は貴重だったと思った。今は、何度も繰り返す展開の巧みさに気を取られてしまう。Une vieが ある命 とも訳せるという解説を見て、原語で読む人々は同じ本を読んでもまた違うことを感じるのだろうなと羨ましくなった。
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