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十階 の商品レビュー

4.3

12件のお客様レビュー

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2024/05/13

東直子さんの歌文集ですね。 東直子さん(1963年、広島県生まれ)歌人、小説家、脚本家。 あとがきに『この本は、2007年一月一日から、十二月三十一日まで、ふらんす堂のホームページで、「短歌日記」として毎日掲載されたものをまとめたものです。』と、語られています。 一ページに1首と...

東直子さんの歌文集ですね。 東直子さん(1963年、広島県生まれ)歌人、小説家、脚本家。 あとがきに『この本は、2007年一月一日から、十二月三十一日まで、ふらんす堂のホームページで、「短歌日記」として毎日掲載されたものをまとめたものです。』と、語られています。 一ページに1首とエピソードが添えられています。 同時に五つの小説も連載されていた時期だそうで、すごいですね。バイタリティーもですが、一日に一首を確実に詠まれる感性の発露も、驚嘆を感じます。  海からの風にゆがんだスマイルが    回転しつつつきぬけてゆく  自転車で風ひらきつつ結末を    忘れてしまう果てのない坂  さわさわと拡がる雲を追いかけて    黄色い蝶が国境こえる  水の上に花をうかべて流れ去る    までのようです一夜のことは  あのような言葉ではないものたちを    あたしは抱いて眠るのだった  陽光を浴びて深く呼吸する    古書店ひとりふたり出入りす  わたしだけの場所があることうれしんで      浮かぶ本日どこまでも青  夏風の吹くほうへゆく人々の    眼(まなこ)おさめし写真を閉じぬ  貝殻をふみつけあゆむ子どもらの    あなうらの傷あらう白波  そののちは雲になりたい夏空に    浮かびすっかり消えてしまうよ  青いインクを筆にひたして綴りたる    文字しなやかに未来を語る  かん高い声とを交わし合う    身体いっぱいうれしい子供  丘の上のとんぼ自転車ひめりんご    まるごと呑みて秋陽ここにも  窓に咲く花も土に咲く花も    このときだけの空をみていた  生まれたての草の芽しろき毛をもちて     初冬の部屋のかすかなぬくみ  年賀状とポインセチアの赤並び    呼び合うことば集めてやまぬ  冬の薔薇ながく保ちて誰もみな    誰かが産んだ子供であった  あたらしい手帖に記す約束の    時間と場所とあなたのことば  瑞々しい短歌に詩情を感じます。豊かな感性に驚きと羨望を禁じ得ません。    

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2024/01/16

有限会社ふらんす堂さんという出版社のホームページに2007年1月1日から12月31日まで連載されていた歌人・東直子さんの短歌日記。 その日の日記とその日の短歌が本の中で息づくように綴られている。 日記の短文も、短歌も、詩的で、私的で、読んでいると、何があったんだろうと、ドキドキし...

有限会社ふらんす堂さんという出版社のホームページに2007年1月1日から12月31日まで連載されていた歌人・東直子さんの短歌日記。 その日の日記とその日の短歌が本の中で息づくように綴られている。 日記の短文も、短歌も、詩的で、私的で、読んでいると、何があったんだろうと、ドキドキしてしまう。 わからなさ、と、わかる、がミックスされていて、ミステリアス。 自分も日記を書きたくなった。 続いたためしないけど。 この短歌日記シリーズは他にも他の歌人のものが何冊もある。 現在も続いていて、今は大口玲子さんが書かれている。(俳人の俳句日記もある)

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2022/03/02

2007年の1/1〜12/31までの毎日、短文が添えられて短歌が綴られてる 1年の季節感を一気に通り抜けたようで、また年末の寒さに戻って寂しくなった。 所々で自分は、あの人はこのとき何してたんだろうとか想像して、なんにも覚えていなくて、どうでもいいことでも何らかの形にしていくこ...

2007年の1/1〜12/31までの毎日、短文が添えられて短歌が綴られてる 1年の季節感を一気に通り抜けたようで、また年末の寒さに戻って寂しくなった。 所々で自分は、あの人はこのとき何してたんだろうとか想像して、なんにも覚えていなくて、どうでもいいことでも何らかの形にしていくことは素敵だと思った。 以下、個人的にすきだったやつ . 6/3 昨日、映像の中で白い地平線を見た。 今、ここてやいのやいの言っていることは、いずれ無意味になるのだなと、ほほえましい気持ちになる。 金属のこすれるような音を出し少女は三メートル走りぬく

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2021/05/11

東直子(1963年~)氏は、広島市生まれ、神戸女学院大学家政学部卒の歌人、小説家。1990年より短歌等の投稿を始め、1996年に「草かんむりの訪問者」で歌壇賞(公募による短歌の新人賞)を受賞。これまで、NHK短歌、歌壇賞、角川短歌賞、東京新聞歌壇、山陽歌壇(山陽新聞)などの選者・...

東直子(1963年~)氏は、広島市生まれ、神戸女学院大学家政学部卒の歌人、小説家。1990年より短歌等の投稿を始め、1996年に「草かんむりの訪問者」で歌壇賞(公募による短歌の新人賞)を受賞。これまで、NHK短歌、歌壇賞、角川短歌賞、東京新聞歌壇、山陽歌壇(山陽新聞)などの選者・選考委員を務める。 本書は、『春原さんのリコーダー 』、『青卵』に続く第3歌集で、2010年に出版された。 本書は、2007年の1月1日から12月31日まで、ふらんす堂のホームページで「短歌日記」として毎日連載されたものまとめたものである。著者は当時八王子の丘の上の団地の10階に暮らしており、1ページに、その日のエピソードの短文と短歌が一首書かれた本書は、題名通りの短歌による日記となっている。 私は最近現代短歌に興味を持ち、現代短歌の代表的な歌人である著者の本書を手に取った。これまでは30余年前に俵万智(1962年~)の『サラダ記念日』を読んだことがあるだけで、今般、穂村弘(1962年~/東氏との共著や対談も多い)の『ラインマーカーズ』、木下龍也(1988年~)の『つむじ風、ここにあります』などを併せて読んでみたが、それぞれの作風にはやはり違いがあり、それぞれの良さが感じられた。全くの素人としての、著者の作風に対する感想は、とんがり過ぎず、なめらか過ぎず、また、同世代(とはいえ、本書の歌が詠まれたのは十年以上前だが)としてとても共感を覚えるものだった。 いくつか印象に残った歌を挙げてみると。 「十年後それぞれに老いそれぞれに生きているのか祝祭つづく」 「誰がなにを言ったとしても春風のざっくばらんな私を生きる」 「窓に咲く花も土に咲く花もこのときだけの空をみていた」 「今つよくおもったことを告げたくて花道走るように枯葉は」 日記形式で四季を巡るコンセプトや装丁も素敵な歌集である。 (2021年5月了)

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2021/01/19

好きな歌 1/19「ぜんぶ見えているとしたって私の紐の中には立ち入らないで」 2/13「なにをしているかわからぬ者ですが不思議に今日も生きております」 2/17「正座別血液型別運不運明るく決めつけられて不愉快」 5/1「やあ君は五月の鳥だ幾らでも迷ってもいい五月の鳥だ」 5/13...

好きな歌 1/19「ぜんぶ見えているとしたって私の紐の中には立ち入らないで」 2/13「なにをしているかわからぬ者ですが不思議に今日も生きております」 2/17「正座別血液型別運不運明るく決めつけられて不愉快」 5/1「やあ君は五月の鳥だ幾らでも迷ってもいい五月の鳥だ」 5/13「物語は読み返せてよいよねえ あたしの時間はもどせないのに」 6/16「十年後それぞれに追いそれぞれに生きているのか祝祭つづく」 8/3「生き物である苦しさに真夜中を抜け出し歩む道なまぬるし」 9/7「もう雨は止みそうにない隣り合った人とこのまま暮らすのでしょう」 10/19「現実と真実のごとブランコは二つ並んで一つが揺れる」

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2013/02/11

2012.2.11読了。 心にとまった短歌を書きとどめていったら、偏りすぎてて笑った。読む年齢、場所、季節によって響くものは変わるだろうとおもう。

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2012/05/26

こんなふうに作れたらなぁ。 『水銀灯が消えるまで』の解説で穂村弘が書いていたすごさが分かる。 なんとしても『春原さんのリコーダー』を手にいれたくなった。

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2012/01/21

ベッドの傍に置いて、眠る前に、目覚めてすぐのぼんやり時に、心がふと空白になった時に、ぱらぱらと頁を捲る。その日の心持ちによって、響くものが異なり、大切に読んでいます。 帰り道わからなくなり陽に少し身体を溶かしながら漂う いちりんの金属の花にくたいはひとつの印 偶然ですね ベ...

ベッドの傍に置いて、眠る前に、目覚めてすぐのぼんやり時に、心がふと空白になった時に、ぱらぱらと頁を捲る。その日の心持ちによって、響くものが異なり、大切に読んでいます。 帰り道わからなくなり陽に少し身体を溶かしながら漂う いちりんの金属の花にくたいはひとつの印 偶然ですね ベッドから足を垂らして触れるとき新たに満ちるわたしの下界 あと少しのぼれば空が見えますよ抱きしめているものを捨てなさい 幾重にも紐がけされた箱の中に愛されすぎたものの暗闇

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2011/12/21

これを読んだのはもう半年以上前でして、とても悲しいことがあってどうしていいか分からないときでして、毎日を大切に大切に短歌にするこの本に、本当にどれだけ助けてもらったか分かりません。 何度も読んで、失礼かと思いつついろんなことを書き込んで、東さんの日記であるはずが今では私の日記でも...

これを読んだのはもう半年以上前でして、とても悲しいことがあってどうしていいか分からないときでして、毎日を大切に大切に短歌にするこの本に、本当にどれだけ助けてもらったか分かりません。 何度も読んで、失礼かと思いつついろんなことを書き込んで、東さんの日記であるはずが今では私の日記でもある。 悲しいこともつらいことも嬉しいことも、毎日のことはぜんぶ大事にしようと思う。そういう気持ちにさせてくれたこの本を、大事にしようと思う。 “棒立ちになって見上げし桜花 わすれることはうつくしいこと” “この場所に一緒に座っていた人の笑顔はうすくなれども消えず”

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2011/05/18

(2011.05.18読了)(2011.05.04借入) 「この本は、2007年1月1日から、12月31日まで、ふらんす堂のホームページで「短歌日記」として毎日掲載されたものをまとめたものです。その日のエピソードでその日のうちに短文を書き、短歌を作り、日付が変わる前にメールで送信...

(2011.05.18読了)(2011.05.04借入) 「この本は、2007年1月1日から、12月31日まで、ふらんす堂のホームページで「短歌日記」として毎日掲載されたものをまとめたものです。その日のエピソードでその日のうちに短文を書き、短歌を作り、日付が変わる前にメールで送信し、そして日付が変わると、美しい写真とともに更新されました。」 題名の十階というのは、著者の住んでいるのがマンションの十階なので、ということのようです。短文の中に何度か現れました。 掲載されている短歌は、様々ですが、短文は実に楽しめる文章です。こんな人が友達にいたら、毎日の会話が楽しくなるような気がします。(文章と会話は別物です、と言われそうですが) ・1月14日 道をぼんやり歩いていると、道をたずねられることがある。 わたしが道に迷いやすい人間であることを知らない、未知の人に、わたしは教えてあげる。 こうだろうと思う行き方を。 つきあたりを曲がって上に出てみれば焼野原かもしれないけれど ・1月24日 近未来の世界の物語を、ぼんやりと考える。 地下深くの小さな部屋で一人ずつしずかに暮らしている。 モニターの窓には、きっと地上の空が輝いている。 風が通りすぎた。わたしの乗れなかった時間はそちらで動いてますか ・2月10日 感情が混乱してきたら、地図を眺める。 あいまいな場所の認識がきちんと整理されて、二次元の世界で正座している。 大陸の繋ぎ目としての山脈のつらなる歴史 風おりなさい ・3月11日 水の入ったコップをテーブルに置き損ね、落としてしまった。 どこから手をつけようか、一瞬迷う。 ただそばにずっといてくれるだけのたったひとりの人ほしかった ・5月3日 仙台へ行ってきた。 山のものも海のものも、たいへん美味。 男たちの悲鳴のような海鞘(ホヤ)かめばほのぼの甘しそののち苦し ・5月10日 本屋さんから本屋さんへ、渡り歩く。 本と本の隙間にしのびこんで、ねぐらにしてみたいと思った。 陽光を浴びて深く呼吸する古書店ひとりふたり出入りす ・5月25日 ゆうべ寝つきが悪かったので、寝起きも悪かった。 寝起きが悪いと現実との焦点がずれたまま行動することになる。 ベッドから足を垂らして触れるとき新たに満ちるわたしの下界 ・6月15日 十階に座って、未来を考えていた。 曇天の空の見える窓辺で。 おうと声かけるごとくに吹きあがる重たい風を抱くごとく受く ・10月9日 探し物をしたが、ついに見つからない。 この限られた空間に、必ずあるはずなのに。 なくてもいいものばかりかもしれず物がなだれて我もなだれる ・12月1日 とうとう今年最後の月に入った。 20年以上使っているタンスに倚りかかって、とりとめのないことを考える。 座るとき立ち上がるとき歩くとき ありがとう足そして重力 (2011年5月18日・記)

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