十階 の商品レビュー
一ページに一首で三六五ページ。二〇〇七年の記録だ。一月三日は、「布団ごと空に浮かんでしまいたい鳥が騒いでやまない夕べ」。小さく、「お正月も三日目、それも夕方ともなると、とろんとした空気が少し濁ってくる」と添え書きがある。 頁ごとに小さなおとぎ話が立ちのぼるよう。その中に、「...
一ページに一首で三六五ページ。二〇〇七年の記録だ。一月三日は、「布団ごと空に浮かんでしまいたい鳥が騒いでやまない夕べ」。小さく、「お正月も三日目、それも夕方ともなると、とろんとした空気が少し濁ってくる」と添え書きがある。 頁ごとに小さなおとぎ話が立ちのぼるよう。その中に、「なにをしているかわからぬ者ですが不思議に今日も生きております」の一首が紛れ込む。 (週刊朝日 2011/2/11)
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+++ 2007年1月1日から、12月31日まで、ふらんす堂のホームページで「短歌日記」として毎日掲載されたものをまとめたもの。 +++ 日記部分、その日その日のエピソードからしてすでに詩のようである。書かれすぎていないのがとてもいい。想像力をかきたてられて。わたしには真似でき...
+++ 2007年1月1日から、12月31日まで、ふらんす堂のホームページで「短歌日記」として毎日掲載されたものをまとめたもの。 +++ 日記部分、その日その日のエピソードからしてすでに詩のようである。書かれすぎていないのがとてもいい。想像力をかきたてられて。わたしには真似できないのでなおさらである。歌はもちろん東直子である。歌だけが並んでいるのもいいけれど、ほんの数行の日記に添えられているだけで、瞬くうちに運ばれてゆく心地がする。その場所は作者がいた場所とは違うかもしれない――いや違うだろう――けれど、そのことがまたきゅんとうれしい。一首の歌のなかに読む人の数だけの世界が広がるのだろう。胸にぎゅっと抱きしめていたい一冊である。 ちなみにわたしの誕生日に詠まれた歌はこちら 「この街が廃墟になっても後ろ手に空を見上げたままなのでしょう」
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