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こちらあみ子 の商品レビュー

3.7

223件のお客様レビュー

  1. 5つ

    40

  2. 4つ

    74

  3. 3つ

    64

  4. 2つ

    16

  5. 1つ

    1

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2024/09/16

「こちらあみ子」と「ピクニック」の2話が収録されているのだが、共通点は多く見られる。 いずれも人間の素質や関係から来るモヤモヤした実情を、どこまでも主観的な目線で語るものだからカラッとした軽さ・明るさで持って書き上げている。 あみ子の方では、知的ハンディキャップを抱える自他の心情...

「こちらあみ子」と「ピクニック」の2話が収録されているのだが、共通点は多く見られる。 いずれも人間の素質や関係から来るモヤモヤした実情を、どこまでも主観的な目線で語るものだからカラッとした軽さ・明るさで持って書き上げている。 あみ子の方では、知的ハンディキャップを抱える自他の心情や再婚者の実子・相手の前妻との子に感じる儘ならぬ心情が読み取れる。 ピクニックでは、妄想や虚言を塗り固めていってしまって取り返しがつかなくなる様を描くと同時にマジョリティから外れた他人の個性を悪気なく揶揄したり侮辱して肴にしようとするいじめっ子の心情がまた見て取れる。 本質は断定的に書かれていないため、読み手によって受け取れる情報は異なるだろう。現実世界もまた然り。 日常に潜むこういったシーンを客観的に読むことで他者の視点に思い馳せるきっかけが生まれる。良い本だと思う。子供に読ませたい。

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2024/08/09

読後も胸の苦しさが続くので、これからはもう読まなくてもいいかなとなんとなく避けるようになった今村夏子。 映画「花束みたいな恋をした」で「ピクニック」を麦と絹が褒め称えていたので、今村夏子のこのデビュー作は読んでないから読まなくちゃねえ、と読んでしまった。 まずは、映画で話題とな...

読後も胸の苦しさが続くので、これからはもう読まなくてもいいかなとなんとなく避けるようになった今村夏子。 映画「花束みたいな恋をした」で「ピクニック」を麦と絹が褒め称えていたので、今村夏子のこのデビュー作は読んでないから読まなくちゃねえ、と読んでしまった。 まずは、映画で話題となった「ピクニック」から。おお、これはいい。ある意味シスターフッド的なものも感じられるし。不穏な感じが、リアル。 なんだ、いけるではないか! さて、後から「こちらあみ子」。 こっちは… 胸が苦しくなりすぎて私には消化できなかった。 読後、世の中が違って見えるくらい。生きてて楽しい風景ではなくなってしまった。 そういう意味ではすごい作家なのだが。 やっぱり今村夏子は、私には向かないようだ…。 ギブアップです!

Posted byブクログ

2024/06/03

発達障害のあみ子の視点で描かれているため、 周りの人の辛さは想像するとより辛く感じる。 あみ子の無邪気さが意味もなく、相手を苦しめてしまうところが読んでいて辛かった。

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2024/04/19

表題作の方ではなく『ピクニック』の方の感想。 第三者の目を通してある人物とその周辺の人達を語るスタイルなので、読者は真実が完全にはわからない部分ができることで、不穏でよりざわざわした気持ちが増す。 何ていうか、クラスのヒエラルキーの頂点にいる女子達がオタクの子をニヤニヤしながら...

表題作の方ではなく『ピクニック』の方の感想。 第三者の目を通してある人物とその周辺の人達を語るスタイルなので、読者は真実が完全にはわからない部分ができることで、不穏でよりざわざわした気持ちが増す。 何ていうか、クラスのヒエラルキーの頂点にいる女子達がオタクの子をニヤニヤしながら持て囃すのを見てるような居心地の悪さなんだけど、そこまではっきりとした悪意が見えないのが余計に怖い

Posted byブクログ

2024/03/31

「こちらあみ子」 あみ子はあみ子の世界の中でそんなに不幸でもないんじゃないか。 「ピクニック」 副乳をできものと本人が信じているからと、秘密にしようとするというエピソードそのものが全てを象徴しているようだった。

Posted byブクログ

2024/03/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

心にドシンと重い石が落ちてきたような気持ちになった作品でした。もしあみ子のような子が家族やクラスにいても、私も上手く接することはできないと思う。あみ子の悪気のない行動が、周りの人たちを壊してしまい、あみ子自身も傷ついてしまうのが悲しい。誰も悪くないからこそ辛い。 あみ子が見ている世界と周りの人が見る世界との差。トランシーバーのシーンはグッと心にきた。あみ子に応答してくれる人が現れますように。 ピクニックは、怖かった。モヤモヤする。一見すると、七瀬さんに優しく接する女達のように思える。けれど、少しずつ積もる違和感の正体を考えてみると、裏では妄想癖のある七瀬さんを馬鹿にして面白がっているように感じる。色んな考え方があるだろうな。 どちらの作品も考えさせられるし、しばらく引きずってしまった。今村夏子さん作品は、奥が深すぎる。

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2024/02/28

今村夏子さんの作風が好き。 いつも、ちょっと不思議。でも自分の日常で出会ったことがありそう。いい線を突いている。

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2024/01/01

面白かった。奇妙で。 だらだら読むばかりだった読書が、久しぶりに一気読みをしたなあ。 あみ子は、人との会話で普通の人が無意識に感じ取れる文脈を理解することができず、学校にも馴染めない少女。 継母の死産をきっかけに、産まれてこなかった「弟」のために木の棒に弟のお墓と、好きな男の...

面白かった。奇妙で。 だらだら読むばかりだった読書が、久しぶりに一気読みをしたなあ。 あみ子は、人との会話で普通の人が無意識に感じ取れる文脈を理解することができず、学校にも馴染めない少女。 継母の死産をきっかけに、産まれてこなかった「弟」のために木の棒に弟のお墓と、好きな男の子ののり君に書いてもらってから、母は心を病みあみ子を見ることをやめ、兄は不良になった。 あみ子は中学生になって同級生からはキモイと言われ、授業にもろくに参加せず、謎の物音に支配され生活もままならず、ある日保健室で出会った大好きなのり君に好きだと伝えて、殴られた日。 兄の不良になった不器用さと、こちらあみ子と投げかけに応答してくれた優しさ。 あみ子の話に付き合ってくれたクラスメイトの男子の素朴さ。 他短編のピクニックも面白かったー。 ローラースケートでウエイトレスをするお店の従業員の女の子たちと年上の七瀬さんの妄想癖劇場。 あみ子みたいな子は、どこにでもいるわけで。 一瞬村田さやかさんかと思ったけど、今村さんの本だった。 妙な違和感を書けるなんて、すごいなあ。

Posted byブクログ

2023/12/26

【ピクニック】 七瀬さんとルミたちが夏の用水路に通う辺りの描写のみずみずしさ。ゆったりとした時間が流れていていい。終わりに向かうにつれて、それまでの何でもなかった日常を意識させられるのが良かった。 「3-4x10月」「ソナチネ」のゆったりした時間が流れる日常のシーンをなんとなく...

【ピクニック】 七瀬さんとルミたちが夏の用水路に通う辺りの描写のみずみずしさ。ゆったりとした時間が流れていていい。終わりに向かうにつれて、それまでの何でもなかった日常を意識させられるのが良かった。 「3-4x10月」「ソナチネ」のゆったりした時間が流れる日常のシーンをなんとなく思い出す。スピッツ「夏の魔物」、ユニコーン「自転車泥棒」を聴いてるときの感情とも近い。

Posted byブクログ

2023/10/05

善意と悪意の曖昧な境界を、その恐ろしさ哀しさ愛おしさを見事に描写している。 『こちらあみ子』では内から 『ピクニック』で外から ラストのエッジの鋭さに胸が張り裂けそうになる。

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