かたちだけの愛 の商品レビュー
人はあるとき、特定の誰かに強く惹かれる。気づけば、その存在が心を占める。やがて思いは深まり、愛と呼ばれるものに近づいていく。 そうした感情の延長にある触れ合いは、しばしば特別な意味を帯びる。だが、そこに必ずしも愛が伴うとは限らない。関係は成立しても、同じものを見ているとは限らな...
人はあるとき、特定の誰かに強く惹かれる。気づけば、その存在が心を占める。やがて思いは深まり、愛と呼ばれるものに近づいていく。 そうした感情の延長にある触れ合いは、しばしば特別な意味を帯びる。だが、そこに必ずしも愛が伴うとは限らない。関係は成立しても、同じものを見ているとは限らない。むしろ、近づいたことで、互いの距離を知ることもある。 熱が引いたあとの静けさに、ふとした違和感が残ることがある。その感覚は、言葉にしにくい。だが確かに、何かが噛み合っていない。 それでも関係は続く。形だけが残る。 愛は、恋人同士のものに限られない。親子の間にもある。無償とされてきたその関係も、近年では別の側面が語られるようになった。理想の陰に隠れていた現実が、少しずつ露わになっている。 プロダクトデザイナーの相良郁哉にとって、母の記憶は安らぎだけではなかった。少年期に見た光景が、長く心に影を落とす。大人になって出会う女優・叶世久美子もまた、ひとところに留まらない存在である。 誰かを求めながら、どこかで満たされきらない。その感覚の行き着く先で、相良が触れたものは、外にではなく内にあった。 愛のかたちは、ひとつではない。 最後に残るのは、自分自身とどう向き合うか、その一点である。
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日蝕以来の平野啓一郎。新聞連載作品だけあり、読みやすく、面白かった。陰翳礼賛も好きなので、そこから愛を語るのも素敵。私は私の愛する人たちを通じて私自身を愛せているだろうか
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普段あまり読まないタイプのジャンル、タイトルでしたが平野さんの作品だったので手に取りました。この前に概念的な本を読んでいたので、わかりやすい人物設定とストーリー展開ですらすらと読了。『ある男』『マチネの終わりに』に続き3作目ですが、昼のドラマのようなわかりやすい設定と次々と起こる...
普段あまり読まないタイプのジャンル、タイトルでしたが平野さんの作品だったので手に取りました。この前に概念的な本を読んでいたので、わかりやすい人物設定とストーリー展開ですらすらと読了。『ある男』『マチネの終わりに』に続き3作目ですが、昼のドラマのようなわかりやすい設定と次々と起こるアクシデントや大がかりな出来事の連続に、途中でこれは新聞の連載だったのかしら、などと本質と関係ないところが気になったりしました(実際に読売新聞に連載されたものに加筆修正したものだそう)。プロフェッショナル仕事の流儀やプロジェクトXのような特集番組と、ワイドショーと、アニメと漫画をいっぺんに味わったようななんとも言えない読後感。映画であれば助演の立場にある三笠という男と、曽我という男の存在が際立っていたのですが、どうしてそういう人間になったのか、特に三笠について良くわからず、そこはもやもや感が残りました。読み終わってからほかの方のレビューを拝見して、作者の「分人主義」という考え方を知り、そちらに興味が湧いてきました。文章がきれいなので、引き続き読んでみたい作家さんです。
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人物の感情描写がうまく感情移入しやすかった。 人間らしい義足、ファッションとしての義足、健常者が羨む義足や義手などが世の中に溢れたらいいのに。
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相良郁哉(プロダクトデザイナー) 叶世久美子(女優タレント)(中村久美) 原田紫づ香(臨海ひかりの病院経営) 淡谷大三治(装具士) 庄司(リハビリ科の医師) 緒方くん(郁哉の社員) 曾我社長(叶世久美子の所属事務所社長) 三笠竜司(久美子の元カレ) 相良(郁哉の父) 相良幸恵...
相良郁哉(プロダクトデザイナー) 叶世久美子(女優タレント)(中村久美) 原田紫づ香(臨海ひかりの病院経営) 淡谷大三治(装具士) 庄司(リハビリ科の医師) 緒方くん(郁哉の社員) 曾我社長(叶世久美子の所属事務所社長) 三笠竜司(久美子の元カレ) 相良(郁哉の父) 相良幸恵(父の後妻) 滝川理沙(郁哉の幼馴染) 相良志帆子(郁哉の実母)
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事故に遭い片足を失った『魔性』の女優久美子と助けたデザイナーの郁哉が義足の作成を通じて愛を育てていくストーリー。ほのぼのとした2人のシーンを挟みつつも何だかずっと薄暗い雰囲気があって結末はどうなるのか予想ができませんでした。 郁哉とお母さんとの関係が私的には気になりました。狭い世...
事故に遭い片足を失った『魔性』の女優久美子と助けたデザイナーの郁哉が義足の作成を通じて愛を育てていくストーリー。ほのぼのとした2人のシーンを挟みつつも何だかずっと薄暗い雰囲気があって結末はどうなるのか予想ができませんでした。 郁哉とお母さんとの関係が私的には気になりました。狭い世間に閉じ込められて行き場のないお母さんの苦しさ、子供の頃は分からなかっただろうなと。お母さんの骨壷を開けるシーンが印象に残りました。
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久しぶりの平野啓一郎氏の作品。王道のラブストーリー。マチネよりも読みやすい。彼が書くものは私の中で少し硬い印象があるのだが「こういう作品も書くんだ‼︎ 」と少し意外だけど良かった。また他の毛色が違う作品も読んでみたい。
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どことなく暗い結末を予感させる文体にいつもどきどきさせられるが、ラストの数章に感動した。 淡谷大三治や緒方君のフィギュアなどのちょっとした小ネタも効いている。 「技能とは、何であれ、その人の時間の使い方の果実である。」という一文を読んで、こういう表現に出会えることが、文学の楽しみのひとつだと思った。 タイトルはどういう意味だろうか…?
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ラブストーリーの王道を平野氏が書いたらこうなりました的な作品。ラストも完璧なハッピーエンド。ご都合主義的なストーリーだが僕はこういうディズニーみたいなの好きです。マチネよりこっちを映画化すればよかったのに。
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久美といる時の自分が好きな好きだった。他の誰といる時の自分よりも好きで、この自分なら愛せるかもしれないという気が初めてしていた。 なぜ人は、ある人のことは愛し、別のあるひとのことは愛さないのか?愛とは、相手の存在が、自らを愛させてくれることではあるまいか? 1つの愛する構造を...
久美といる時の自分が好きな好きだった。他の誰といる時の自分よりも好きで、この自分なら愛せるかもしれないという気が初めてしていた。 なぜ人は、ある人のことは愛し、別のあるひとのことは愛さないのか?愛とは、相手の存在が、自らを愛させてくれることではあるまいか? 1つの愛する構造を見せてくれた。そう、その人いる自分が好きってこと、共感できる。
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