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自分が生まれる前のことだし、安保とか全共闘とかよく知らないしなんか怖い感じがして読み始めるのにはちょっと勇気がいった。でも、読み始めたらそれはまったくの杞憂だった。書かれていることはたしかにその時代のことなんだけど、まったく古臭くない。全編に流れるスピード感、登場人物たちの気持ち...
自分が生まれる前のことだし、安保とか全共闘とかよく知らないしなんか怖い感じがして読み始めるのにはちょっと勇気がいった。でも、読み始めたらそれはまったくの杞憂だった。書かれていることはたしかにその時代のことなんだけど、まったく古臭くない。全編に流れるスピード感、登場人物たちの気持ちの動きの鮮明さ、なによりもいまの時代にはないひとがひととして悩みながらも深く生きていくさま、街が街として、大人が大人として、機能している感じにとても憧れる。
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最初はつらつらと60年代当時の著者の記者としての日常が綴られていくだけだったのだが、いつのまにか「ジャーナリズムとは」と考えさせられる展開になっていく。自分が3年間学んできたもの、それは実際自分がその場にいたらどうするか?という類のものではなかった。単なる学術である。いざこの本を...
最初はつらつらと60年代当時の著者の記者としての日常が綴られていくだけだったのだが、いつのまにか「ジャーナリズムとは」と考えさせられる展開になっていく。自分が3年間学んできたもの、それは実際自分がその場にいたらどうするか?という類のものではなかった。単なる学術である。いざこの本を読んでみて、自分が著者の立場だったらどうしたか?答えがでない。
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若者達の青春と挫折が満ちた時代、60年代後半。 1人の若いジャーナリストの失敗と挫折の物語。 あの時代とは一体なんだったのだろうか。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
おや、と思った。何だかいつもの川本三郎と感じがちがう。文章も生硬で余裕が感じられない。それに、60年代をテーマに謳っているのに出てくる話が暗いことばかりじゃないか。死者についての話も多い。それに何より「週刊朝日」や「朝日ジャーナル」記者としての個人的な感想がいかにも青臭い。いや、臭すぎる。いったい何を書きたいのだろう、と思いながら読み進めていった。 先に書いておくが、実はこの本1988年に河出書房新社から出版された同名の書物の復刻版である。その前年に雑誌「SWITCH」誌上に連載された文章を集めたものだ。当初は「60年代の様々なできごとをさらりと客観的に書くつもりだった」と、88年版のあとがきのなかで川本は書いている。しかし、第一章から川本の口調は滑らかではない。何やら60年代のことを思い出したくない様子なのだ。映画の中に引用されている三里塚闘争の映像を見たときのことを「いやだな、思い出したくないな」と書いている。 当時川本は、ジャーナリストにあこがれて朝日新聞に入社したばかり。それなのに、新米社員にはつまらない仕事しか回ってこなかった。ベトナム戦争に取材に行っている先輩をしり目に、自分は安全地帯にいて第三者的な立場で意見を述べているばかりという事態に焦れていたのだろう。「センス・オブ・ギルティ」や「ベトナムから遠く離れて」といった章のタイトルにもそれは表れている。 それにもう一つ、川本は「週刊朝日」に配属されていたが、当時勢いのあったのは圧倒的に「朝日ジャーナル」の方だった。あの雑誌をくるっと巻いて小脇にはさんだり上着のポケットに指したりするのが流行りのスタイルになっていたくらいだ。三里塚闘争にしても「朝日ジャーナル」の方は支援の姿勢を明らかにしていたが、「週刊朝日」の方は旗幟鮮明ではなかった。同じ社内にあって、新左翼シンパの自分が「週刊朝日」の方にいることが悔しかったようだ。 しかし、上層部の判断で「朝日ジャーナル」のスタッフが配置転換され、その後を他の部局から入ってきた者が担うことになった。若い川本もその一人だったが、前メンバーからは第二組合的な扱いを受け、冷ややかな目で見られていたらしい。頼りになるメンバーも限られ、どうしたら「朝日ジャーナル」を続けていけるのかという不安の中で事件は起きた。 アメリカン・ニューシネマやウッドストックといった話題もあるのに、どうして暗い話ばかりと感じていたが、それには深い理由があった。「ニュース・ソースの秘匿」。今でもジャーナリズムのモラルの一つとしてよく取り沙汰される話題だ。「赤衛隊」という名前を記憶している人も少なくなっただろう。自衛隊朝霞基地で警備中の自衛官が刺され死亡するという事件があったが、なんと川本は、犯行以前に、その犯人に単独インタビューをしていたのだ。 それだけならまだしも、犯行後に証拠品である警衛腕章をもらい受けてもいる。インタビューに同行した社会部記者は警察に情報を流すべきだという。川本がそれに反対したのは、ジャーナリストのモラルを守るためであった。この事件を単なる殺人事件とする社会部記者に対し、思想犯だとする川本の論理は完全に食いちがう。その結果、逮捕され拘留。取り調べに対し完全否認するも犯人の方はぺらぺらと自分のことをしゃべっているらしく、このまま否認を続ければ「殺人教唆」の罪まで被る危険性が出てきた。 結果的には、事実を述べたことで「証憑湮滅」だけで起訴され執行猶予つきで釈放されるが、朝日は馘首。ジャーナリストのモラルに違反した自分を川本は許せなかった。以後、政治を語ることは自分に禁じてきたという。88年版が出たとき、丸谷才一が「比類なき青春の書」、「どう見ても愚行と失敗の記録であって、それゆゑ文学的」と評したのはさすが。72年に起きた事件を語るのに15年かかったのだなあ、と読み終えて思った。改装版が出ることになったのは映画化されることが決まったからだ。 暗い話ばかりと書いたが、後に高田渡と武蔵野タンポポ団のメンバーとなる青年(シバ)の下宿でフォークソングを一緒に歌ったり、阿佐ヶ谷の「ぽえむ」で永島慎二の隣でコーヒーを飲んでいたりと、懐かしい名前も登場する。後知恵ともいえようが、川本三郎の資質はむしろそちらの方に向いていたのではないだろうか。貧しい者や弱い者に優しく、声高にものを言うことのない筆者の書く物を愛読してきたが、こういう時代があって今の筆者があるのだなあという思いを強くした。
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川本さん自身の体験を綴った本。 60年代、学生紛争の時代。 若者が、内面から沸き上がるなんともいえない闘争心を抑えられず行動にうつしていた時代。 全共闘、ベトナム戦争、そんな時代に生きたジャーナリスト。 何をもって正義とするのか。 そしてある一人の若者に惹かれ事件に巻き込まれて...
川本さん自身の体験を綴った本。 60年代、学生紛争の時代。 若者が、内面から沸き上がるなんともいえない闘争心を抑えられず行動にうつしていた時代。 全共闘、ベトナム戦争、そんな時代に生きたジャーナリスト。 何をもって正義とするのか。 そしてある一人の若者に惹かれ事件に巻き込まれてしまうのだが... ジャーナリストとして、殺人をフィクションで通すか 一般市民として殺人を通報するか、 そこに苦悩したのがよくわかる。 映画化されるので本書をどうアレンジしたのかが気になる。
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積読本でした。地震後2日目に読了。なんだかひりひりする感じでした。 映画があるので…と読んだのですが、映画でネタになる部分は思いのほか短かったなぁ…読み始めるまではこんな事件が本当にあったのかなぁと思うくらいでした。オチがああいう風になっているところが「あぁ、本当にあったことなん...
積読本でした。地震後2日目に読了。なんだかひりひりする感じでした。 映画があるので…と読んだのですが、映画でネタになる部分は思いのほか短かったなぁ…読み始めるまではこんな事件が本当にあったのかなぁと思うくらいでした。オチがああいう風になっているところが「あぁ、本当にあったことなんだなぁ」と怖くなりました。 あと、全共闘の話が出来来たので、あんまりつなげるのがよくないでしょうけど、村上春樹の初期作品を読みなおしたくなりました。 映画は個人的には楽しみ。ノルウェイの森があまりにも期待外れだったので…なむなむ!!
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22年前に一度世に出て忘れ去られていた本だが、ある映画人の目に止まり映画化されることになり、陽の目を見た復刻版だ。初めにお断りしておくけれど、この本は万人向けではない気がする。ある年代以上の人にとっては、何がしかの苦い思いと共にその時代の記憶を甦らせるメモワールだけれど、、、それ...
22年前に一度世に出て忘れ去られていた本だが、ある映画人の目に止まり映画化されることになり、陽の目を見た復刻版だ。初めにお断りしておくけれど、この本は万人向けではない気がする。ある年代以上の人にとっては、何がしかの苦い思いと共にその時代の記憶を甦らせるメモワールだけれど、、、それにしても60年代の安保闘争から全共闘による大学紛争、そして連合赤軍による浅間山荘事件に至るまでの間というのは、実にドラマチックな時代だったと思う。どのシーンを取っても、何とか映像化してみたいという気持ちが分かる。
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刊行当時に読んだ時と同じ読後感。 甘くナルシスティックに当時の状況に翻弄された様を記す。 そりゃ映画になるかも知れないな、と思った。
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