和解する脳 の商品レビュー
脳科学者と弁護士の対談という形式がとてもエキサイティングです。新しい脳と古い脳のせめぎ合いというテーマが心に残りました。
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人の脳は常に闘争を求めている、というのはやや誇張であるが、緊張と緩和が一つのキモである。 脳科学者と弁護士の対談である。 弁護士というのは「理」の専門家であるようなイメージがあるが、実際の所「情」も重要であって、特に著者の一人である鈴木氏は「和解」による決着を重視しており...
人の脳は常に闘争を求めている、というのはやや誇張であるが、緊張と緩和が一つのキモである。 脳科学者と弁護士の対談である。 弁護士というのは「理」の専門家であるようなイメージがあるが、実際の所「情」も重要であって、特に著者の一人である鈴木氏は「和解」による決着を重視しており、そうなると「法律でこうなっているから」と一方的に押し付けようとしてはまとまるものもまとまらない。結論はある程度固まっていたとしても、「いつどのように伝えるか」みたいな情動の部分が深く関わってくる。 そうした情動というものをいかに読みとるかという所がいわゆる「コミュニケーション能力」の一要素であり、あたかも天賦の才のように受け取られがちではあるが、まずは知ること、そして実践すること、そうした技術の範疇であるようにも思う。 人はそれぞれ違う考え方を持つわけで、対立するというのはむしろ自然なことであり、それを無理に押さえ込むほうが不自然である。とはいえ対立をエスカレートさせてはお互い消耗するばかりで、そこで対話をして和解していくというプロセスが重要になる。あたかも雨として降った水が川を流れ海に至り、蒸発してまた雨になるという循環を見ているようである。留まる水は腐る。流れていくという過程で、対立と和解があるのである。 繰り返すが本書は対談であって、無理に系統立てようとはせず、自然な形で話が展開していくので、こちらも肩肘張らずに、気楽に読み通せる。
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※このレビューにはネタバレを含みます
2010年刊行。脳研究者(東京大学大学院薬学系研究科准教授)と弁護士による対談。人間の利他的な側面、抑制的な思考をもたらす脳の部位は、マネーゲーム(外国為替証拠金取引、FX取引)では上手く作用しないことなど、興味深い内容である。対談なのでするする読めるが、奥は深い。鈴木仁志氏の証拠金取引等に関する理解や司法手続を絶対視できない見識は至極真っ当なので、多くの方々に是非一読をお勧めしたい。
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家族性の失語症=遺伝が原因 3歳では他者視点でものが見えない、再帰できない。4歳になると少しできる。 子どもは誘導される可能性が高い。嘘の証言をさせることが簡単にできる。特定の方向に誘導する質問を繰り返しすると、記憶が植えつけられてしまう。 海馬は未来予測に重要な関与をしている。...
家族性の失語症=遺伝が原因 3歳では他者視点でものが見えない、再帰できない。4歳になると少しできる。 子どもは誘導される可能性が高い。嘘の証言をさせることが簡単にできる。特定の方向に誘導する質問を繰り返しすると、記憶が植えつけられてしまう。 海馬は未来予測に重要な関与をしている。記憶の保存をするもので、時間的には常に後ろ向きと考えられていた。海馬を損傷すると、次の誕生日にどのレストランでどんなパーティーをするかなどのビビットな想像力が低下している。 パーキンソン病とは、身体の動かし方を忘れてしまう病気。方法の記憶が失われ、手足の動かし方を忘れて、震えたような形になってしまう、 認知的不協和という心理状態。本当はおいしいと思ってても、まずいというと本心まで変わる。脳が言い訳を始める。つじつまを合わせてしまう。 前頭葉の背側前頭内側皮質は最高レベルの司令塔。子どもはそこがうまく働かないから思ったことをそのまま言ってしまう。モラルが入ることによって抑止が生じる。働かない状態は、幼い子どもみたいに欲求を解放している。
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法律家と脳科学者という異色の対談。 と思っていたけど、そうか、法が人間の行動を律するものである限り、脳研究からの分析が役立たないわけがないのだった。 将来的には、法廷に被告の脳分析結果が持ち込まれることもあるのだろうか。
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脳科学者と弁護士の脳にまつわる対談の書式化。 なにか行動を起こそうと意識する前にすでに行動を始めている。Free willは存在しない。存在するのはすでに起こし始めた行動をやめるか、Free won'tなのである、という考え方は面白いと思った。
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弁護士の鈴木先生が脳科学者の池谷さんに、 裁判や判決などの人間心理に関わることなど質問し、対談している。 はじめは小難しくて大丈夫かな〜と思ってたけど、読み進めて行くうちにドップリと2人の世界観に浸っていた自分がいました。 裁判で2つに分けられている刑事と民事について、刑事事...
弁護士の鈴木先生が脳科学者の池谷さんに、 裁判や判決などの人間心理に関わることなど質問し、対談している。 はじめは小難しくて大丈夫かな〜と思ってたけど、読み進めて行くうちにドップリと2人の世界観に浸っていた自分がいました。 裁判で2つに分けられている刑事と民事について、刑事事件は9割以上の証拠がなければ判決を出してはいけなくて、民事は7.8割程度の確信をもてたら証明されるのが一般的と言うらしい。 なぜかと言うと、因果関係と言うのは証明出来ないから。 それは科学の見地からも因果関係は証明出来ないらしい。 だからいかに相関の強さを言及するのかが裁判の分かれ目と言うこと。 それと「直感は正しい」について。 直感とは、自分の潜在意識の中に溜まった情報が、瞬時に計算してくれてはじき出された勘みたいなもの。 だから自分に降ってきた直感と言うものは、今の自分にとって正しい、と言うのが科学的に分かっている。 因みに 「ひらめき」とは自分が意識する範囲で論理的に考えてはじき出したもの。 まとめると、直感は考えて説明出来ないものに対して、ひらめきは考えれば説明できる。 どんなに「理」が正しくても、人を納得させて和解することは難しい。 何故なら人は感情から物事を判断していく性質にあるから。 だから「情」から「理」の流れで話をした方が「和解」するには効率的。 お金があることが幸せなのではなくて、お金を気にしないで暮らせることが幸せ。
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これまで十分に理解していなかった人間には自由意志が存在しないという仮説についてより理解できた点はありがたい。自由意志ではなく、人間の脳内に自然発露的に発生した欲求を「自由否定」によって抑えるか、促すかが、これまで考えられていた自由意志の結果だという。 また、民事訴訟における形式...
これまで十分に理解していなかった人間には自由意志が存在しないという仮説についてより理解できた点はありがたい。自由意志ではなく、人間の脳内に自然発露的に発生した欲求を「自由否定」によって抑えるか、促すかが、これまで考えられていた自由意志の結果だという。 また、民事訴訟における形式的真実という被告・原告双方の同意に基づいた真実とは異なる「真実」を起点にして、争うことに対して、刑事訴訟は実体的真実という本来の真実を追求するのだという法律学の扱い方に非常に興味関心を覚えた。 やや、難しいがこちらの書籍も高校生に読んで頂きたいと感じた。大人もおや。
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脳科学者の池谷先生と弁護士の鈴木氏が対談した本を紹介します。 異色の対談ですね。 鈴木氏は、裁判では争うことが常だけど和解できるような裁判が可能ではないかと考えています。 攻撃的に争う場合も脳の働きなのであれば、和解することも脳の働きだからです。 http://amebl...
脳科学者の池谷先生と弁護士の鈴木氏が対談した本を紹介します。 異色の対談ですね。 鈴木氏は、裁判では争うことが常だけど和解できるような裁判が可能ではないかと考えています。 攻撃的に争う場合も脳の働きなのであれば、和解することも脳の働きだからです。 http://ameblo.jp/nancli/entry-11591230625.html
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相変わらず分かりやすくて面白かった。 「興奮状態の相手には、まず受け入れてから話が出来るように持っていく」。なるほど…だけど自分に出来るかな?
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