流跡 の商品レビュー
芥川賞受賞作家のデビュー作にして、Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞作を読んでみた。まさにタイトル通り、文字の“流跡”が記された作品。曖昧な輪郭で揺れながらただ糸水のように流れ続ける「ひとやひとでないもののものおもい」を、言葉という音・文字という記号で作った枠で囲い、ひととき読...
芥川賞受賞作家のデビュー作にして、Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞作を読んでみた。まさにタイトル通り、文字の“流跡”が記された作品。曖昧な輪郭で揺れながらただ糸水のように流れ続ける「ひとやひとでないもののものおもい」を、言葉という音・文字という記号で作った枠で囲い、ひととき読者の目にも映る形と輪郭のある何かとして描き出す。そんな風に与えた輪郭は流れの中でゆるりと、ふつりと消え、気づけば100ページの流跡をたどり終えていた。形なく漂うものに意味と生命を与える言葉・文字の不思議な力を改めて堪能できる、独特の魅力を持った作品だった。機会があれば、芥川賞受賞作も読んでみたい。
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人も時間もシームレスに入り交じり、生臭い川にたゆたっていく。不足分を払わなければならない生業、しかもそれは常におにになったり、もののけになったりする危険が伴う、やめることができるかどうかもわからない生業。それは「生業」というより「生の業」だ。どこか町田康の小説を彷彿とさせる言葉使...
人も時間もシームレスに入り交じり、生臭い川にたゆたっていく。不足分を払わなければならない生業、しかもそれは常におにになったり、もののけになったりする危険が伴う、やめることができるかどうかもわからない生業。それは「生業」というより「生の業」だ。どこか町田康の小説を彷彿とさせる言葉使いも面白い。
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+++ 第20回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を最年少で受賞した大型新人の鮮烈なデビュー作。 +++ いつなのか、どこなのか、だれなのか。三人なのか、転生する一人なのか。現実なのか夢なのか。読み進めるごとにわからなくなる一冊である。なにかについて書かれているのか、それともなに...
+++ 第20回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を最年少で受賞した大型新人の鮮烈なデビュー作。 +++ いつなのか、どこなのか、だれなのか。三人なのか、転生する一人なのか。現実なのか夢なのか。読み進めるごとにわからなくなる一冊である。なにかについて書かれているのか、それともなにかがなにかをわからなくさせるために書かれているのか。それさえもわからなくなるようである。形作っては崩れ、寄り集まっては散り散りになり、流れにたゆたっているような一冊である。
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この作品を小説と思って読むと、読後感はいたって不満というか、 消化不良な感じでしかない。 ことさら読むのに難儀する漢字を使い やや独創的な平仮名使いを駆使する文体は斬新といえば斬新…? 文学少女の知識の発表会とも取れる。 ただこれだけの文章を書けるなら次回は楽しみか。
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芥川賞作家のデビュー作ということで読んでみたのだけど、独特の小説世界を展開しており、それが私には合いませんでした。 文章を目で追ってるのに、内容が頭にちっとも入ってこない・・・そんな感覚を味わいつつ、途中で挫折しそうになりながらも、意地になって最後まで読みました。 感想を書くと...
芥川賞作家のデビュー作ということで読んでみたのだけど、独特の小説世界を展開しており、それが私には合いませんでした。 文章を目で追ってるのに、内容が頭にちっとも入ってこない・・・そんな感覚を味わいつつ、途中で挫折しそうになりながらも、意地になって最後まで読みました。 感想を書くときは、内容を忘れないためになるべくあらすじを一言入れるようにしているのですが、この作品に限ってはあらすじを書くのが不可能です。 物語というよりは詩に近い感じ。 この小説の世界においては、「自分」というものが誰なのかはっきりせず、場面も状況も何の前触れもなくコロコロ変わっていきます。 その現実味のない整合性のなさは、まるで夢を見てるかのような感覚になります。(実際、読んでる途中に、いつのまにか寝てたことが多々…)結局、流れるように文章が連ねられていただけで、私には最後まで何も掴めなかったので、もやもやした気分が残りました。 それでもこの作家さんがなんだか凄そうだと思ってしまうのは、多分読者をこういう気分にさせることを狙って書いているような気がするからなのですが、それは深読みのしすぎでしょうか…?
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午後1時からの2時間、文字たちから想起されたイメージが、私の中のいつかどこかで出会った現実でない文章や、現実にあったことかなかったことかもわからないあいまいな情景描写など記憶の断片と絡み合って、文章の「流れ」は、何度も、行きつ戻りつしていた。目と頭はさざ波のように文字を辿るかと...
午後1時からの2時間、文字たちから想起されたイメージが、私の中のいつかどこかで出会った現実でない文章や、現実にあったことかなかったことかもわからないあいまいな情景描写など記憶の断片と絡み合って、文章の「流れ」は、何度も、行きつ戻りつしていた。目と頭はさざ波のように文字を辿るかと思えば、そこから連想された思考によって引き波のように文字たちから離れ、また次の波が被さって、という、不思議な時間だった。 これは小説だろうか、むしろ詩?習作?ストーリーを楽しむ作品ではないのかも。この人のことばあそびの世界を楽しめればいいのかな。始めと終わりの部分で「ことば」の不思議が体感、共感できたかな。
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水に係わる何か、言葉の羅列を玩んでいるうちに、流れの中に絡めとられるような、ホラー?妄想?意味不明?渡し船のような小舟の船頭、水たまりの中に煙突をみる平凡な会社員、彼らはいったいなんなのか?
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タイトルの通り、ひとたび言葉が流れだしたら、次々と事象と情景と感覚だけが連なって漂っていくような文章。まるで長い長い詩を読んでいるよう、といったらいいか。 正直いって、一体何を描きたかったのか全然わからない。 私の力不足なのだろうが、私には無理。
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2月8日読了。土瀝青(アスファルト)。桎梏(しっこく)。罅(ひび)。蝟集(いしゅう)。雨の日の煙突、廃墟の島、心に残った。
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非現実から徐々に現実へ。夢と現の狭間に漂うような、不思議な言葉の群れが独特な、個性的な作家。幻想的なようにみえて、空虚へ向かう心の流れを表す言葉が驚くほどリアルで、心にささる、印象的な作品。
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