夏目家順路 の商品レビュー
『どこにでもいる、ただひとりの男』の物語。 74歳の男が亡くなった晩から通夜や葬式までを通じて 彼の家族や関わりのある人達の想いを描く。 綺麗事でもなく過剰な演出もなく 案外どうでもいいようなこと考えてたりする様がリアル。 【図書館・初読・11/22読了】
Posted by
昨年から怒涛のように多彩な小説を発表する朝倉さん。今回はまた趣向を変えて、葬儀の場面から参列者各人に一人の男の人生を回想させるという物語。タイトルに使われている「順路」とは、葬儀の際の最寄り交通機関からの案内順路のこと。 葬儀の形態というのは、同じ仏式でも地域によって随分と違うも...
昨年から怒涛のように多彩な小説を発表する朝倉さん。今回はまた趣向を変えて、葬儀の場面から参列者各人に一人の男の人生を回想させるという物語。タイトルに使われている「順路」とは、葬儀の際の最寄り交通機関からの案内順路のこと。 葬儀の形態というのは、同じ仏式でも地域によって随分と違うものだなというのがまず第一の感想。舞台は北海道で、おそらく葬儀の会場は札幌市内の斎場だと思われるが、通夜には家族、親戚が一同で遺体を囲んで広間で仮寝するというのに少々驚いた。故人となった主人公・夏目清茂の生前の人物像が語られた後で、参列者の回想が続けられる。無学ながらもそれなりに一生懸命生きてきた昭和の男の人生がさまざまな側面から語られるのだが、人それぞれの語り口がなかなか巧い。亡くなった人は遺された者の思いを知ることなく、また遺された者の思いは亡くなった人には届かない。この理不尽さ。人の一生は、はかないもの。されど、捨てたものでもないということを感じさせられ、自らの人生を考えてしまう一編。
Posted by
何がどう面白いのか、よくまとめられないのだけど、とても面白く読みました。北海道に住む(北海道弁がすっごくいいんだよね)1人の男の子ども時代から青年、結婚してその後あれこれがあり、老年を迎え、というお話で、平凡な男が波乱万丈と言える人生を送るその時々の横顔に読ませられるものがあった...
何がどう面白いのか、よくまとめられないのだけど、とても面白く読みました。北海道に住む(北海道弁がすっごくいいんだよね)1人の男の子ども時代から青年、結婚してその後あれこれがあり、老年を迎え、というお話で、平凡な男が波乱万丈と言える人生を送るその時々の横顔に読ませられるものがあった、ということなんでしょうか。本人目線の話から始まったのでそのままずっと最後まで、だと思っていたら、途中からいろんな人の視点で彼・夏目清茂について語られ、それは当然、本人が思っていたのとは違う自分だったり、その人々の気持ちだったり。そのどちらが正しいか、という問題じゃないんだろうな、というあたりが、うん、一番面白いところだったのかも。「夏目家順路」というタイトルと表紙絵が、あぁ、そうだったのか、とわかる仕掛け(なんて大仰なものじゃないけど)もよかったです。
Posted by
+++ 夏目清茂七十四歳、本日脳梗塞のためめでたく昇天いたしました。「どこにでもいるただひとり」の男の一生を、一代記とは異なる形で描いた傑作長編小説。 +++ 前半はこの物語の主人公・夏目清茂の取り立てて特別ではないが波も立ち人並みに苦労もしたが、まあまあそれなりに幸福でもある...
+++ 夏目清茂七十四歳、本日脳梗塞のためめでたく昇天いたしました。「どこにでもいるただひとり」の男の一生を、一代記とは異なる形で描いた傑作長編小説。 +++ 前半はこの物語の主人公・夏目清茂の取り立てて特別ではないが波も立ち人並みに苦労もしたが、まあまあそれなりに幸福でもある人生が描かれているが、突然脳梗塞で亡くなってからは、家族や親族や友人の目線で清茂がらみのあれこれが語られていく。とは言っても、みな清茂のことを考えると思い出すのは自分のことで、清茂と同じ時を生きていた自分のあれこれが思い出されてくるのである。そして、人がひとり亡くなったばかりの妙にぽっかりとした意識のありようがとてもリアルに描かれていて、自分が近しい人を亡くしたような空白が一瞬胸に広がるのだった。それらすべてが淡々と書かれているのがかえって夏目清茂がもういないのだということをしみじみと思わせる一冊である。
Posted by
普通のどこにでもいるお爺さんが亡くなって、お葬式をするまでのお話。 息子や娘や孫や別れた妻も、ホントに普通で、それぞれの近況や、想い出もありきたりなんだけど、それがなんともいいんだな。 自分だって、それほど遠くない未来にこういう体験をするんだろうな・・・と思った。
Posted by
<内容>夏目清茂七十四歳、本日脳梗塞のためめでたく昇天いたしました。「どこにでもいるただひとり」の男の一生を、一代記とは異なる形で描いた傑作長編小説。
Posted by
74歳で亡くなった夏目清茂の一代記です。葬儀に集まった人々の亡くなった本人は知らないであろう人生が語られています。どこにでもいる男、狭い世界で生きてきた男にもこんなに様々なストーリーがあることに驚きつつ、人との関わりが心に染みました。
Posted by
『ともしびマーケット』の中の一つのお話につながる物語。 特別なことは何も起こらない一人の平凡な男の人生が朝倉フィルタを通り抜けた瞬間、こんなにも色鮮やかで豊かな物語へと変わる、まさに「朝倉マジック!」 今生きている私の人生は、ある日突然始まったものでなく、ずっとずっと昔から多くの...
『ともしびマーケット』の中の一つのお話につながる物語。 特別なことは何も起こらない一人の平凡な男の人生が朝倉フィルタを通り抜けた瞬間、こんなにも色鮮やかで豊かな物語へと変わる、まさに「朝倉マジック!」 今生きている私の人生は、ある日突然始まったものでなく、ずっとずっと昔から多くの人たちの中を通り抜け、そしてまた多くの人たちの中へと受け継がれていくものだということをしみじみと思う。
Posted by