夏目家順路 の商品レビュー
どんな人でも、否が応でも、主人公である 歩み、積み重ねてきた「生」。 それは、どんなに近しい人でもすべてを読むことができない物語。 この世の中には、どんなにたくさんの 物語が潜在しているんだろう。 夏目清茂、74歳。 奥さんに逃げられたブリキ職人で、ふたりの子は独立し 晩...
どんな人でも、否が応でも、主人公である 歩み、積み重ねてきた「生」。 それは、どんなに近しい人でもすべてを読むことができない物語。 この世の中には、どんなにたくさんの 物語が潜在しているんだろう。 夏目清茂、74歳。 奥さんに逃げられたブリキ職人で、ふたりの子は独立し 晩年はひとりで暮らしていて、いきつけのスナックで 脳梗塞のため、昇天。 その男のお葬式にあつまった人たちの、回想も借りた、一代記。 奇跡のように想いがまじわるばかりが、物語じゃない。 人生のいっとき、並走した人たち。 つながってはいるけれど、 誤解はとけないし、想いは届かないし、察し合えない。 だって、それぞれが、それぞれの物語を持っていて、 そこでは、その人こそが、主人公だからね。
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外から見ただけでは分からない人間の事情を見ることができる、 という小説の醍醐味の1つをたくさん味わえた『夏目家順路』。 誰かの「死」を受け入れる人間たちのしたたかさにユーモラスな感じすら受けました。 http://matsuri7.blog123.fc2.com/blog-ent...
外から見ただけでは分からない人間の事情を見ることができる、 という小説の醍醐味の1つをたくさん味わえた『夏目家順路』。 誰かの「死」を受け入れる人間たちのしたたかさにユーモラスな感じすら受けました。 http://matsuri7.blog123.fc2.com/blog-entry-179.html
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『どこにでもいる男』と書かれているが、清茂のような人はなかなかいないと思う。周りの人たちから見た清茂像は様々だ。好意的なものあり冷やかなものあり。それを朝倉さんは容赦なく、時に露悪的にすら思える筆致でつまびらかにしていく。しだいに見えてくるのは清茂の生き様だけでなく、周りの人のさ...
『どこにでもいる男』と書かれているが、清茂のような人はなかなかいないと思う。周りの人たちから見た清茂像は様々だ。好意的なものあり冷やかなものあり。それを朝倉さんは容赦なく、時に露悪的にすら思える筆致でつまびらかにしていく。しだいに見えてくるのは清茂の生き様だけでなく、周りの人のさまざまな現状でもある。人間って生きていれば、子供にも大人にものっぴきならない事が起こるし、人に言えない感情をひた隠しているものだ。そのあたりを書くのが実にうまい。それにしても急死から通夜葬儀の数日を書いて、ここまで味わい深い物語にするとは、すごいなぁ!
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2011.1.11〜1.26 朝倉かすみは、人物を描くのがうまい。そして、「乾いた文章」って、こういうことを言うのだろうと思う、淡々とした語り口。今回も、見事でした!そして、夏目清茂の人生...いい人生でした。
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ブリキ職人であった清茂の死。 その家族や近隣など関わりがあったさまざまな人の思い出。 タイトルは葬儀の際の案内掲示のことば。 この本に導かれた読者も、亡くなった彼を思いつつ、自分や身内のあれこれに思いを重ねていける。 朝倉かすみの新境地。
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亡くなった夏目清茂について息子が、娘が、親戚が、孫が、歳の離れた友人が、その他故人と縁あった人達が、それぞれの想いと共に心の中で語る。 亡くなった故人を偲ぶというより、心温まるエピソードやとんでもない過去や、現在の自分の状況などみな思うことは自分のことに帰結する。 なのに、最後に...
亡くなった夏目清茂について息子が、娘が、親戚が、孫が、歳の離れた友人が、その他故人と縁あった人達が、それぞれの想いと共に心の中で語る。 亡くなった故人を偲ぶというより、心温まるエピソードやとんでもない過去や、現在の自分の状況などみな思うことは自分のことに帰結する。 なのに、最後にじわりとくる。 朝倉さんの文章の持つ魔法だな、と思った。
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中学を出てブリキ職人となった清茂は妻と別れ子供も所帯を持ち、 近所の若者たちの草野球の監督をしていた頃を思い出しながら 隣に住む光一郎とスナックで飲んでいるときに倒れた。 息子の直は妻の利律子と共に初めての喪主をなんとか務め、 娘の素子は直の友人である作家田上との不倫中に連絡を受...
中学を出てブリキ職人となった清茂は妻と別れ子供も所帯を持ち、 近所の若者たちの草野球の監督をしていた頃を思い出しながら 隣に住む光一郎とスナックで飲んでいるときに倒れた。 息子の直は妻の利律子と共に初めての喪主をなんとか務め、 娘の素子は直の友人である作家田上との不倫中に連絡を受けて、 甥の娘である香奈恵はまったく付き合いはないが一応顔を出し、 スナックのママであるふゆみは店をくれた男のことを思い出し、 素子の夫の幸彦は主婦になってから冷たくなった妻について考え、 光一郎は自分の中に甦る清茂と会話し、 野球チームに入っていたトッチは当時の試合に思いを馳せ、 直の娘の詩織はおじいちゃんの死を「さつばつ」だと感じ、 別れた妻のかず子もひっそりと参列するのだった。 装丁:大久保明子 装画と扉絵:後藤美月 平凡な男の葬式に参加する身内や知り合いたちの群像劇。 それぞれいろいろ思うところがあって、 ただただ悲しむ人や遠い親戚だから一応来た人、 離れた家族に会うのが気まずい人、 初めて接する身近な死に対して受け止める人。 誰でも自分の人生についての本が一冊書けるはずだと言うけれど、 まさにそんな感じの小説です。
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光一郎君がいてよかったなあ。 幸せってなんだろうなあ。 人を見下す描写がけっこう多い。 自分と置き換えておどおどする。
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初見なのに(そのはず)、なぜか一度読んだことある気がして妙な感じ。 よく同じ本を二度借りてしまうのですが、これは初めてのはずなのに… 内容はまあ普通。お葬式出すとき、うちもこんなだったなーって思い出しました。 個人の事情もそれぞれだろうなと 笑
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漱石には関係ないし,巡礼でもない~夏目清茂は道南の複雑な家に生まれ,中卒で札幌のブリキ屋の弟子になり,金物屋の取り立てから独立して,結婚もして,素子と直という子どもにも恵まれた。妻は子どもが仕上がる前に男を作って出ていった。娘に子どもは出来なかったが,息子には二人の娘ができて近く...
漱石には関係ないし,巡礼でもない~夏目清茂は道南の複雑な家に生まれ,中卒で札幌のブリキ屋の弟子になり,金物屋の取り立てから独立して,結婚もして,素子と直という子どもにも恵まれた。妻は子どもが仕上がる前に男を作って出ていった。娘に子どもは出来なかったが,息子には二人の娘ができて近くに住んでいる。スナックで娘の同級生と呑んでいて脳卒中で倒れ,息子は嫁と葬式の準備に追われるが,姉の方には連絡がとれない。娘は男を作って出ていった汚らしい母を嫌悪していたが,子どもができなかった自分も母と同じような行為をしている。初孫はおじいちゃんの語った言葉をノーに煮書き留めている。元妻は焼き場まで行く気がなかったのだが,炉の鍵を上着のポケットにしまう息子を見ていた~夏目とキヨと聞くと,坊ちゃんを心配する婆やだ。そういうことは全く関係なく,北海道の不幸な一家の物語。誰もが皆一様に不幸という訳でもない。霊柩バスって言うのは乗ったことがないなあ・・・最近の流行だろうか,北海道の名物だろうか。死んだ親しい人の葬式で皆自分の人生を振り返る。と書きながら死んだおじや伯母のことを思い出していた
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