ピスタチオ の商品レビュー
全体として描かれる世界の解像度が高く、安心して、まるで自分が本当にこの本の世界にいるかのように読めた。当初、創作をすることを躊躇っていた本編(序章)と最終章の関連性がよくわからず困惑したが、本編の中で主人公の中の「物語」への価値観が変移したということなのだろう。 しかしそれを於い...
全体として描かれる世界の解像度が高く、安心して、まるで自分が本当にこの本の世界にいるかのように読めた。当初、創作をすることを躊躇っていた本編(序章)と最終章の関連性がよくわからず困惑したが、本編の中で主人公の中の「物語」への価値観が変移したということなのだろう。 しかしそれを於いても、愛犬の病気や鴨の渡りなど、序盤に散りばめられたエピソードが、主人公の帰国後には一切触れられないのがよくわからず、味気なく感じてしまった。主人公の再度のアフリカへの道を開くための舞台装置なのだろうという理解はできるが、主人公の愛犬への気持ちや生き物への関心は、序盤で描かれる様子を見る限り真剣で繊細なものであるのに、終盤で全く触れられないために、もうどうでも良くなってしまっているのかと感じられてしまう。 また「物語」への価値観が変移したのだろうと書いたが、主人公のアフリカへの渡航が今回で2度目として設定されている理由もよくわからず、設定が生かしきれていないと感じる。今回(2度目)の渡航で特に印象的な経験をしたから価値観が変わったのだろうと推定することは可能だが、初回の渡航ではなく敢えて2度目としてその体験をさせた理由がよくわからないのである。 全体を通し読みやすく、世界の解像度が高いために情景描写なども詳細でまるで見てきたように感じられ素晴らしいが、ストーリー立てには疑問が多く、評価が難しい作品だった。
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思わぬ方向へと話が広がっていき、こんな物語だったのかと驚かされた。 棚の書いた物語も、棚の経験を基にしながらも、不思議で、壮大で、興味深かった。ピスタチオ、、、
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ピスタチオ 文章書きとしてのポジションを確立して過不足なく愛犬と暮らしている主人公の棚が、見えない糸に導かれるようにアフリカに取材に行くことに。犬の子宮に出来た腫瘍はアフリカの呪術に繋がり、古本屋で見つけた知り合いの著作は、知人の知人を介してアフリカのNGOで働く木を植える人に繋がる。アフリカで訪ねた呪術医は、ゲリラに連れ去られた双子の片割れと繋がり、行方不明の双子の片割れの探索は死者への物語に繋がる。 ここまで繋がるのは、いくらユングのシンクロニシティ理論をもってしてもおかしいだろうとは思いながら、案外気がつかないだけで、いろいろなところでいろいろな不思議な繋がりにこの世は満ちているのかもしれません。 最後の死者の物語を読み解くのが難しかったですが、本文中にあるように、死者に必要なのは、その人の生を納得できるような物語であるということさえ理解できれば、それで良いのかもしれません。 次作も期待してます。 竹蔵
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可愛い装丁に惹かれてジャケ借りしてきたので、まさか呪術医が出てくるなんて思わなかったよね…笑 かの有名な『西の魔女が死んだ』とは全く雰囲気が違うけど、ああそうだった、梨木香歩はこういう文章を書く人だったと思い出しながら読んだ マースの手術や気圧による頭痛とか、序盤の物語の核心に...
可愛い装丁に惹かれてジャケ借りしてきたので、まさか呪術医が出てくるなんて思わなかったよね…笑 かの有名な『西の魔女が死んだ』とは全く雰囲気が違うけど、ああそうだった、梨木香歩はこういう文章を書く人だったと思い出しながら読んだ マースの手術や気圧による頭痛とか、序盤の物語の核心に全く関係なさそうなところが最後の方でパタパタ回収されていくのは圧巻だった! 全部繋がって物語になってた! そう思うとサスペンスのような要素もある一冊だった気もする さら〜っと流し読みはできなくてちゃんと読み込んで頭で理解してからじゃないと進めないから読むの大変だったけど面白かったな〜
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「ピスタチオ」(梨木香歩)を読んだ。 読む前はアフリカの大地と梨木香歩さんの取り合わせってどうなんだろうと危惧していたのだが全くの杞憂だったよ。 私がこれまで読んできた梨木香歩作品に感じられたふわっと包みこんでくる湿度みたいなものがこの作品では少し乾いている気がした。 そのへ...
「ピスタチオ」(梨木香歩)を読んだ。 読む前はアフリカの大地と梨木香歩さんの取り合わせってどうなんだろうと危惧していたのだが全くの杞憂だったよ。 私がこれまで読んできた梨木香歩作品に感じられたふわっと包みこんでくる湿度みたいなものがこの作品では少し乾いている気がした。 そのへんが趣を異にしていると感じる所以か。 でもやっぱり間違いなく梨木香歩さんだけが紡ぎ出せる物語だったよ。 印象的なところを引用 『死者には、それを抱いて眠るための物語が必要』 『その人の人生に降った雨滴や吹いた風を受け止めるだけの、深い襞を持った物語が。』 (共に本文より)
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時々、無性にこの作家さんの本を読みたくなる。 何か、魂が欲している? アフリカは人類発祥の地であり、 自然、生き物とのつながりが深い。 日本もまた自然の中に神をあがめる国。 低気圧の影響で頭痛がしたり、愛犬マースの子宮に腫瘍が出来たり、アフリカで出会った呪術師との関わりが、最...
時々、無性にこの作家さんの本を読みたくなる。 何か、魂が欲している? アフリカは人類発祥の地であり、 自然、生き物とのつながりが深い。 日本もまた自然の中に神をあがめる国。 低気圧の影響で頭痛がしたり、愛犬マースの子宮に腫瘍が出来たり、アフリカで出会った呪術師との関わりが、最後に全て結びつく。 大人が楽しめる、ファンタジーの世界。 洪水が起きるのは地球が水分調整をしているから、 は、なるほどと思う。 地球は生きている。 その地球の皮膚の上で寄生している生き物たち。 ピスタチオのストーリーがこの本のすべてを締めくくっている。 今日、思わず、ピスタチオカラーのバッグを買ってしまったw
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ずっと気になっていた本。 かなり後の方まで「それで何がどうピスタチオ?」と思っていたけど、なるほどね、という感じ。 全体になんとも不思議な話。 呪術とか神話のようなものが、現実の生活の中に根付いている文化。 多くはタネがあるということ、原地の人の感覚の違いなど、神秘的に美化しすぎないのは良い。 もう少しアフリカンアートなどの描写があっても良さそうだけど、そこにしばらく暮らした棚が、そういうものにかぶれなかったのだから、理にかなっているのかも。 しっくりこなかったのは、“パートナー“である鐘ニについて、人となりも棚との関係性も描写が薄い感じで、三原や片山でなく、なぜ鐘ニがパートナーであるのか、という点。 何と言っても、マースが死ななくて良かった(そこか)。
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初見、4年前、6年前と3回読み返している。 6年前、読後に色々blogを漁ってレビューを読んでたら、作家になる前の時期、河合隼雄のところで助手のようなことをしてたんだという。 合点がいきすぎる。 だからこんなに心理描写が細かいのに、なんだか客観的でクールなのかー。 自分の作品は「フラクタル構造をしている」とインタビューで言っていたそうな。 これもほんと「ピスタチオ」読んでそう思ってたとこ。(入れ子構造だと感じてたけどまぁ似たようなもんだ) 愛犬の病気、近くの公園の川の増水、渡りを諦めてはぐれたオナガガモ、ウガンダへ導かれた後も、日本でのこととウガンダのこと、繋がって震える糸がどんどん束ねられて、最後の物語に収束されるのは見事だった。 よくこの分量で書ききれたなぁ、という圧縮具合。 アフリカで呪術となると、中島らもの「ガダラの豚」を思い出して仕方ない。あちらはちょっと怖いから、読み返すのはためらう。 4年前の読み返し。 今回の気付きは「双子」の入れ子。 ナカトとババイレ、片山とジンナジュ、棚とマース 双子や死んだものや何か自分とは別であったもの、が変化して自分に大事なメッセージを伝えにくる。という話が繰り返されている。ピスタチオの話の鳥と人間はジンナジュと人間みたいだし。 ピスタチオの話の鳥を食べた人の疫病は三原の病なんだなー。肉体的な死より前に、社会的に葬り去られる。道徳的な蔑みも受ける。そっと入れ込んである。 ピスタチオの話はナカトの為の物語なのかな。片山も死者だけど片山の為の物語ではない。片山が残した仕事を棚がピスタチオの話をもって仕上げたんだしなー。
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偶然なのか、それとも必然なのか。 一つ一つ繋がっていく不思議な話。 最後にやっと出てきたピスタチオ。 なるほどね。
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美しい“グリーン“を描いた爽やかな表紙。ハーブのようは清涼飲料水のような梨木香歩さんの文章。 主人公のジャーナリスト“棚“は、若い頃、アフリカにいたことがあり、今は東京で犬のマースと暮らしていた。ある日、マースの子宮に悪性ではないが大きな瘤のようなものが出来ていて、苦しめているこ...
美しい“グリーン“を描いた爽やかな表紙。ハーブのようは清涼飲料水のような梨木香歩さんの文章。 主人公のジャーナリスト“棚“は、若い頃、アフリカにいたことがあり、今は東京で犬のマースと暮らしていた。ある日、マースの子宮に悪性ではないが大きな瘤のようなものが出来ていて、苦しめていることが分かり、手術をするのだが、その病気の犬への“ペットに対する飼い主“目線ではなく、親子でもない、友達でもない“同士“のような目線の愛情が普通の血縁とは違う別の温かい血を分け合った愛情のようで心地よい。 マースとの散歩の途中で、いつも通る公園。池に何種類かの鳥がいて、“渡り“の季節にある時集団で一つの種類がいなくなっている様子を見守る。なんらかの理由で、仲間たちの“渡り“に同行できなかった、一羽二羽が、他の種類の鳥たちの仲間に入って暮らしている様子を見守る。生き物というものはどういう形であれ、“群れて“生きることが本能であると考えながら。 ある日、マースの診察を待つ間に、昔アフリカで知り合った人が書いたアフリカの呪術医療についての本を見つけた。その本の中にマースの症状に似た“ダバ“という症状を見つけ興味を持つ。そして、その本の筆者が既に亡くなっていることを知り、筆者の足跡を辿ることも含めて、危険なアフリカ旅行をする。旅の途中で、その筆者(片山海里)だけでなく、そのアシスタント的な人物二人も最近不可解な死に方をしていたことを知る。 呪術医に関わるということは、自分の身に危険を及ぼすことでもある。危険を感じながらも棚はアフリカの深淵を旅していく。 人間も動物も逞しいアフリカ。感情表現がむき出しのアフリカ。旱魃か洪水かという極端な気候のアフリカ。そして、呪術などという怪しいものに未だに医術を頼るアフリカ。 棚は、片山海里の足跡を辿る途中で、ナカトという女性に合い、彼女は子供の頃にゲリラに連れ去られてしまった双子の姉を探していて、片山海里の呪術医としての最初のクライアントだったと話す。そして、海里が亡くなる前、ナカトに「“みどり“という女性がババイレ(双子の姉)を見つけてくれる」と言っていたことを棚に打ち明けた。棚の本名は(翠)。不思議な運命に恐ろしさを感じながらも、受け入れるしか無い棚。そして、棚はナカトとババイレを再会させた。ババイレは人間ではなく、“木“となっていたが。 自然の深淵には自然の感情が渦巻いていて恐ろしい。いや、恐ろしいだけか?誰かが死んだら悲しいのは都会の文明社会でも、より自然が剥き出しのアフリカのような所でも同じなのだ。そんな時、都会の文明社会では死者を厳かにあの世に送り出した後、残ったものはなるべく早く前を向いて、歩き始める努力をするように思う。棚の訪れたアフリカの奥地はちがう。生きているものの魂、死んでいるものの魂、木の魂、鳥の魂…がそれらすべてを守る水や空で繋がり…。 棚の「生まれ変わったら木になりたい」という子供のころの希望は、なんてナチュラルで謙虚なのだろうと思った。この本を読んで、「努力すれば不可能なことはない」とか、そういう「成功者」の座右の銘みたいなことばが、自然という“神“に対する身の程知らずなことばだと感じた。 棚が日本に帰国してから書いた物語の中の“ピスタチオ“は“鳥検番“として慎ましやかにその命を全うした。 「ピスタチオ、お前が,この世でしたことは、人がこの世で出来ることで、一番ましなことだったよ。お前の命は正しく巡っていく」木になったピスタチオを撫でながら、母親は優しく言った。
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