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ばかもの の商品レビュー

3.6

90件のお客様レビュー

  1. 5つ

    11

  2. 4つ

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  3. 3つ

    26

  4. 2つ

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2012/12/29

主人公であるヒデは確かに「ばかもの」だ。でもしかし、多くの人がこのヒデという人物と遠くない所にいるのではないか、「ヒデ的」な要素を多かれ少なかれ持っているのではないか、とそんな気がするのである。 ヒデは彼女を、そして友人を裏切ったことで、または新興宗教という形で、とにかくヒデの周...

主人公であるヒデは確かに「ばかもの」だ。でもしかし、多くの人がこのヒデという人物と遠くない所にいるのではないか、「ヒデ的」な要素を多かれ少なかれ持っているのではないか、とそんな気がするのである。 ヒデは彼女を、そして友人を裏切ったことで、または新興宗教という形で、とにかくヒデの周りからは幾人のヒトが去って行った。けれども一方で残ってくれた人、つまりおばやんや額子がいて、ヒデはなんとか「社会的な死」から踏みとどまる。ヒデに対する思いだけでなく、ヒデがネユキに向ける眼差しも含めて、小説の中の人々のはちゃめちゃな行動の奥底で流れるヒトとヒトとの優しさ、温もりみたいなものが、単なる恋愛小説とは一線を画する部分だと思う。ヒデにとっての「想像上の人物」とは、それを具現化したものなのかな、とも思う。 p170の額子が古文を勉強しようとする箇所が好き。理由は分からないけれど。

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2012/08/29

この本に出てくる「想像上の人物」は、『海の仙人』の「ファンタジー」と同じようなものなんだろうかなあ。 絲山作品を読んでいると、ああ、この人は、ずっと昔から私の中に存在しているけれど言葉にすることのできなかった思考や感情や曖昧でもやっとした何かを、文字にして言葉にして文章にして物語...

この本に出てくる「想像上の人物」は、『海の仙人』の「ファンタジー」と同じようなものなんだろうかなあ。 絲山作品を読んでいると、ああ、この人は、ずっと昔から私の中に存在しているけれど言葉にすることのできなかった思考や感情や曖昧でもやっとした何かを、文字にして言葉にして文章にして物語を紡いでくれている、と感じる瞬間が往々にしてあるのだけど、この本ではヒデの抱えていた「やり場のない思い」にやられた。 常に何をやっても、何をしてても、この「やり場のない思い」から逃れることができない。それは決して愉快なことじゃないし、時には精神そのものが蝕まれてしまう。 ヒデは新しい額子に出会うことによって、額子と共に生きると決めたことによってこの「やり場のない思い」から逃れることができたのだろうか。だとしたら、額子はヒデにとって、最高の「ばかもの」に違いないのだ。

Posted byブクログ

2012/08/07

いろんな意味で昔とは違ってしまった2人の、昔とは違う穏やかな関係が心地よい。額子の激しさは前とは違う形だけど、ちゃんとそこにあってヒデを救う。最後の「ばかもの」と言うセリフが軽妙に響きます。

Posted byブクログ

2012/07/31

馬鹿者の物語。馬鹿者を馬鹿者たらしめる出来事が畳み掛けるように出来湧く。どうしようもない馬鹿者だが、大事なラインは超えない。すんでのところで踏みとどまる。ほんわか温かく救われる。

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2012/06/28

怖いなー。弱い自分が一番怖い。 アル中で、大事なもの失ってって堕ちてって、、、。 でも、なんだか最後に元気がもらえるような。 作者、女性だと思うんだけど文体が男っぽいせいか、吹っ切れてる感じ。

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2012/04/19

どの本においてもものすごく個人の感想ですので、偏った文章と化します。 文章の美しいと思った作品は、これが初めて。 絲山秋子の本は、文学に分類するそうだが(僕はあまり文学がどーのこーのって、よく分からないし、よく広く知られた文学はあまり好きではない)、 僕がいわゆる純文学?でよく...

どの本においてもものすごく個人の感想ですので、偏った文章と化します。 文章の美しいと思った作品は、これが初めて。 絲山秋子の本は、文学に分類するそうだが(僕はあまり文学がどーのこーのって、よく分からないし、よく広く知られた文学はあまり好きではない)、 僕がいわゆる純文学?でよく感じる窮屈さは、ない。 絲山秋子の中でストーリーテンポを楽しむなら、「逃亡くそたわけ」「沖で待つ」がオススメ。 文を楽しむのなら「ラジアンドピース」かな

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2012/04/16

最初からああいう描写で始まるので、 この小説いったい何の話?と思ったけど・・・ ばかものすぎて後半は笑えました。

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2012/04/08

どういう物語か全くわからぬまま手探りで読み進めていった。 改行が多く、一文が短いのであっという間に読了。 ただのラブストーリーかと思いきや、主人公の堕ちてゆく様に心が痛んだ。 自覚している欠陥や、それ故にどうすることもできない苦しみが、そこまで複雑な描写でもないのにすごく緻...

どういう物語か全くわからぬまま手探りで読み進めていった。 改行が多く、一文が短いのであっという間に読了。 ただのラブストーリーかと思いきや、主人公の堕ちてゆく様に心が痛んだ。 自覚している欠陥や、それ故にどうすることもできない苦しみが、そこまで複雑な描写でもないのにすごく緻密に伝わってきて驚き。 額子の強烈なキャラクターは、逆に感情移入の隙を与えてこないので、観察に集中できた。 加藤や翔子のことなど、決して綺麗に上手くはいかないところも納得の収まり方。 病気の克服より、そこからの再起の方が何倍も困難なことがよく分かった。 新しい肌触りの読書。たのしかった。 額子の母にあたるおばちゃんがいい味出してた。 最後が救われるものでよかった。

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2012/08/14

大学生のヒデは、バイト先で声をかけられた年上の額子とのセックスに溺れ、怠惰な日々。しかし突然、結婚を決意した額子に悲惨な振られ方をする。その後、卒業、就職、新しい彼女との出会い…と何とか人並みな生活を送っているかのように見えたが、いつしかアルコール依存症になり…。 ヒデの上昇、転...

大学生のヒデは、バイト先で声をかけられた年上の額子とのセックスに溺れ、怠惰な日々。しかし突然、結婚を決意した額子に悲惨な振られ方をする。その後、卒業、就職、新しい彼女との出会い…と何とか人並みな生活を送っているかのように見えたが、いつしかアルコール依存症になり…。 ヒデの上昇、転落、停滞、葛藤…などのすべてが一人称ゆえに手に取るように、空恐ろしいほどダイレクトに伝わってくる。特にアルコールに溺れていく過程などはリアル過ぎ。 最悪の状態の時に、まるで幻のように現れた額子の母(額子がいきなり出てくるのではないのがまたイキである)との再会をきっかけに、額子ともやがて再会を果たすのがとても流れとして自然で、片品の風景とともに味のあるラストになっている。

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2012/03/04

こんな結末もいわゆる「ご縁」というものなんだろうな・・・と思ったお話でした。 途中、主人公のダメっぷりにはかなりイライラさせられました(笑) ですが、そうやって情けなることで感情を表出していたんだと思っています。 小説として面白かったです。 身の回りにこんな主人公いたら嫌だと...

こんな結末もいわゆる「ご縁」というものなんだろうな・・・と思ったお話でした。 途中、主人公のダメっぷりにはかなりイライラさせられました(笑) ですが、そうやって情けなることで感情を表出していたんだと思っています。 小説として面白かったです。 身の回りにこんな主人公いたら嫌だと思ったけど。

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