あなたに贈る× の商品レビュー

近藤史恵【作】

2011/01/23

致死率100％の伝染病にかかって死んでしまった憧れの先輩。
その死の真相を知るために主人公は立ち上がる。
テンポがよく、読みやすかった。

2011/07/16

ヤングアダルト向けのミステリYAシリーズの作品。想像もつかない恐ろしい死の感染症が蔓延するょっと未来の、とある学園を舞台にしたミステリ話。しっかりとした構成で、最後の最後まで謎を引っ張って行ってくれる。架空の状況設定の中で、事実を積み上げながら読み手と共に真相を追及していく面白さ。安直ながら、意外な登場人物たちの絡み合いも、推理をかく乱させる。現代のＩＴ技術の延長にあるそうであろう未来の姿を紹介しながら、作り上げた感染症の感染メカニズムを利用した予想外の結末に、、、なるほどと満足。

2011/01/05

感染から数週間で死に至るウイルスの感染ルートは、唇を合わせること−。
その行為が危険で不埒なものになってしまった世界・・
全寮制の高校でひとりのうつくしい女子生徒がその感染により死亡した。彼女を死にいたらしめた相手は誰なのか・・・
彼女を慕っていた主人公の犯人探しがはじまる・・・・・

近藤史恵さんの新刊・・・にしてはなんとも甘い装丁に路線変更？？と思ってしまいましたが・・いやいや・・
やはり近藤さん。装丁はキュート・・舞台は美しきミステリアスな男女がうんぬん・・な全寮制の高校・・中身は・・・？
期待を裏切らない真相・・そして残酷なラスト・・
キスが凶器になる世界ってこわいけど、絵空事じゃない時代がくるかも・・・なんて思います。

2011/01/01

もともと場を作るのがうまい人だなと思っていたけれど今回もまたすごい。
今から18年先の世界が舞台。2013年に発見されたキスのみによって感染する致死率100%の病気のせいで、キスが禁じられている。

わずか15年でキスを禁忌とし、汚らわしい、いやらしい、淫らな……というイメージを植えつけることに成功している。そしてキスをさせないため、映画小説マンガ……全ての表現からキスが消えた。古い映画などもそこはカットされている。

東京都青少年健全育成条例を思い出す。こうやってさまざまな表現を規制することで簡単に意識を変えてゆけるのだな、と。

ヤングアダルト向けに書かれたこの本はいくつかの問題提起をしている。一般向けに書かれていればそこら辺が語られたのかも知れないが、書かないこともアリなんだな、と思った。

全寮制で、共学であるにもかかわらず少々百合っぽい雰囲気が漂う。今の感覚からするととても不自然に感じるのだけれどこの世界ではそれが自然なことになっている。それを納得させる設定がまたすごいと感じる。

この本は2011年に別の出版社から後日談を加えて発行されるとのこと。「理論社から出た『あなたに贈るＸ』は作者、編集者、デザイナー、イラストレーターすべてが報酬を受け取っていない」(著者ツイッターより）ので、新しい本を購入しようと思う。

2010/12/18

登場人物がいちいち好み。
なんとなく展開が把握出来たけど
そこを含めて好きなタイプのお話でした。
終わりかたも何とも好き。

2010/11/10

真相は巧みに隠され、読んでいても右へ左へと作者に揺さぶられ続けているような感覚でした。若年者向けの「ミステリーYA！」ということなので、こういうミステリもあるんだよという例になればいいと思います。そして、できることならば若年層だけの読みものにはしたくないなあとも。

2010/11/07

内容紹介
感染から数週間で確実に死に至る、その驚異的なウィルスの感染ルートはただひとつ、唇を合わせること。昔は愛情を示すとされてその行為は禁じられ、封印されたはずだった………。　　　全寮制の学園リセ・アルビュスである日、一人の女生徒が亡くなった。人気者の彼女の死は学園に衝撃を与えた。さらに、死因が禁断の病によるものだとの噂が。誰が彼女を死に至らせたのか？　不安と疑いが増殖する中、学園内での犯人探しが始まった。甘やかで残酷な少女たちの世界を鮮烈に描く。

2010/10/23

奇妙な感染病がはびこる時代、閉塞的な学園生活を過ごす
思春期の少女たちの間だからこそ起きた事件だったと思う。
ラストは翻弄されるままだった少女が、女としての本性を
見せたなという気持ちよさがあった。

2010/10/22

“たとえるのなら、織恵は水みたいだった。
冷たくて澄んでいて、氷ほど人を激しく拒絶するわけではない。
最初はその冷たさに身震いしても、次第に触れていることが心地よくなっていく。包まれていたくなる。
美詩は織恵のことが大好きだったけど、織恵の心の奥底を覗きこんだことはない。立ち入ったことを聞いて嫌われるのも怖かったし、今、彼女が目の前にいるだけでいいと思っていた。
夜中に目が覚めて、サロンに下りていくと、ときどき織恵がいて、短い時間を一緒に過ごした。
あのときは織恵のそばにいられるだけでうれしかったけど、今になって思う。
もし、織恵のことをもっと知ろうとしていたら、なにかが違ったのだろうか。
先生の噂話や音楽の話ばかりではなく、織恵がなにを考えているのか、どんな悩みがあるのか、積極的に知ろうとしていれば、織恵に対する印象も違っていたかもしれない。
あのときは、まだ時間があると思いこんでいた。
織恵は自分のことはほとんど喋ろうとしなかったけれど、もし美詩が尋ねれば、教えてくれただろうか。
強引に彼女の心を覗き見しようとすれば、嫌われたのか、それとももっと仲良くなれたのか。
どちらにせよ、すべてがもう遅すぎるのだけど。”

唇同士の接触、いわゆるキスで感染する致死率100%の病気が発見されて十五年。
接吻が法律で禁止され、その行為は淫らなものであると認識され嫌悪される世の中。
全寮制の学校で、一人の女子生徒が亡くなった。
その原因と噂されたのは、ソムノスフォビア。――つまりは、キスによって感染する病気だった。

どうして彼女は亡くなったのか。
誰が彼女を殺したのか。
主人公の美詩がキスに対する考えというか見方を変えていくところが良かった。
噂や話だけじゃなくて、本当に実際に触れ合ってそのものの素敵さを知るという。
驚愕を隠せない事件の真相は、美しく透き通った儚く繊細な果実のようで。
最後の最後に、虫が喰ったような黒い穴が顔を見せた。

“「そうよ、もう殺されたも同然だわ。たった十五年ほど前まで、キスは愛情の証だった。映画でも小説でもマンガでも大切な場面だったのに、切り刻まれて隠されて、まるでなかったように扱われてるの。薄汚いものみたいに」
「でも、それは……仕方がないでしょう」
キスによって感染する死に至る病。それを防ぐためなら、ある程度は仕方がないことだ。美詩はそう思う。
りらのVEに入っていた動画を見たせいで、美詩もキスをきれいだと思ってしまった。美詩は怖がりだから、危険なことをしようとは思わないが、それでも惹かれてしまったことには変わりはない。中には軽く、禁忌に足を踏み入れてしまう人もいるだろう。
だが、りらはまなじりをつり上げた。
「この先、ワクチンや治療法が見つかって、ソムノスフォビアがそう怖い病気じゃなくなったとしたら？昔は恐れられた病が簡単に治る病になることはよくあることだわ」
癌だって以前は恐ろしい病だと思われていた。今はワクチンがあるから、発生率自体が激減しているし、もし発症しても癌と共存しながら長生きすることができる。
「それは……」
「そうなっても、一度殺されたものはもう生き返らない。今の若い人たちは、みんなキスを汚いことだと信じている。たぶん、もう映画の中でキスが美しく描写されることもない。キスは殺されたの。人間の手によって」”

2010/10/16

感染から数週間で確実に死に至る、その驚異的なウイルスの感染ルートはただひとつ、唇を合わせること。昔は愛情を示すとされたその行為は禁じられ、封印されたはずだった。外界から隔絶され、純潔を尊ぶ全寮制の学園、リセ・アルピュス。一人の女生徒の死をきっかけに、不穏な噂がささやかれはじめる。彼女の死は、あの病によるものらしい、と。学園は静かな衝撃に包まれた。不安と疑いが増殖する中、風変わりな犯人探しが始まった…。