西巷説百物語 の商品レビュー
他シリーズ同様面白い。構成的に仕掛けられる人が誰なのかわかるけど、読んでいくうちにどんどん歪さが明かされていってゾクゾクする。仕掛け後の種明かしを堪能できるのも面白い。百介さん出てきた時は歓喜した!
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今回は上方で林蔵が仕掛ける仕事の話。どれも寂しく哀しい話ですが、救いのある話もあり。最後は林蔵と又市が上方を落ちるきっかけになった出来事を16年越しで暴きだし、悲しい解決をつけます。このシリーズは本当に複雑に絡み合っているので、何度でも読み返して時系列や人物を確認したくなります…。
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シリーズではちょい役だった上方の林蔵たちが中心の物語だが、シリーズ主人公の又市、百介まで登場は嬉しい(*´∇`*) 畳みかけるような(きっと前のめりの早口の)百介のしゃべり方も懐かしかった。 月の魔性、供養を怠って発狂、夜の楽屋での浄瑠璃人形同士の争い…などなど、巷説の妖怪譚も...
シリーズではちょい役だった上方の林蔵たちが中心の物語だが、シリーズ主人公の又市、百介まで登場は嬉しい(*´∇`*) 畳みかけるような(きっと前のめりの早口の)百介のしゃべり方も懐かしかった。 月の魔性、供養を怠って発狂、夜の楽屋での浄瑠璃人形同士の争い…などなど、巷説の妖怪譚も深い事情があった。 妖怪を使って相手を揺さぶった後、現実に引き戻して逃げられない状況へと追い込み、そして責任を追わせる。妖怪には妖怪の、鬼には鬼になった事情があるというものの。 「今際の際に、親族に有り難うと言えなんだ、その一言のために人は迷う」
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目次 ・桂男 ・遺言幽霊 水乞幽霊 ・鍛冶が嬶(かか) ・夜楽屋(よるのがくや) ・溝出(みぞいだし) ・豆狸 ・野狐 小股潜りの又市の朋輩、靄船の林蔵が通しの主人公。 舞台は大坂。 愛する女のために成す非道に気付かぬ業、自らの行った罪をすっかり忘れてしまえる無情。 それが怖くて。恐ろしくて。 又市と林蔵の一番の違いは、終わった後の態度。 又市は、事件に関わ多人のその後を最後まで気に掛けるが、林蔵は、終わった後のことを気にしない。 それは若かりし頃、又市に思いを寄せつつ林蔵と付き合うことになり命を喪ったおちかに対する態度の違いでわかっていたことだ。 自分の命を守るため江戸から逃げた林蔵と、命を賭けて江戸にとどまった又市。 所詮妖の話なので、結末がもやもやしようとかまわない。 話として矛盾がなければ、それもひとつの作品のあり方だとは思う。 ただ、私は又市のような、ひょうひょうとしていながら無情ではない、そういう人が好きなのだ。 だから最後の事件、又市と林蔵がタッグを組んだ大仕掛けは、満足をさせてもらった。 やはり私は又市が好きなのだ。 「豆狸」はハッピーエンドだったけれども、ここで終わっていたらやはり物足りなく感じていたのではないかと思う。
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長く続いているこのシリーズは、実はあんまり好きではなかったんだけど、この西版は上手にまとまっているな…と思いました。 人間、どんなに良い人に思われていても、やっぱり心に闇はあるわけで…。 闇のない「良い人」なんて、場合によっては単なる内面的キャパの狭いおバカさんだったりするしね...
長く続いているこのシリーズは、実はあんまり好きではなかったんだけど、この西版は上手にまとまっているな…と思いました。 人間、どんなに良い人に思われていても、やっぱり心に闇はあるわけで…。 闇のない「良い人」なんて、場合によっては単なる内面的キャパの狭いおバカさんだったりするしね。 人によっては世間の尺度からすると「かなり」悪いことをしてきても、そこから目をそらして平気で生きようと自分を欺瞞して暮らしているのだねぇ…。 で、そんな自己欺瞞によって満ち足りない暮らしをしている方々が外側の皮を剥かれ、自分が自分と対峙せざるを得ない状況になったとき、人はけっこう自ら死を選ぶのだな…と思いました。 でも、自己欺瞞から不満な日々を送り、そのまま死ぬのとどっちがいいんだろ? いろいろ深いお話ばかりだったよ。
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今回の巷説は上方が舞台で以前も出てきた靄船の林蔵がメインとなると聞き、はてメインとなるような人物だったかなと思いましたが、するりと人の懐に入ってくる存在感があるのだかないのだかというのが魅力に思えました。 これはミステリでいうところの「倒叙もの」の手法ですね。犯人側の視点で物語が...
今回の巷説は上方が舞台で以前も出てきた靄船の林蔵がメインとなると聞き、はてメインとなるような人物だったかなと思いましたが、するりと人の懐に入ってくる存在感があるのだかないのだかというのが魅力に思えました。 これはミステリでいうところの「倒叙もの」の手法ですね。犯人側の視点で物語が紡がれる。犯人というとしっくりと来ないものもありますが、犯人やら加害者が事件や世間や社会や人々をどう見ているのかが描かれています。 その視点は悪党のものであったり下衆のものだったりもしますし、世間とのズレに気付かなかった故の悲劇であったりもします。その事を起こしてしまった側の理屈や視点と世間の視点を繋ぐものとして怪異や妖怪があるのでしょう。あちら側に行ってしまった人の前に己の姿を映す鏡として妖怪が現れ、それでいいのか、こちら側に戻って来いと問いかける。そんな物語構造が美しいのです。 そしてこれはある種のキャラクター小説なのでしょうね。それぞれ得意技をもった人々がチームを組んでプロジェクトに取り組む。その痛快さも楽しみました。
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巷説百物語シリーズ又市の義兄弟である靄船の林蔵含む上方一派の話。 又市やおぎんさんの江戸訛りが少ないのは寂しいが、林蔵たちの見せる仕掛けは又市たちと引けを取らない。又市とは仕掛けのアプローチの仕方は違うが、実に鮮やかである。 最終話「野狐」は又市、百介の友情出演で又市と林蔵の共同...
巷説百物語シリーズ又市の義兄弟である靄船の林蔵含む上方一派の話。 又市やおぎんさんの江戸訛りが少ないのは寂しいが、林蔵たちの見せる仕掛けは又市たちと引けを取らない。又市とは仕掛けのアプローチの仕方は違うが、実に鮮やかである。 最終話「野狐」は又市、百介の友情出演で又市と林蔵の共同仕掛け。 野狐は林蔵の過去につながる話で、結局は彼の心に傷を残したまま終わる。 又市の「林蔵、お前大丈夫だろうな?」という台詞が胸に残った。
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実は我が家の本棚には、特別なハードカバー・西巷説百物語がおいてある。 精神的に特別だというわけではない。物理的な話だ。京極夏彦先生のサイン入りなのだ。 自慢かと思われる方も多いだろう。 自慢なのである。 我が家の数少ない家宝である。 もしこの本を汚すような輩が現れれば、そいつは金...
実は我が家の本棚には、特別なハードカバー・西巷説百物語がおいてある。 精神的に特別だというわけではない。物理的な話だ。京極夏彦先生のサイン入りなのだ。 自慢かと思われる方も多いだろう。 自慢なのである。 我が家の数少ない家宝である。 もしこの本を汚すような輩が現れれば、そいつは金属バットを構えた私と遭遇することになるだろう。 どうして私なんぞがそんなものを持っているかというと、とあるご縁でサインをもらうという僥倖に行き会ったことがあるのだ。 かねてより大ファンだったワタクシはテンションが振り切れた状態で、真新しい西巷説百物語を購入し、サインをいただいた。 そんなきっかけで購入した本ではあるものの、内容もこれまた安定の面白さであった。 今回はシリーズ主役又市の縁者・林蔵が主役だ。番外編という扱いになると思う。 中でも鍛冶が嬶が一番好きだ。
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京極夏彦氏が林蔵という仕舞人というか仕事人とでも呼べばいいのか、彼に持ち込まれる厄介な問題を人が持つこの世の物ではない物達への恐れを巧く利用して人の心のそこにある嘘を暴きだし解決へと持って行くというお話7編を集めた小説『西巷説百物語』を読了。彼が事がすべて済んだときに一言残す『これで終いの金比羅さんや』という締めの言葉が妙に格好よいので、WOWWOWあたりで是非ドラマ化してもらいたいものだ。京極夏彦作品は余り読まないのだが、昔の日本の人々の暮らしや文化、習わしなどがきちんとリサーチされている感じがするのは少ないが今まで読んだ作品に共通している。いい編集者がついているのか、いいチームがいるのか。西というタイトルがついているところを見ると東ではないにしても関連する小説がありそうなので探してみよう。クールな江戸の仕事人のお話なかなかでした。
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前巷説百物語で謎を残していた、「西のねずみ」にまつわる物語。 前巷説での林蔵さんは、格好いいイメージが残っていなかったのですが、関東版とは違った小又潜りもとい、靄船の操り方で、夢と現が逆転するのかしないのか、どっちなんだという緊張感の中で読み進めました。 最後の、又市さん・百介さ...
前巷説百物語で謎を残していた、「西のねずみ」にまつわる物語。 前巷説での林蔵さんは、格好いいイメージが残っていなかったのですが、関東版とは違った小又潜りもとい、靄船の操り方で、夢と現が逆転するのかしないのか、どっちなんだという緊張感の中で読み進めました。 最後の、又市さん・百介さん登場にも、うれしい誤算。 数年、十年あけてもよいから、巷説シリーズの続き出てくれないでしょうかね。
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