民の見えざる手 の商品レビュー
巷には多くの日本経済を解説した本が出ていますが、技術者出身でコンサルタントを長年勤めてきた大前氏による解説はひと味違うと思います。 日本以外についての経済動向に触れられていますが、現地取材を基にした(と私は思っています)内容は、日本以外を担当している私にとっても参考になります...
巷には多くの日本経済を解説した本が出ていますが、技術者出身でコンサルタントを長年勤めてきた大前氏による解説はひと味違うと思います。 日本以外についての経済動向に触れられていますが、現地取材を基にした(と私は思っています)内容は、日本以外を担当している私にとっても参考になります。 小泉氏が進めてきた規制緩和の流れが、首相が変わるたびに、その勢いが弱くなってきて逆流し始めている感もありますが、どんな理由があるにせよ、10年以上に渡って税収のベースとなる名目GDPが増えていないのは変だと思いますので、日本が本当に元気を取り戻して欲しいと思いました。 以下は気になったポイントです。 ・アメリカは年金不足で貯蓄する人が増えたため、貯蓄率は1%前後から5%にまで急増、金額にして40兆円ものお金が市場から消えて貯蓄に回っている(p16) ・リーマンショックから立ち直るための術を教えた経済学者はおらず、マクロ経済学者は未来を予測できない、それは限られた条件下での閉鎖的な理論だから(p20) ・外資の傘下に入ったイギリス企業の中でも、外国人経営者が無理な経営を押し付けた企業は失敗し、イギリス人の社員が中心になって立て直した企業のみ生き残った(p24) ・日本における新車への買い替え促進策は、「登録から13年以上を廃車にして、2010年燃費基準の新車に買い換えた場合」という条件つきである、登録13年以上の車は全体の1割程度(p52) ・消費者の間に所得差が広がったというよりも、一人ひとりの消費シーンにおいて、中間がなくなって、高級と格安の二極化が進んでいる(p55) ・日本の標準家庭は、すべての年代において単身世帯となった、ところが大半のスーパーはいまだに「夫婦と子供から成る世帯」を前提として商品を売っている(p68) ・毎日買うような商品は値引きすればありがたみが浸透するが、購買サイクルが数年以上のものは、本当によいものを妥当な値段で提供して満足度を高めるべき(p70) ・価値を変えずに価格を下げても商品は売れない、価値を変えれば価格を下げなくても売れる(p72) ・認知された価値を維持するためには、デザイン・物語・調和・共感・遊び心・生きがい、という6つの右脳型センスを刺激すべき(p76) ・ファッションのネット通販サイト「ZOZOTOWN」は、CGを駆使してリアル店舗に行ったような感覚でお客が買い物を楽しめる(p84)・「超一品.com」は、一日一品しか売らない、価格は割安だが選りすぐりの物を推奨してくる(p90) ・中国は内需主導の第2ステージに入ったが、外国企業は中国国内にしっかりと根を下ろす形では入っていない、沿岸くの保税区に進出して、部品や機械を持ち込み労働者を使って生産して輸出していただけ、人材育成をしている「加ト吉」の例あり(p106、113) ・中国は田舎に7億人もの労働者がいるものの、タイ・ベトナム等のASEAN諸国のほうが労働コストで優位になった、10年間で賃金あがらず現地通貨が下がったから(p115) ・インドネシアのユドノヨ大統領は、官僚の給料を一気に3倍に上げて、官僚の腐敗を少なくした(p116) ・核兵器のウランはもともと濃縮度が高いので、MOX燃料に再利用するには最適、その埋蔵量は100年以上はある(p126) ・増税せずに日本の民間のお金だけで日本経済を立て直すことは可能だが、それは自民党を支えてきた官僚組織の権益を奪うことになるので、自民党はしてこなかった(p160) ・今まで封印されてきた「市街化調整区域」「湾岸部」「容積率」の3つが、国民にグッドライフを届けるという目的に対する戦略的自由度である(p169) ・韓国の好調は今後10年も続かない、韓国産業はコツコツと積み上げた領域が殆ど無く、衰退したアメリカの産業と同じ体質がある、さらに少子化は1,19で日本より小さい(p182) ・ビジネスウィークによれば、アメリカの就職率は、24%、日本:91%、中国:70%、イギリス:15%である(p193) ・生産性を向上させてきた企業は、要員を考える場合、整数論ではなく、少数論でやってきた、例として、ある仕事を20人でやっていたものを12人でするにはどうすれば良いか(p206) ・アウトドアとインドア、そして海外という3つのカテゴリーで、自分一人でできること、仲間を募ってやることを織りまぜて、自分が楽しいと思える趣味を持つことが大事(p225) ・向上心を持ち続けるには、自分なりの目標を少し高めに設定して、それを達成しようとすることが重要(p226) 2011/1/10作成
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大前研一著「民の見えざる手」小学館(2010) *この先、景気は上向きになる要素はない。なぜなら、少子高齢化が加速する日本は労働力人口が毎年40万人ずつ減少しており、国内市場の縮小と企業の海外移転nよって、経済規模も雇用も税収も減る一方であるためだ。今のパラダイムシフトをしっかり...
大前研一著「民の見えざる手」小学館(2010) *この先、景気は上向きになる要素はない。なぜなら、少子高齢化が加速する日本は労働力人口が毎年40万人ずつ減少しており、国内市場の縮小と企業の海外移転nよって、経済規模も雇用も税収も減る一方であるためだ。今のパラダイムシフトをしっかりと理解しているのだろうか? *経済政策には大きく、金利の上下、マネーサプライの増減がある。逆に言えばそれしか手のうちようがない。この2つの調整でなんとかしようとしてきたのがこの100年である。しかし、この調整だけでは効かなくなってきた。理由としては、「ボーダレス化」があげられる。昔のケインズ経済学が前提としていた閉鎖的な経済とは異なり、現在はボーダレス経済である。ある国の経済政策が別の国に波及して、全く逆の効果を及ぼすことがある。クリントン時代、過熱する一方の国内経済においてインフレをおさえるべく金利を引き上げたところ、世界中から高金利を求めて金が集まってきてしまって、さらに火に油をそそぐ格好になったのが好例である。また、このボーダレス経済を表裏一体にあったのものが「ネット経済」である。2008年のリーマンショックによる金融危機が一瞬にして世界に伝播したように、今は瞬時にお金を電子的に抜いたり移したりできるようになっている。
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かつてアダムスミスが「神の見えざる手」と形容した市場経済を、「官の見える手」を振るうことで統制しようとしたが失敗した時代が過ぎ、今あるのは「神」ではなく無数にある「民」ーつまり「神の見えざる手」とは無数のクラウド・ソーシングの集大成であり、個々の意思決定が積み重なってできた「個々人の合理的な判断の合成」である。 個々人が合理的な判断をするために、民の心理を刺激する必要がある。 例えば 同じ一人の人間でも高級店と激安店を使い分ける 夫婦2人+子供一人、はもはやマジョリティではなく、そこをターゲットにしている限りスーパーは落ちぶれる という市場構造が変わる中で、提供する価値が今までと変わらなければ落ちぶれる。 また新たな富の源泉は国会の埋蔵金にあるのではなく、民の中にあるという。それを引き出す計画として ・市街地調整区域 ・湾岸100万都市計画 ・容積率の大幅緩和 を紹介し、 そのいずれも個人にグッドライフを目指すことを提言している。 ・死ぬ瞬間に一番資産を持つ日本人は異常 ・いざというため、はライフプランを持っていない証拠 ・資産運用で資産を増やし、定年後は別荘に移り住め ・介護が必要なのは70歳以上でも20~30%で残りの人は元気なのに、行政は70歳以上のカテゴリは介護しか作らない。もっとシニアアクティブを活性化させるような政策を作るべき
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【読者】 机上ではなく実体的な経済についての見地を得たい方 【目的】 心理経済学の考え方をもとに、日本の経済を上向かせるための大前流のヒントを与える 【一押】 変化を続ける海外市場の動向と今後注目すべき国がわかってくる。政治においても企業においても個人においても、目的を持つこ...
【読者】 机上ではなく実体的な経済についての見地を得たい方 【目的】 心理経済学の考え方をもとに、日本の経済を上向かせるための大前流のヒントを与える 【一押】 変化を続ける海外市場の動向と今後注目すべき国がわかってくる。政治においても企業においても個人においても、目的を持つことの重要性が理解できる 【概要】 カネはあるのにモノを買わないという現代の日本経済を上向かせるには、「神の見えざる手」のようなマクロ経済学を起点とした考え方ではなく、人々の消費に対する心理的な動きである「民の見えざる手」を考慮する必要がある。本書はその「民の見えざる手」を分析し、大きく分けて以下3種の需要を解説している。 ①企業が見えていないだけですぐそこにある需要・・・単身世帯の需要、機能でなく価値に対する需要 ②日本の外に存在する「新興国&途上国」需要・・・重要なお客様としての中国市場、コストが安く内需が拡大するインドネシア市場、原子力で協働できるロシア市場、ビジネス新大陸といえる東欧市場 ③規制緩和によって生まれる大規模都市開発という潜在需要・・・市街化調整区域の緩和、湾岸部再開発、容積率の大幅緩和 さらに今後20年で日本が再度成長していくための人材力と政策への提言をする。 【感想】 日本がどうしていくべきかが説得力を持って書かれている。全てを肯定するわけではないが、大前氏のような広い視座を持つことが重要だと感じた。印象に残った意見としては、政治のリーダーには経営でリーダーシップをとった人物がなるべきというものである。日本の現状を見るにこの意見には賛成できる。ただ経済成長より福祉政策が重視される日本では、そうした人物が現れにくいのかもしれない。
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価格と価値を混同しない 加ト吉 留学生を採用し、教育して現地のリーダーとする インドネシア 官僚の給料を3倍にした 腐敗が減った 市街化調整区域、湾岸100万都市構想、容積率緩和、すべてのルールは住民が決める 韓国 国をあげてIT、英語を強化
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政官による経済対策の行き詰まりの問題点を示すと同時に、国民がグッドライフを目指すことにより、増税なく景気も拡大するなどの処方箋や国際社会で通用する人材に必要な教育のあり方などの主張が分かりやすい。 世界に目を開くこと、本質を問うこと、疑問を持ち、考えることの大切さを改めて感じさせ...
政官による経済対策の行き詰まりの問題点を示すと同時に、国民がグッドライフを目指すことにより、増税なく景気も拡大するなどの処方箋や国際社会で通用する人材に必要な教育のあり方などの主張が分かりやすい。 世界に目を開くこと、本質を問うこと、疑問を持ち、考えることの大切さを改めて感じさせられた。 11-12
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※このレビューにはネタバレを含みます
・”座して死を待つ” ・消費者の間に心の余裕がない ・牛丼と高級旅館 ・単身者向けのサービス 未婚化・晩婚化・熟年離婚・死別 ・フルフィネントサービス ・超一品.com ・韓国の少子化は日本より進んでいる
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消費を抑える人にいかに使おうと思わせるか、考え方も参考になる。 IT、英語、問題解決力をいまからでも磨き上げないとな。
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凍てついた消費者の心理を溶かし、縮み志向の企業を転換させるビジネスチャンスはどこにあるのか。経済を膨らませるのは、個人の欲望にある。「国が富む」とは「充実した毎日を送っている」「人生が楽しい」と思えるようなグッドライフを追求することである。大前氏の「いつまでも夢を忘れずにいる」と...
凍てついた消費者の心理を溶かし、縮み志向の企業を転換させるビジネスチャンスはどこにあるのか。経済を膨らませるのは、個人の欲望にある。「国が富む」とは「充実した毎日を送っている」「人生が楽しい」と思えるようなグッドライフを追求することである。大前氏の「いつまでも夢を忘れずにいる」という提言は、今まさにこの国に必要とされている活力源である。
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インドネシアやルーマニアの情勢なんかを踏まえての提言は他の本であまり見ないのでおもしろかった。それ以外は拝金主義で思いつきレベルの話を自分の立場からのみで言っているような感が否めない。確かにそんな甘ちゃんじゃあ生き残れないのかもしれないが、こんなに偉そうに語られると心に響かない。...
インドネシアやルーマニアの情勢なんかを踏まえての提言は他の本であまり見ないのでおもしろかった。それ以外は拝金主義で思いつきレベルの話を自分の立場からのみで言っているような感が否めない。確かにそんな甘ちゃんじゃあ生き残れないのかもしれないが、こんなに偉そうに語られると心に響かない。 冷静に読めば現状打破のヒントとなるのだろうけど。
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