水晶萬年筆 の商品レビュー
十字路をテーマにした短編集。 どの話も、起承転結の起伏が緩やか+詩的な比喩表現+独特の設定&感性を持つ主人公視点での物語展開なため、正直好みが分かれそうだな〜という印象。例えば夜に種を撒いたり、ルパンの弟子になってみたり。日常と地続きのSF、という感じかな。
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本書『水晶萬年筆』は、直前に読んだ『十字路のあるところ』に加筆・修正を加え、改題し文庫化したものとのこと。いや、分かってて読んだんです。そうです、知らずの連続2度読みではなく、意図的連続2度読みなんです。 私には、特に推し作家さんの単行本と文庫本を両方揃える趣味はありません...
本書『水晶萬年筆』は、直前に読んだ『十字路のあるところ』に加筆・修正を加え、改題し文庫化したものとのこと。いや、分かってて読んだんです。そうです、知らずの連続2度読みではなく、意図的連続2度読みなんです。 私には、特に推し作家さんの単行本と文庫本を両方揃える趣味はありませんが、今回、意図的連続2度読みの決定的な理由がありました。 それは、単行本の6つの物語の元になったモノクロ写真、その各扉に書かれた「十字路の探偵」が、本書でカットされているからです。つまり、本書は単なる文庫化ではなく、似て非なるもの‥。で、印象はどう変わる? と思った次第です。 勝手な解釈ですが、写真をカットすることで物語の余白を広げ、読み手の想像の幅を広げたかった(輪郭を与え過ぎない)のかな、というのが一つ。 さらに、「十字路の探偵」も封印し、下味をつけた探偵を馴染ませ、熟成させて別の物語をつくりたかったのではないか、それが最新刊に結実したのではないか‥という妄想です。 『十字路のあるところ』の最後の一文(十字路の探偵その六)が、「十字路の探偵の仕事はまだ終わらない」でしたし‥。 単行本と2冊並べてページをめくると、加筆・修正箇所が見て取れますが、それは物語の流れ的には些末な程度で‥。印象としては、確かに写真がなくなると、町の佇まいの輪郭がぼやけ、物語の果てのない夜が優しく膨らんでいくようです。 現実の街には、「廃れていくもの」と「変わらないもの」が隣り合わせているのでしょうが、本書では、魅惑の扉を隠し持って「変わらないもの」に特化した街の物語になっている気がしました。 比較するのも野暮ですが、リアルに「廃れていくもの」が写り込んだ単行本に、より惹かれる自分がいました。
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静かな夜に読むと、吉田篤弘さんの世界にすうっと入っていける。六編の短編集は、いつの間にか、あちこちに迷い込んだ感じがした。 単行本『十字路のあるところ』を文庫化したものがこの本。吉田さんがあとがきで、謎は謎のまま十字路に置いてきたので、一度読んだだけでは、えっ?と思うのも仕方な...
静かな夜に読むと、吉田篤弘さんの世界にすうっと入っていける。六編の短編集は、いつの間にか、あちこちに迷い込んだ感じがした。 単行本『十字路のあるところ』を文庫化したものがこの本。吉田さんがあとがきで、謎は謎のまま十字路に置いてきたので、一度読んだだけでは、えっ?と思うのも仕方ないのかも。でもその感じが私は好きなので、またいつか再読すると思う。 「雨を聴いた家」 アルファベットのSが、面白いように物語を彩っていた。ここでは、町の至るところに十字路がある。〈水読み〉に導かれ、物語を探す物書きは、ようやく手がかりを得たのだろうか。 「水晶萬年筆」 この短編のなかでもお気に入り。絵描きのオビタダさんが住むことにしたのは、廊下ばかりの迷宮アパート。こういう想像を巡らせる感じがとても好きだ。 おでん屋で思い出した祖父の口癖は、思いもしない面白さだった。ここでの十字路は待ち合わせ場所だった。半分の絵は、知りたいけれど知らないほうがいいのかな。 他、「ティファニーまで」「黒砂糖」「アシャとピストル」「ルパンの片眼鏡」
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タイトルから思いもよらぬ物語が紡ぎ出されて、そうだよな。それが吉田篤弘さんの魅力だったと再確認。独立しているような連続しているような六篇の物語。どこにでもありそうな十字路に喫茶店、無性に濁点が付いた具を食べたくなるおでん、夜にかなでられるファンファーレはどんなだろう。隠居のルパン...
タイトルから思いもよらぬ物語が紡ぎ出されて、そうだよな。それが吉田篤弘さんの魅力だったと再確認。独立しているような連続しているような六篇の物語。どこにでもありそうな十字路に喫茶店、無性に濁点が付いた具を食べたくなるおでん、夜にかなでられるファンファーレはどんなだろう。隠居のルパンが落とした片目。設定の不思議さとありきたりさが混在していて、誰にでもかけそうな柔らかくて素朴な物語。でも、これは吉田篤弘さんにしかかけない物語なんだ。
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日常と地続きだけれど、どこか不思議な人たちが街の片隅で静かに息づいているのがすき。ゆっくり味わって読みたくなる世界観。
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いくつかの短編で師と弟子という関係性が共通している。師が弟子に伝えることは新語だったり音楽であったり様々だが、弟子は師の意志を汲んで生きている。ルパンは珈琲を飲みながら、「弟子がいなけりゃ師匠と言えないんだ」と言っている。その二人の完結した関係の中で、扉を探したり、向こう岸を目指...
いくつかの短編で師と弟子という関係性が共通している。師が弟子に伝えることは新語だったり音楽であったり様々だが、弟子は師の意志を汲んで生きている。ルパンは珈琲を飲みながら、「弟子がいなけりゃ師匠と言えないんだ」と言っている。その二人の完結した関係の中で、扉を探したり、向こう岸を目指したりして、師は弟子の元から離れていこうとする。 弟子はみな、師匠が残したものを受け継いでいく。道が繋がっていくように。すべての道はティファニーに通ずるように。
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吉田篤弘さんの作品はベースがありきたりの日常だと思うのだが、どこか幻想的な非日常の風景に置き換えられてしまう。 ところどころにアンニュイな雰囲気も感じるが、ネガティブの方向には振れず静かに語られるので心が落ち着く。 作品の中に自分も引き込まれる感じはなく、さほど遠い距離ではない空...
吉田篤弘さんの作品はベースがありきたりの日常だと思うのだが、どこか幻想的な非日常の風景に置き換えられてしまう。 ところどころにアンニュイな雰囲気も感じるが、ネガティブの方向には振れず静かに語られるので心が落ち着く。 作品の中に自分も引き込まれる感じはなく、さほど遠い距離ではない空の上から物語を眺めているような気持ちになる。 「水晶万年筆」は絵の話。おでん屋の女将の父は絵師だったが、最後の一枚しか残っていない。おでん屋の常連客と2人でその絵を見に行くことになったが、作品はお互いに半分しか見る事が出来ない。相手が見ている半分は分からないのだが、その理由が秀逸。 「ティファニーまで」は富士見町の洋食屋ティファニーに行く話。胸が「高鳴る」ではなく「低鳴る」とか、ムカムカすることを「ムカつく」と言うようにドキドキすることを「ドキつく」と言ったり、言葉遊びに引き込まれる。 「ルパンの片眼鏡」はルパンと呼ばれた男の老後の話。オバケ煙突のように何人もの俺がいる。これまで俺は俺から俺を盗んでいただけのこと。もう盗みたいものはない。逆に盗んだものを返したい。すべて返したら五目チャーハンを食べて…。 6編のうちこの3編が面白かったかな。特に「水晶万年筆」(これは★5)のエンディングが良かった。 次は、月舟町シリーズ三部作(番外編含めて4冊)を読もうと思っています。
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“十字路のある街”がテーマの短編集。 吉田作品独特の、ふわっとした不思議な世界を堪能できる六話が収録されています。 第一話「雨を聴いた家」が、続きが凄く気になる終わり方だったので、ちょっと連作を期待したのですが、それぞれ独立した短編で、その後の展開は謎のまま読者の妄想に任せる感...
“十字路のある街”がテーマの短編集。 吉田作品独特の、ふわっとした不思議な世界を堪能できる六話が収録されています。 第一話「雨を聴いた家」が、続きが凄く気になる終わり方だったので、ちょっと連作を期待したのですが、それぞれ独立した短編で、その後の展開は謎のまま読者の妄想に任せる感じでした(“十字路繋がり”はありますが)。 各話、いい意味でのぼんやり感で心地よく読めるお話で、特に表題作の第二話「水晶萬年筆」(タイトルも素敵)と、第四話「黒砂糖」がお気に入りですね。 非現実的な雰囲気ではあるのですが、登場する街(十字路)は、実際に東京にある路地の風景がベースとなっているそうです。 本書の元となった単行本『十字路のあるところ』に、モデルとなった路地の写真が載ってとの事で、どんな風景か見てみたいと思いました。
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東京の片隅の、どこかの十字路で、 知る人ぞ知る変わった人達が ひっそりのびのび生きてる話。 “ファンファーレ専門の作曲家”が いい例だと思ったんだけど、 明らかに変わった生き方をしてる人が、 過度に主張せず自分の領分を守って、 片隅で静かに、 スポットライトから逃れて安心して、...
東京の片隅の、どこかの十字路で、 知る人ぞ知る変わった人達が ひっそりのびのび生きてる話。 “ファンファーレ専門の作曲家”が いい例だと思ったんだけど、 明らかに変わった生き方をしてる人が、 過度に主張せず自分の領分を守って、 片隅で静かに、 スポットライトから逃れて安心して、 穏やかにのびやかに暮らしている。 自分はそれがすごい好きで、 羨ましいんだと思った。 よく知らないけど、 「不便益」って言葉を思い浮かべた。 足のつむじとか、 おでんは濁点が付くほどうまいとか、 どうやって生きればそんな発想に行き着くんだって表現も好きだ。 もしかしたらティファニーの先生は 吉田さんの思考回路に近いのかな。 頭の中、覗き見した気分でうれしい。 黒砂糖は夜に属すとかも素敵だ。 今までなんとも思わず通り過ぎていたものに 足を止めて、止めてしまえばもう、 それを知る前のやり方で黒砂糖を見られない。 謎の付加価値。たまらない。 上手く伝わらないかもしれないけど、 伝えるために書かれたものと 書くために書かれたものが多分ある気がして、 わかったような口を聞くのはおこがましいけど、 こういう作品は多分後者なんじゃないかな。 この作品から得たものでは、 ちっとも腹は膨れないけど、 披露したところで みんなに感心してもらえそうもないけど、 腹が膨れたり、感心されたりする作品しか ない世界は、自分は嫌だなと漠然と思う。 書くために書かれた(と僕は思っている)ものを、 読むために読む時間は とびきり幸福で贅沢だった。
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何話か難しい話があって読み返さなきゃとワクワクしてます。不思議で非現実的な話ばかりだけど、それが今すごく私の欲している話で読んでいてとても楽しくなった。とりあえず、2周目します。
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