遠い日の戦争 の商品レビュー
八月は戦争関連の本を読む月間。 太平洋戦争末期に北九州をB29による無差別爆撃で大量の市民を殺戮し、その後撃墜されて俘虜となった米軍兵と、その俘虜を斬首処刑した日本軍人。 日本人が倹しい生活に苦しむ中、爆弾投下で大量殺戮をした米軍兵が収容所でぬくぬく暮らしていることに憤りを抑え...
八月は戦争関連の本を読む月間。 太平洋戦争末期に北九州をB29による無差別爆撃で大量の市民を殺戮し、その後撃墜されて俘虜となった米軍兵と、その俘虜を斬首処刑した日本軍人。 日本人が倹しい生活に苦しむ中、爆弾投下で大量殺戮をした米軍兵が収容所でぬくぬく暮らしていることに憤りを抑えられず個人の感情で斬殺するが、米軍兵が最後に残した愛する人の名前を呼ぶ声が耳に残る。果たして正義とは、戦争とは何か。 戦後、連合国から戦犯として処刑されることを逃れるための逃亡劇は重苦しい、吉村昭の世界。
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太平洋戦争中に米軍捕虜を殺害し、戦後に裁判にかけられる、という話は「わたしは貝になりたい」が有名だろう。 いずれにせよ、戦勝国が独自の法廷(東京裁判など)で敗戦国を裁く、というのは考えてみればシュールな状況だといえる。 敗戦国の人間でなくとも、パール判事の言い分は正しいと思う。 ...
太平洋戦争中に米軍捕虜を殺害し、戦後に裁判にかけられる、という話は「わたしは貝になりたい」が有名だろう。 いずれにせよ、戦勝国が独自の法廷(東京裁判など)で敗戦国を裁く、というのは考えてみればシュールな状況だといえる。 敗戦国の人間でなくとも、パール判事の言い分は正しいと思う。 読んでいて歯がゆいのが、国土にバンバン焼夷弾落とされて原爆まで落とされて明らかに非戦闘員の大量虐殺を受けたのにアメリカへの恨みとか、早々になくなっている(ように見える)こと。 まあそれはWGP(戦争の罪悪感を日本人に植えつける洗脳)のせいでもあるけど、いかに徹底していたかがわかる(いまだに解けていない人&団体もいる)。 これ、C国やK国だったら戦後何十年、いや何百年経ってもアメリカ人を恨み続けてると思う。 あとは主人公の逃亡を通して戦後直後の人々の生活がリアルに描かれていて勉強になった。当時の祖父母(と父母)が悲惨な状況を生き延びてくれたおかげで今の自分がいる。命がけの仕事もしておらず、毎日酒呑んでる自分は祖父母の人生に見合った自分だろうか、などと殊勝にも考えてしまうのである。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
毎年、この時期には先の大戦に関する書籍を意識して手にするようにしていますが、そんな中で終戦記念日に読み終えた一冊です。 今までは戦争中の悲惨な出来事を描いた作品を手にしてきましたが、本作は戦争終盤から始まり、主に描かれるのは戦後の戦争裁判。 主人公の琢也はまさに終戦となったその日、B29に搭乗していたアメリカ兵(捕虜)を斬首により処刑した。 本土決戦が現実味を帯びた戦争末期、本土に降り注ぐ爆弾、焼夷弾により国土は焼かれ、多くの人々が命を落とし、傷を負い、住むところも失った。 まさに民間人を狙った無差別な空襲。 実際にそれを行なっていたアメリカ兵に対し、敵討ちともいえる処刑は残念ながらその当時ある意味で当然のことのように思われることであろう。 そして迎えた終戦。 GHQによる統治と共に始まった戦争裁判。 そこから始まる琢也の逃亡劇。 私が生まれ育った街も舞台に登場し、息詰まる緊張感、人々の心の変化をリアルに感じることが出来ました。 本作で描かれた全てが史実ではないかも知れませんが、今までとは違った意味で私の心に刻まれる一冊になるでしょう。 今もウクライナをはじめ、戦争が行われている事実。 哀しき歴史が今も刻まれ続けていることから目を背けずに改めて戦争と平和について考えたいと思います。 説明 終戦の詔勅が下った昭和20年8月15日、福岡の西部軍司令部の防空情報主任・清原琢也は、米兵捕虜を処刑した。無差別空襲により家族を失った日本人すべての意志の代行であるとも彼には思えた。だが、敗戦はすべての価値観を逆転させた。戦犯として断罪され、日本人の恥と罵られる中、暗く怯えに満ちた戦後の逃亡の日々が始まる――。戦争犯罪を問い、戦後日本の歪みを抉る力作長編。
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戦犯者琢也の逃亡の様子、琢也の気持ちの変化の描写どれも吉村昭さんの作風にどんどん引き込まれて、一気に読み終わりました。まだまだ知らなかった戦争の事実が様々な小説に沢山あり、これからも少しずつ読んでいきたいです。
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終戦後の戦犯による罪を避けながらと逃避する琢也の葛藤を描いた作品。この難しい問いを淡々と詳らかにする著者の筆致は、相変わらずスゴイ...。戦勝者と敗北者の視点から綴られる記録文学。戦争を知らない世代は取り敢えず著者作品に触れてみよう。きっと気づけるものがあるはず。
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戦犯容疑者として追われる元将校の心の葛藤がとてもリアル。死罪に怯えながらの逃避行に息が詰まった。戦後処理を通して正義とは一体何かが問われる。価値観逆転による混乱の大きさは戦後生まれには想像もつかないが、トップの責任逃れやら、メディアの手のひら返しやらはいつの世も変わらないなと…。
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戦争に勝てば英雄。 負ければ戦争犯罪容疑者。 そして、敗戦後、数年して空気が一変して戦争被害者へ。 戦争とは、何なのか。 戦争の為に国民を洗脳し、戦わせる。 国と国が争って、負ければ個人へ責任を擦り付ける。 こんなことがまかり通っていいのだろうか。 こんなことに青春を奪われた若者...
戦争に勝てば英雄。 負ければ戦争犯罪容疑者。 そして、敗戦後、数年して空気が一変して戦争被害者へ。 戦争とは、何なのか。 戦争の為に国民を洗脳し、戦わせる。 国と国が争って、負ければ個人へ責任を擦り付ける。 こんなことがまかり通っていいのだろうか。 こんなことに青春を奪われた若者が可哀想だ。
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海と毒薬のB面というか(亜流という意味ではなく)、戦争犯罪人のひとつの形。 海と毒薬ほどテーマに奥深さが無いことが、逆に作品を何故書かれなくてはならなかったのか?を感じる。
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吉村昭の作品は本当に外れない。 こぎみ良いテンポとそれでいて非常に重苦しい雰囲気が絶妙に交わり独特の作風を際立たせている。 戦争を反省するための学びの本にもなれば、思想的な部分では、ある種の戦犯への同情的な心理を呼び起こすことで国家主義的な情念も駆り立てられうるため、読者側の心情...
吉村昭の作品は本当に外れない。 こぎみ良いテンポとそれでいて非常に重苦しい雰囲気が絶妙に交わり独特の作風を際立たせている。 戦争を反省するための学びの本にもなれば、思想的な部分では、ある種の戦犯への同情的な心理を呼び起こすことで国家主義的な情念も駆り立てられうるため、読者側の心情もかなり複雑になり、動揺させられる。 吉村昭の得意分野である逃亡や漂流における主人公の孤独な内面性、葛藤をこの作品もまた緻密に描き出している。 正義とは何か、それは絶対的なものではなく、あくまで時代状況や国家間の関係性に左右される相対的なものでしかないことを断定する教育的利用価値のある作品である。
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無差別な空襲から怒りを覚え米捕虜を処刑。官憲から逃亡生活に入る。雰囲気で裁かれ、時の流れで変わる判決、運で転ぶ人生に冷めた境地に達する。2015.11.28
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