文明が衰亡するとき の商品レビュー
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平成が終わろうとしている。日本衰亡を肯定するわけでないが、タイトルが気になり、81年発行の本書を再読した。そもそも本書は、巨大帝国ローマと通商国家ヴェネツィアの衰亡を20世紀のアメリカと対比しているのだが、ヴェネツィア衰亡の原因が昨今の日本に驚くほど当てはまる(特にp147,156あたり)。これは高坂先生も想定していなかったのではなかろうか。 「その都度目の前の問題に全力で立ち向い、解決して行くことは可能である。それが衰亡論を持った文明の生き方であり、われわれが衰亡論から学ぶものである(p82)」
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みんな大好き国家衰亡論。著者は、学者としては前原誠司や中西輝政が師事したことでも知られ、1960年代から80年代自民党のブレーンとして活躍した高坂正堯先生。 ローマ帝国、そしてヴェネツィアの成長と衰退、アメリカ、日本の行く末について説いている。 ローマ、ヴェネチアについては、国...
みんな大好き国家衰亡論。著者は、学者としては前原誠司や中西輝政が師事したことでも知られ、1960年代から80年代自民党のブレーンとして活躍した高坂正堯先生。 ローマ帝国、そしてヴェネツィアの成長と衰退、アメリカ、日本の行く末について説いている。 ローマ、ヴェネチアについては、国家の浮沈の流れを歯切れよく説いて一気に読める。 特に、ローマについては民主主義という政体が持つ国家への攻撃性、ヴェネチアについては経済的、地政学的な優位性が時代とともに変動する様をわかりやすく解説している。 ヴェネチアが、その成長期においては外国との通商を活発に推進し、その後衰退期に入ると進取の気性を失い不動産投資が流行したという対比は、本書の刊行(自動車生産台数で日本が世界トップになった頃)から数年後、日本もまた土地バブルに突入、さらに失われた20年へと突入することも併せて、読んでいて悲しくなってくる。 そして、アメリカ。 この本に出てくるのは、アメリカが最も自信を失っていた時期…カーター政権からレーガン政権に代わった直後のアメリカ。 ベトナム戦争の敗戦を経て、かつてのように圧倒的な力でゴリ押しができなくなったことを踏まえ、推進力を失ったかに見える超大国の力を分析している。 まぁ、その後のアメリカは冷戦を煽ってソ連を崩壊させたり、中東で戦争したり、ITなど新しい経済を興したりして、あんまり枯れた感じにはならなかった訳ですが、このサイゴンが陥落してから5年後という時代の空気は、そんな感じだったんだろうなぁ、と。 最後に、日本については、バランスの取れた現実的な路線を提言している。 36年前の政策決定の場にこういう人が居たんだな、という事実自体が過去に対する印象と認識を改めさせる内容だった。
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ローマ、ベネツィア、20世紀後半のアメリカ、衰微する文明を実に程よい距離感で概説している。著者はあまり目的意識を強く持たずに、どちらかというと純粋な知的好奇心に駆られて書いたそうだ。その言葉に従って、あまり目的意識を持たずに読んでみたら、その分色々と考える余裕が持てる気がする。 ...
ローマ、ベネツィア、20世紀後半のアメリカ、衰微する文明を実に程よい距離感で概説している。著者はあまり目的意識を強く持たずに、どちらかというと純粋な知的好奇心に駆られて書いたそうだ。その言葉に従って、あまり目的意識を持たずに読んでみたら、その分色々と考える余裕が持てる気がする。 字面を追いながら、気づけば今の日本について考えたりもするし、この本が書かれた当時の状況に思いを馳せたりするし、著者の視点に深く敬意を抱くこともある。気ままに思考が揺れていきつつ、それが楽しいと思えるような読書だった。 「〜せねば」という思考は、すぐに硬直してしまう。やっぱり頭が固いのは良くない。色んな方面にアンテナを張って、感度の高い人間でいたい。
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2012年の現在、既成政党が瓦解し日本が再生すると思いきや、逆に危険水域に追い詰められている今こそ、読み返す価値あり。
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ローマ帝国や通商国家ベネチアはなぜ亡びたのか。 2千余年前、紀元前1世紀頃のローマ帝国は周辺諸国を植民地化せず、同盟国として内政干渉しない寛大な外交によって、600年にわたって永続的に勢力を広げた。しかしローマが拡大し豊かになると、共和制(民主主義)が腐敗した。共和政治の後を受けた政治エリートが、民衆を愚民化した。官僚制が肥大し、重税を課すようになり、巨額の財政赤字によって帝国が破綻していった。 1千年前、11世紀ごろのベネチアは、地中海での海上輸送、香料や羊毛の仲介によって小国ながら、その地理的利点、巧みな二面外交によって経済大国に発展した。新航路発見により香料貿易をオランダに独占されると、羊毛の加工貿易への転換に成功し、通商国家として繁栄した。かつては勤勉倹約なベネチア人であった。国が豊かになり華美な消費と娯楽を楽しむエリートが増えると、冒険を避け、過去の蓄積によって華美な生活を享受しようとした。消極的で結婚しない男子が増え、17世紀になると適齢期の未婚男性は60%にも上昇した。リスクの大きな通商を避け、安定した土地収入に頼るようになると、強国トルコの勃興、周辺国による加工貿易の進展など、環境変化に適応する能力が衰えた。 この本は30年前に書かれたものである。1980年のアメリカや日本は既に衰亡のきざしがあったということか。2012年のアメリカや日本のほうが、もっとローマやベネチアの衰亡期に近い。変化に対応する能力を失えば、通商国家の宿命として、ベネチア同様、衰亡を辿るだろう。
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学長推薦図書。 ローマ/ヴェネツィア/アメリカ/日本の4部構成。 個人的には、この中でローマの所が勉強になった。
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世界が変わる、そんな言葉が溢れてるけど、実際滅亡する時ってどうなのよ、っていうのを知りたかったんで。歴史には規則的なパターンがある、その規則を知る良書。
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文明の衰亡について書かれた本 具体的には,ローマやヴェネツィアの衰亡過程が書かれている. 適宜日本の現状と比較して読むと色々と考えさせられる. 決定打となるのはエリートの精神が衰退する時だと感じた. 当事者意識を持つためにも,多くの人に読んでもらいたい.
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佐藤優の講演会の参考書籍としてあげられており、読了。 1981年の出版の本だが、ローマ、ベネティア、1970年代までのアメリカの衰退をみながら、歴史の中で財政破綻が引き金になったこと、論理守備から教条主義になって変化を認めなかったこと、1つのサクセスストーリの限界性が見えたこと...
佐藤優の講演会の参考書籍としてあげられており、読了。 1981年の出版の本だが、ローマ、ベネティア、1970年代までのアメリカの衰退をみながら、歴史の中で財政破綻が引き金になったこと、論理守備から教条主義になって変化を認めなかったこと、1つのサクセスストーリの限界性が見えたこと、などを通じて、文明が衰退し、滅亡する時の問題を提示している。 歴史を知っているだけではなく、歴史から学び、今の自分たちの未来に生かすという意味ではいろいろなことを示唆している。 国際政治学者である著者の書籍を、もっと読みたくなった。
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ちょっと古いですが、在籍していた国際政治ゼミの高坂・前教授が書かれた書ということで買った本。 装丁は堅苦しそうだけど内容は平易な、タイトルの通り、いかに文明は衰退するかを考察した本。文明の限界点だとか、異質社会が出会ったときに受ける影響だとか。多様性を保持したがる欧州に、帝国化の...
ちょっと古いですが、在籍していた国際政治ゼミの高坂・前教授が書かれた書ということで買った本。 装丁は堅苦しそうだけど内容は平易な、タイトルの通り、いかに文明は衰退するかを考察した本。文明の限界点だとか、異質社会が出会ったときに受ける影響だとか。多様性を保持したがる欧州に、帝国化の様相を見せて警戒させるアメリカ。そのアメリカの、国際政治上の失敗の原因と、優越の要因。 「NGO」も「世界化」っていう単語もなかった頃の著作だけれど、そもそも政治って歴史の部分が広いから、むしろつながりが見えてきて読みやすい。 国際政治の本・・・というよりは、世界の見方を養う本? 無知と情熱の組み合わせは、危険だねぇ。とか、日本このままいったら順調に衰亡するね、やっぱ積極的に外でな外!と、仕事の性質上胸にとどめておくべき視点が多いので、社会人になってから何度か思い出しては読んでる。在学中はほとんど読んでなかったのに。
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