ティンブクトゥ の商品レビュー
かわいらしいわんちゃん写真の表紙と、興味のあったポール・オースターということで購入。 猫ブームに押され気味の犬諸君、わたしはわんちゃんも応援しています。 詩人ウイリーの相棒はミスター・ボーンズ。犬だ。 ウイリーの死後のミスター・ボーンズを犬目線で描く。 まとめるとこれだけ。 ...
かわいらしいわんちゃん写真の表紙と、興味のあったポール・オースターということで購入。 猫ブームに押され気味の犬諸君、わたしはわんちゃんも応援しています。 詩人ウイリーの相棒はミスター・ボーンズ。犬だ。 ウイリーの死後のミスター・ボーンズを犬目線で描く。 まとめるとこれだけ。 とても単純。 この本は、犬目線の物語で想像されがちな、犬らしい仕草に溢れた犬好き大喜びなかわいらしい物語、ではない。 ミスター・ボーンズは人間と同じように考え行動している。でも犬だから言葉は話せない。犬としての行動を読ませるのではなく、あくまでミスター・ボーンズは犬の姿をした人間なのだ。そこが犬目線の物語ではあっても、この作品が他と違う点。 飼い主と犬というより男と男。 相棒を亡くしたひとりの男の物語という感じがする。 こう書くと男と犬の友情物語という感じがするがそれだけではない。 ウイリーが行き倒れになり恩師ミセス・スワンソンと再会するところをミスター・ボーンズはハエとなって見ていたりする。 こういう不思議なところがポール・オースターらしいのかもしれない。オースター初読みなのでよくわからないけれど。 ところで、タイトルの意味だが、これは作中できちんと書かれている。 わたしは最初、犬の名前だと思っていた。 ミスター・ボーンズが新しいやさしい飼い主の元で幸せに平穏に暮らすというありふれた結末を期待しつつ、そういう終わり方はしないのだろうとわかって読む。 単純な物語だけに何回か読み重ねると思いも深まってくるように感じた。
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放浪癖のある主人とその飼い犬の話 読む前には、主人と犬がどう生きていくのか、或いは主人が死んでしまった後、犬がどう生きていくのか、といったことを描いた犬好きに感動を呼び起こさせるような内容の本なのかと思ったが、実際は違った。 読み手が予想するような出来事は上手く避けるように書かれ...
放浪癖のある主人とその飼い犬の話 読む前には、主人と犬がどう生きていくのか、或いは主人が死んでしまった後、犬がどう生きていくのか、といったことを描いた犬好きに感動を呼び起こさせるような内容の本なのかと思ったが、実際は違った。 読み手が予想するような出来事は上手く避けるように書かれていて、したがって読み手の予想はことごとくシカトされ、新たな展開を上書きすることで読ませているように感じた。 犬に対しての心理描写は上手く書かれていて、多分作者の人は犬が好きなんじゃないだろうかと思った。 こう書くとそこまで面白そうに見えないかもしれないが、おそらくこれは小説に求めるものの違いからくるものだろうと思う。この小説は、技巧的な、つまり読ませる小説であり、私の求めている読み込む小説ではなかったように感じた。
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第11話(11月17日放送)で、カフェ・シャコンヌで真琴が読んでいるのが、犬の目線で放浪の詩人と社会を描いたこの本。教え子・根岸の父のリストラ問題からの連想……というわけではないでしょうが、著者オースターが描く人間や社会の「残酷さ」と、その中に確かにある「優しさ」について、真琴は...
第11話(11月17日放送)で、カフェ・シャコンヌで真琴が読んでいるのが、犬の目線で放浪の詩人と社会を描いたこの本。教え子・根岸の父のリストラ問題からの連想……というわけではないでしょうが、著者オースターが描く人間や社会の「残酷さ」と、その中に確かにある「優しさ」について、真琴は考えているのかもしれません。
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【本の内容】 ミスター・ボーンズは犬だ。 だが彼は知っていた。 主人のウィリーの命が長くないことを。 彼と別れてしまえば自分は独りぼっちになることを。 世界からウィリーを引き算したら、なにが残るというのだろう? 放浪の詩人を飼い主に持つ犬の視点から描かれる思い出の日々、...
【本の内容】 ミスター・ボーンズは犬だ。 だが彼は知っていた。 主人のウィリーの命が長くないことを。 彼と別れてしまえば自分は独りぼっちになることを。 世界からウィリーを引き算したら、なにが残るというのだろう? 放浪の詩人を飼い主に持つ犬の視点から描かれる思い出の日々、捜し物の旅、新たな出会い、別れ。 詩人の言う「ティンブクトゥ」とは何なのか? 名手が紡ぐ、犬と飼い主の最高の物語。 [ 目次 ] [ POP ] 著者のポール・オースター氏は1947年生まれのユダヤ系アメリカ人作家。 推理小説の分野で、1980年代半ばに発表した「ニューヨーク三部作」で大きく評価される。 近代文学の秩序性、独創性、簡潔性等といった特徴のアンチテーゼとしてのポストモダン文学的な香りが濃厚に漂う、著者独特の手法で書かれたものである。 本書はいわゆる推理小説の形をとってはいないが、前述した彼の文学上の特徴が明瞭に現れた作品である。 飼い犬の目から見た世界が、飼い主との別れ、新しい家族との出会い、また元の飼い主への思慕行動などを通じて描かれる。 その表現は妄想、夢、時間の逆行など通常のわれわれの意識の下ではとまどいの連続である。 だが、これは犬の世界なのだと気付くと、この実験的な作品が急に興味深く思えてくる。嗅覚で生きる動物と人間とでは同じ場所にいても感じる世界は違う。 同じ人間同士でも物事の受け取り方が異なることがままあるが、それでも一通りの秩序が維持できているのは奇跡に近いことだと感嘆せざるを得ないのである。 [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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これはティンブクトゥ(西アフリカ・マリの交易都市)を舞台にした物語か、あるいはその地に向かう旅を題材にした物語だとばかり思って購入。実際は、まったく期待を裏切られたのだが。ただし、その期待の裏切られ方は、けっして悪いものではなかった。これは、犬の視点から語られるアメリカ版&quo...
これはティンブクトゥ(西アフリカ・マリの交易都市)を舞台にした物語か、あるいはその地に向かう旅を題材にした物語だとばかり思って購入。実際は、まったく期待を裏切られたのだが。ただし、その期待の裏切られ方は、けっして悪いものではなかった。これは、犬の視点から語られるアメリカ版"I am a dog."の物語なのだが、全編を通して独特の哀しみがつきまとう。彼は言う。「求められていると感じられるだけでは犬の幸福は成り立たない。自分は欠かせないという気持ちが必要なのだ」と。遥かな地ティンブクトゥに行けたと信じたい。
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残念ながら愛犬家ではないので、破滅型のへぼ詩人ウィリーと、その愛する雑種犬ミスター・ボーンズとの、強い愛の絆の物語、とは読まなかった。 愛するひとと死に別れた後、どうやって生きていけるか。 この犬の物語をそう読もうとした。 ミスター・ボーンズは、それに足る内面を与えられた犬だし...
残念ながら愛犬家ではないので、破滅型のへぼ詩人ウィリーと、その愛する雑種犬ミスター・ボーンズとの、強い愛の絆の物語、とは読まなかった。 愛するひとと死に別れた後、どうやって生きていけるか。 この犬の物語をそう読もうとした。 ミスター・ボーンズは、それに足る内面を与えられた犬だし。 だが、簡単にカタルシスを得られる小説ではない。 老犬の夢の中で、生き続けろと犬に呼びかける主人。 老衰と病を振り切るように、高速道路の車線へ「車よけ」遊びをしに行こうと、死にに行こうとする犬。 犬としての誇り、崇高さに満ちた最後の場面を読むと、考え込んでしまう。 やはり愛するひとのいないこの世より、あの世、ティンブクトゥを選んでしまうものなのだろうか。
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オースターの淡々とした描写で ミスター・ボーンズという犬視点で ウィリーという人間を通して見ると 人間のおかしみやかなしみが くっきりと浮かび上がってくる。 ウィリーがあまりにもロマンチストすぎるのです。 さすが詩人。さすがサンタクロースの伝道者。 こっちもつられて感傷的になっ...
オースターの淡々とした描写で ミスター・ボーンズという犬視点で ウィリーという人間を通して見ると 人間のおかしみやかなしみが くっきりと浮かび上がってくる。 ウィリーがあまりにもロマンチストすぎるのです。 さすが詩人。さすがサンタクロースの伝道者。 こっちもつられて感傷的になってしまったじゃない。 オースターの作品にこんな「善良な」人間はあまり登場しない(気がする)。 でもそのロマンチズムを皮肉るでもなく淡々と書いてくれるオースターが好きなんだよなあ。 ロマンと現実と。 夢か現か。 犬好きにはたまらんということにはまちがいない。
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※このレビューにはネタバレを含みます
ラテンアメリカの作品ばかり続けて読んだせいか、読み始めにいったんリセットする必要に迫られる。 オースターさんってば意外とフツーのライターとか思ってしまうんで(笑) イヤ、フツーで合ってるよね。P.オースターは技巧派じゃない……ような? 長年連れ添ったボヘミアンな飼い主を亡くし、明日はどっち!?と途方に暮れながら、放浪の旅を続けるボヘミアン犬ミスター・ボーンズ。 犬の目線で語られた飼い主との珠玉の物語って、P.オースター犬じゃないしなぁw オースター作品すべてを制覇したわけではないので、こういう言及は控えるべきかもしれないが、“意外”な印象。 ただ、映画『スモーク』や『ブルー・イン・ザ・フェイス』(原作未読)に登場する“はみ出しものたち”が織りなす淡々とした群像劇の犬と飼い主バージョン——群像とは対極のミニマムな関係性で語られる“はみ出しものたち”と考えると、そうでもないのかな? 単なるほのぼの動物感動モノにならないところが、やっぱ外文やね。
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実は7年くらい前に英語版を読んでいる。 ただ、当時の英語力はいまひとつで、 きちんと理解しきれていなかった(今も今ひとつなのは同じだが)。 それで日本語版も読まなくちゃなあ、と思いながら 7年の年月が経過してしまっていた。 ポール・オースターはデビュー作『幽霊たち』を読んで以来...
実は7年くらい前に英語版を読んでいる。 ただ、当時の英語力はいまひとつで、 きちんと理解しきれていなかった(今も今ひとつなのは同じだが)。 それで日本語版も読まなくちゃなあ、と思いながら 7年の年月が経過してしまっていた。 ポール・オースターはデビュー作『幽霊たち』を読んで以来好きな作家の一人で、 以降作品が出ると直ぐにではないにしろ目を通す。 『幽霊たち』で受けた衝撃、斬新さへの衝撃、は (ニューヨーク三部作の他二作を含め)以後感じることはなかったけれど、 全体として暖かい、どこかファンタジーを感じさせる物語は 読んでいてなんとなく幸せになる。 この作品もそんな中の一つ。 で、まあ、暖かいんだけど、ちょっと悲しいストーリーである。 カバーの後ろには「犬と飼い主の最高の物語」って書いてあるけど、 私には寂しさの方が上回って「最高の」とは言いづらい。 基本的に私が動物に弱いのもあるけども。 この作品で一番心に残ったのは、 ウィリーがミスター・ボーンズに語った言葉の一つ、 「善は善を生み、悪は悪を生む。 例えこっちの与える善に悪が返ってきても、 己が得る以上の善を与えるしかない」。 これは正に私が近年感じていたこと(ある一つの生き方の結論)だったので、 うまく言葉で表せないくらい、 胸に響くものがあった。 そして、この言葉を信じていたことが、 ミスター・ボーンズの救いであったと信じたい。 ああ、でも、 もっと自分勝手になっていいのよ、 とミスター・ボーンズには言ってあげたい。 切ない。
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※このレビューにはネタバレを含みます
犬の主観で書かれた,主人との交流.犬っていうのは,確かに喋れないんだけど,犬によっては本当にこれぐらい考えているのかもしれない.出来事および犬の思索を綴っているという意味で,ポールオースター版「我が輩は犬である」ともいえるけど,そう書いてしまうと,ラストがわかっちゃうか.とはいっても,決して犬の目線で人間の行動を風刺している訳ではない.いつものポール・オースターのように淡々と話は進んでいく.ドラマチックな展開が待っている訳でもない.でも退屈は決しないし,きっと心に残ります.
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