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終わらざる夏(下) の商品レビュー

3.8

85件のお客様レビュー

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    17

  2. 4つ

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    20

  4. 2つ

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  5. 1つ

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2012/09/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

前から気になっていた、終戦後に起こった占守(シュムシュ)島の戦闘の話。 この戦闘に関わる軍人軍属、民間人、ロシア人、非常に多くの人の話しを見事に織り交ぜて、編み上げた作品。 これだけのエピソードをラストに向けて収斂してくさまはお見事という他ない。 しかし、肝心のクライマックス、ソ連軍との戦闘が、断片的すぎてわかりにくいのと、ラストがもう一つしっくり来なかった。 もったいない感じがする。

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2012/07/28

終戦前後のそれぞれの人間模様が丁寧に描かれている。 同じ戦争であっても、それぞれの思いは異なり、その重なり合いの描写が本書の生命線ではないか。登場人物の痛み、悲しみ、喜び、涙が伝わってくる気がした。 正確な史実は、神のみぞ知るのだと思うが、過酷な歴史の一部を知る機会としてもよかっ...

終戦前後のそれぞれの人間模様が丁寧に描かれている。 同じ戦争であっても、それぞれの思いは異なり、その重なり合いの描写が本書の生命線ではないか。登場人物の痛み、悲しみ、喜び、涙が伝わってくる気がした。 正確な史実は、神のみぞ知るのだと思うが、過酷な歴史の一部を知る機会としてもよかった。 最後の戦いは、画面がスローになるくらい、ドラマメイクされているような気もするが・・・。

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2017/08/15

 物語の中で上官が少年兵に質問する場面がある。 「貴様は赤穂浪士と白虎隊のどっちが好きだ?」    これは実話から取られたエピソードだ。    実話ではこの小説のモデルとなった池田戦車連隊長が兵士たちに対してこう問いかける。 「赤穂浪士となり恥を忍んで将来に仇を報ぜんとするか、あ...

 物語の中で上官が少年兵に質問する場面がある。 「貴様は赤穂浪士と白虎隊のどっちが好きだ?」    これは実話から取られたエピソードだ。    実話ではこの小説のモデルとなった池田戦車連隊長が兵士たちに対してこう問いかける。 「赤穂浪士となり恥を忍んで将来に仇を報ぜんとするか、あるいは白虎隊となり、玉砕をもって民族の防波堤となり後世の歴史に問わんとするか。赤穂浪士たらんとする者は一歩前に出よ。白虎隊たらんとするものは手を上げよ」  兵士たちは全員が諸手をあげ、「おう」と喚声で応えた。  占守島の戦車部隊は無傷の精鋭である。降伏しているのに戦闘をしかけてくる暴挙を許せるはずがない。恭順を示している会津に討伐隊を向ける薩長と同じだ。だから白虎隊を例にとったわけではないだろうが、戦闘は強要されたものではなく部隊の総意だったことは疑えない。  目を転じてソ連兵たちはどうだったのだろうか。小説の中ではヨーロッパ戦線から引き揚げてきた兵たちが、故郷に帰れるという偽りの命令に騙されて、占守島の戦いに投入されたように書かれている。ソ連兵たちにとっても、なぜ降伏した相手に戦争を仕掛けなければいけないのか、なぜまだ故郷に帰れないのか、という理不尽な気持ちを抱いたままの戦闘だった。  占守島の戦いは、スターリンという稀代の悪人がいなければ、日本兵もソ連兵も犠牲になる必要のない戦いだった。    抗戦しなければ犠牲は少なかったのではないかという意見もある。しかしおとなしく投降したところでシベリアに送られるだけだったことは歴史が証明している。  スターリンの野望を挫き、国土を守った歴史的な戦いとして占守島の戦いは広く知らしめるべきだと思う。    最後にこの小説のテーマをよくあらわしているくだりを記したい。  焼け野原となった上野を眺めながら「戦争に負けて悔しい」と言う男の子に男が諭す場面がある。  「戦争に勝ちも負けもあるもんか。戦争するやつはみんなが負けだ。このざまをよく覚えておいて、おめえらは二度と戦争なんかするんじゃねえぞ。一生戦争をしねえで畳の上で死ねるなら、そのときが勝ちだ。じじいになってくたばるとき、本物の万歳をしろ」  堂々たる反戦小説だった。  

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2012/05/03

北千島の占守島に取り残された精強な日本陸軍。ポツダム宣言受諾後、そこにソ連が侵攻、戦闘を開始する。 誰も望まない戦争のやりきれなさが心に迫る作品。 2010年刊行。改めて戦争と平和について考えさせる良作だと思うけど、現在進行の領土問題にからむため、この小説に書かれていることを鵜...

北千島の占守島に取り残された精強な日本陸軍。ポツダム宣言受諾後、そこにソ連が侵攻、戦闘を開始する。 誰も望まない戦争のやりきれなさが心に迫る作品。 2010年刊行。改めて戦争と平和について考えさせる良作だと思うけど、現在進行の領土問題にからむため、この小説に書かれていることを鵜呑みにしてソ連批判するのはちょっと危ない。

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2012/04/29

クライマックスの対ソ戦闘。映画「プライベートライアン」のクライマックスを思わせる。極限下を淡々と、そうだから一層、理不尽も悲しみも苦しみも恐ろしさも、そこで一気に結晶していく。

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2012/04/09

 この時代のお話が好きなので期待していました。が、内容はかなりグタグタで、途中からよくわからなくなってきました。10人程度の主要人物の目線での終戦間近の日本・世界を描いていますが、それぞれの人の描写が中途半端になってしまい、心に残らなかったです。あと、ロシア人は必要だったのかな?

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2012/02/12

悲しいけれど美しい物語。浅田文学の美学。 「メトロに乗って」や「鉄道員」に通じるファンタジー小説 空襲、集団疎開、根こそぎ動員などの現実、疎開先から脱走(と成功)、翻訳家の通訳要員としての召集などの非現実(夢物語)。そして、現実と夢の混交。 主人公たちの戦死という結末は、覚...

悲しいけれど美しい物語。浅田文学の美学。 「メトロに乗って」や「鉄道員」に通じるファンタジー小説 空襲、集団疎開、根こそぎ動員などの現実、疎開先から脱走(と成功)、翻訳家の通訳要員としての召集などの非現実(夢物語)。そして、現実と夢の混交。 主人公たちの戦死という結末は、覚めた夢(もう一つの現実)。疎開先から東京に無事帰還する子供との対比。 戦争末期に、北辺の島に残された完全無欠の機甲師団。ある意味ブラックユーモア

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2012/02/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

≪内容覚書≫ 占守島を守る軍隊が、ポツダム宣言受諾を受け入れるまでの様子から ソ連侵攻までの様子が描かれた下巻。 それぞれの立場が選んだ結末を迎える。 ≪感想≫ やはりそういう流れになってしまうのか、という結末。 予想はできているのに、 それでも泣かせてくれるのが浅田次郎だと、改めて思った。 北方領土に関しては、正直、どうでもいいと思っていたけれど、 なるほど、これは確かにおかしいかも、と学べたのは、 個人的に大きな収穫。 ちょっと視野が広がった。 戦争で、前線が悲惨なのは、よく取り上げられる。 でも、赤紙を書く人に、運ぶ人。 医者、通訳、おまけに取り残された立派な隊など、 いろんな視点からの「戦争」が新鮮だった。 私は、赤紙を運ぶ人が一番想像しやすく、切なかった。 軍隊の必要性は頭では理解できるし、 攻められれば当然戦うべきだ、とも思うけれど、 自分の身に置き換えて考えると、 やはり、戦争はお断りしたい。

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2012/01/04

ロシア兵の視点も出てきましたが、あれほどずるいと思っていたロシア兵にも国家としての命令があるのだと気づきました。ひとくくりに見ていたんだなと思いました。 それでも、やはり強制収容の話は、どうしても許せないとその手の本を読むたびに思うのです。 人対人はよくても、国家と国家になると殺...

ロシア兵の視点も出てきましたが、あれほどずるいと思っていたロシア兵にも国家としての命令があるのだと気づきました。ひとくくりに見ていたんだなと思いました。 それでも、やはり強制収容の話は、どうしても許せないとその手の本を読むたびに思うのです。 人対人はよくても、国家と国家になると殺し合いになってしまうというのが本当に身に沁みます。 読んでみて救われたのは、挺身隊の子たちの行く末ですね。それから疎開先から出た子どもたちの行方。 最後はあれで終わらなくても別によかったんじゃないかとも思いますけどね。

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2011/11/24

帝国主義の悲しい末路として終戦後にソ連により起こされてしまった占守島の交戦に至るまでを描いた悲劇でした。やるせない気持ちになりました。

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