マルカの長い旅 の商品レビュー
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そばかすイェシの明るい世界から一転。プレスラーの本気を感じる。 いやあ、凄かった…。 この本に出会えて良かったな、と思う。 苦しい物語だけど、この迫力で、最後まで息もつかせず走り続ける。 戦争によって最も影響を受けるのは子供たち、というのは本当だよね。 アニカ・トールの「ステフィとネッリ」四部作の前書きの通りです。 (あれもユダヤ人の子供の戦争被害の話だけど、こっちは飢えや寒さとの戦い、本当に命からがらの世界だ。) 何がなんだかわからないまま、日常を奪われて、命を奪われた子供がたくさんいたという事実に胸が痛い。 今のウクライナ、当時のポーランドの街ラヴォツネに住む少女マイカは7歳。 シングルマザーで医者のお母さん(ハンナ)、お姉さん(ミンナ)とユダヤ人狩から逃げる途中、家族と離れ、ひとりぼっちになる。 たった7歳。 飢えを凌ぎ、寒さを凌ぎ、頼れる人もときには現れるが、ひとりぼっちなのは変わらない。 あまりのショックに、もう見るのも聞くのも心を動かさなくなる様子が印象的だった。 自分のなかに深く入っていくようにして、自分を守っていくマイカ。 灰色の日常のなか、たまに食べ物をもらえたとき、いい想いをかすかに感じた日を名前をつけて記憶に残していく様子も辛い。 マイカの生死さまようストリートサバイバルと同時に、母であるハンナの子供探しの物語が進む。 もう1人の子供ミンナとの関係、自身の人生との向き合い方、医師であることのプライドと現実、他国の人の心にいらつく様子、どれも苦しい。 親の立場で見るとみると、ハンナの心の葛藤もすごくわかります。 シングルマザーであること、医師であること、でも子供を助ける力はないこと…。 p182 (ハンナがあれほど苦労して国境を越えたのに、またハンガリーに戻ってマイカを探そうと決意するシーン) ハンナの気持ちは引き裂かれた。ミンナの方を見ると、うつむいて泣いている。それを見てハンナは、グループと一緒に先へ行こう、と決心した。もうどうでもいい。何をしたって、間違っているんだから。 ラストもなかなか衝撃的。 どうやって終わるんだろうと思っていたけど、こうなるのか、うーん。 これはリアルな反応かも知れない。疑り深くなるのも当然だし。 うまくいったけど、うまくはいかない。 マイカの心や人生は一旦は粉々になってしまったことがよくわかる。 戦争は絶対にだめだ。 現在のウクライナを舞台にした物語であること、これもまた今を生きる私たちの胸に刺さる。
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2022/12/18日経新聞文化面 松永美穂氏(ドイツ文学者)のエッセイから。舞台となった町ラヴォツネは当時ポーランド、現在はウクライナ。
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再読 1回目の感想---注目のミリヤム・プレスラーの新作が出たので買おうと思っていたら、BS週間ブックレビューで野崎歓氏が紹介してくれた。拍手。児童書であることには全然触れなかった。それにしても徳間さんの児童書部門は冴えている。ありがとう、徳間書店。 すごい。重いのに一気に読ま...
再読 1回目の感想---注目のミリヤム・プレスラーの新作が出たので買おうと思っていたら、BS週間ブックレビューで野崎歓氏が紹介してくれた。拍手。児童書であることには全然触れなかった。それにしても徳間さんの児童書部門は冴えている。ありがとう、徳間書店。 すごい。重いのに一気に読ませる。ラストにはがつんとやられた感じ。しばらく頭から離れない。戦争って、人間って… 2回目---プレスラーは去年2019年に亡くなっている。
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151020読了。 久々のプレスラー作品で、たまたま一冊前に『HHhH』読んだところだったので、あらすじも知らぬままちょっとYA小説で小休止、と思っていたのですが… ずばり、戦時下のポーランドに住むユダヤ人一家が亡命し、途中で母姉と離ればなれにならなくなった7歳の少女マルカの、長い長い半年間が描かれています。 最初は遠足気分だった亡命が、どんどん危険にさらされ、疲労で足も心もくたくた、そんなマルカが亡命一行についていけなくなり、人の家に預けられます。 その後、不遇にも路頭に放り出されてしまったひとりぼっちのマルカは、警察に捕まったり、移送先で母の知人に匿われたり、また別の人に預けられたり… ついに、ゲットーの中にきたマルカは、ユダヤ人の集団移送から逃れ、ひとりぼっちの乞食に。 底のない空腹、凍え、チフスにかかり、ゲットーの病院に入れられ、ついに、母の知人の親戚がマルカを救出しにきます。 ひとりぼっちのマルカは、最初はその救出さえ疑い、何度も抵抗します。 やっと救われ母と再会するラストシーンが、実はハッピーエンドではありません。 いたいけな少女マルカの体と心を蝕んだ逃亡の日々によって彼女が変わってしまったという、絶望と憎しみが、薄い膜のように後味に残る物語です。
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淡々と綴られている感じで、あまり物語性はなかったです。大きな感動はありませんでした。ただ、普通の戦争小説とは違った視点だったので、自分の知識が増え視野が広がりました。
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弾圧されるユダヤ人差別社会のなかで七歳の女の子がひとり 逃げ隠れ生き延びた。 見つかったら殺される。そんな中、母娘の再開がどれほど感動するだろう。 待って待ってようやく見つけたはずの娘は母に残酷な言葉を口にする。 彼女にとって母は遠い過去のできごと。思い出で腹がふくれるわけでない...
弾圧されるユダヤ人差別社会のなかで七歳の女の子がひとり 逃げ隠れ生き延びた。 見つかったら殺される。そんな中、母娘の再開がどれほど感動するだろう。 待って待ってようやく見つけたはずの娘は母に残酷な言葉を口にする。 彼女にとって母は遠い過去のできごと。思い出で腹がふくれるわけでない。 唯一彼女のなかの大きな思い出は飢えから救ってくれたものだけだった。
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読み進めるのがとてもツライ物語でした(−_−;) マルカの再会までの道のりは想像を絶する試練の連続で、母ハンナの様に仕方のない事とはと思えなかった。大人の身勝手さに、「マルカごめんね(T ^ T)」と、申し訳ない気持ちになりました。何もかもが丸く収まるハッピーエンドでない所はさす...
読み進めるのがとてもツライ物語でした(−_−;) マルカの再会までの道のりは想像を絶する試練の連続で、母ハンナの様に仕方のない事とはと思えなかった。大人の身勝手さに、「マルカごめんね(T ^ T)」と、申し訳ない気持ちになりました。何もかもが丸く収まるハッピーエンドでない所はさすがと思いました。 2011年度青少年読書感想文全国コンクール課題図書(高校生)。 2012年2月読書会テキスト。高校生から。
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久し振りのプレスラー作品。WWⅡ下のポーランドでユダヤ人狩りから住まいを追われた女医と娘二人。過酷な逃亡に下の7つの娘マルカが熱を出し、母は匿われていた家にマルカを預けて二人で逃亡を続けます。残されたマルカは身の危険を感じた匿い家から追い出されてしまい見知らぬ町で放置されてしまい...
久し振りのプレスラー作品。WWⅡ下のポーランドでユダヤ人狩りから住まいを追われた女医と娘二人。過酷な逃亡に下の7つの娘マルカが熱を出し、母は匿われていた家にマルカを預けて二人で逃亡を続けます。残されたマルカは身の危険を感じた匿い家から追い出されてしまい見知らぬ町で放置されてしまいます。実在するマルカからプレスラーが聞いた話を膨らませて書いた作品だそうですが、たった7歳の子どもが飢えと寒さに晒されて一人で生き延びる過酷さが胸に迫ります。また置いていかれたことでマルカがお母さんのことをいつしか「ドクター・マイ」と他人のように考えるようになっていくのがなんとも切ないです。ラストの再会の場面もそういった親子の二度と埋められない溝のようなものを暗示していてつらいものがありました。
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まあ表紙で判るとおり,ユダヤ人の悲劇だ~マルカは7歳,ポーランドのラヴォツネ(現ウクライナ)で医者をしている母ハンナと16歳の姉ミンナと暮らしていたが,父はパレスティナのキブツにいる。ドイツ人が何か企んでいると聞いて母は娘二人を連れてとる物も取り敢えず逃げ出す。世話をした農夫の家で若いウクライナ人イヴァンを案内に立て,カルパチア山脈に分け入る。農婦コヴォルスカは一晩の宿を提供してくれ,アントンじいさんは心臓の発作が起きる直前まで案内をしてくれ,農夫ヴワドーは森番の家まで付き添ってくれた。厄介払いしたい森番は,案内人を呼んでハンナは代金として時計を差し出し,国境を越えたが,ハンガリーの警察官は越境してきたユダヤ人を送り返すことに情熱を傾けているらしい。タバコの密売人バルドシュは逃げてきたユダヤ人が利用する山小屋を紹介してくれたが,マルカは夏物のサンダルのひもが擦れて足に炎症を起こしていた。水車小屋にユダヤ人が集まると聞いてコポロヴィツィの家に行くものの,マルカは風邪に加えて敗血症を起こし,後で列車に乗せてブタペストに連れて行くから置いていけという言葉を信じ,上の娘ミンナだけを連れて他のユダヤ人と合流する道を選択した。回復して動物たちと楽しく暮らし始めたが,コボロヴィッツィは警察の手入れがあると聞いて,マルカはピリピーツの町に置き去りにされた。母と姉の旅も苦しかったが,マルカは空腹を満たすために結婚式に紛れ込んだが,警察に連れて行かれてしまい,苦労して越えた山脈をトンネルを潜ってポーランドへと連れ戻されてしまう。ポーランドの警官のダウン症の息子を母が救った縁で,スコーレのジグムントとテレザの家で安心した生活を過ごすことが可能となった。警官の立場を利用してユダヤ人を匿ったことがばれそうになって,スコーレのゲットーの知り合いに預けられるが,ドイツ兵による移住が始まり,慌てて逃げたキリスト教会で知り合った老婦人に匿って貰ったが,移住が終わると誰もいなくなったゲットーに戻った。新しいユダヤ人が移り住んでくると,居場所を失って隠れ住んだ石炭室で食料を探す毎日を過ごしたが,二度目の移住が開始されると,駅に逃げて,子連れの家族の振りをして列車に乗り込み,終点まで行って帰ってくる内に,猛烈な腹痛に襲われ,気を失って再び正気に戻るとストルイのゲットーの中にある病院で,病名はチフスであり,シラミが集るのを嫌って金髪は丸刈りにされてしまった。母を知っている医師は回復しても病院に置いてくれていたが,母がハンナ・マイであることを忘れ,自分はドクター・マイの娘であると考えるようになった。コラドでキリスト教徒の女医として職を得たハンナは置いてきた下の娘マルカを救出にポーランドへ戻ることを決意して,雪のカルパチア山脈を越え,スコーレのジグムントとテレザの家に辿り着く。ストルイのゲットーが移住の対象になり,ゲットー内をうろついていたことが幸いして,アーリア人地区に身を隠し,戻ってきたときには,仲良くなったダウン症の男の子もすべて消えていて,誰にも心を開かない人間にマルカはなっていた。親切な警官の妻テレザは妹と住む母に汽車に乗って迎えに行くことを依頼したが,心を閉ざして殻に籠もったマルカは母と会う機会が訪れたことが理解できず,逃げ出してしまう。二度目はテレザの息子のためにマルカが手縫いで作ったボールを持って迎えに行くが,山小屋に向かう途中で再び逃げ出し,母と再会してもそれが誰だか理解できなかった~高校生向けの課題図書。さあ,高校生はどのような感想文を書くのだろうか。自業自得と書いたら,先生に怒られるだろうね。あとがきは感想文を書く上で不要・・というか,あってはならないものだろうと思ったが,感想文を書くのでなければ,著者のあとがきも,訳者のあとがきも必要だ。感想文を書くのなら興味を持ったことを調べるのが筋だと思うからだけど。おっとっと,私も感想を書くか? いや已めた。印象に残ったのは,戦争では常にシラミが勝者だって部分かな。いやいや違った。「賭けてもいいが,シラミのいない戦争なんてありえんよ。戦争にはシラミがつきもので,どんな戦争でも,勝のはやつらなんだ」
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なんでも経験だ、とはゆうけれど、しなくていい経験ってのもあるよなあ。たまたま手に取ったのが以前ブックレビューで紹介されてた本だったので、これは読まねば、と思って読んだ。昔は7歳だった、というマルカの言葉がいたい。実話をもとにしているというのだから尚更いたい。狩る側にも狩られる側に...
なんでも経験だ、とはゆうけれど、しなくていい経験ってのもあるよなあ。たまたま手に取ったのが以前ブックレビューで紹介されてた本だったので、これは読まねば、と思って読んだ。昔は7歳だった、というマルカの言葉がいたい。実話をもとにしているというのだから尚更いたい。狩る側にも狩られる側にもなりたくない。そして、はたしてあーゆー状況下で自分は助けの手を差し伸べれられるだろうか?逆に、生き延びることができるだろうか?と自問自答。ゲットーにユダヤ人を集めては殺し、集めては殺し、というシステムにぞっとする。人はどこまでも残酷になれるんだなあ。心まで傷つくようなつらい経験を子どもがしなくていい世界になってほしいとつくづく思う。母も子ももうとりかえせないものを失わされた。
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