死者の書・口ぶえ の商品レビュー
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折口信夫文学忌 1887.2.11〜1953.9.3 迢空忌 釈迢空(シャクチョウクウ) 歌号よ 時折、立ち寄る博物館に 折口先生のコーナーが常設されており、再現された仕事部屋等もあり、身近なおじ様と思っていましたが、作品は遥かな感じでした。 今回は、「死者の書」のみ。「口ぶえ...
折口信夫文学忌 1887.2.11〜1953.9.3 迢空忌 釈迢空(シャクチョウクウ) 歌号よ 時折、立ち寄る博物館に 折口先生のコーナーが常設されており、再現された仕事部屋等もあり、身近なおじ様と思っていましたが、作品は遥かな感じでした。 今回は、「死者の書」のみ。「口ぶえ」は、今月、他の作品集に収録されて新刊で出版されるようなので、是非そちらで。コミックにもなっているようです。 柳田國男の高弟、民俗学の基礎を築き、国文学者で国語学者。 1939年 日本評論初出 上代に詳しい方なら、大丈夫かもしれないですが、一読では、理解できず、第一印象は夏目漱石の夢十夜を濃厚にしたような幻想小説でした。 理解できそうなところまで、紐解いてみました。 奈良県の當麻寺(たいまでら)に残る「当麻曼荼羅縁起」が、取り込まれているという事です。 主人公は、中将姫 747~775 藤原鎌足のひ孫で 藤原豊成の娘。才能ある美女。 能にも「当麻」という作品があるようです。 もうひとりの主人公は、大津皇子(亡霊)。663~686 天武天皇の第三皇子。学識、才能あるイケメン。謀反の疑いをかけられて処刑される。 物語の中で 郎女(いらつめ)、姫と呼ばれるのは、中将姫です。郎女は、若い女性を親しんで呼ぶ時の古語。 亡霊の皇子と中将姫の間に100年の時差があり、各章が時間の流れの通りに配置されていないので、 パズルのように各章が収まった時が快感。 オノマトペ的な音の表現があちこちにでてきます。 私のイメージでは、語り部が、語りやすいようにするためなのですが、臨場感が上がるのは確かですね。 以下は、覚書です。 一. 二上山に葬られていた大津皇子の目覚め。 死の際にふと見た耳面刀自(美しさ女性・藤原鎌足の娘)を思い出す。着物は塵となり、裸のままだ。寒い着物を求める。 したしたした 水の音 ニ. 目覚めた皇子の亡霊が見る景色。男達が、藤原南家の郎女を探している。 こうこうこう 魂呼の声 三. 藤原南家の郎女は、結界破りの罪を償う為、万宝蔵院の庵室に匿われる。 付き人の媼が藤原家の古物語を語り聞かせる。 四. 媼の語る大津皇子。耳面刀自への執心。その執心が、やはり美しい郎女をこの地に呼んだのではないかと。郎女は、金色の髪を持つ皇子の亡霊を見る。 五. 蘇った大津皇子の魂が記憶を取り戻す。 妻(山辺皇女)も子も殺された。自分の名さえ残っていないだろうと嘆く。 六. 藤原南家の郎女の二上山へのいきさつ。奈良から藤原の里への許されぬ一人旅。 郎女は写経に取り組む。遂に千部をなす。 しとしと 雨 七. 郎女の神隠し(家出)の様子。 西へ西へ二上山へ。 女人禁制の地へ入ってしまう。僧侶に見つかる。 八. 奈良の都の様子。大友家持登場。昔を懐かしむ。 遷都、火災と藤原家にも厳しい社会。 東大寺四天王像開眼の話題。 九. 大友家持が気の向くままに朱雀大路から、五条、右京と都散歩。最後は、三条まで。藤原家の跡地。 十. 郎女は書物を得る。大切に育てられた郎女は、御簾の中で書物と出会い外の世界を知る。生きる糧として没頭していく。 十一. ウグイス“法華経 ほけきょう”と鳴く。 蓮の茎で糸を紡ぐ、付き人達。 十二. 女人結界を破り寺の浄域を汚してしまった郎女。その処遇は、本人の意思で、自分の咎は自分で償うとして二上山の麓の寺に。 十三. 郎女は、皇子の亡霊の魂の白い玉の幻想を見る。 つたつたつた 亡霊の足音 十四. 大友家持と大師恵美押勝(藤原仲麻呂・姫の父の弟)との 語り。一族の長として気持ちが通じる。 十五. 当麻の里の郎女の謹慎生活。夜毎訪れる亡霊を心待ちにする。 十六. 当麻の里は春から夏へ。女達は蓮の糸を紡ぐ。 種々、鳥達の変化。当時の使用人の様子。 十七. 秋分の日、嵐の中郎女が居なくなる。 あっしあっし 弦打ち 十八. 蓮の糸で布を織る、郎女。切れては織り、織っては切れて。この布で皇子の素肌を覆いたい。 十九. 郎女は布を織り上げる。 裁っては縫い、ほどいて、布は小さくなってしまう。天竺の僧侶のような衣を作る。 二十. 巨大な布に絵を描く。弔いの織物。これが曼荼羅のタペストリーとなる。
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姉御の歌う二上山。闇に眠る皇子が目覚める。 月が照らす峰々を見下ろし、鳥のように砂光る川へ下降する。当麻路へと続くその光景を声にして味わえば、中将姫の、郎女の、大津皇子に重なる天若日子への、尊者への彩画は曼荼羅となる。 なんと美しく狂おしい物語。中将姫へのオマージュ… 女人結界を犯した罪で当麻寺山陰の小さな庵室に籠る藤原南家郎女の、世に疎い純真さと賢さは何処からくるのだろう。 叔父である恵美押勝と大伴の話も絡めた事も面白く、俗世と郎女のストイックさの対比にも思えた。 郎女が織る命の蓮の織物 中将姫の当麻曼荼羅信仰に重なる。 中将姫が蓮糸で織った「当麻曼荼羅」 未完の死者の書続編が気になり仕方ない。 調べたら、安藤礼ニ 著 霊獣「死者の書」完結篇という本があったが古本屋の値段が七千円程だった。入廷した空海と、保元の乱の頼長をどのように絡ませるのか…とても興味がある。 飛鳥、奈良時代好きにとっては面白い小説だった。
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死者の書は何度も読み返し、その度に魂を奮わされてきた。初稿も読み、人形劇の映画も観たし、近藤よう子の漫画も読んでいる。大坂に単身赴任時に当麻寺や二上山には何度も足を運んだ。 口ぶえも既読。 死者の書の続篇について知ったのは、中沢新一さんの本からだったかな。 概要を知って、それほ...
死者の書は何度も読み返し、その度に魂を奮わされてきた。初稿も読み、人形劇の映画も観たし、近藤よう子の漫画も読んでいる。大坂に単身赴任時に当麻寺や二上山には何度も足を運んだ。 口ぶえも既読。 死者の書の続篇について知ったのは、中沢新一さんの本からだったかな。 概要を知って、それほど食指が動いた訳ではなかったんだけど、本屋の棚に見付け、読んでみた。 従って、このレビューは続篇についてのみ。 左大臣の名が明かにされないのは、本編(?)で亡霊の名が伏せられているのと共通している。読み始めて、あっさり折口の文章に絡め獲られる。 住吉から堺の古墳群を望み、学文路(かむろ)の寺に逗留する。高野山に行く南海電車にそんな駅あったなと思うが、そんな立派な寺あるんかな。当麻寺との繋がりも示唆されて、おっという気持ちになる。 房主と左大臣との対話の占いの話から日京卜からキリスト教らしき唐の不思議の術に話が及ぶ。初稿でも郎女の観想する阿弥陀の姿がキリストを彷彿としていたことを思い出す。このあと、どういう展開だったんだろう。知る術もないんだけどね。
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文庫2010年 折口信夫 「死者の書」1939年、1943年増補校訂 「死者の書 続篇」1948年? 「口ぶえ」1914年 注解・解説(安藤礼二)、関連系図、関連地図 NOTE記録 https://note.com/nabechoo/n/na14c3e69455b 「死者の書...
文庫2010年 折口信夫 「死者の書」1939年、1943年増補校訂 「死者の書 続篇」1948年? 「口ぶえ」1914年 注解・解説(安藤礼二)、関連系図、関連地図 NOTE記録 https://note.com/nabechoo/n/na14c3e69455b 「死者の書」 下地になるのが、奈良・當麻寺たいまでらに伝わる中将姫伝説、大津皇子(滋賀津彦)の史実、山越しの阿弥陀像、あたりが組み合わされている。加えて、大伴家持と恵美押勝、天若日子あめわかひこ神話、日想観などで構成。「執着」からの解放。 最初に読んだのが、中公文庫の「死者の書」で、思いのほか気に入ってしまったので、こちらの岩波版も読んでみようと買ってしまった。あと気になるのが角川ソフィア文庫の。機会があれば見てみよう。 こちらは中公文庫のものに比べると、文字のサイズは小さくなっているが、読みやすい文体になっていると思う。何より詳細な解説があり、この難解な作品の理解に非常に役立ち、助かる。満足度高し!
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夢幻能のような小説である。 折口信夫『死者の書』、1939年に書かれた幻想小説だ。長くはないが濃密な、この異色の傑作を読むにあたっては、いくらかの知識を事前に仕入れておいた方が良い。これから書くことは所謂ネタバレだが、古代史に相当詳しい人でない限り、この予備知識によって謎解きの...
夢幻能のような小説である。 折口信夫『死者の書』、1939年に書かれた幻想小説だ。長くはないが濃密な、この異色の傑作を読むにあたっては、いくらかの知識を事前に仕入れておいた方が良い。これから書くことは所謂ネタバレだが、古代史に相当詳しい人でない限り、この予備知識によって謎解きの楽しみを奪われたと感じることはないと思うので、このまま書き進める。独力で折口の仕掛けに挑んでみたいと思う人は、ここで引き返されたい。 物語の舞台は奈良県葛城市、二上山(ふたかみやま)の麓にある当麻寺(たいまでら)である。七世紀に建立されたこの仏教寺院には、当麻曼荼羅(たいままんだら)と呼ばれる織物が保管されている。中将姫と呼ばれる藤原家ゆかりの女性が、蓮糸を用いて一夜で織り上げたという伝説のある織物だ。姫はこの功徳によって、生きながら極楽浄土へ召されたと伝承にある。 この中将姫が『死者の書』のヒロインである。難解な語り口のため挫折率が高いといわれる作品だが、「中将姫(藤原南家郎女)がいかにして当麻曼荼羅を織り上げたか」を幻想味たっぷりに描きだした、いわば架空の縁起物語であるという大筋を押さえておけば、幾重にも錯綜する語りの中で迷子になることはないだろう。 そしてもうひとつ、中将姫伝説と並んで、この作品には重要なモチーフがある。姫の誕生に先立つこと百年、天武天皇の子として生まれながら、謀反の罪で処刑され二上山に埋葬された、大津皇子(おおつのみこ)の悲劇がそれである。〈した した した〉という印象的な水滴の音とともに冒頭で目覚めるのは、大津皇子の魂だ。皇子の辞世の句とされる歌が万葉集に残されている。 ももづたふ磐余(いわれ)の池に鳴く鴨を今日のみ見てや雲隠りなむ 折口の想像力は、中将姫と大津皇子というふたつの傑出した魂を、藤原一族の血と、二上山というパワースポットを媒介としてめぐり逢わせた。それは別の言い方をすれば、百年の時を越えて成就する、スピリチュアルな恋の記録だったかもしれない。 『死者の書』を読むにあたって知っておくべき最低限の予備知識は、このくらいだ。あとはただ、折口の魔術的な語りに身をゆだねていれば良い。古代人の魂魄が憑依したかのごとき、折口のほとばしる情念を感じとることができれば、それで良い。稀代の民俗学者にして歌人であった折口信夫が、自身の持てる全てを注ぎ込んだ作品。〈死〉を冠する題名とは裏腹に、これほど生き生きとした古代人の息吹が感じられる小説は、そうあるものではないのだから。
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「彼の人の眠りは、徐かに覚めて行った。まっ黒い夜の中に、更に冷え圧するものの澱んでいるなかに、目のあいて来るのを、覚えたのである。 した した した。耳に伝うように来るのは、水の垂れる音か。ただ凍りつくような暗闇の中で、おのずと睫と睫とが離れて来る。」 『死者の書』の冒頭。「彼の人」とは誰か? 謎めいた出だしにぐっと引き込まれる。次に、「した した した」という擬音音が、雫の落ちる音だと知って驚く。闇の中に、生者とも死者ともつかぬものが身を起こす不気味さ。第一章が魅力的だ。 他の章でも、独特な擬音語が登場する。「のくっと」身を起こす様、「こう こう こう」と魂を呼ぶ声、「つた つた つた」また「あっし あっし あっし」という足音、「はた はた ゆら ゆら」という機織りの音。異世界に連れて行かれるような心地がする。 ただ、筋立てが難解。ネタバレになるが、本来の筋立ては、「当麻寺を訪れた少女(郎女)からはじまり、「当麻のみ寺のありの姿」を模した曼陀羅を織り上げ、描ききることで、自身が目覚めさせてしまったこの世に「執心」を残して死んだ死者の想いを昇華させる少女(郎女)で終わる」(解説より)。 私には、「自身が目覚めさせてしまった」「死者の想いを昇華させる」の部分が読み取れなかった。丁寧な解説抜きでは、ほとんど理解できなかったと思う。 筋立ては理解できなくとも、郎女の見た俤人の神々しさ、一心に仕上げた衣の輝きが、胸に残った。また読んでみたい。
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なるほどわからない。「死者の書」は途中で飽きて文字なぞっただけで読了ということにしてしまったけど「口ぶえ」はなかなか興味深いBLだったのでちゃんと読んだ。私は清らかな渥美より男くさい岡沢のほうが好きだわ。我ながら浅い読み方しかできてないのが丸わかりの感想。
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内容は難解。ただ、日本語の使い方が恐ろしい。例えば石棺の中で蘇った死者に垂れる雫の音「した、した、した」。その死者が人を呼ぶ声「こう、こう、こう」。朝が来て東の空が「ひいわりと」白んでくる。昔の人は語彙が少なかったというが、こういう表現を目にするとよほど伝わってきてむしを恐ろしい...
内容は難解。ただ、日本語の使い方が恐ろしい。例えば石棺の中で蘇った死者に垂れる雫の音「した、した、した」。その死者が人を呼ぶ声「こう、こう、こう」。朝が来て東の空が「ひいわりと」白んでくる。昔の人は語彙が少なかったというが、こういう表現を目にするとよほど伝わってきてむしを恐ろしい。
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難解で、とりあえず読んだーという感じ。解説を読むと少しわかって面白い。謎解きのような、頭の片隅に置いておいて、少しずつ折に触れて、スッキリしていくといいな。 口ぶえはどちらかというと読みやすかった。
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