“文学少女"と恋する挿話集(3) の商品レビュー
かなりスピンオフ度の高い短編集
竹田千愛ちゃんが表紙を飾る短編集第3弾だが、実際に出てくるのは竹田“先生”である。口絵や挿絵も脇役陣が幅を利かせており、内容的にもかなりスピンオフ度の高いものとなっている。なので、主要キャラを愛でる向きには物足りないかもしれないが、ストーリーは相変わらずの充実振りを見せる全10編...
竹田千愛ちゃんが表紙を飾る短編集第3弾だが、実際に出てくるのは竹田“先生”である。口絵や挿絵も脇役陣が幅を利かせており、内容的にもかなりスピンオフ度の高いものとなっている。なので、主要キャラを愛でる向きには物足りないかもしれないが、ストーリーは相変わらずの充実振りを見せる全10編である。 ・“文学少女”と炎を上げる牛魔王(ミノタウロス) ・“文学少女”の今日のおやつ ~『好色五人女』~ ・“文学少女”と恋しはじめの女給(メイド)書き下ろし ・“文学少女”の今日のおやつ ~『谷間』~ 基本的には心葉と遠子先輩の日常的なやり取りを中心とした小品群。書き下ろし以外は FBOnline 掲載の Web 版が初出である。またしても登場の牛園クンには抱腹絶倒必至だが、遠子先輩にはヘンな属性が付いてしまったような気がする。心葉のノートを「拝借」するのはまだ良いとして、テストの結果がアレだからってあんまりでしょう。魚谷紗代ちゃん視点の書き下ろしも微笑ましいが、恋心の始まりが少し唐突で強引な気もする。 ・傷ついた紳士(テノール)と穢れなき歌姫(ソプラノ)書き下ろし ・卵の歌姫(ディーヴァ)と彷徨える天使(エンゲル)書き下ろし 琴吹さんの親友だった水戸夕歌の「失われる前の過去」と「受け継がれる未来」と言うべき、絶望と希望が交錯する話。この2編が最もスピンしてオフしており、もう1人の歌姫などは本編に全く関係なかったりする。 ・遠子おばタンの秘密(書き下ろし) ・迷える仔鹿(バンビ)と嘘つき人形(ドール) ・頑張る仔鹿(バンビ)と臆病な旅行者(ホリー)書き下ろし ・道化(ピエロ)のつぶやき(書き下ろし) 最初の1編に遠子先輩が登場するも、続く3編への序章の意味合いが強い。実質的には千愛ちゃんと流人クンの「その後」と、“バンビちゃん”こと仔鹿里佳との関わりの中に“ティファニーちゃん”こと堀井彩世が絡む話で、一応、本編の期間内ではあるが7年後の話だったりする。相変わらずの二面相振りが悲涙を誘う竹田先生だが、この理解者たる流人クンとの関係性が、2人の女子中学生に伝播していく良さがあった。千愛ちゃんの最後の心変わりにも希望を見出したい。
DSK
人それぞれが持つ心の影や歪み、ほのかな希望…このシリーズの核を純粋に継承しつつ展開されるストーリーがほろ苦い。本を閉じても物語りは終わらないんですものね。成長していく千愛ちゃんがまた可愛いわ。
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恋に敗れた「炎の闘牛」、柔道部の牛園くん。それでも遠子を思いきれず、思い出が欲しいと心葉に詰め寄り……『"文学少女"と炎を上げる牛魔王』、クラスにも、気安い笑顔を向けてくる担任の竹田千愛先生にもなじめない中学生の仔鹿だが──『迷える仔鹿と嘘つき人形』ほか、遠子...
恋に敗れた「炎の闘牛」、柔道部の牛園くん。それでも遠子を思いきれず、思い出が欲しいと心葉に詰め寄り……『"文学少女"と炎を上げる牛魔王』、クラスにも、気安い笑顔を向けてくる担任の竹田千愛先生にもなじめない中学生の仔鹿だが──『迷える仔鹿と嘘つき人形』ほか、遠子の想いを目にした紗代や、夕歌と毬谷先生の出会いなど、甘くほろ苦いエピソードが満載! 物語を食べちゃうくらい愛する"文学少女"と、彼女を取り巻く人々の、恋する挿話集第3弾!!
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※このレビューにはネタバレを含みます
挿話集③。 本編のその後が多いもの。 [炎を上げる牛魔王] 遠子先輩に嫌われても想いを忘れられなかった牛園先輩が前に進むための話。 相変わらずな先輩だけどほろ苦い青春という感じ。 [おやつ『好色五人女』] 口では言えない思いを文に載せて。 英語の宿題を翻訳したノートをつまみ食いしてしまったて、どっかに出てきてたね。 [恋しはじめの女給] 遠子先輩が麻紀先輩にさらわれた夏休みの紗代ちゃん視点。 珍しく遠子先輩の気持ちが語られる話でもありました。 [おやつ『谷間』] 哀愁を漂わせる遠子先輩に甘い話を書いてあげたら原因に驚いた話。 それでよく国立に・・・ [傷ついた紳士と汚れなき歌姫] ななせの親友夕歌とその彼氏になったマリちゃんの出会い。 この先の展開を知っているだけに、幸せそうな展開が逆に辛い。 [卵の歌姫と彷徨える天使] かつて罪を犯したマリちゃんが、出所して再び歌姫に関わってしまう話。 確かに許されざる罪を犯したのは事実で、忘れてはいけないものなのだけども切ない。 [遠子おばタンの秘密] 麻貴先輩と流人の子供が生まれて、遠子先輩がおばタンになってしまった話。 確かに大学生でおじさんおばさんは嫌だなあ。 楽しかったです。 [迷える子鹿と嘘つき人形] 人の心が分からないちぃが学校の教師になってて、生徒のために奔走する話。 思春期生徒は更に多感だろうに、よく先制という職業を選んだと驚いた。 [頑張る子鹿と臆病な旅行者] [道化のつぶやき] 相変わらずの思春期女子の教師をしているちぃの話。 30代になったとは随分と時間が立ってることで。 苦しみながらも進んで、子供を生んだあとも幸せになってほしい。 そしてできれば、その後の物語も読みたかった!
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本編後日談を軸とする短編集10本。心葉や遠子、ななせはほぼ登場せず。夕歌と毬谷の邂逅は、本編上の二人の結末からみて、毬谷の欺瞞、内実のなさ、仮面にやり切れなさを感じる。彼の言葉がたとえ一面の真実を照射していたとしてもだ。文意とは逆の裏面や真意を知りながらの小説読書は、本来は反則技。他方、キャラの真意を多面的に解釈するには、何気ない文や語句に注目すべきだし、それが小説読みの醍醐味なのも確か。文章で直接語られない真意を読み解くべしテーゼを、メタ的手法で意識・自覚させた本巻には賛辞を惜しみたくない。ラスト2。
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(★★★★ 4)短編集その3。作者が特にこの作品への思い入れが強く、どのキャラクターにも愛着があることがうかがえる。それでなければ1冊だけにしか出てきていないキャラクターの後日譚や心情などを書けるとは思えない。読んでいてそう感じられた。面白かったのは流人と麻貴の子供が生まれ、遠子...
(★★★★ 4)短編集その3。作者が特にこの作品への思い入れが強く、どのキャラクターにも愛着があることがうかがえる。それでなければ1冊だけにしか出てきていないキャラクターの後日譚や心情などを書けるとは思えない。読んでいてそう感じられた。面白かったのは流人と麻貴の子供が生まれ、遠子と流人の母親がその子供を見に来るエピソード。麻貴の毒舌が不謹慎ながら読んでいて笑いがこみあげてくる。あと、千愛の後日譚も掲載されている。このキャラクターにはあまり親近感を抱けないのだが、教師となり千愛自身も成長しているのだなと感じられた。
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今回は毬谷先生と竹田さんにスポットが当てられている作品になっています。毬谷先生の話は読んだのがだいぶ前で思い出すのに時間がかかってしまいましたが、本編前、本編後の話と収録されていて、思い出すと同時にかなり切なくなりました。竹田さんのその後の話では人間として成長している竹田さんの姿...
今回は毬谷先生と竹田さんにスポットが当てられている作品になっています。毬谷先生の話は読んだのがだいぶ前で思い出すのに時間がかかってしまいましたが、本編前、本編後の話と収録されていて、思い出すと同時にかなり切なくなりました。竹田さんのその後の話では人間として成長している竹田さんの姿が見れて満足でした。 あとは牛園さんの再登場に個人的に沸きました。本当にこの人には幸せになって欲しいです。
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ちぃちゃん、変わりましたね。 もう、人間失格なんかじゃないです。 流人くんと幸せになってほしいです。 他にも、色んなお話の番外編がたくさんでした。 ほろ苦くて少し切なくなる、そんな一冊でした。
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シリーズ番外編第3弾。今回も、短編を10編収録しています。 柔道部の牛園先輩が再登場する話では、遠子にヤキモチを焼いてしまう心葉が新鮮でした。そのほか、本編で麻貴の別荘を遠子と心葉が訪れたときの話を、メイドの魚谷紗代(うおたに・さよ)の視点から描いた話や、本編のずっと後、鞠谷敬...
シリーズ番外編第3弾。今回も、短編を10編収録しています。 柔道部の牛園先輩が再登場する話では、遠子にヤキモチを焼いてしまう心葉が新鮮でした。そのほか、本編で麻貴の別荘を遠子と心葉が訪れたときの話を、メイドの魚谷紗代(うおたに・さよ)の視点から描いた話や、本編のずっと後、鞠谷敬一が新田晴音(にった・はるね)という少女の「天使」になる話、中学教師になった千愛が仔鹿里佳(こじか・りか)と生徒の物語などがあります。
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過去の話と未来の話と。 ちぃちゃんはこのシリーズの中で、準主役みたいな感じですね。 流人くんとうまくいってるようで、良かったです。 夕歌の話はその後を考えると切ない感じ…。 三島由紀夫の潮騒は、あまちゃんの「潮騒のメモリー」の「来てよ、その火を飛び越えて」の元ネタの「潮騒」(の...
過去の話と未来の話と。 ちぃちゃんはこのシリーズの中で、準主役みたいな感じですね。 流人くんとうまくいってるようで、良かったです。 夕歌の話はその後を考えると切ない感じ…。 三島由紀夫の潮騒は、あまちゃんの「潮騒のメモリー」の「来てよ、その火を飛び越えて」の元ネタの「潮騒」(の原作)なんだと、今更気づきました。 原作も知らなければ、映画も知りませんが…。 心葉くんは小説の表現だから良い…というようなことを言っていましたが、映画化も結構されてるようですね。 「ティファニーで朝食を」が好きというキャラが他にいた気がする…と思い当たったのが、辻村深月の「太陽の坐る場所」の水上由希ですね。 全然違う2人なのに、「ティファニーで朝食を」の気に入っている部分(内容)は似ている気がして、何か面白いなと思いました。 いつか読んでみようかな。
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