神の棄てた裸体 の商品レビュー
『神の棄てた裸体~イスラームの夜を歩く~』 石井光太氏はの本を何冊か読んでいる。優れたジャーナリストだと思っているが、その著書は浅く読めばそれなりに、深く読めばより多くを学ぶことができる仕掛けが埋め込まれている。ノンフィクションは事実を描く。といっても、著者が切り取った事実だから...
『神の棄てた裸体~イスラームの夜を歩く~』 石井光太氏はの本を何冊か読んでいる。優れたジャーナリストだと思っているが、その著書は浅く読めばそれなりに、深く読めばより多くを学ぶことができる仕掛けが埋め込まれている。ノンフィクションは事実を描く。といっても、著者が切り取った事実だから、そこに作為は生じる。つまり、描かれるのは事実の一端である。そして、それを読んで、何を思うのかは読者に委ねられている。読者には浅く読む人も深く読む人もいるだろう。その両者を視野に入れた「ダブルミーニングの書き方」が石井光太の真骨頂である。 イスラム世界の性を取材した本書。性から人間を浮き彫りにする試み。そこに着眼したのが著者の慧眼である。 思えば、『21世紀への対話』も性の話題から始まる。それは「赤裸々な人間の話から始めよう」という企みであった。
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本のタイトルからそこまでの興味がわかずにずっと積読してありやっと。 自分では石井光太さんと同じことは絶対にできないから、こうやって本にされ読める事がすごいことだと思いながらあっというまに読み終わり。 この方の文章は読みやすく引き込まれる。 旅で出会ったいろんな人々の話。自分の全く...
本のタイトルからそこまでの興味がわかずにずっと積読してありやっと。 自分では石井光太さんと同じことは絶対にできないから、こうやって本にされ読める事がすごいことだと思いながらあっというまに読み終わり。 この方の文章は読みやすく引き込まれる。 旅で出会ったいろんな人々の話。自分の全く知らない世界。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
著者の本は3冊目の読了となりましたが、手に取る度にいろいろ考えさせられます。 本書はイスラームの国々を訪れ、都会や観光地を巡るのではなく、それぞれの国が抱える闇に潜入し、「性」をテーマに取材をすすめる潜入ルポ。 まだまだ勉強不足な私にはイスラームといえば中東の国々だと思っていましたが、東南アジアにも多くのイスラーム教徒がいることを知りました。 敬虔なイスラーム教徒であればある程、厳しい戒律を重んじ、その中で生きています。 私の勝手な思い込みかも知れませんが、宗教とは私も含め多くの日本人には理解し難いものだと思っています。 それが故に本書にも書かれている「一夫多妻制」等は誤ったイメージを持っていた事にも気づかせてもらいました。 どことなく、権力や金を持つ一部の人が複数の妻をめとっているのだと何となく思っていましたが、イスラームの教えでは女性は外で働くことも許されていません。 だから、虐殺や戦争などで多くの若い男性がいなくなった後、残された女性を助ける為に多妻制が自然と出来上がったという事実は私の記憶に刷り込まれました。 そして、最下層で生きていく弱者とは何処の国でも女性と子供達、病に侵された人やジェンダーだという事実。 そこには生きていく為に体を売ったり、犯罪に手を染めたり、ドラッグに手を出したりする姿が生々しく描かれていました。 そして、そんな弱者を食い物にする人々がいることも。 過日読み終えた「絶対貧困」とも通ずる世界。 しかし、本作では「絶対貧困」で描かれた闇の部分のみならず、最下層で生きていく弱者の人々が、どう考え、どう思い、何を求めるのか、もう一歩踏み込んだ視点で描かれていたように思います。 本作を読みながら、著者が現場で感じたリアル、苦悩、無力感...そのままを書き記して頂いたことに只々感謝と尊敬の念を禁じ得ない。 私にはこの現実を変える力なんてありません。 しかし、世界中の全ての人が「自分には無理だ」と何もしなければ、何も変わることもない。 何かが出来る訳ではないが、せめて現実の世界で起こっている事実として受け止めようと思います。 説明 内容紹介 イスラームの国々では、男と女はどのように裸体を絡ませ合っているのだろう──。「性」という視点からかの世界を見つめれば、そこには、性欲を持て余して戒律から外れる男女がいて、寺院の裏には神から見放された少女売春婦までがいる。東南アジアから中東まで旅し、土地の人々とともに暮らし、体感したあの宗教と社会の現実。戦争報道では分からない、もう一つのイスラーム報告。 内容(「BOOK」データベースより) イスラームの国々では、男と女はどのように裸体を絡ませ合っているのだろう―。「性」という視点からかの世界を見つめれば、そこには、性欲を持て余して戒律から外れる男女がいて、寺院の裏には神から見放された少女売春婦までがいる。東南アジアから中東まで旅し、土地の人々とともに暮らし、体感したあの宗教と社会の現実。戦争報道では分からない、もう一つのイスラーム報告。 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 石井/光太 1977(昭和52)年、東京生れ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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"人の温もりが欲しいから抱かれる”この本に書かれていることは、遠い国で起こっていることなのだが、身近にもそういう人はいるのではないだろうか。数冊、石井氏の本を拝読しているが、その中では希望のある話が多いように感じられた。 今回のテーマが”性”についてだからなのだろうか。...
"人の温もりが欲しいから抱かれる”この本に書かれていることは、遠い国で起こっていることなのだが、身近にもそういう人はいるのではないだろうか。数冊、石井氏の本を拝読しているが、その中では希望のある話が多いように感じられた。 今回のテーマが”性”についてだからなのだろうか。性について語るときに、切り離すことができない愛や恋というものは、どのような境遇や国でも楽しくワクワクするものなのだろう。 といっても、辛く救いのない章が多いことに変わりはない。日本兵のレイプや僅か12歳の少女の売春。 そのような非情な現実を石井氏は包み隠さず、文章にしている。加えて、そのような境遇であっても明るく生きている人もいるという事実も同じように文章にしている。故に、石井氏の文章はリアルなのだと思う。 自分の近くにも、辛くとも明るく生きている人もいれば恵まれているにも関わらず自分から道を踏み外す人もいる。 この本を読んだ感想が「知っているだけではなにもできない」だけでは余りにも悲しい。 できないことには変わりないが、どんな境遇であっても幸せな人生を送る人もいるという部分に私は勇気をもらった。 (ヒジュラの話や、一夫多妻制の集落の話は特に) また、「知っているだけ」という人が増えれば、経済が動くのかもしれないという希望くらいはもっていてもいいのかもしれない。
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ほとんどの世界で大っぴらに語るのは憚れる性。そのなかでも 厳格な戒律に基づいて生きるイスラム世界の人々の性に焦点 を当てたのが本書。 大きな括りでは「イスラムの性」なのだが、著者がこれまでにも 追って来た底辺で生きる人々のルポルタージュと根っこは同じ。 蔑まれ、虐げられ、それ...
ほとんどの世界で大っぴらに語るのは憚れる性。そのなかでも 厳格な戒律に基づいて生きるイスラム世界の人々の性に焦点 を当てたのが本書。 大きな括りでは「イスラムの性」なのだが、著者がこれまでにも 追って来た底辺で生きる人々のルポルタージュと根っこは同じ。 蔑まれ、虐げられ、それでも生きて、生き延びる為に、彼ら・ 彼女らは性を売り物にする。 生きて行く為に路上でゴミ拾いをする兄弟。だが、それだけでは 家族の生活を支えられない。兄は男娼として不足分を稼ぐ。 弟にはこんなことはさせたくない。だが、弟は兄を少しでも 助けようと、兄には内緒で同じように大人の男と姿を消す。 公園で暮らす浮浪児たち。12歳にもならない彼女たちは大人たち に体を売ることで生き延びる。それは、抱きしめて欲しいから。 どんなに無茶なことをされても、ただ、ぎゅっと抱きして欲しいから 言われるままに体を預ける。 著者がところどころで取材相手に投げかける言葉は浅はかだ。 だが、それは日本という恵まれた場所に生活する者たちの 思いを代弁しているのかもしれない。 次から次へと繰り出されるエピソードは非常に重い。結婚前に 男との逢瀬を繰り返していた娘を、自らの手で葬らなければ ならなかった父親の話なんて、途中で本を閉じてしまった。 世界の片隅は私たちの道徳や倫理感を超えたところで、 生き抜こうとしている人々がいる。 本書で気になるのはある程度の脚色がなされていることと、 盛り込まれたエピソードがパターン化していることかな。 ただ、一夫多妻という婚姻関係については目からうろこの 部分もあった。 そろそろ石井さんも他の分野を書かないとマンネリ化しそうだな。
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ネタバレ 2014(底本2011)年刊。著者の本は3作品目。貧困・差別問題が主軸、潜入ルポ形式、一人称語りの叙述は、他書と共通。本書は、イスラム圏、あるいは国内にイスラム教徒を抱えている国々の探訪録。とりあえず読んで欲しいが、イスラム教の戒律の厳しさのため、ゲイにも関わらず性器を取り除かない、少年の兄弟2人が男娼として生活する様、ストリートチルドレンが生み出されていく様、銃の整備方法を教えなければ食べていけない部族、そして部族で生きていくために娘を殺した父、抱きしめられたいがために体を売る少女等々を赤裸々に描述。
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この地上に 一人でも 飢えている人が いる限り 私たちの 食事は どこか楽しくは ないでしょう この地上に 一人でも 差別されている人が いる限り 私たちの 遊びは どこか楽しくは ないでしょう ひとつぶの 麦を ひとつぶの 汗を ひとつぶの 怒りを ひとつぶの 涙を...
この地上に 一人でも 飢えている人が いる限り 私たちの 食事は どこか楽しくは ないでしょう この地上に 一人でも 差別されている人が いる限り 私たちの 遊びは どこか楽しくは ないでしょう ひとつぶの 麦を ひとつぶの 汗を ひとつぶの 怒りを ひとつぶの 涙を ※「ひとつぶの涙」笠木 透さん の 詩より 今の日本で 何も考えずに暮らしていたら ここに書かれてある実態とは 全く無縁に暮らすことはできるだろう 今の日本で 何も思わずに暮らしていたら ここに書かれてある実態は 全く無視すべきものとして捨て置かれるだろう だからこそ 次の人に手渡したい一冊です
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何回か定期的に読まないといけないと思う。日々に倦やないように。日々意図的に見逃している多くのことを見直すために。
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インド政府は女性への不妊手術を推奨、手術をすれば補償金(七百五十円)がもらえる。貧しい階層の女性たちは不妊手術の後、売春宿で働かされ、住む家を持たない女性浮浪者たちは、数日生活できる金欲しさに手術を行う。隣国バングラデシュ、ダッカの売春婦は豊満さ求めてステロイド中毒者になってい...
インド政府は女性への不妊手術を推奨、手術をすれば補償金(七百五十円)がもらえる。貧しい階層の女性たちは不妊手術の後、売春宿で働かされ、住む家を持たない女性浮浪者たちは、数日生活できる金欲しさに手術を行う。隣国バングラデシュ、ダッカの売春婦は豊満さ求めてステロイド中毒者になっているのだとか、社会のひずみは弱いところに色濃く表れる。日本も遠い国のことだといってはいられない、低所得者の子供の虐待は増え続け、昨今TVのニュースをにぎわす。
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「性」視点からのイスラム世界報告。目を覆いたくなる現実。どうにかしてあげたい、となる。でも、今その中で必死に生きている人にとってそれはこちらの思い上がりでしかない。輪の中に入っている人に対してよりも、輪に入らずにすむような知恵の方が貢献できるのではないか。
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