世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(下巻) の商品レビュー
以前村上春樹の読書会に参加した時、その参加者のほとんどがクリストファーノーランの作品が好きで、「ノーランは絶対にハルキを読んでる!」と口を揃えて言っていたことが、何となく腹落ちするようなラストだった。 インセプションか〜。
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これは素晴らしい。内容も分かりやすく、何より設定がおもしろい。村上春樹は奇想天外を読者の体温に溶け込ますのが上手で、この本では特にその傾向が見られた。最高傑作と名高いだけある。
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何読目だろう。 20歳に入る少し前くらいにこの本に出会って、20代の前半のうちに3回は読み直していると思う(読み返した回数はたぶん『ねじまき鳥クロニクル』の方が多いけれど)。 社会人になった後も読み返した記憶がある。それが20代の後半だったのか、30になってからだったのかは覚えて...
何読目だろう。 20歳に入る少し前くらいにこの本に出会って、20代の前半のうちに3回は読み直していると思う(読み返した回数はたぶん『ねじまき鳥クロニクル』の方が多いけれど)。 社会人になった後も読み返した記憶がある。それが20代の後半だったのか、30になってからだったのかは覚えていないけれど。そして40になってまた手に取ることになった。少なくとも5回目、もしかしたらもっと読み返しているかもしれない。 そんなに読み返す小説はもちろん少ない。村上春樹でも『ねじまき鳥』くらいしかないし、後はたぶん京極夏彦の『鉄鼠』と『狂骨』と『絡新婦』くらいだと思う(好きな作品は? って聞かれたら『魍魎』をあげる気がするけれど、なんだか『魍魎』は読み返す気がしなくて、そこまで読み返してはいない。そしてたぶんここから先『巷説』シリーズは何度も読み返すことになると思う)。 40になって読み返した感想は、「これってこんなに静かな小説だったっけ?」ということだ。印象としてはもっとドラマティックな小説だという手触りが残っていた。それはたぶん大男が「私」の部屋を散々に破壊する場面であったり、やみくろの世界を冒険する場面であったりが20代の僕の心を捉えたからだろう。いや、記憶の中では「僕」と僕の影との別れももっと激しいものとして刻まれていたのに、それはひどくあっさりと静かなものだった。 それはもちろんこの20年の間に僕自身が大きく変化したことによるものだろう。その変化の中には喪失も当然含まれる。そして僕は僕なりの「壁」や「川」を持つ「街」を作り上げたのだと思う。それがきっと本の読み方を変えたのだ。 今回、村上春樹を読みたいと思ったのは、たぶんカミュの『ペスト』が引き金になっている。カミュを読もうと思ったのはもちろんコロナ禍を経験したことが大きいだろう。たぶんまた何年後かに、僕は何かをきっかけに この本を手に取るのだろうと思う。 そんなことを確信させる本は少ない。 そんな本に出会えたことは僥倖だと思う。 そしてきっと僕のような付き合い方をしている人が、大勢いるのだろう。 だから名作と言われるのだと思う、たぶん。
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世界の終わりのぼくが夢読みしている古い夢は、ハードボイルドのぼくがシャフリング能力をつけた時に計算士達に壁に押し込まれた記憶?(推) 朝刊などぼくの感情に強く結びついたエピソードに出てくるフレーズが、再度出てくる事によって読者がぼくと読者の感情がリンクしていく。 ペーパークリップ...
世界の終わりのぼくが夢読みしている古い夢は、ハードボイルドのぼくがシャフリング能力をつけた時に計算士達に壁に押し込まれた記憶?(推) 朝刊などぼくの感情に強く結びついたエピソードに出てくるフレーズが、再度出てくる事によって読者がぼくと読者の感情がリンクしていく。 ペーパークリップもそう、どこにでもあるものが絶対ない状況にいつもあることへの違和感が、ストーリーを繋げてくれるので、すんなり二つのストーリーを交互に読み進められるのだろう。 やみくろの巣が国会議事堂前にあるなんてヘンテコすぎて大好き。 世界は数多くの示唆で満ちているのだ。
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ワンダーランドの方の描写が主人公の性格のどういったところを表してるのか細かく拾っていけばもっと楽しめるのかな。 あとやみくろをどう捉えたらいいのか、、、 まだあれはなんやったんやろっていうのがいくつかあるからもっと深く考察してもう一回読めばさらに面白くなるかもしれない。 あとは比...
ワンダーランドの方の描写が主人公の性格のどういったところを表してるのか細かく拾っていけばもっと楽しめるのかな。 あとやみくろをどう捉えたらいいのか、、、 まだあれはなんやったんやろっていうのがいくつかあるからもっと深く考察してもう一回読めばさらに面白くなるかもしれない。 あとは比喩が多くて例えが面白いところと「??」ってなるところが半々くらいやったかなぁ
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考えさせられる言葉が多く、手を止めて目を瞑り考える時間が多かった。 終盤の「終わり」を感じさせる表現が切なくて涙が出た。
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面白いようなそうでもないような、言いたいことが分かるような分からないような、なんとも言えない読後感。ラストは少し切ない。
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上下巻読了!これは面白い。いずれの世界も主人公の葛藤や悩み、生きる意味、恋愛、すなわち全ては人の「心」というものをどう捉えるか、脳に起因されるものなのか、身体的なものなのか、生きてきた環境なのか、本当に答えを見つけるのは困難なテーマを、村上春樹ワールド全開でたくさんのことを語り尽...
上下巻読了!これは面白い。いずれの世界も主人公の葛藤や悩み、生きる意味、恋愛、すなわち全ては人の「心」というものをどう捉えるか、脳に起因されるものなのか、身体的なものなのか、生きてきた環境なのか、本当に答えを見つけるのは困難なテーマを、村上春樹ワールド全開でたくさんのことを語り尽くし、読者に投げかけてくれている作品であると思いました。2つの世界の関連性を、全くの異世界表現でありながら、様々な要素を用いてしっかりと繋がりを保たせている部分は本当に面白いなと感じます。この世界観は癖になります。また時間を置いて読み返したいなと思わせてくれる作品だと思います!
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良い読書体験だった。 「ハードボイルド・ワンダーランド」と「世界の終り」という2つの世界は独立しているようにみえて通じている。その謎を解明する過程のわくわくは冒険しているようで、2つの世界が重なった瞬間は鳥肌が立った。 知っている地名も出てくるので、世界を見る目が変わりそうな本。...
良い読書体験だった。 「ハードボイルド・ワンダーランド」と「世界の終り」という2つの世界は独立しているようにみえて通じている。その謎を解明する過程のわくわくは冒険しているようで、2つの世界が重なった瞬間は鳥肌が立った。 知っている地名も出てくるので、世界を見る目が変わりそうな本。 著者の本は小学生の時に「海辺のカフカ」を読んで以来長らく手を伸ばしていなかったが、読んで良かった。 哲学、心理学、科学、物理学など多様な視点が織り交ぜられ文学作品として纏められている作者の技量に驚き 個人的には、主人公の生活の場面の描写が細かくて好きだった。 特に260ページ以降からは個人的に響くことばが沢山あった。 ハードボイルド・ワンダーランドでは、死が迫り自分自身を内省する中で浮き上がった考えや気づき 「35年もこの世界に生きていて、私にはありきたりの花の名前ひとつわからないのだ」 死を自覚してから、自分の生活を見る視点に変化が生じる主人公。 そして死を受け入れる過程で一つの気づきを得る。 それは自己を変革しようとしても自分自身に帰結すること。 受け入れ違い事実も、時には便宜的に受け入れた方が楽になる。 「人間の行動の多くは、自分がこの先もずっと生き続けるという前提から発しているものであって、その前提を取り去ってしまうとほとんど何も残らないのだ」 という一節も印象に残った。 世界の終りでは、自分のアイデンティティと結びつく「心」の存在意義について。 「絶望があり幻滅があり哀しみがあればこそ、そこに喜びが生まれる。絶望のない至福なんてものはどこにもない」という一節。心が抹消されて平和に暮らす完全な世界の唯一の違和感。 読後は、限りある自分の生を感じると共に、自分自身を見つめ直し、肯定したいと思えた。
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明かされた『世界の終り』という物語の秘密に、読者は声をあげて驚愕するだろうか、それとも分かっていたと無言で頷くだろうか。私は後者であったのだが、それでも面白さに衰えはなく、むしろ答え合わせに正解したような満足感があった。 微かな繋がりを見せる二つの世界の姿は、言うまでもなく美しい...
明かされた『世界の終り』という物語の秘密に、読者は声をあげて驚愕するだろうか、それとも分かっていたと無言で頷くだろうか。私は後者であったのだが、それでも面白さに衰えはなく、むしろ答え合わせに正解したような満足感があった。 微かな繋がりを見せる二つの世界の姿は、言うまでもなく美しい。特に「僕」が手風琴を探り探り扱いながら失った記憶の中にコードを見つけ、『ダニー・ボーイ』に引いた場面には心打たれる。 もしも自分の意識が24時間と少しで消えてしまうとしたら、私は何をするだろう。 本を読んで過ごすと答えられたら幸せだろうなのだろうが、きっと「私」と同じくやるべきことは山ほどあるのに、やりたいことが思いつくことはないだろうと思えた。 絶望的な展開が続いても切ない気持ちになることはなかった。それは主に「私」と太った女のやり取りのおかげだろう。どこかコミカルでありつつも、たびたび太った女が見せる官能的な言動にどきりとさせられる。彼女に対する「私」の反応も、淡々としていつつもありきたりなものではなく、読み応えがあった。 『世界の終り』と『ハードボイルド・ワンダーランド』の関係は、私たち読者自身が認識している世界すら本当に存在しているものなのかと、疑問を抱かせる。もしかすると、我々読者の肉体はコールドスリープ状態でどこかに保存されており、その自分が見ている意識の世界が今居る世界なのではないか、と。 幻想的な物語と、その中に隠されている哲学的なテーマ。ミステリーを好む私だが、たまにはこういった作品を読んでいるものいいものだと感じた。 読み終えてまず思ったことだが、脱線がここまで楽しみな小説を読むのは初めてで、これが村上春樹氏かと唸りながら奥歯を噛み締めた。しかし、登場人物たちの会話で比喩表現を使われることも少なくないため、複雑な物語を理解し尽くすことができずもどかしくなる。具体的にはシャップリングの原理を「私」に説明する博士の辺りがそれで、難解な専門用語の羅列に独特な比喩にたちまち混乱し、1ページ読むごとに眉間のシワを揉むことになった。 とはいえ、村上氏の独創的な物語に身を浸す快感を体験できたのは、本作を読んだからこそだ。名作とされる『ノルウェイの森』もいずれは読んでみたいものである。
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