桐畑家の縁談 の商品レビュー
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素敵な本と出会ってしまった。 淡々と進んでいくなかで、心に響く言葉がポロポロと落ちている。それを拾うのが、私だけの宝物を見つけているようでした。 『主人公というのは「すじ」や「セリフ」を設定してくれる優秀な作者あったこそ存在するのだ。ブレーンもなしに実人生に投げ出され、前にも後にも進まなくなっているなんて、ああなんてやっかいなんだろう。』 「人生は自分が主人公」という概念があるなか、目からウロコの言葉でした。
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姉の露子と、妹の佳子。 佳子が台湾人青年と結婚する事になり、その時期をめぐる露子と佳子の散文的な日々の記録。 「結婚」がテーマであるようであり、実際にはあまりそれにはこだわっていない本だ。 個人的に、露子の過去の恋愛(カメラマンの竹内)について心が傷んだ。女性の中には、こういう...
姉の露子と、妹の佳子。 佳子が台湾人青年と結婚する事になり、その時期をめぐる露子と佳子の散文的な日々の記録。 「結婚」がテーマであるようであり、実際にはあまりそれにはこだわっていない本だ。 個人的に、露子の過去の恋愛(カメラマンの竹内)について心が傷んだ。女性の中には、こういう経験、つまり、恋愛において、相手からの愛情を得ることができずに苦しんだ経験を持つ人はきっと多いと思う。私にも心当たりがある。 相手が竹内のように悪い男でなくても、そういう経験、依存心は、思いの外長期にわたって自分の心をを苦しめるものだ。 露子が大事にして、誰にも見せないでいたクロッキー。 それを中華食堂の中で、みんなで見て褒めてくれるウー・ミンゾンとその仲間。 露子にとって彼は、外国人を通り越して異星人のような存在。だからこそさらけ出せたのだろうか。 佳子がウー・ミンゾンと結婚を決めたことについて、佳子にとってウー・ミンゾンと出会う前の世界には、特に未練を残すようなものはなかったのだろう、という表現にも、はっとさせられた。 現代にあっても、女性にとって人生の一大決断と言うのは、「結婚」「出産」であったりすることがまだまだ多い。 私も、出産前と後では、人生や取り巻く環境が大きく変わった。変わってしまった。 夜遅くまで働くこと、週に何度も飲み会に参加すること、友人同士で旅行をすること。それらについて、楽しかった思い出も、もちろんある。でも、それらは私に出産を思いとどまらせる力はなかったし、それらに未練を残したり、それを諦めたくないと思えるようなものではなかった。 ウー・ミンゾンと結婚することは駆け落ちではないし、結婚によって佳子がそれまでの人生を捨てるのとは違う。それまでの人生の地続きの中に存在する出来事だ。そうであっても、きっとこの結婚によって、少なからず佳子の人生には変化を生じる。なんとなく読んでいてそれが分かるから、最後の蕁麻疹?も含めて、露子も私も、淡々としている様子の佳子を愛しいと思うんだろう。 この本には、自分の人生と照らし合わせて、それで忘れていたことを思い出してはっとするような、そんな文章が満載だった。 結婚にかぎらず、女の人生、生き方。 外国人との交流に関するところも、面白くてクスッと笑えた。 何気なく手に取った本だったけど、思いがけず良い本だった。
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妹の佳子が台湾人の瓶底メガネの青年と結婚すると言い出すところから始まる物語。特にドタバタした感じはなく、少し変わった妹と無職の姉である露子が少しこれから先について考える。露子は商社び勤めていたが退職し、デザイン会社に転職したが倒産。そのあとはぶらぶらしてる。妹の佳子は、日本語学校...
妹の佳子が台湾人の瓶底メガネの青年と結婚すると言い出すところから始まる物語。特にドタバタした感じはなく、少し変わった妹と無職の姉である露子が少しこれから先について考える。露子は商社び勤めていたが退職し、デザイン会社に転職したが倒産。そのあとはぶらぶらしてる。妹の佳子は、日本語学校の事務をしていて、そこで知り合った台湾人と恋人になり結婚することに。 なんというかこの台湾人がすごい。私、台湾人の知り合いいないからかもだけど、すごく明るいというかなんというか。日本語も碌に喋れないのに、ホテルのフロントのバイトに応募したり、バイト先の中華料理屋に友達をどんどん呼んで繁盛させたりとすごい。行動力すごい。佳子とのことだってそうだった。 そして、露子の恋もなぁ。忘れられないあの男。ひどいやつだけど、そうやって生きてきたんだろうし、今の恋人の渡辺邦夫もなんかなぁと思う。露子も幸せになって欲しい。 2021.6.13 読了
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図書館で。 前に読んだ、山岸涼子の漫画に合った平安時代の姫君の話を思い出しました。(調べたら六の宮の姫君で朱雀門って作品らしい) 上の長女が適度に幸せだった為に、自己を確立することも無く流されるままに生きてしまう辺りがそんな感じだなぁと。でもまぁ今がラクなので現状維持のままズル...
図書館で。 前に読んだ、山岸涼子の漫画に合った平安時代の姫君の話を思い出しました。(調べたら六の宮の姫君で朱雀門って作品らしい) 上の長女が適度に幸せだった為に、自己を確立することも無く流されるままに生きてしまう辺りがそんな感じだなぁと。でもまぁ今がラクなので現状維持のままズルズルしているというか。気持ちはワカル。別に苦労は買ってまでしたくないし。 だからと言って別に下の妹も確固たる意思があって、こういう状況に落ち着いた訳では無いのだろうけど。対比になってるけど結構似た者姉妹なんじゃないかな~なんて思いました。お互い適応能力が高そうな辺りとか。
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あらためて中島さんは、短編の妙手であると思う。星が少ないのは、夢中、というほど湿ってなくて、カラッとしてるから。(桜木紫乃さんの後でしたから!)引き込まれる、というより、ちょっとした表現に思わず唸ってしまうことの方が多い。 どこにでもありそうなエピソードを、あっちからこっちから目線でつなげていって、その場を演出していく。佳子は、姉の露子より先に結婚してしまうが、露子は医学生の彼と結婚する気が起きない。どちらの結婚も、決してシンデレラストーリーにはならない。それがリアルに伝わってくる。個人的には(一緒に笑うことができる)姉妹がいるって、いいなぁ〜、と思ってしまった。 温水ゆかりさんの解説で、ウー・ミンゾンがいるという他の短編も、まんまと読んでいます。
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仕事をやめて妹の家に居候している露子。 そんな妹が突然「結婚することにした」というから、露子もこのままでは…と動き出す。 ただ彼はいるけど、結婚する気にならない。 妹の相手は台湾人で、国際結婚だと両親は心配しているが、当の本人は全く気にしないというマイペース。 桐畑家の面々はみん...
仕事をやめて妹の家に居候している露子。 そんな妹が突然「結婚することにした」というから、露子もこのままでは…と動き出す。 ただ彼はいるけど、結婚する気にならない。 妹の相手は台湾人で、国際結婚だと両親は心配しているが、当の本人は全く気にしないというマイペース。 桐畑家の面々はみんな面白いというか、個性的。 それがなかなか面白かった。 2020.11.27
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笑えた小説でした。 ニヤリというより吹き出す感じ。そんなユーモアが随所に思わぬ所で現れ楽しめました。 しかし中島さんの作品は、何処か奇妙です。 ストーリーや設定も多少は奇妙なのですが、それも川上さんや栗田さんの程ではありません。それよりもむしろ視点の奇妙さのようです。正面から描く...
笑えた小説でした。 ニヤリというより吹き出す感じ。そんなユーモアが随所に思わぬ所で現れ楽しめました。 しかし中島さんの作品は、何処か奇妙です。 ストーリーや設定も多少は奇妙なのですが、それも川上さんや栗田さんの程ではありません。それよりもむしろ視点の奇妙さのようです。正面から描くのではなく、かといって斜に構えて横からでも無く。足の指先にでも目をつけたら、こんな視点になるのかもしれません。 何かそんな不思議さを感じさせる作家さんです。
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正反対の性格、性質の姉妹。地味な妹が先に結婚。お相手は台湾人。この縁談に右往左往する桐畑氏と夫人(つまり両親)が面白い。父がとか母がじゃなくて、氏と夫人って。この当事者のようなそうでないような表現が、物語の面白さを際立たせている。こっそりと。露子さんが過去の失恋で大泣きした時、ウ...
正反対の性格、性質の姉妹。地味な妹が先に結婚。お相手は台湾人。この縁談に右往左往する桐畑氏と夫人(つまり両親)が面白い。父がとか母がじゃなくて、氏と夫人って。この当事者のようなそうでないような表現が、物語の面白さを際立たせている。こっそりと。露子さんが過去の失恋で大泣きした時、ウーミンゾン以下外国人大勢がいろいろ慰めるシーンは良かったな。そういう温かさってすてき。佳子さんはいい人と巡り会えたと思う。露ちゃんはあまり考えすぎないでどーんと行けばいいよ。十条の叔父さんの健在ぷりもなかなか。桐畑家は不滅だ。
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裏表紙のあらすじとは、中身がだいぶ印象違うなーって思いました。 露子の性格がなんだかフワフワしてよくわからないからなのか、妹が先に結婚することに焦りを感じてるようにも思えなかったし、しぶしぶ職探しっていうけど、それほど真面目に探してる感じもなかったなあ。 桐畑氏の稟議書みたいな手...
裏表紙のあらすじとは、中身がだいぶ印象違うなーって思いました。 露子の性格がなんだかフワフワしてよくわからないからなのか、妹が先に結婚することに焦りを感じてるようにも思えなかったし、しぶしぶ職探しっていうけど、それほど真面目に探してる感じもなかったなあ。 桐畑氏の稟議書みたいな手紙が一番おもしろかったです。
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いちばん遠くていちばん近い。 こういう姉妹の形も悪くないなあ。 平凡な日常でもちょっと変でもあたたか。
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