去年はいい年になるだろう の商品レビュー
山本弘さんの著作は二冊目ですが、長編を読むのは初めてでした。 SFを読んでいると、作者がドラマを書きたいのではなく、思いついたアイディアを書くために小説の形式をとっているのだろうなと思うことが多いのです。そのため、途中で理論の説明などを挟まれると辟易して、読む気がそがれてしまうの...
山本弘さんの著作は二冊目ですが、長編を読むのは初めてでした。 SFを読んでいると、作者がドラマを書きたいのではなく、思いついたアイディアを書くために小説の形式をとっているのだろうなと思うことが多いのです。そのため、途中で理論の説明などを挟まれると辟易して、読む気がそがれてしまうのですが、そこは流石に山本弘。トンデモ本の世界でともすれば気分を害するようなとんでも話を楽しく読ませてくれるリーダビリティに長けています。自分が小説の世界に入り込んでしまったように錯覚するくらい、一気に読ませます。 というか、これを夫に書いてもらった奥さんは幸せだろうなあ
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新規開拓の日本SF。いやぁ、面白かった。日本のSFというと堀晃氏しか知らなかった私だが、今回は素直に感激。 クラーク、フォワード、イーガン、瀬名氏が好き(もちろん私も大好き)だという主人公は、吹田市在住だ。 ラスト50pの山場では、太陽の塔は言うに及ばず津雲台、千里南公...
新規開拓の日本SF。いやぁ、面白かった。日本のSFというと堀晃氏しか知らなかった私だが、今回は素直に感激。 クラーク、フォワード、イーガン、瀬名氏が好き(もちろん私も大好き)だという主人公は、吹田市在住だ。 ラスト50pの山場では、太陽の塔は言うに及ばず津雲台、千里南公園などわが家の生活圏がどしどし登場する。 ガーディアンという人間型ロボットとエクスキューショナーという脳髄だけになった人類との戦いがひとつの山場なんだが、この2者の対比は、瀬名氏に近い。 ちなみに、作者は P・K・ディックには興味はないんだろうか? その色は出てこなかったようだなぁ。 歴史を改変して人類を救おうとするガーディアン。でも、それってありがた迷惑ではないのか? ヒトは確率や多数決で生きているのではないのだってなテーマが、アシモフのロボット原則のうえで流れ、(少し安直だが)感動的なハッピーなフィナーレを迎える。 満足! カバーの裏に使われている写真(中ノ島だ)も気に入った。ほかの作品も読みたいな。SFの好みが同じで自宅生活圏・吹田や職場生活圏・中ノ島が出てくるから親近感がより出たのかな。
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またも小説を読むのが久々になってしまいましたが、好きな作家が新作を上梓したと聞いて。 で、本作。氏のSF作品にしては、抑えめのSF描写で、むしろ私小説的な日常風景や心理描写が丁寧にされていて、まぁそれはこの物語のスタイルからしても真っ当なんでしょうけど、ちょっと、違和感は感じて...
またも小説を読むのが久々になってしまいましたが、好きな作家が新作を上梓したと聞いて。 で、本作。氏のSF作品にしては、抑えめのSF描写で、むしろ私小説的な日常風景や心理描写が丁寧にされていて、まぁそれはこの物語のスタイルからしても真っ当なんでしょうけど、ちょっと、違和感は感じていたんですよね。あれ、らしくないな、と。 そうはいっても、導入の巧さはさすがだし、物語の構成は飽きもこない展開で、むしろ難しいSF描写がない分、読みやすいものになっているな、とも感じます。いうなれば、SF的要素を散りばめたヒューマンドラマとでも言いますか(物語は基本全てヒューマンドラマですけどね)。 まぁ、食い足りない感はあったんです。ワシは筆者の作品を読むときに(勝手に)求めている「らしさ」がやはり足りない。面白いんだけど、うーん……という感覚。 でもね、そんなものはエピローグを読んで吹っ飛んでしまいました。 ロリコンや、この人ほんまもんのロリコンや!(誉めてます) 結果論かプロット通りかは分かりませんが(そりゃ後者でしょうが)、この小説を通じて筆者が書きたかったのはエピローグなんだと思います。エピローグのようなことをしたかった筆者、エピローグのメッセージを(ある一人ないしは二人のために)伝えたかった筆者が、妄想の末に辿り着いた手法が「この物語を書くこと」だったんじゃないかな。ワシはそう妄想しました。 ぶっちゃけ、エピローグを読むまでは★3つにしようと思ってたんですが、エピローグを読んで★4つにしようと決めました。とはいえ、これは誰かに勧める的意味での増★ではなく、ワシの中での満足度です! (2010年読了)
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著者のアイの物語はだいぶ昔に読んだ。SNEあたりのことも、と学会あたりのことも、昨今の出版事情も、SFまわりのことも深くは知らないが、ぼんやりとは分かる。なので、今ある時間軸と、この物語の中で語られる時間軸の内容の差異やあるいは同じ部分とか、そういう叙述部分の仕掛けは楽しめた。詳しい方は、出てくる登場人物や作品名に「あー、あれ」のような、共感というか、共犯めいた感情を抱くことができると思う。 読み始めた当初、幼年期の終わりみたいな設定だな、と思った。と同時に、いい終わり方はしないだろうな、とも。 物語のすすみが、日記を小説に起こしている、という設定のためか、非常に淡々としたもので、起伏に乏しい。実在の人物と同じ姓名であるため、主人公への感情移入もしづらいものがある。そのため、私には少し読みづらいタイプの小説だった。 星雲賞受賞作と聞いて手にとってみたのだが、読んだ後、星雲賞受賞と聞くと、読者側の毒みたいなものを感じてしまうのは……うがちすぎなのかもしれない。
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未来からアンドロイドが人間を救うためにやってきて現在に介入する。 というSF読みにはおなじみの設定だが、身内ネタ・事件ネタ・トンデモネタ・ SFネタを薄くとりこみ、最後までは一応飽きずに読めた。 *******以下本当にネタバレ*********************************** タイムトラベル物だと、未来を知ってどのように行動するか。 ということが主体に書かれることが多いが、本作品でも未来の自分に 託された、既に書かれた本のデータをアンドロイドから渡されるが、今の 自分が書いた作品ではないので、それをそのまま使うことに違和感・ ためらい・後悔を覚えるシーンが何度も出てくる。 唐沢俊一も出てくるので、このような形式をとって、他人の作品を 自分のものととして発表することについての突っ込んだ話になるのかと 一瞬思った。 SF作家が書いた私小説と理解すればすんなり受け入れられるし、 飽きずに最後まで一気に読めたが、主人公が最後にアンドロイドに 「なぜ黙っていた!」と詰め寄る件については、なんでそこ?最初から わかるだろ普通、と正直脱力した。 エピローグで明かされる嫁が「オレ女」設定だったことが、本作品で 一番びっくりしたところ。
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「それが私たちにとって大きな謎なの。なぜ人間は、誰の得にもならない選択、時には自分にとって不利になるような選択をしたがるのか。なぜ幸福になることを拒否するのか。そうした行動は私たちの理解を絶している」 今回も面白かったー。 山本氏の作品は全部読みたい〜〜と思っているのだけれど、...
「それが私たちにとって大きな謎なの。なぜ人間は、誰の得にもならない選択、時には自分にとって不利になるような選択をしたがるのか。なぜ幸福になることを拒否するのか。そうした行動は私たちの理解を絶している」 今回も面白かったー。 山本氏の作品は全部読みたい〜〜と思っているのだけれど、 この本は比較的新しい本だったからなおさらなのだー。 今回もSF! 滅多にSFなんて読まないんだけれど、この人のは読みやすくて、次々と読みたくなるー。 そして、SFって面白いなぁ、と改めて思わされてしまうのでした。 今回は、未来人(しかもロボット)が現在(?)に来て、歴史を変えようとするのだけれど、それはただ幸福になるばっかりじゃなくって、、 という物語で、いったいどんな着地点になるのだろー。 と、最後まで突っ走ってしまった。 なかなか、一概に何が幸せだとは言えない。 そういうのを上手く投げかけて、考えさせてくれる1冊だなぁ、って思うんだー。 面白かった。 【8/3読了・初読・市立図書館】
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ついに受賞!山本弘氏の星雲賞受賞作!! ブログで受賞のニュースを知り、さっそく読み進めました。というか、ファンという割に購入が遅いのですが...(^^;)ハハハ。 2001年9月11日。WTCを襲った同時多発テロは起きなかった...? ある日突然500万体ものアンドロイドがタイム...
ついに受賞!山本弘氏の星雲賞受賞作!! ブログで受賞のニュースを知り、さっそく読み進めました。というか、ファンという割に購入が遅いのですが...(^^;)ハハハ。 2001年9月11日。WTCを襲った同時多発テロは起きなかった...? ある日突然500万体ものアンドロイドがタイムスリップしてきて、全地球規模的にこれから起こる事件事故、戦争、飢餓等々、人類が被る不幸を予め防いでくれる、そんな時代になったとしたら。 善意に基づくこのアンドロイドの行為は「人間」にとって幸せなことなのだろうか??? まるで、以前話題になった「アイの物語」のアンチテーゼのような著者の思いに、「アイの物語」が好きなボクはオイオイと思いながらもあ゛っ!?という間に読了しました。 アンドロイドと人間の関係も「理解出来ないこと」を理解しなければいけない。そこから始めることが大切であると同様に、男女もそこを理解できるかどうかが、大切なんだろうな
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メタフィクション。ってこういうことでしたよね? 小説家が本人で登場して ほぼ現実に沿った世界で暮らしている。 そこへ途轍もなくSFな要素が到来する。 SF的な要素が大盛なのだが、 作者以外の人物も 現実を律儀に踏まえて登場し物語を展開していく。 入れ子細工のような、合わせ鏡のようなくらくらする感覚。 苦く切ない読後感。
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作者自らが「私小説SF」という本作。 普段通りの小説家としての日常を送る作者の世界がある日を境に一変する。突如やってきた、9.11テロを未然に防いだ、という未来からのアンドロイド。 彼らは「歴史上起こった災害や事故」を未然に回避させるためにやってきたのだという。 そして作家山本弘は美少女アンドロイドの訪問を受け、未来の自分からのメッセージとこれから書くであろう作品を受け取る。 実名とかもバンバン登場する一風変わったつくりの小説。なるほど。私小説SFか。 SFというと結構ややこしい理論だとか複雑な設定を読み込むまでにちょっと骨みたいな印象が強くてあんまり手を出さずにいたところが大きいんですが、こういう感じだと自分のような人間にも読みやすくていいです。非常に間口が広いというか。 それでいて内容もなかなかに面白いし。後半の暗い展開はそれまでが(それなりに)ほのぼのとした日常めいていたせいか幾分鬱になりましたが・・・
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歴史改変 SF、パラレルワールドもの。 主人公は著者山本弘氏自身。 その分私小説的な著者の熱い想いが伝わってくる。 実在の人物も多数登場。 途中、読者そっちのけのおふざけもあるが、 なかなか楽しめる、素敵な作品だ。 読了後に、タイトル「去年はいい年になるだろう」はちょっとグッと来...
歴史改変 SF、パラレルワールドもの。 主人公は著者山本弘氏自身。 その分私小説的な著者の熱い想いが伝わってくる。 実在の人物も多数登場。 途中、読者そっちのけのおふざけもあるが、 なかなか楽しめる、素敵な作品だ。 読了後に、タイトル「去年はいい年になるだろう」はちょっとグッと来る。 2011 年 第 42 回星雲賞日本長編部門受賞作品。
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