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わたしたちが正しい場所に花は咲かない の商品レビュー

4.3

12件のお客様レビュー

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2025/05/26
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【わたしが正しい場所に花は咲かない】 アモス・オズ 著  これは名著です。「イスラエルとパレスチナ人の紛争は、宗教戦争でもないし、文化の争いでも、二つの異なる伝統の不和でもない。その家がだれのものかについての、ただの不動産をめぐる争いです」という著者の言葉を引用した本を読み、「なるほど、だから某国の元不動産王の某大統領がこの地を買うと言ったのか」と本書を読んでみました。しかし、中身は濃厚です。  著者の両親は東欧から迫害を逃れてエルサレムにきたユダヤ人で、「受けた仕打ちがトラウマになっている難民」。一方、パレスチナに住む人々も同様に迫害を逃れてきた難民であり、パレスチナ問題は「二つの被害者集団同士が争っている」状態。血で血を洗う戦いを繰り返しながら一緒にいるのは無理で、「ハネムーンの寝台ではなく、公正な離婚」をと二国家方式を訴え、国境に壁の設置も「よい垣根はよい隣人をつくる」と推奨しています。8割の人がこれに納得するはずが、いずれの側にも狂信者がいて進まず、相手の立場を考える想像力をもち、よい「妥協」を行って人命被害を食い止めるべきという考察です。  原著は2002年の「How to Cure a Fanatic(狂信者を治療する方法)」。邦訳は2010年で、邦題は冒頭の詩「わたしたちが正しい(と思っている)場所に花は咲かない」(イェフダ・アミハイ作)からで、自分が絶対的に正しいとする姿勢に警鐘を鳴らしたいという訳者の判断とのこと。  本文は3編構成で103ページと短いのですが、どこにもある差別、抑圧、狂信主義などを洞察し、惨事、例えば火事があった際には、逃げるのでもなく、投書を書くのでもなく、ティースプーンであっても水をかける行動をとることを促しています(スウェーデンでは本書が高校の教科書となり、実際に「ティースプーン教団」が設立されたようです)。「今日のお昼は何を食べようかな」ばかり考えている自分とは違う深い思索に目が覚める思いでした。

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2024/04/15

パレスチナ問題をどのように考えるか。現地に生きるユダヤ人として語られる言葉には、外野の評論家や思想家からは出てこないリアリティと迫力がある。現実に目を向けて、何が問題なのかを見極めることの重要性。訳文は小慣れないが、鋭い指摘・分析が多数ある。アモス・オズが生きていたら、今のイスラ...

パレスチナ問題をどのように考えるか。現地に生きるユダヤ人として語られる言葉には、外野の評論家や思想家からは出てこないリアリティと迫力がある。現実に目を向けて、何が問題なのかを見極めることの重要性。訳文は小慣れないが、鋭い指摘・分析が多数ある。アモス・オズが生きていたら、今のイスラエルのガザ攻撃に対して何というだろう。

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2024/01/08

腕力や武力を使う理由は二つだけです。自己防衛と自由のためだけです。もしだれかがわたしを殺そうとしたら、戦います。だれかがわたしを奴隷にしようとしたら、戦います。 これ以外の理由では、ぜったいに戦わない。領土拡張のための戦争も、資源獲得のための戦争も拒否する。いわゆる国家利益のため...

腕力や武力を使う理由は二つだけです。自己防衛と自由のためだけです。もしだれかがわたしを殺そうとしたら、戦います。だれかがわたしを奴隷にしようとしたら、戦います。 これ以外の理由では、ぜったいに戦わない。領土拡張のための戦争も、資源獲得のための戦争も拒否する。いわゆる国家利益のために戦うことは拒否します。 ー 103ページ 究極の悪は戦争ではなく侵略なのです。 ー 55ページ イスラエルとパレスチナ人の紛争は「宗教戦争でもないし、文化の争いでも、二つの異なる伝統の不和でもない。その家がだれのものかについての、ただの不動産をめぐる争いです」 ー 9ページ

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2023/10/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

戦争と「狂信」という言葉がこの本のキーワード。 著者の訴えかけには賛否ありますが、戦争経験者だからこそ感じられる価値観が新鮮ではっとさせられました。 人はなぜ憎み、さらには衝突に及んでしまうのか。 違いを当たり前と認識すること、他者を認め許すことを実現するには、心のゆとりや優しさが不可欠。 ただ、こうして書いているのも著者の言う"正義の押しつけ"、争いの火種なのかもしれません。 頭がぐるぐるしますが、興味深い視点を得れたので一読して損はありませんでした。ぜひ!

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2022/01/10

世界史を学ぶときは、どの国にも肩入れも軽蔑もしたくなくて、パレスチナ問題に関わるこの本を学校の図書館で借りて読んでみました。 PLOのアラファト議長と和平を結んだラビン首相が過激派ユダヤ人に暗殺されたと習い、当時のイスラエルには、この本の中でいう、「狂信主義」が蔓延していた時だ...

世界史を学ぶときは、どの国にも肩入れも軽蔑もしたくなくて、パレスチナ問題に関わるこの本を学校の図書館で借りて読んでみました。 PLOのアラファト議長と和平を結んだラビン首相が過激派ユダヤ人に暗殺されたと習い、当時のイスラエルには、この本の中でいう、「狂信主義」が蔓延していた時だったんだなと思いました。 また、多くのユダヤ人が自分たちの国を求めてパレスチナに向かったけれど、その中にはそれまでの安定した暮らしを捨てたくなかった人もいたこと、そういう国家ではなく個々人の思いもあることも再認識しました。 評価としては自分が知りたいことを知れたので満足です。

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2020/04/09

アモス・オズは、「決着をつけず、不確実なものをかかえたまま生きることこそ、独善的にならず、相手の立場も考える姿勢のあり方だ」と主張する。「わかりやすさ」は、一時的な決着感をもたらすかもしれないが、それは必ずしもよりよい解決とはならず、むしろ弊害を大きくすることもあるのだ。 たとえ...

アモス・オズは、「決着をつけず、不確実なものをかかえたまま生きることこそ、独善的にならず、相手の立場も考える姿勢のあり方だ」と主張する。「わかりやすさ」は、一時的な決着感をもたらすかもしれないが、それは必ずしもよりよい解決とはならず、むしろ弊害を大きくすることもあるのだ。 たとえば、わたしたち日本人は「決めることができる政治」を求めて、とんでもない政権を生んでしまったことなどは、その好個の例なのであろう。

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2019/01/03

2018年末に訃報が届き、棚にある著作から一冊を追悼の想いで手に取った。所謂左派と見られ本書中にも”穏健”と出てくるが、私はリアリスティックな左派だと受け止める。彼が訴えた二国家共存は相互が行き来するものではなくこの著作の原題で示された”離婚”、しかもシビアなもので壁を築いて関わ...

2018年末に訃報が届き、棚にある著作から一冊を追悼の想いで手に取った。所謂左派と見られ本書中にも”穏健”と出てくるが、私はリアリスティックな左派だと受け止める。彼が訴えた二国家共存は相互が行き来するものではなくこの著作の原題で示された”離婚”、しかもシビアなもので壁を築いて関わりあわない隣人のごとくのものである。原題はそこをピンポイントで指す。ともに平和に、ではなくそれぞれが平和に、である。しかしオズは一般のイスラエル人が存在を脅かされることに怯えるように、あるいは標準以上に、国という居場所を欲し、その場所を脅かされれることに怯えているように思われる。他方で不要な戦争は嫌う。生存を守るための戦いは是とするが、他者を脅かすためだけの戦いは否定している。出版されたのは2009年だが当時に比べ一層彼の地の情勢は悪化している。独立戦争(第一次中東戦争)から6日戦争(第三次中東戦争)、ヨム・キプール戦争(第四次中東戦争)を経験して”平和”を追求する世代が消えていくこれからの彼の地の情勢はどうなっていくのだろう。またこの邦題はポピュリズムが席巻する現在の状況を示唆しているようであり、てそのチョイスは慧眼である。現代の世界のあちこちの状況をオズはどう見ていただろう。もう少し長生きして彼の考えを聞かせて欲しかった。そしてできれば彼にノーベル賞を与えて欲しかった。ことさらノーベル賞を凄いとあげつらうわけではないし、かなりの受賞歴を持っているオズだが、ノーベル賞はやはり世界的に知られやすいという意味で別格。彼の考えを世界に知らしめるきっかけとして与えてもよかったのではないか。こうなるとデヴィッド・グロスマンに期待するしかないか。

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2018/02/24

天災にしろ人災にしろ、当事者となった時、どのよう処するか。処することができるか。 私は第二次大戦中に生まれていたら自分はかんたんに狂信者となっていただろうと思う。

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2012/11/07

パレスチナ問題を材料にして、人間が陥りやすい「自分こそが正しい」という狂信主義の罠に対して痛く警告する。 想像力を持つこと、自分自身を笑うこと。まあ、間違ったことは言うてないと思う。 でもそこから本当に脱するのはとてもむずかしいことやから、ここに書かれていることをずっと考え続ける...

パレスチナ問題を材料にして、人間が陥りやすい「自分こそが正しい」という狂信主義の罠に対して痛く警告する。 想像力を持つこと、自分自身を笑うこと。まあ、間違ったことは言うてないと思う。 でもそこから本当に脱するのはとてもむずかしいことやから、ここに書かれていることをずっと考え続けること、人間のそういう視野狭窄に陥ってしまう性質と常にたたかおうとし続けることが大切、としか言えないのかね。 大学の先輩にすすめられて読んだ本。すぐ読めます。

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2010/10/11

著者の主張に完全には同意できないが、極めて興味深い内容でした。著者が真摯に「狂信」という病理に向かい合っていると感じました。 問題なのは、本書の解説を書いている人。この方は、著者が本当に言いたいことを理解しているのかなという疑問を感じました。個人的には、この解説を書いているような...

著者の主張に完全には同意できないが、極めて興味深い内容でした。著者が真摯に「狂信」という病理に向かい合っていると感じました。 問題なのは、本書の解説を書いている人。この方は、著者が本当に言いたいことを理解しているのかなという疑問を感じました。個人的には、この解説を書いているような人こそ、著者が警告するところの、「狂信」に陥りがちなタイプの方だと思います。

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