花の回廊 の商品レビュー
500ページ近くもある小説を読むのは久しぶりで、読む前は途中で投げ出してしまいやしないかと心配だったが、その心配は杞憂に終わった。著者のストーリーテリング能力には毎度のことながら感服する。 熊吾たち家族にとってはそこそこ平穏な時期の話となっているように感じた。伸仁が一年ほど両親...
500ページ近くもある小説を読むのは久しぶりで、読む前は途中で投げ出してしまいやしないかと心配だったが、その心配は杞憂に終わった。著者のストーリーテリング能力には毎度のことながら感服する。 熊吾たち家族にとってはそこそこ平穏な時期の話となっているように感じた。伸仁が一年ほど両親と離れた生活を余儀なくされたが、熊吾の仕事は開業にこぎつけ繁盛の兆しも見せ、一家全員で暮らせるようにもなった。 ただ、そんな中にも破綻への道筋が随所に示されている。僕としては、房江のアル中への道が始まっているのが、熊吾の境遇よりも重く悲しく感じられる。伸仁が「お母ちゃん、お酒が目の前にあっても、もう飲まれへんなァ」と嬉しそうに言うシーンがあるが、読み手である僕も房江がお酒を飲まないとなると嬉しくなってしまう。個人的には、この伸仁のセリフが、今作の中で一番のセリフなのではないかと思っている。 また、作品の最後の熊吾と咲子のやりとりで、熊吾が鳥肌を立てたシーンがあるが、咲子の言葉・挙動にうすらさむいものを感じ、僕も同じように鳥肌を立てていた。咲子という美女は今後も物語に関わってくるのだろうか。 熊吾の凋落、房江のアル中など、物語の結末は解っている。それなのに彼らを応援し見守りたくなるのが、「流転の海」という作品群の魅力なのではないか。
Posted by
10/01/10読了 前作はもう何年も前。それでも読み始めたら思い出す。話の内容もその時の自分の状況も。
Posted by
舞台となっている昭和30年代と現在との時代背景の違いに改めて驚かされた。ほんの50年前が別時代のように思える、それほど当時の大阪・尼崎の町の情景、人間模様、社会の出来事が赤裸々に詳細に述べられている。熊吾の豪放さと合わせ持つ細やかな心配り、房江の暖かさと思いやりの深さ、それに今回...
舞台となっている昭和30年代と現在との時代背景の違いに改めて驚かされた。ほんの50年前が別時代のように思える、それほど当時の大阪・尼崎の町の情景、人間模様、社会の出来事が赤裸々に詳細に述べられている。熊吾の豪放さと合わせ持つ細やかな心配り、房江の暖かさと思いやりの深さ、それに今回は伸仁の繊細だがたくましく世の中のことを吸収して育っていく様子が息を付かせぬ展開で語られている。おもしろい。
Posted by
ずっと待っていた第5部!しかし、これまでの自分の記憶があやしい。 第1部から読み直しましょうかねぇ・・・
Posted by