初夜 の商品レビュー
ささやかなことで、(でもそのときの当人達にとっては最も重大なことなんだけど)人生はこうも簡単に、残酷に別れていってしまうということが、恐ろしくもあり、面白くもある。もやもやどきどきしながら一気に読みました。
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確かに昔は、オオゴトだったんだよね。特に女性は。興味があると、ふしだらな女扱いだったからねえ。大勢の初心者達には、後で笑い話に変えられたであろう1夜が、主人公達には離別に繋がってしまった。新婦は後に「ライアンの娘」のようになるかと思ったら、そうでないようだ。ここで読後の評価ががら...
確かに昔は、オオゴトだったんだよね。特に女性は。興味があると、ふしだらな女扱いだったからねえ。大勢の初心者達には、後で笑い話に変えられたであろう1夜が、主人公達には離別に繋がってしまった。新婦は後に「ライアンの娘」のようになるかと思ったら、そうでないようだ。ここで読後の評価ががらりと変わった。哀しく、せつなく、ある種美しいと思う。
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「贖罪」がシンフォニーならこれは室内楽と言った人があるそうだが、言い得て妙、まさに室内楽的味わいの小品だ。ただしその響きは全く甘ったるいものではない。 人生は時としてどうしようもなく残酷で滑稽だ。結婚式を挙げたばかりの二人が翌朝別々にホテルを去ることになるまでの一夜の顛末と、そ...
「贖罪」がシンフォニーならこれは室内楽と言った人があるそうだが、言い得て妙、まさに室内楽的味わいの小品だ。ただしその響きは全く甘ったるいものではない。 人生は時としてどうしようもなく残酷で滑稽だ。結婚式を挙げたばかりの二人が翌朝別々にホテルを去ることになるまでの一夜の顛末と、そこにいたる軌跡が、どこまでも冷静にえぐり出されていく。何か、または誰かに責任を帰することのできない(またはすべてに責任のある)取り戻せない出来事というものが確かにある。作者のスタンスが皮肉なものでないところがすばらしくて切ない。
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一気に読んだ。なんともいえない気分になる小説。読んだ後、「小説」を読んだなぁ、って思った。1960年代が革命前夜だったということをしみじみ感じさせる男と女のドラマ。ふたりがその後歩んだ人生のなかで、過去を振り返るところでなんともいえない気分になった。そうだよね、そのときは…、でも...
一気に読んだ。なんともいえない気分になる小説。読んだ後、「小説」を読んだなぁ、って思った。1960年代が革命前夜だったということをしみじみ感じさせる男と女のドラマ。ふたりがその後歩んだ人生のなかで、過去を振り返るところでなんともいえない気分になった。そうだよね、そのときは…、でも今は…。それぞれの生い立ちになるほど、と思い、ふたりの行動にも、ふむふむ、と思い…。個人的には、なぜか読みながら、ヴァージニア・ウルフを、時には芥川龍之介の「羅生門」を思い出した。「小説」っておもしろい。
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朝日新聞で2度も紹介されており、読んでみました。 大変おもしろかったです。 舞台はイギリス。 まだ性の開放などという言葉もない時代の話。 新婚初夜、初めての体験。 この本には随所に「この時代は」という表記がある。 時代をとても強調しているけれど、 こういう考えを持つ人が今でも...
朝日新聞で2度も紹介されており、読んでみました。 大変おもしろかったです。 舞台はイギリス。 まだ性の開放などという言葉もない時代の話。 新婚初夜、初めての体験。 この本には随所に「この時代は」という表記がある。 時代をとても強調しているけれど、 こういう考えを持つ人が今でも厳然と存在していることを、 かえって浮き彫りにしているように感じられるのだ。 「この時代」「あの時代」 そんな風に限定することで、今、自分、その立ち位置をぐらつかせる。 私のとても気に入った所は、 「男であれ女であれ、彼女ほど真摯な人間に出会ったことはないという事実をようやく認めるようになった。」 というところ。 悪かったのは彼女かもしれない。 けれど、彼女はどうしょうもないほど誠実だったのだ。 きっとこれは男女の立ち位置関係なく、 セックスに関係なく、広く様々な問題に立ち現れる課題だと思う。 とても深い感銘を受けた本でした。
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私たちは所属する時代の言葉に絡めとられていて、そこから容易に抜け出せない。自分の身体的な特徴、そこに由来する感覚・感情。それらは自分だけがわかりうるものだが、それを他者に伝えようとするとき、(幅広い意味での)言葉に頼らざるを得ない。既存の言葉には収まりきらない感覚を持っているとき...
私たちは所属する時代の言葉に絡めとられていて、そこから容易に抜け出せない。自分の身体的な特徴、そこに由来する感覚・感情。それらは自分だけがわかりうるものだが、それを他者に伝えようとするとき、(幅広い意味での)言葉に頼らざるを得ない。既存の言葉には収まりきらない感覚を持っているとき、それを表現するのはとても難しい。 わいてきた怒りや嫌悪は、本当は別のものに向けられていたはずなのに、コントロールの効かなくなった激情は、侮蔑語という安易な出口を見つけてしまう。言ってしまったすぐ後に、それを後悔するのはなぜなのか。その言葉が、自分の感情とずれていくことに気づくからだ。言葉を重ねて自らの身体にまとっていく。「演じている」ことに気づいていても、重ねた言葉の数だけ引き返すのは難しくなる。 1962年に比べれば、今は言葉に満ち溢れた時代だ。適切な言葉をかけてあげることもできるだろう。しかし必要なのはそのことだろうか。 私たちの身体や感覚は、こんなにも変なのだと、言えるような社会が来てほしい。別に認めてくれなくてもいい。ただそこにいて、聞いていてくれればそれでいいから。聞いていてほしい。そして、そこにいてほしい。そうしたら、話せるようになるから。
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新婚初夜の出来事が原因で離婚とあいなった男女の話。 新婚初夜プラス結婚に至る経緯がストーリーの大半なのですが、あんまりラブストーリーに縁のない私には別れた後の2人の人生が結構興味深かったです。 フローレンスは、名の知れた楽団のバイオリニストとして活躍。一方のエドワードはそれなり...
新婚初夜の出来事が原因で離婚とあいなった男女の話。 新婚初夜プラス結婚に至る経緯がストーリーの大半なのですが、あんまりラブストーリーに縁のない私には別れた後の2人の人生が結構興味深かったです。 フローレンスは、名の知れた楽団のバイオリニストとして活躍。一方のエドワードはそれなりに仕事も恋愛もしてけっして不幸ではない人生を送るのですが、若い頃志していた歴史学からこぼれ落ち居心地の良い現実にぬくぬくとしていた、と。 ここはエドワード目線のみなのでフローレンスがどう思っていたかが正直気になるところ。 読後感はちょっぴりほろ苦い気分。
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心では愛しあっているはずなのに、お互いその気持ちに応えられない男女の人間という考える生き物である故の切ない物語。 その当時の時代背景、家庭環境、男女の違い、そういったことを基盤に、まだ「自由」がなかった男女の心と身体の繊細な動きを本当に細やかに描写していて見事でした。 今の時...
心では愛しあっているはずなのに、お互いその気持ちに応えられない男女の人間という考える生き物である故の切ない物語。 その当時の時代背景、家庭環境、男女の違い、そういったことを基盤に、まだ「自由」がなかった男女の心と身体の繊細な動きを本当に細やかに描写していて見事でした。 今の時代から当時の二人を見ると何とも子どもっぽく、滑稽にすら映るかも知れません。 でもマキューアンの巧みな文章に引き込まれ、すっかり自分も同じ時代を生きる若者になった気分で、愛する相手の一挙一動に打ち震えながら読みました。 結婚初夜のほんの数時間のうちに、どうしてここまで狂ってしまったのか。 お互いの思いやりよりも、二人の間に存在していた小さなズレが大きくなってしまったうように思えます。 フローレンスの態度にひどく侮辱されたと感じたエドワードは彼女は自分など愛していなかった、彼女はただ夫というものがほしかっただけ、騙された、とまで感じてしまうんですね。 本当は、フローレンスは愛しているから彼女のなりに努力していたのに。 フローレンスの最後の最後の申し出は、あの時代にしてはすごい画期的。 二人とも、結婚までゆっくり時間をかけてひとつひとつ積み上げてきたのに、壊れるときは性急でした。 立ち止まったり、すこし離れて考えてみればきっと違った人生になっていたのに。 でも悔やんでも仕方がない。 それが男女。 それが人生。 彼らがあと10年遅く生まれていたら変わったのだろうか。 あそこで言葉を返せば取り戻せたのだろうか。 考えさせられる一冊です。 (2010年1月28日読了)
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時は、1962年。舞台は、イギリス、ドーセット海岸にある海辺のホテルの一室。 登場人物は、数時間前に、神の祝福をうけ、婚姻の誓いをたてたばかりの、若い夫婦。 「初夜」、ふたりで過す初めての夜。その第一歩を踏み出そうとするのだが・・・お互いに、こんなにも愛しているのに、愛しているか...
時は、1962年。舞台は、イギリス、ドーセット海岸にある海辺のホテルの一室。 登場人物は、数時間前に、神の祝福をうけ、婚姻の誓いをたてたばかりの、若い夫婦。 「初夜」、ふたりで過す初めての夜。その第一歩を踏み出そうとするのだが・・・お互いに、こんなにも愛しているのに、愛しているからこそ、必要以上に気持ちが、高揚し、不安や恐怖を感じてしまう。そんなふたりの気持ちの揺れ動きの合間に、ここに至るまでの彼らの生い立ち、成長、家族のこと、ふたりの出会いを、冷静な第三者として作者が語る。ああ、そして「初夜」。ふたりが迎える結末。淡々とした、その後のエピローグ。時代が、若さが、無知が、とはいえ、なんともほろ苦い。
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マキューアンが4割くらいの力で書いた?という印象。 断片的。これはいつものボリュームを期待してるからそう思うのであって、短編だからしょうがないのかな モデルがいるのか、と疑わせたいのか?そこでこの物語の味わいも変わってくると思うけれども・・・ 訳がいつもの小山さんじゃないのも残念...
マキューアンが4割くらいの力で書いた?という印象。 断片的。これはいつものボリュームを期待してるからそう思うのであって、短編だからしょうがないのかな モデルがいるのか、と疑わせたいのか?そこでこの物語の味わいも変わってくると思うけれども・・・ 訳がいつもの小山さんじゃないのも残念。
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