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殺人者たちの午後 の商品レビュー

3.9

25件のお客様レビュー

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2023/01/23

イギリスで殺人を犯した人たちのインタビュー集。 イギリスは死刑制度がなく、殺人罪を犯した者は一律に終身刑となるという。本当に文字通り死ぬまでの終身刑で、減刑されることはない。ただ仮釈放の制度はあり、これが認められれば、社会に出ることはできる。とはいえ、仮釈放後も保護監察官と定期的...

イギリスで殺人を犯した人たちのインタビュー集。 イギリスは死刑制度がなく、殺人罪を犯した者は一律に終身刑となるという。本当に文字通り死ぬまでの終身刑で、減刑されることはない。ただ仮釈放の制度はあり、これが認められれば、社会に出ることはできる。とはいえ、仮釈放後も保護監察官と定期的に連絡を取らねばならない。定職に就く場合には、雇い主に自分の過去を話す義務もある。これらに違反したり、また再度犯罪に走る予兆があったりすれば、再収監されることになっている。 つまり、死刑になることはないものの、ひとたび殺人を犯せば、残りの人生でずっとそのことが付きまとう。罪を償って自由の身になるということはありえないということだ。 さて、そうした彼らは残りの人生で何を考え、どのように生きているものなのか。10人の老若男女の人々にインタビューしたものが本書である。 原題はLife after Lifeで、2番目のLifeは終身刑(Life sentence)を指す。なかなか含蓄のあるタイトルだが、邦題も意を汲んでいて悪くはない。 著者のトニー・パーカー(1923-1996)は、作家・ジャーナリストで、特にイギリスやアメリカで社会の周辺部に追いやられた人々に多く取材した人物である。口述歴史家(oral historian)ともいわれる。英語版Wikipediaに挙げられている著書は20数冊だが、邦訳書は数冊程度のようである。パーカーは犯罪者に多くインタビューしているが、灯台守にインタビューした著書(Lighthouse (1975))もある。先日読んだ『光を灯す男たち』でかなり参考にしたと知り、興味を持った。残念ながら"Lighthouse"は邦訳されておらず、とりあえず、入手が簡単だったこちらを読んでみた。 10人の殺人犯による10の語り。 聞き手のパーカーは黒子に徹している。時折、簡単な注釈や描写がさしはさまれるが、インタビュー中でパーカーが何を問いかけたかは記されない。語りて(この場合は殺人犯)の一人称でそれぞれの物語が綴られていく。 読み進めていくとそれはなかなかディープな体験で、彼ら・彼女らの人生がまざまざと目前に立ち上がってくるかのようである。このあたりはパーカーの稀有の才能で、語り手の心を開かせ、その語りを再構築する手腕によるものだろう。誰にでもできるというものではないはずだ。 彼らがなぜ殺人に走ったかという理由はそれぞれである。 あるものは、酒に酔い、通りで声を掛けてきたいけ好かない男を殺してしまう。 あるものは、大好きだったはずの祖父が小遣いをくれないといったために手元のハサミで刺してしまう。 あるものは、妻が大喧嘩の果てに出ていき、残された赤ん坊が泣き止まないので手にかける。 あるものは、強盗をして逃げる途中で警察官を石で殴り殺す。 あるものは、親友に恋人を寝取られたと知り、かっとなって絞め殺す。 ありきたりの三面記事のようだが、それぞれにはその背景があり、そこに至る経緯がある(もちろん、それは加害者側の物語であり、被害者にはまた別の物語がありうるのだろうが)。 酒に酔っていた男は、父親への不満があった。泣いている赤ん坊に苛立つ男は、そもそもその子が別の男の子ではないかと疑っていた。親友を殺した女が今でも会いたいと思うのは恋人ではなく親友の方だった。 そしていずれにしろ、彼らはずっと自分が人を殺したという事実と向き合って生きていく。 毛色の違う犯罪を総括することにあまり意味はないかもしれないが、読んでいて思うのは、彼らと他人の絆との「薄さ」である。家庭的に恵まれないものが多く、両親が離婚していたり、あるいは家族とうまくいかずに施設に送られたり、という経験をしているものが多い。それだけが犯罪の要因ではないだろうが、あるいはここで誰かと深い絆があればこうはならなかったのではないか、という印象をそこここで受ける。 一方で、一線を越えるとき、意外にそれはたやすく訪れる。意外にあっけなく人は死に、意外にあっけなく被害者・加害者双方の人生が変わる。 さてその一線は、自分からどれほど遠いのか、いささか心許ない思いも抱く。 *読んだのは新潮文庫の方。検索で出てこないのでこちらで。

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2020/08/05

あるジャーナリストによる殺人者たちのインタビュー。「ライフ・アフター・ライフ」を「殺人者たちの午後」と訳したことから、原作の方が面白そうだと思った

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2020/04/14

サイコパス的なのを期待して読んだけど、案外みんな普通で、私たちと変わらないもんだなあと感じた。 もちろんそういう部類の人もいるんだろうけど。 平時、人はポジティブな人を好むけど、 この場合においては 人を殺したのを悔やんでその後の人生を楽しく生きる権利なんてないんだ的なネガテ...

サイコパス的なのを期待して読んだけど、案外みんな普通で、私たちと変わらないもんだなあと感じた。 もちろんそういう部類の人もいるんだろうけど。 平時、人はポジティブな人を好むけど、 この場合においては 人を殺したのを悔やんでその後の人生を楽しく生きる権利なんてないんだ的なネガティブな人の方を好ましく感じるのはどうしてだろう? 逆にあれは過ちだったけど罰は受けたしこれから幸せに生きるぞってポジティブな人には、違和感を覚える。

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2018/12/02

人はなぜ殺すのか? 殺したあと、人はどう生きるのか? イギリスの殺人者たちを個別に取材し、 心の奥底までを濃密に描き出した傑作ノンフィクション!! 死刑制度なき国で、終身刑を受けた者たちは何を想い、 いかにして「生」の時を刻んでいくのか? 沢木耕太郎の翻訳で贈る、心ゆさぶられる、...

人はなぜ殺すのか? 殺したあと、人はどう生きるのか? イギリスの殺人者たちを個別に取材し、 心の奥底までを濃密に描き出した傑作ノンフィクション!! 死刑制度なき国で、終身刑を受けた者たちは何を想い、 いかにして「生」の時を刻んでいくのか? 沢木耕太郎の翻訳で贈る、心ゆさぶられる、殺人者たちの告白。(アマゾン紹介文) 殺人という罪を犯した人々だからでしょうか、いわゆる軽犯罪を‘はしか‘のように語っているのは。 終始付きまとう嫌悪感は、犯罪に対する姿勢の違いだと感じました。 まさか同族…ではないと思いたいのですが…。

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2018/11/05

様々な殺人者に淡々とインタビューをしている。 それだけに妙にリアルでなんか寒々としている。 そして殺人者に色々聞き出せる著者の才能も凄い。

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2016/12/07

死刑制度のない国イギリスで終身刑になり、仮釈放され社会で暮らす受刑者。その後悔の念は強く、行き続けることの辛さすら見えるけれど、それ以前に感じるのは、人を殺めるに至った理由がみな稚拙すぎること。後悔してからではやはり遅すぎる罪だと、改めて感じる。

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2012/08/30

「殺人」という切っ掛けは常にそこら中に転がっていて、自分がいつその被害者になるか、という現任はサイコロの出目だけなんだろうな。たぶん殺人者になるのも同じ。

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2012/01/30

面白かった。 当たり前だけど十人十色。淡々としているのだけど、時に暗闇が濃過ぎて焦燥感。かと思えば救われたり。

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2012/01/10

死刑制度がないイギリスで、殺人罪により終身刑を宣告された受刑者たちの「その後」を書いたインタビュー集。 インタビューといっても、インタビュアーである著者の言葉は書かれておらず、読んでいると受刑者の独白のようにも感じる。 いままでに読んだこの手の本は、一度くらいは聞いたことがある「...

死刑制度がないイギリスで、殺人罪により終身刑を宣告された受刑者たちの「その後」を書いたインタビュー集。 インタビューといっても、インタビュアーである著者の言葉は書かれておらず、読んでいると受刑者の独白のようにも感じる。 いままでに読んだこの手の本は、一度くらいは聞いたことがある「有名な」殺人者を扱っているものが多かったけれど、この本に出てくるのは(誤解を恐れずにいうなら)人々の記憶に大して残らない三面記事的な事件を起こした殺人者ばかり。 そのぶん身近、というか、生々しい印象はあるものの、インタビューにこたえた10人の受刑者のうち、印象に残ったものと残らないものがあるのも正直なところだ。 個人的にいちばん印象に残って、いちばん読むのが苦しかったのは、3話目に収録されていた「とんでもないことが起きてしまった」 収録されている中でも1,2を争うほど残虐で、許せない事件であるはずなのに、同時に受刑者の痛み…というと少しずれてるかな、良い言葉が見つからないのだけど、「翳」のようなものが本当に悲しいし、辛い。 それと違った意味で印象に残ったのは、2話目の「ノープロブレム!」。 これは読んでて心底“胸糞が悪かった”。 自らが起こした事件に対していろいろな向き合い方があって、いろいろな消化(あるいは未消化)の仕方があるのだなあ、とただぼんやりと思う。 原題はライフアフターライフというそう。 もとは12人の受刑者を取り扱っていたのに、訳者の沢木氏の都合なのか、編集の都合なのか、収録されているのは10人。…沢木氏が訳を引き受けてから10年以上放置してたってあとがきに書いていたから前者なのかな。 最後に。 評価を★4つにしようか、3つにしようか、本当に迷った。 きっと、3話目がなかったら、迷わなかったと思う。

Posted byブクログ

2011/11/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「殺人者たちの午後」は、イギリスの作家トニー・パーカー氏による殺人者たちのインタビュー集です。日本語訳は、沢木耕太郎氏。 人は人を殺すとき、どんな状態で、どんな思いでいたのか。 人を殺した後、どんなふうに生きていくのか。 とても重いテーマと思うのですが、殺人者も「人」。 人を殺す人と、殺さない人との間にある「何か」は、見えるようで、見えないと感じさせる本でした。 個人的に興味深かったのは、沢木さんの「訳者あとがき」です。 「すぐれたインタビュアーとはどういう存在なのか」。 ということについて、沢木さんは次のように書かれています。 「まず、何より好奇心を持っていること。」 「次に、本質的なところで世界と人とに肯定性と謙虚さを持っていること」 「そして、最も大事なものが、理解力と、想像力といってもよい洞察力を持っていることである」 人に取材させていただく機会のある私にとって、頷かされるポイントずばりです。 さらに、沢木さんは「インタビュー」という行為について、次のように書かれています。 「それにしても、インタビューとは不思議な行為である。多くの場合、一面識もない相手と、インタビューという方法を媒介にして人間と人間との関係を構築していく。もちろん、そこには限界がある。理解したいという情熱と、理解されたいという願望がぶつかり合い、訊ね、答え、耳を澄ませて聴いてもなお、やはりどうしても到達できないところがある。それがインタビューという方法を媒介して切り結ぶ人間関係の限界でもあるのだ」 「殺人者の午後」が出版されたとき、ある雑誌に沢木さんが紹介されていたトニー・パーカーの手紙の一節。この「あとがき」からのものでした。 「書くことは才能や天性とはまったく関係がない。重要なのは、孤独に耐える力と決断力、勤勉さ、そして取材対象者との密接な結びつきである」  インタビューを介して築く人間関係には、限界があります。その限界に、孤独を感じることもありますが、それでもなお相手と密接な関係をつくろうと、最大限ぎりぎりのところまで相手に迫っていく努力をできるかどうか――。  人との距離感というのかなぁ…。 インタビューに限らず、良い感じの距離感を保っていくことは大事ですよね。 この人とは、この距離。 あの人とは、このくらいの距離…。 適切な距離を探ることは、人と向き合う仕事をしている人にとって、共通の課題かもしれません。 トニー・パーカーの手紙の一節、実は、私、今年の手帳に写してありました。 そろそろ2012年の手帳にしなくては! もう一回、写しておきたいと思います(*^_^*)。

Posted byブクログ