天に堕ちる の商品レビュー

唯川恵【著】

2017/08/15

【あらすじ】
騙されていると知りながらも、出張ホストに貢ぐ「りつ子」。男の都合に合わせ、ソープ嬢へと身を落としていく「茉莉」。中学生の男子生徒に密かな欲情を抱く養護教諭の「和美」。ありきたりの生活の中にある、小さな小さなくぼみ。わかっていて足を踏み入れるのか、気づかないうちに、穴が広がってすべり堕ちてしまうのか。一途に愛することの幸せ、そしてその代償。十人十色の愛のカタチを描く、傑作短編集。

【感想】

2017/06/25

様々な愛ゆえに堕ちていく女達、短編10編。

各編がとても短いけれど、ホントに色々で、飽きることなくあっという間に読了。
実際にあったら怖いし、ワイドショーの事件ネタのようなものもありましたが、興味本位で見る分には面白かったです。

ホストにハマるクリーニング店員、
失敗続きの恋愛の末、飛び降りようとしたビルのカウンセリングルームで新たな出会いを得た女性、
13歳の生徒にときめく養護教諭、
犬を飼い始めたイラストレーター、
女8に男1の不自然な共同生活をする女性、
など。

2016/09/07

収録作品の題名がそのまま主人公の名前となっている。
「りつこ」「正江」「茉莉」「可世子」「和美」「汐里」「奈々美」「光」「黎子」「妙子」
どの話も追いつめられてギリギリのところで立っている女性が描かれていて、怖い…というより面白かった。イヤミスが好きな人にオススメします。

2016/06/04

この方の作品は始めて読む。前に別の方のこの本の感想を見て興味を持ったのが動機。文章も読みやすくスラスラ読める点は好感を持った。３編目の「茉莉」は最後に出会った人とまた同じことを繰り返すんじゃないかという懸念が頭をよぎる。最後の短編の「妙子」のオチにはちょっと「あら？」という感じになったが幸せになってほしいなとも思う。

2015/11/02

出張ホストを買う孤独なクリーニング店員。自殺願望のある風俗嬢。中年男と八人の女と同居する女。追っかけ中毒の女子高生。女になりすまして男を奈落の底に突き落とす淋しい青年。息子を溺愛する有名女優。「普通」を渇望する売れっ子イラストレーター・・・墜ちることがわかっていながらも、その不幸に身をゆだねる女たち。卓越した筆力と繊細な心理描写にぐいぐい引き込まれて一気読み！残る余韻も楽しめる秀作。

2014/11/23

壊れるのが分かっているのに辞められない恋愛、恋は自分とは関係ないと思って、人の事は考えずに自己満足で人を振り回していた男が、ふと出会ったちいさな純な恋愛とか唯川さんらしい割れそうな氷の家を歩くような危なっかしい恋愛が描かれた短編集です。唯川ワールド全開でした。軽く読める本だけど中身は軽くない。恋は脳内の化学反応というのは分かってはいても、ここまで普通ではない形を見せられると、化学反応とは思えなくなるなあ。恋はやはり分かりやすい代物ではなさそうです。

2014/05/20

幸福も不幸も、ちょっとした日常の穴へと転落するかは自分次第。

男を買う偽セレブのりつ子。
嫁に行った娘との時代の違いを実感した正江。
自殺願望を持った風俗嬢の茉莉。

奇妙な共同生活から抜け出せない可世子。
養護教諭の和美の叶わないはずだった恋。
夫よりも犬を溺愛した汐里。
おっかけに命をかける奈々美。

ネカマで憂さ晴らしをしていた光の復讐。
この世で唯一寝ることの出来ない存在の息子の母黎子。
結婚を機に人形との決別をはかる妙子。

性的で欲が人間らしい。
どの話も最初から最後までおもしろかった。
正江が夫と娘を言い負かすのが痛快だった)^o^(

2013/11/23

図書館で借りました。
短編集で10編収録。
唯川恵先生は短ければ短いほど秀逸です(*^^*)

⭐りつ子ーゆるやかな断崖
⭐正江ー遠い誓い
⭐茉莉ーさまよう蝶は傷つかない
⭐可世子ースウィートホーム
⭐和美ー白いシーツの下で
⭐汐莉ーJ
⭐奈々美ー渋谷に午後六時
⭐光ー昨夜みた夢
⭐黎子ー誰よりも愛しい男
⭐妙子ーふたりの世界

「可世子」はこんな事件現実にあったなぁ…。本当に自分に必要な人に出逢えるのは、決して「夫」になる人ではないんだなぁ。
「汐莉」が一番好きですが、この夫何様？！(｀Δ´)稼ぎ云々ではなく、奥さまの仕事を認めない根性が許せない！最後にスカッとします！
「黎子」も、某女優さんの息子さんが覚醒剤で逮捕されたときににたような発言されてたなぁ…。私も息子持ちですがこう思うのかな…ちょっと怖い。
「光」もいい話だけど…ラストも最近では現実にありそうで怖い。

2013/11/10

この作者さんの小説を初めて読んだ。
短編ってこともあって読みやすかったし、好きになれないストーリーもあればお気に入りのストーリーもある。
私は養護教諭の話がとても印象に残った。
次は長編のものでも読んでみようと思った。

2013/05/11

十人十色の残酷な恋の物語。タイトルが秀逸。
この物語に描かれる恋は全て「執着」と言う言葉に置き換えられる気がする。
そして執着は決して人を幸せにしないのだということも。

でも、わかっていても手放せないんだよねー
愚かで醜いかもしれないけれどそれが女なんだよねー
そんな唯川作品らしいピリリとスパイスが効いた短編集でした。