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ミスター・ピップ の商品レビュー

4.4

11件のお客様レビュー

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2019/07/18

パプアニューギニア政府とブーゲンヴィル革命軍の内戦は割と最近なんですね。島民はどれだけ不安だったでしょうか。そんな中、白人のワッツ先生は村の学校で子供達に「大いなる遺産」を朗読し子供達は夢中になるものの内戦の影響はどんどん迫ってきます。不安定な社会情勢に翻弄される島民たちがされた...

パプアニューギニア政府とブーゲンヴィル革命軍の内戦は割と最近なんですね。島民はどれだけ不安だったでしょうか。そんな中、白人のワッツ先生は村の学校で子供達に「大いなる遺産」を朗読し子供達は夢中になるものの内戦の影響はどんどん迫ってきます。不安定な社会情勢に翻弄される島民たちがされた残酷なことを読むとたまらない気持ちになりました。

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2019/05/21

過酷な運命に翻弄される一人の小さな人間と再生。言葉、記憶、ストーリー、ルーツ。アンゲロプロスの映画に似たものを感じた。

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2016/10/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 ソロモン諸島の西の端にある、ブーゲンビル島。世界的に見ても巨大な銅鉱山を持つこの島では、産業主義に走る政府(オーストラリア側)の搾取と、それに対する地元住民や鉱山労働者の不満が充満していた。反乱と経済制裁。そして血なまぐさい悲劇。地元住民、ましてや子どもたちは何をしたっていうの?(知れば知るほど悔しくなる…)そんな環境を生きる、一人の少女から見た世界を描いた物語が「ミスター・ピップ」である。  主人公・マティルダの学校にある日教師としてやってきた島で唯一の白人、ミスター・ワッツ。教材も何もない中、1冊の本を朗読し始める。次第に物語にのめり込むマティルダ。そんな娘の姿をおもしろく思わない、キリスト教を強く信じる母親が、事件を起こすきっかけになる。愛する母と、信頼するミスター・ワッツの間で揺れるマティルダの眼差しの尊さが、印象的です。  クライマックスのシーンでは、マティルダに感情移入してしまい身を切られるように苦しかった。理不尽に立ち向かう大人たちの姿を見ても、ただ自らの無力さに絶望するしかないマティルダ。また、辛い思い出が物語の源泉になることに気づく様子には、生きる強い意志を感じました。  南太平洋と聞けば、美しい海をはじめとした豊かな自然、明るくておおらかな人々といった平和な世界のイメージだった。そして驚くべきは、この悲劇が起こっていたのはわずか15年ほど前の話であり、現在もその不安定な状態が続いていること。私が安くていいファンデーションを探したり、ルーズソックスで足を細く見せようとしていたあのときにも、そして今だって、世界のどこかで起きていることがある。ちゃんと知っていこうと思う。  ブーゲンビルの悲劇については、このサイトがわかりやすかった!→http://shinrin-journalist.la.coocan.jp/sub4-16.html

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2016/03/22

200ページ以上を一気読みした。暴力に真に対抗し得るのは想像力であるというメッセージ。小学生の頃読んだ、ミヒャエル・エンデのモモをなぜか思い出した

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2015/12/18

黒人の女の子マティルダ。白人の教師ミスター・ワッツ。ワッツがクラスでディケンズの『大いなる遺産』を朗読するところから物語が始まる。それまで文学になど触れてこなかった子どもたちに何かが芽生え始める。 作中で起こる出来事は悲惨なことばかりだけど、子どもの目線で描かれているのでそこまで...

黒人の女の子マティルダ。白人の教師ミスター・ワッツ。ワッツがクラスでディケンズの『大いなる遺産』を朗読するところから物語が始まる。それまで文学になど触れてこなかった子どもたちに何かが芽生え始める。 作中で起こる出来事は悲惨なことばかりだけど、子どもの目線で描かれているのでそこまで生々しくなくなんだかふわふわしてる。でもそこがリアル。この感じうまく言葉にできない。 マティルダとワッツ。マティルダと、信念を持った母。濃密な人間関係が描かれる。 描写がいい意味で日本的ではなくて、ピンとこないところも多々あるけど新鮮な読書体験だった。 西加奈子氏のエッセイで紹介されていたので読みました。

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2014/11/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

[ 内容 ] ブーゲンヴィル島の13歳の少女マティルダは、白人の「先生」ワッツの教えで、孤児のピップが活躍するディケンズの小説『大いなる遺産』の世界に魅せられる。 しかし、独立抗争の影が島に忍び寄り、思いもかけない惨劇が…。 「物語の力」を謳いあげた、胸に響く傑作長編。 英連邦作家賞受賞作。 [ 目次 ] [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]

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2014/08/05

ディケンズが読みたくなる。 作中作ではないが、構成の土台になっている部分もある。 差別の図式、成長物語をつかうことによるシンクロ、視点の交差など。 ストーリーだけ追えば、単なる(というと軽々しいが)白人による、黒人地区へ侵略とその悲劇、ということになるが、主人公である子供の目線で...

ディケンズが読みたくなる。 作中作ではないが、構成の土台になっている部分もある。 差別の図式、成長物語をつかうことによるシンクロ、視点の交差など。 ストーリーだけ追えば、単なる(というと軽々しいが)白人による、黒人地区へ侵略とその悲劇、ということになるが、主人公である子供の目線で語られることが、生々しさを消しつつ、語られない(子供には少し意味不明な大人の言動や社会情勢の)緊迫感が、逆に行間から浮き出てくる。 それにしても、特に直接的表現はないのに、なぜこんなに色彩感豊かだと感じるんだろう? それもまた魅力の一つだと思う。

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2011/06/27

争うことの惨たらしさ、本を読むことの豊かさ、それぞれを知ることによって人は大人になっていくんだと痛切に実感できる良書だと思います

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2011/08/02

真黒い肌の人たちの島に、ただひとり残った白人、ミスター・ワッツが朗読してきかせる『大いなる遺産』の物語は、今こことは異なる世界への扉を初めて開き、マティルダら子どもたちを魅了していく。やがて村のなかに、「ミスター・ディケンズ」「ミスター・ピップ」の実在が感じられるほどに・・・ ま...

真黒い肌の人たちの島に、ただひとり残った白人、ミスター・ワッツが朗読してきかせる『大いなる遺産』の物語は、今こことは異なる世界への扉を初めて開き、マティルダら子どもたちを魅了していく。やがて村のなかに、「ミスター・ディケンズ」「ミスター・ピップ」の実在が感じられるほどに・・・ まるでおとぎ話のような小説だが、その舞台となっているのは、内戦下で封鎖された1990年代のブーゲンヴィル島。星空の下、空想から生まれた人々が動きまわる夢のような美しい夜は、次の昼には、言語に尽くせない暴力へと転換するのである。 この島をヨーロッパ人が初めて訪れたのは18世紀後半。19世紀にドイツ領ギニアに併合され、第一次大戦でオーストラリアが占領、第2次世界大戦後にパプアニューギニアの一部となった。植民地の植民地、英連邦のまさに辺境ということになる。オーストラリア人が開発した鉱山による環境破壊の被害を受けながら、利益は本国に吸い上げられることに不満を強めたフランシス・オナは、1888年に鉱山閉鎖とパプアニューギニアからの独立を要求して闘争を開始。以来、1997年の和平協定までに、パプアニューギニア政府軍と革命軍の間で、多数の島民が犠牲になったという。 このポストコロニアルな紛争の渦中におかれた少女の視点から、ロイド・ジョーンズは、19世紀の大英帝国の中心ロンドンを舞台とするディケンズの小説を語りなおしていく。のちにマティルダが発見するように、ミスター・ワッツが語る『大いなる遺産』は(そして彼自身の物語も)、多くの省略や改変を含んだものだった。しかしジョーンズは、オリジナルのテクストに対する改変や誤読を、むしろ新しい可能性を開くものとして、積極的な意味をあたえているようだ。 たとえば、お金がなくても「ジェントルマン」になれるのかという生徒の問いに対し、ミスター・ワッツは憤然と、もちろんだと答える。「ジェントルマン」とは品位をそなえた人、つねに正しいことをする人なのだと。この答えは、ディケンズの小説に照らせば、正しいが、間違っているということになるだろう。ディケンズは、社会的地位に関わらない人間の品位を強調してはいるが、少年ピップがひたすら追い求めるのは、階級上昇にほかならない。ところがマティルダの母は、まさに、どんな状況においてもつねに正しいことを行うことで「ジェントルマン」であることを示すのである。 大英帝国の辺境において自在に読み変えられた少年ピップの物語を導きに、少女マティルダは、自分自身の移動を行っていく。初めは、母親から身をひきはがすために。そしてブーゲンヴィルからオーストラリアへ、イギリスへと、中心に向かってさかのぼる。それは、ポストコロニアル状況を生きる多くの移民たちがたどる道だが、成長したマティルダは、ピップのなしえなかったこと、すなわち<家>への帰り道をみつける地図としてディケンズのテクストを読み変える力を示すのである。文学の可能性を力強く提示する傑作だ。

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2014/12/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

表紙の絵と、帯の「英連邦作家賞」という言葉に惹かれて手に取った本。 革命戦争が始まって閉鎖されてしまった学校で、島の唯一の白人ミスター・ワッツが、ディケンズの小説『大いなる遺産』を子どもたちに一章ずつ朗読するところから物語が始まっていく。 学校で子どもたちはミスター・ワッツにより遠い異国の物語に触れ、そしてまた、島の住人(大人たち)からも少しづつ、色んなことを教わっていきます。 ミスター・ワッツとミセス・ワッツの話、レッド・スキンと革命軍、母と娘、色んな立場や思いが交錯して、力強く生きようとしている人々の姿が胸を打つお話でした。 ディケンズと言えば、昔頃映画で見た「ニコラス・ニクルビー」しか知らなくて、オリバー・ツイストもクリスマス・キャロルもきちんと読んだことはありませんでしたが、この本を読んで「大いなる遺産」を読んでみたくなりました。 舞台となっているのは、1990年初頭のブーゲンヴィル島。ソロモン諸島の北にある、パプアニューギニアの島です。 ブーゲンヴィル、と言う名前の響きからブーゲンビリアが咲いてるのかなあと思っていたらそうではなくて、ブーゲンビリアは南米が原産の花でした。どちらも、フランス人探検家ブーガンヴィル(1729-1811)にちなんだ名前だそうです。世界のあちこちに名前を残すブーガンヴィル。「世界周航記」という著作もあるようです。作中に主人公の先祖の話が出ていたのですが、もしかしたらこれにちなんだ内容だったのかも。 この物語は、そんな背景を知らなくても楽しめました。楽しかったから背景を知りたくなったというか。

Posted byブクログ