あなたが、いなかった、あなた の商品レビュー
芸術家が、油絵か、彫刻か、はたまたインスタレーションか、映像作品か、自分が伝えたいことをいろんなフォーマットで試してる、みたいな、一冊。平野さんのこの実験を同じ次元で受け取れる人がいるのなら、2人の会話を盗み聞きしてみたい。
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作者の作品を読むのは、「決壊」に続いて二作目。難しい、難解。。読みやすいのは、「義足」と「慈善」くらいか。(「義足」は、あの後藤健二さんの著作を参考にしてるそう。)
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様々な技法で小説、文章というか、本というメディアを 分解、再構成している、そんな短編集。 老いのために少しずつ体が崩れる世界の青年。 ただ、その小説のページ下部には短いエッセイが 挿絵の代わりについている作品。 一文だけの作品。 親子の人生をインタビュー形式で作り上げる作品 等々 だが、この短編で最もコアなのは主人公が自殺する小説を 書こうとしている小説家の作品だろう。 おそらくは著者自身(平野)が投影された「大野」が 主人公だが、その「大野」が、さらに自分の小説の 主人公をみつめるため、実に不思議な感覚に陥る。 さらにテーマは死である。 死とは何か。小説にとっての。自分にとっての。 小説とは何か。「大野」にとっての。実際の著者にとっての。 多次元に見つめ表現しようとする。 色々と興味深いが、面白いかと言えば、人それぞれだろう
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「やがて光源のない…/TSUNAMI」 老化現象にまつわる個人的な話と大量死のスケッチが同時進行する 「鏡」 物理法則すら信用には値しないという考えへのある種の偏執 「フェカンにて」 英雄的な死に憧れをもつ小説家が思わず崖から飛び降りそうになる 「女の部屋」 同じ文章が7回...
「やがて光源のない…/TSUNAMI」 老化現象にまつわる個人的な話と大量死のスケッチが同時進行する 「鏡」 物理法則すら信用には値しないという考えへのある種の偏執 「フェカンにて」 英雄的な死に憧れをもつ小説家が思わず崖から飛び降りそうになる 「女の部屋」 同じ文章が7回、それぞれパターンの違う虫食い状態で繰り返される 「一枚上手」 貞操を証明するために携帯電話を交換して連休を過ごそうという提案 「クロニクル」 過去の男について饒舌に語る女たちだが結局は自分のことしか喋れない 「義足」 慣れた義足が泥にはまって抜けなくなり、ただのモノになってしまう 「母と子」 シチュエーションを異にして同じ行為が何度も繰り返される 「異邦人♯7ー9」 言葉もわからないまま海外出張に出向いた男の不安が見せる白昼夢 「モノクロウムの街と四人の女」 全体主義の街に現れた異物が全てを解放するどころか余計な混乱を招く 「慈善」 外貨預金で儲けた妻の賢しさが忌々しいのでヒューマニズムを持ち出し もっともらしく批判する夫
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短編集だが、色々な手法を凝らしている。 これまでに味わったことのない短編集。 「鏡」「女の部屋」「母と子」は特に驚いた。 文学には程遠い自分が一番気に入ったのが「フェカンにて」 この短編の主役は、平野啓一郎先生ごい本人にとても近い。 私はご本人であろうと思い込んで読んでいた。...
短編集だが、色々な手法を凝らしている。 これまでに味わったことのない短編集。 「鏡」「女の部屋」「母と子」は特に驚いた。 文学には程遠い自分が一番気に入ったのが「フェカンにて」 この短編の主役は、平野啓一郎先生ごい本人にとても近い。 私はご本人であろうと思い込んで読んでいた。 先生の作品である「葬送」にも触れられ、 私が先日読んで、どう読むべきか酷く迷っていたドフトエフスキーの 罪と罰にも触れていた。とても興味深い。 当たり前だが、私の軟弱な「あぁ面白かった。」という感想とは かけ離れている。 読み方のレベルが違いすぎて溜息しか出てこない・・・。 この本を読んで、何故かもう一度平野啓一郎先生の「決壊」を読まなくては!と思った。そろそろ再読してもいい頃なのかもしれない。
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前衛的な試みと、死の香りにみちた短編集。 ・やがて光源のない澄んだ乱反射の表で……/『TSUNAMI』のための32点の絵のない挿絵 老いると身体がどんどん砂になっていく話と、ページ下に横書きで砂浜に津波が来る様が同時進行していく作品。 徐々に死んでいく話と、あっという間に死んでしまう話といってもいいかな。 ちょっと一人称は下手なんじゃないかなあと思った。 別に下のは無くてもよかった(笑) ・鏡 この後に出てくる「死に続ける自己」のことを想像した。 小説を書くような気持ちで書かれたものが小説だ、というようなことを佐藤友哉『1000の小説とバックベアード』で言っていたので、1行しかなくても、小説だと言い張ったら小説やねん。 ・『フェカンにて』 限りなく平野本人に近い小説家「大野」が主人公。 疑いなくこの短編集の核だと思う。 作者は私小説は書かないと言っていたような気がするから、何もかもが作者本人にそのまま当てはまるわけではないのだろう。 『日蝕』『葬送』を読んだらこちらもぜひ。 ・女の部屋 たぶん女の部屋を描写しているだけなのだろうが、虫食いというか、文章の一部だけしか見えない。文字が模様みたいな感じ。 最初はなんとなく覗きをしているような気分で、虫食いを想像しつつ読んだけど、5ページ目くらいであきらめた。 ・一枚上手 浮気してる旦那が妻に携帯を見られる話。 なんとなく笑い話のような感じだけど、携帯が人間の秘密を握っているという、ある意味携帯がその人のすべて、みたいな、当たり前のようなことに気付いてみたりする。 これもアヴァンギャルドなのかい。アバンストラッシュ。(関係ない) ・クロニクル ミュージシャン・Pと、その息子で格闘家Jについての回想を、二人の女が小説家に語る。 前にツタヤで適当に買ったアブダル・マリックの音楽みたいな雰囲気。 生きている人が語ると、死んだ人の不在が際立つんだな、と思った。 ・義足 義足が土に埋まってさあ大変な話。 解説によるとシエラレオネの話らしい。 芥川がおじいさんまで生きていたら、こんな話を書いたりしたかもしれないなあと、なんとなく。 ・母と子 キュービズムみたいな空間の描写ではじまる。 同じ動作と同じ言葉が何度も繰り返されるが、状況はどれも違う。 描写の上手さを堪能できる話。 ・異邦人#7-9 フランスの地下鉄で日本人の主人公が手を置いてくる話。 栗田有起『マルコの夢』を思い出したが、こちらはものすごく孤独。 外国で、名前すらまともにないなんて。 ・モノクロウムの街と四人の女 色を失った世界でハデに着飾った4人の女の話。 なんやようわからんかったが、乳首のことをいちいちnippleと横倒しで書いてあるのがなんかウケた。 ・慈善 テロによるユーロの暴落でお金を儲けて喜ぶ妻。 それを叱った夫が募金した箱には「GIZEN」と書いてあった。 わざとらしすぎるが、貧しい国のおかげで幸せを享受している、現代日本。 身近すぎて文学のにおいがしない。鼻が慣れているからか。 ところで、この短編集には「津波(TSUNAMI)」と「3月11日」という言葉が入っている。これはどういうことなのだろうか。 初出2009年の『ドーン』には震災も出てくるし。 作者は天才だ天才だといわれてるけど、天才すぎてなんか天災を予言したんだろうか。 たまたまだと思うけど、コワイ。
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知らない言葉をたくさん使っているからたぶん好き。大変日本語の勉強になる。電子辞書片手に、時たまメモをとりながら、楽しい国語の時間となる。 これは短編小説集だが、その中で言葉を並べ、物語を作るという作業で大変冒険しているのがわかる。成功しているかどうかは別として、形式上でもこのくら...
知らない言葉をたくさん使っているからたぶん好き。大変日本語の勉強になる。電子辞書片手に、時たまメモをとりながら、楽しい国語の時間となる。 これは短編小説集だが、その中で言葉を並べ、物語を作るという作業で大変冒険しているのがわかる。成功しているかどうかは別として、形式上でもこのくらい新しいことしてみるのは若いなぁとうれしく思う。
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短編が全部実験ぽくて、筆致も違ってるし、作家さんが楽しんで書いてるんだろうなという感じがします。ただし実験がすご過ぎて物理的に読めない作品?もあります
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初平野啓一郎作品。これを最初に読んだのは間違いだった。実験的な作品は、最初に読むものではないな。やりたいことはなんとなく分かったのだけど。
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ふと入った本屋さんで知り合いの人が働いていて、社割?みたいにしてもらったってことが印象的だった。 結構斬新な試みをしていた本で、本自体がアート作品のようだった。 けど、その表記のゆれと文字に込められた意味の間で迷子になってしまい、結局、読み切れずに手放してしまった。
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