海の都の物語(3) の商品レビュー
1、2と読み地中海の覇権を巡る海洋都市国家の争いにストーリーは移る。ヴェネツィアと最大のライヴァル、ジェノヴァの争いだ。前半のクライマックスといえ、久しぶりに手に汗を握りながら本を読んだ。 両国のカラーの鮮明な違いから入り、個人主義で天才型の船乗りが多いジェノヴァの方がこういう...
1、2と読み地中海の覇権を巡る海洋都市国家の争いにストーリーは移る。ヴェネツィアと最大のライヴァル、ジェノヴァの争いだ。前半のクライマックスといえ、久しぶりに手に汗を握りながら本を読んだ。 両国のカラーの鮮明な違いから入り、個人主義で天才型の船乗りが多いジェノヴァの方がこういうケースでは主人公にしやすい。だがヴェネツィアも集団で国家のために尽くしていきながら、四面楚歌でおよいよ危うしという場面でカルロ・ゼンとベットール・ピサーニの登場で救われる。 お互いに友好国を巻き込み、好条件で寝返らせ、地中海の勢力均衡の中で生き残りを図る。最後はそんな終わり方?と思わなくもないが、それも含めて印象深かった。 ヴェネツィアの女、は軽く読み流そうとも思っていたがいい意味で期待外れ。オスマントルコに嫁いだチェチリアは冷戦沈着である意味ヴェネツィアにとって邪魔な存在だったトルコ宰相の暗殺という形でヴェネツィアを支援することになる。 ヴェネツィアの女性たちがいてこそあの都市の豊かな文化を支えていたのだということも発見。 なお途中に女性の話から何度か脱線して、同じルネサンスの代表的な都市フィレンツェとの比較はボーナストラックのような感覚。お得感をもって4に移ることができる。
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ヴェネチアが地中海の制海権を賭けて、アマルフィ、ピザ、ジェノバというイタリア商船旗のライバルたちを凌駕していく巻。特にジェノバには一時は瀕死の状態まで追い込まれる。そんな中、二人の英雄が現れる。ベットール・ピサーニとカルロ・ゼン。人気、規律と奔放な極端な二人が最後はジェノバをキオ...
ヴェネチアが地中海の制海権を賭けて、アマルフィ、ピザ、ジェノバというイタリア商船旗のライバルたちを凌駕していく巻。特にジェノバには一時は瀕死の状態まで追い込まれる。そんな中、二人の英雄が現れる。ベットール・ピサーニとカルロ・ゼン。人気、規律と奔放な極端な二人が最後はジェノバをキオッジアの戦いで破り形勢逆転。その後、ジェノバはスペイン領になり、新たなライバルのオスマントルコとのレパントの海戦へと続いていく。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ライバルであるジェノバとの攻防は読んでいて思わず力が入る。決着は肩透かしのようではあるが。 そして、歴史の表舞台には、ほとんど出て来ないヴェネツィアの女について。オスマントルコの后となったチェチリア・バッホの記述が興味深い。
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中世においてさえ、キリスト教の教義よりも自国の利益を優先させていたヴェネツィアだが、トランプ大統領の“アメリカ・ファースト”みたいな傲慢さが感じられないのは、資源に乏しく人口も十分でない中、生き残る為には大国相手の外交努力を怠らず、いざ戦争となったら、国を挙げて戦わざるを得なかっ...
中世においてさえ、キリスト教の教義よりも自国の利益を優先させていたヴェネツィアだが、トランプ大統領の“アメリカ・ファースト”みたいな傲慢さが感じられないのは、資源に乏しく人口も十分でない中、生き残る為には大国相手の外交努力を怠らず、いざ戦争となったら、国を挙げて戦わざるを得なかったから、か。
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今のイタリアの長靴の形の前側の一番上がジェノヴァで、後ろ側の一番上がヴェネツィア。前側のジェノヴァの少し南にピサ、それよりだいぶ南、足の甲のあたりにアマルフィがあった。この4つの海洋通商国家のうち、まずアマルフィ、次に海洋国家としてはピサが滅亡した。いずれも今では小さな町だが、そ...
今のイタリアの長靴の形の前側の一番上がジェノヴァで、後ろ側の一番上がヴェネツィア。前側のジェノヴァの少し南にピサ、それよりだいぶ南、足の甲のあたりにアマルフィがあった。この4つの海洋通商国家のうち、まずアマルフィ、次に海洋国家としてはピサが滅亡した。いずれも今では小さな町だが、それに似合わないほど華麗な教会などがあるそうだ。後に残ったジェノヴァとヴェネツィアのライバル関係がおもしろい。都市同士のこれほど性格の違いはこの物語を通して語られるが、歴史上のいろいろな出来事は年表でも作って整理しないととても頭に残らない。1冊読み終えたときにはすでに忘れている。。。 この巻の最後はヴェネツィアの女性について。一般に政治的社会的な力は持っていなかったようで残念だが、その中で航海中にトルコの海賊に襲われてスルタンに奴隷として献上されたチェチリアという少女がいる。この少女が長じてスルタンの母となり、国の機密情報を知る立場になって、ヴェネツィアにその情報を流していたという。1000年という長い歴史を語りつつ、こういう細かいところまで描写するところが想像をかきたてる。また、この巻には当時の衣装などの絵がたくさん掲載されていて興味深い。
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東方との通商に乗り出し、地中海の制海権を握ろうとしたのは、ヴェネツィアだけではなかった。アマルフィやピサといった海洋都市国家が次々と現れ、なかでも最強のライヴァル、ジェノヴァとの争いは苛烈を極めた。ヴェネツィア共和国は、個人主義的で天才型のジェノヴァの船乗りたちといかにして戦った...
東方との通商に乗り出し、地中海の制海権を握ろうとしたのは、ヴェネツィアだけではなかった。アマルフィやピサといった海洋都市国家が次々と現れ、なかでも最強のライヴァル、ジェノヴァとの争いは苛烈を極めた。ヴェネツィア共和国は、個人主義的で天才型のジェノヴァの船乗りたちといかにして戦ったのか。群雄割拠の時代を生き抜くヴェネツィア人の苦闘の物語
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ジェノヴァとの戦いを描く第6話は燃えである ただジェノヴァおよびイタリア周辺各国への言及は もう少し欲しかったところ 7話の女性について触れた話はまさに女性ならではの視点 カヴァリエレ・セルヴェンテを実行したヴェネチアの男性を 真剣に尊敬せざるを得ない
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背表紙にはベネチアvsジェノバの戦のことが紹介されているが、むしろ後半の「ベネチアの女」の項が興味深い。貿易国のベネチアは夫が商業やあるいは他国への駐在職で本国を空けることが多かった。夫に代わって催し物への参加など、本国で家のことを取り仕切るのが妻である。女子力を上げるため東西伝...
背表紙にはベネチアvsジェノバの戦のことが紹介されているが、むしろ後半の「ベネチアの女」の項が興味深い。貿易国のベネチアは夫が商業やあるいは他国への駐在職で本国を空けることが多かった。夫に代わって催し物への参加など、本国で家のことを取り仕切るのが妻である。女子力を上げるため東西伝来の貿易の品々でオシャレをしたり、「奉仕する騎士」制度なるもので若い貴族の男の助けを女らしさを意識し続けた。僕がジェンダー論を語るのは似合いませんが、これってホストじゃね・・・。興味ある人はこの項だけでも楽しめるかと思います。
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ベネチアは今でこそイタリアの観光地だが、中世は商人の国として栄えた。彼らはとても抜け目無く、そしてしぶとく世の中を生き抜いてきた。土地も資源も無い国でありながら、1000年も存続することが出来た理由は、彼らのたくましさがあったことに他ならない。通常、歴史では表面上の出来事しか語ら...
ベネチアは今でこそイタリアの観光地だが、中世は商人の国として栄えた。彼らはとても抜け目無く、そしてしぶとく世の中を生き抜いてきた。土地も資源も無い国でありながら、1000年も存続することが出来た理由は、彼らのたくましさがあったことに他ならない。通常、歴史では表面上の出来事しか語られないが、この書籍では歴史の表舞台に登場しないような市民や貴族達の生活や生涯にも触れており、大変興味深い。同じく海洋国家として栄えたジェノヴァ人との対比も、また面白い。イタリアの海洋国家であるベネチア・ジェノバ・アマルフィ・ピサが、イタリアの国旗に伝統として残っていること、マルタ騎士団が商人によって創設されたことなど、現代をより深く理解することも出来た。 ベネチアやジェノヴァなどの海洋国家は、いずれも資源に恵まれなかった国であり、資源に恵まれたナポリなどは海に面していても敢えて危険な冒険や航海に出る必要が無かったため、海洋国家が成立しなかったという考察も面白い。土地や環境の面で不利であることが、生き抜くための工夫を促し、開拓者精神と経済人精神を育んでいくことことがある。ベネチアを初めとした海洋国家はそれを証明して見せた。 また、ベネチア人の政治感覚もまた奇妙なものである。君主制や独裁を嫌い、あくまで共和制を維持するための相互監視制度を創設しただけでなく、絶大な人気を誇った元首の後の2代目が、敢えて後継者になることを辞退するケースもあったようだ。彼らは政治の本質を良く理解していたと言える。 また、彼らにとって政治は常に商売と結びついており、商売の利権を確保するためのものであった。一つの土地の航路が使えなくなれば、また別のルートを開拓し、異教徒との交易を禁止されれば、現地のキリスト教徒とのみ交易するという「裏技」を用いるなど、商魂たくましい男達であった。 「生き抜く」ということがどういうことなのか、彼らの生き方を通じて学んだ気がする。
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