斜陽 の商品レビュー
主人公の思考の気味の悪さ、直治の抱えた苦しみ、全てが生まれた家によるものだと思うと、少し悲しくなります。人間失格のあとがきにも示唆されるように、生家というものに縛られて生きるのは辛いことに思います。でも誰もがそれに縛られている。歯痒い世界です。
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タイトルのとおり、暗い影のかかった貴族の暮らしを描いた本作には筆者の考えが投影されており、読後に悲壮感が残りました。出自の身分により、大衆と同じ生活を送ることが出来ない、かと言って貴族として生き抜く事も出来ない、がんじがらめになっている筆者の心境を感じました。筆者は他人の心の機...
タイトルのとおり、暗い影のかかった貴族の暮らしを描いた本作には筆者の考えが投影されており、読後に悲壮感が残りました。出自の身分により、大衆と同じ生活を送ることが出来ない、かと言って貴族として生き抜く事も出来ない、がんじがらめになっている筆者の心境を感じました。筆者は他人の心の機微に敏い方だったのだろうと思います。
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そう言えば『斜陽』は挫折したきりだったなと思いあたり講読。前回は食事の場面しか読んでなかったことが判明。最初も最初である。 当時の自分は高1くらいだったと思う。「スプウンひらりひらり」が気に入らなかったのか「お母さまがおしっこ」が気に入らなかったのか、、、多分言葉のリズムが気に入...
そう言えば『斜陽』は挫折したきりだったなと思いあたり講読。前回は食事の場面しか読んでなかったことが判明。最初も最初である。 当時の自分は高1くらいだったと思う。「スプウンひらりひらり」が気に入らなかったのか「お母さまがおしっこ」が気に入らなかったのか、、、多分言葉のリズムが気に入らなかったんだと思う。 当時の上流階級の女性の語り口はこんな感じだったのだろうか?大人になって読んだ『女生徒』は「なんかわざとらしいなぁ」と思いながらもニヤニヤと読めたのに『斜陽』はなぜか鼻についてしまう。太宰の代表作なんだからと辛抱して今回はなんとか読み切った。 当時の世情をよく知らぬまま、言葉使いや考え方に文句を言っても仕様がないのだが、ストーリーに関してはいくらなんでも青臭すぎるだろうと感じた。太宰自身の投影である直治や上原が青臭いのはもちろん、主人公かず子に至っては薄っぺらさまで感じてしまう。有名な“恋と革命のため”もその場の思いつきにしがみついたようにしか思えず、その悲壮な決意を切ないと感じられれば良いのだが、今ひとつエンパシーが湧かない。評価は甘めにつけて星3つです。
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自ら進んで文豪に手を出したのはこれが初めて。 ガチャガチャで斜陽の豆本引いて、ちょっと中見てみたらあまり難しい文体ではなかったので、興味本位で読んでみた。 それぞれの人生だなーと。かず子はなんか逞しかった。 弟の好きな人がいまいち分からなかったけど、かず子が最後に上原の奥さんに赤子を抱いて欲しいとか言ってたので多分上原の奥さん??でも、上原さんって洋画家じゃない…と気になって調べてしまいました。。
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一度リタイアしたけれど、もう一度読み直してみたらぐんぐんと引き込まれた。 これまで、学校の授業でしか文豪の小説を読んだことがなかったけど、こんなにも長く人々に読まれている理由がなんとなくわかった気がする。 他の文豪の作品も読んでみたくなった。 かず子さんが29歳に思えない。...
一度リタイアしたけれど、もう一度読み直してみたらぐんぐんと引き込まれた。 これまで、学校の授業でしか文豪の小説を読んだことがなかったけど、こんなにも長く人々に読まれている理由がなんとなくわかった気がする。 他の文豪の作品も読んでみたくなった。 かず子さんが29歳に思えない。少女のような可憐さと、恋愛に対する情熱、そして行動力。年齢を重ねても、女性であろうと、革命を起こそうとする姿がとても印象的だった。
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太宰さん2作目! 人間失格を読んでいたので、太宰節には慣れていたが、やけに強気でパワフルな小説だと思います。 斜陽。まったく内容の想像はつきませんでした。 だからとても新鮮な気持ちで読めました。 生きることはつらい。でも、古い道徳を壊すためにわたしは生きていく。珍しく太宰に...
太宰さん2作目! 人間失格を読んでいたので、太宰節には慣れていたが、やけに強気でパワフルな小説だと思います。 斜陽。まったく内容の想像はつきませんでした。 だからとても新鮮な気持ちで読めました。 生きることはつらい。でも、古い道徳を壊すためにわたしは生きていく。珍しく太宰にしては力強いことばをかず子に言わせてますよね。 今だったら元精神科医の政治家が言うことばでしょう。人の弱さを認め、立ち上がる。 政治だね。 太宰さん、ありがとう。
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暗さの中に見える人間の本質、一見意味がわからないように見えて何処かわかってしまう心理描写、これぞ太宰治といった作品です。
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太宰の作品は、『走れメロス』『人間失格』くらいしか読んだことがなかったがこの『斜陽』は非常に語彙力と表現力に心を奪われた。 それぞれの人生が描かれており、好きになってはいけない人を好きになってしまった。内容だけ見れば一見よくあるストーリーなのだが、それを表現する言葉の使い方がもう...
太宰の作品は、『走れメロス』『人間失格』くらいしか読んだことがなかったがこの『斜陽』は非常に語彙力と表現力に心を奪われた。 それぞれの人生が描かれており、好きになってはいけない人を好きになってしまった。内容だけ見れば一見よくあるストーリーなのだが、それを表現する言葉の使い方がもうなんとも言えないほどである。 「もっとずっと前に、あなたがまだお一人の時、そうして私もまだ山木へ行かない時に、お逢いして、二人が結婚していたら、私もいまみたいに苦しまずにすんだのかも知れませんが、私はもうあなたとの結婚は出来ないものとあきらめてます。」 この箇所は、やはり恋愛をしていく上でどんなにお互いが惹かれあっていたとしても出逢うべきタイミングや恋愛に進んでいくタイミング、様々な状況がしっかりと噛み合った上で成り立つものだと改めて実感した。 「もう一度お逢いして、その時、いやならハッキリ言って下さい。私のこの胸の炎は、あなたが点火したのですから、あなたが消して行って下さい。私ひとりの力では、とても消す事が出来ないのです。」 この箇所は失恋を経験した身からすると非常に沁みた。一度だけでいいから逢いたい。逢って話がしたい。それで気持ちを終わらせる。実際会う前はこの覚悟でいるのは間違いないが、結局会ってしまったらそれ以上を望んでしまう。元々あった気持ちより膨らんでしまう。しんどい未来は見えていたとしても、それでも逢いたくなってしまう。それが恋ってもんなんじゃないかなと改めて感じた。 人生が没落していく。私の今の状況には非常に刺さる本であった。没落していない時にまた読めたらと思う。
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直治の手紙で涙腺崩壊。 太宰作品は短編しか読んでいなかった。 姉さん。僕は、貴族です。 噛み砕けば素直な言葉だけれど、どのシーンでもその人物が言うから意味があるし、言葉が生きていて、文章を味わう楽しさは太宰からしか得られないかもしれない。 しくじった。惚れちゃった。 これもやばいよ、最高です
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太宰の作品は初めて読んだが、とてつもない語彙力で自身の心境、思想を語っているように感じた。まるで本当に経験したかのような、読者の心を取り込む文のかき方。上品というか奇抜というか、本当に魅力的な言葉を選ぶ人だなと思った。決して読みやすくはないが、読み終えた時の満足感がすごい。本物の才能を見た。 ーーー 「私もいまでは田舎者ですわ。畑を作っていますのよ。田舎の貧乏人。」 「今でも、僕をすきなのかい。」 乱暴な口調であった。 「僕の赤ちゃんが欲しいのかい。」 私は答えなかった。 岩が落ちてくるような勢いでそのひとの顔が近づき、遮二無二に私はキスされた。性慾のにおいのするキスだった。私はそれを受けながら、涙を流した。屈辱の、くやし涙に似ているにがい涙であった。涙はいくらでも眼からあふれ出て、流れた。 また、2人でならんで歩きながら、 「しくじった。惚れちゃった。」 とそのひとは言って、笑った。 けれども、私は笑う事ができなかった。 眉をひそめて、口をすぼめた。 仕方がない。 言葉であらわすなら、そんな感じのものだった。私は自分が下駄を引きずってすさんだ歩き方をしているのに気がついた。 「しくじった。」 とその男は、また言った。 「行くところまで行くか。」 「キザですわ。」 「この野郎。」 上原さんは私の肩をとんとこぶしで叩いて、また大きいくしゃみをなさった。
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