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『こころ』は本当に名作か の商品レビュー

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21件のお客様レビュー

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2024/07/18

小谷野敦(とん)、私の読書記録で確認すると既に8冊読んでいる、私にとっては比較的相性のいい好きな作家さん。 名作評価といえば大袈裟だが、例えば本ブクログなどでも各自素人が思い思いの評価や感想を書いて楽しんでいる。そうした個人評価自体は大した実害はないが、その評価が作品のクオリティ...

小谷野敦(とん)、私の読書記録で確認すると既に8冊読んでいる、私にとっては比較的相性のいい好きな作家さん。 名作評価といえば大袈裟だが、例えば本ブクログなどでも各自素人が思い思いの評価や感想を書いて楽しんでいる。そうした個人評価自体は大した実害はないが、その評価が作品のクオリティ以上に絶賛され世間で名作とまで言われると、一言居士のオジサンは「ちょっと待った」と言わずにはいられない、らしい。 そんな不純な動機から(?)執筆された作品。 まず、世界的権威であるノーベル文学賞の実態について。本書の2009年時点では受賞者105人(内辞退者2人でサルトルとパステルナーク)、またトルストイやグレアム・グリーンなどの巨匠も受賞していない。 有名なところでは、ショーロホフ、ソルジェニーツィン、ユージン・オニール、パール・バック、フォークナー、ヘミングウェイ、スタインベック、キップリング、バーナード・ショー、TSエリオット、ラッセル、チャーチル、ロマン・ロラン、アナトール・フランス、ベルクソン、アンドレ・ジイド、アルベール・カミュ、川端康成、三島由紀夫など。 さて、本書で指摘される疑わしい名作は夏目漱石「こころ」、森鴎外「舞姫」、ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」、スタンダール「赤と黒」、トーマス・マン「魔の山」などを筆頭にワイルド、フォークナー、ヘミングウェイ、テネシー・ウィリアムズ、ダンテ、近松門左衛門、井原西鶴、上田秋成、樋口一葉、志賀直哉、永井荷風、芥川龍之介、三島由紀夫などの作家が俎上にあがっています。もちろん、これら作家の良作にも触れており、あくまでも過剰評価されている作品には容赦ありません。具体的作品名が気になる方は本書を読んでください。 箸休め的コラムも面白いのですが、専門外の「古典漫画の評価」は思ったより浅く、「児童文学の古典」では「ぼくがぼくであること」「とべたら本こ」「ユタとふしぎな仲間たち」「星の牧場」など掘り出し物件も。 もちろん、筆者による名作の紹介もあります。「源氏物語」「ドン・キホーテ」「ガリヴァー旅行記」「若きウェルテルの悩み」「孤独な散歩者の夢想」「プライドと偏見」「レ・ミゼラブル」「ジェイン・エア」「白鯨」「モンテ・クリスト伯」「ハックルベリー・フィンの冒険」「水滸伝」etc. 個々の作品への評価は別にしても、著者の読書量はやはりすごい。太宰治の「女生徒」を評価しているのも信用出来ます。

Posted byブクログ

2024/07/17

 著者がこれまで読んできた、名作と呼ばれる小説を選定した本。冒頭で、文学には普遍的な価値基準は存在しない、と前置きしたうえで、名作本をいくつかの段階に分ける。著者の見解として、紫式部『源氏物語』、シェイクスピア作品、ホメロス『イリアス』、『オデッセイア』、そしてギリシャ悲劇(ちな...

 著者がこれまで読んできた、名作と呼ばれる小説を選定した本。冒頭で、文学には普遍的な価値基準は存在しない、と前置きしたうえで、名作本をいくつかの段階に分ける。著者の見解として、紫式部『源氏物語』、シェイクスピア作品、ホメロス『イリアス』、『オデッセイア』、そしてギリシャ悲劇(ちなみにギリシャ喜劇のほうは面白くないと考える。笑いは地域と時代によって通用しないからだという。)が最高峰の名作だという。先ほど述べたように、文学において普遍的な要素を求めるべきではないし、著者自身もこれらの作品が後世に読み継がれる保証はないと考える。それでも、近代の作品と比べると上記の作品のほうが長い時を経ても耐えているので、作品としては上手である。  その一方で、一般的に名作といわれる小説、たとえば夏目漱石『こころ』が本当に名作に値するのかを本書の後半で検討する。たとえばドストエフスキー『罪と罰』、『カラマーゾフの兄弟』やダンテ『神曲』に関しては、キリスト教に馴染みのない人に深く理解できるのかと、著者は疑問を投げかける。それ以外にも有名な作品を批判するが、全体的に見て近代以降の作品が多い印象である。言い換えると、著者は読者に近代以前の名作を読むように推奨してるような気がする。

Posted byブクログ

2022/04/30

おもしろかった。突飛な意見もあるが、私には著者の意見は的を射てゐると思った。高校の時に買はされ、教科書で読まされたこゝろはつまらなかった。昔私は、自身にとってつまらなかったり理解できなかったりしても良い作品はあると思ってゐた。いま考へると自己欺瞞だったのだらう。書き方がいやといふ...

おもしろかった。突飛な意見もあるが、私には著者の意見は的を射てゐると思った。高校の時に買はされ、教科書で読まされたこゝろはつまらなかった。昔私は、自身にとってつまらなかったり理解できなかったりしても良い作品はあると思ってゐた。いま考へると自己欺瞞だったのだらう。書き方がいやといふ他人の感想も解るが、よく勉強してゐて芯が通ってゐる事やその正直さを私は評価する。

Posted byブクログ

2020/07/06

またタイトルに惹かれて、つい読んでしまった小谷野作品。相変わらずの辛口批評が満載で、自分も受け付けなかった文学作品がけなされていると、何となく拠り所が見つけられたように感じてしまう。それが極論の効能なんだろうけど、何だか辟易としてしまう自分もいて、正直、読んでいるうちにだんだん疲...

またタイトルに惹かれて、つい読んでしまった小谷野作品。相変わらずの辛口批評が満載で、自分も受け付けなかった文学作品がけなされていると、何となく拠り所が見つけられたように感じてしまう。それが極論の効能なんだろうけど、何だか辟易としてしまう自分もいて、正直、読んでいるうちにだんだん疲れてきました。

Posted byブクログ

2015/08/03

ブックオフで買って、速攻ブックオフに売り払った。 はしがきを読みだすと、「いわば」(だったと思う)があり、その数行後に「いわば」がまた使われている。 同じ言葉の連発に受けた印象は「文章雑だなー」。 読む気がしなくなり、文学作品を著者の視点から批評する内容なので、どの作品のど...

ブックオフで買って、速攻ブックオフに売り払った。 はしがきを読みだすと、「いわば」(だったと思う)があり、その数行後に「いわば」がまた使われている。 同じ言葉の連発に受けた印象は「文章雑だなー」。 読む気がしなくなり、文学作品を著者の視点から批評する内容なので、どの作品のどのようにいいのかをちょっとチェックすればいいやとわりきった。 で、著者が一番いいと論じているのは「源氏物語」だ。理由は「とにかくいい」 だけである。 どのようにいいのかを読者は知りたいんだよ! もういいや、この本読まなくて。 いや、待てよ。本書のタイトルの「こころ」はどうなんだ?高校の教科書にもある日本文学における大作品をどう斬っているんだ? 要約「みんながいいって言うのが気に入らないからけなしたい」 マジかよ。天邪鬼なだけかよ。 そんな本書から得られたこともある。 「文学作品の評価は普遍的なものではない」 ってこと。昔に駄作といわれていても、現在では評価の高い作品もあるし、現在評価の高い、人気のある作品でも未来では駄作といわれることもあるかもしれない。 読む人の価値観がちがえば、その作品の評価も変わってくるってことです。 絵画の世界でゴッホの描いた絵は生前全く評価されていなかったけど、今は高額の値がついている。それと同じことが文学にもいえるんですね。 いや、芸術的なものだけじゃなく、もの、人の評価は全て普遍的じゃないんだな。

Posted byブクログ

2015/05/05

2015/5/1読了34 私もこころが名作だと思えず購入してしまった。著者ならではの文学論が書かれているが、一般論とは異なるように感じられ、なかなか刺激的。 作家によっては、偉大な作家かどうかさえ疑われていたりするのだが、そんな作家の本でも著者は面白いと感じた本は面白いと言って...

2015/5/1読了34 私もこころが名作だと思えず購入してしまった。著者ならではの文学論が書かれているが、一般論とは異なるように感じられ、なかなか刺激的。 作家によっては、偉大な作家かどうかさえ疑われていたりするのだが、そんな作家の本でも著者は面白いと感じた本は面白いと言っている(例えばトーマス・マン) 私も自分が面白いと感じたものだけを面白いと言えるように、自分の中での明確な基準を持っていたいと感じた。

Posted byブクログ

2015/02/02

東西の古典文学の「だいたいは読み終えた」という著者が、おもしろかおもしろくないかを大胆に判定を下した読書案内です。 本書は作品自体のおもしろさを中心に評価しているのですが、それ以外にもたとえば白樺派の作家たちがトルストイをどのように受け入れたのかといった、受容史的な観点からのお...

東西の古典文学の「だいたいは読み終えた」という著者が、おもしろかおもしろくないかを大胆に判定を下した読書案内です。 本書は作品自体のおもしろさを中心に評価しているのですが、それ以外にもたとえば白樺派の作家たちがトルストイをどのように受け入れたのかといった、受容史的な観点からのおもしろさというものもあるはずで、本書にも随所にそうした薀蓄が示されているのですが、あまりアカデミックな文学研究に立ち入らないようにしているのか、そうした側面はほとんど切り捨てられているように思います。 たとえば、本書で著者が「好きではない」と述べている推理小説などの場合には、先行作品をどのように消化しているのかといった評価の観点もあるように思うのですが、そういうものは好事家に任せておけばいいので、本書のように単純な意味での作品のおもしろさをズバリ述べているのは、一つの見識ではあります。 もっとも著者は、「インターテクスチュアリティ」といった用語に代表されるような、非実証的なポストモダンの文学理論にどうしてもガマンがならないようで、そのことを考慮に入れておいた方がいいかもしれません。

Posted byブクログ

2014/06/13

著者が選んだ読むべき古典と名作といわれているが著者には違うという古典案内の本 源氏物語、シェイクスピアなどは最高峰の名作であり ドエトフスキーはキリスト教色強いので、日本人にはわからない 漱石は母に愛されなかった人は共感する 芥川、鴎外、永井荷風は名作かあやしいそうです。

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2015/09/21

名作とされている文学作品に対し、自分の感じたまま、良い悪いを断じるのが痛快。 無理矢理なところもあるけど、面白く読めるのは、小谷野敦の知識と技術によるものかなと思う。 小谷野敦は基本的に「もてない男」目線で読んでいる。 「もてない女」である私から見たら共感できる部分もあったし、...

名作とされている文学作品に対し、自分の感じたまま、良い悪いを断じるのが痛快。 無理矢理なところもあるけど、面白く読めるのは、小谷野敦の知識と技術によるものかなと思う。 小谷野敦は基本的に「もてない男」目線で読んでいる。 「もてない女」である私から見たら共感できる部分もあったし、感覚が決定的に違うと感じた部分もあった。

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2014/02/02

片っ端からぶった切ってる感が何とも痛快でした。名作案内、書評のはずなのに何故か痛快で面白い。容赦ないこき下ろしっぷりがまた笑える。 普遍的ではない書評、と言うのがまたいい。決して万人受けする内容ではないが、だからこそに著者の好みや価値観が顕著に出ていて楽しめる。 案内本としてはい...

片っ端からぶった切ってる感が何とも痛快でした。名作案内、書評のはずなのに何故か痛快で面白い。容赦ないこき下ろしっぷりがまた笑える。 普遍的ではない書評、と言うのがまたいい。決して万人受けする内容ではないが、だからこそに著者の好みや価値観が顕著に出ていて楽しめる。 案内本としてはいまいちだが、一般的な普遍的な書評に飽きた人にオススメしたい

Posted byブクログ