ナイン・ストーリーズ の商品レビュー
もちろんサリンジャーが生み出した奇想を味わうこともできる(バナナフィッシュや笑い男)。もしくは、死が至るところスパイスとして加えられている短編の切れ味の良さに唸り、血腥さを楽しむこともできる。だが、私は今回読み直してみて彼らの「会話/コミュニケーション」が気にかかった。噛み合って...
もちろんサリンジャーが生み出した奇想を味わうこともできる(バナナフィッシュや笑い男)。もしくは、死が至るところスパイスとして加えられている短編の切れ味の良さに唸り、血腥さを楽しむこともできる。だが、私は今回読み直してみて彼らの「会話/コミュニケーション」が気にかかった。噛み合っているようで噛み合っていない会話、あるいは話せば話すほど孤絶感を際立たせる会話。そこから「感じすぎる人」と「普通の人」、もしくは物語を語る「作り手」とそれを聞く「受け手」の断絶を読み取ることもできるのではないか。読みこなせただろうか
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9つの短編が収録されたものです。 登場人物の会話のやり取りが、何かを暗示しているのでしょうが、読解力がないわたしには少し難しく感じました。 それぞれの短編を読み終わるごとに、ネットに上がってる考察をみると見え方が変わって面白いです。
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今更だけど新訳版。新潮文庫版は何処かにあるんじゃないかなぁ……(探すより買った方が早いのは確かだ)。 訳文が現代的になっているのもそうだが、サリンジャーの『病んでる』感じがより出ていた新訳になっていたと思う。 (しかし、米文学のメインストリームとは相性が良くないんだよなぁ……)
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私には一回読んだくらいじゃ真意みたいなものは理解できない.多分何周してもよく分からないと思う。 けどそんな構築的な要素は置いといて、 感情や舞台の描写がいちいち印象的。特に思い入れはないけどふとした時に脳裏に浮かぶささやかな記憶のようにシーンが見えてくるし、今でも映画を思い出すよ...
私には一回読んだくらいじゃ真意みたいなものは理解できない.多分何周してもよく分からないと思う。 けどそんな構築的な要素は置いといて、 感情や舞台の描写がいちいち印象的。特に思い入れはないけどふとした時に脳裏に浮かぶささやかな記憶のようにシーンが見えてくるし、今でも映画を思い出すように頭で話を辿ることができる。 想像もできなかった表現が沢山出てきたけど、すべてしっくりくるのが不思議。賛否両論な柴田訳しか読んでないけど、私は好きです。(ただバナナフィッシュは「うってつけの日」かなぁ) 「エスキモーとの戦争前夜」がお気に入り。
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もう少し日本語っぽい日本語にならないものか。 名作のはずなんだが・・・。 ぜひ村上春樹の翻訳で読んでみたい。 何度も読み込めば良さが解ってくるかな。
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何度も読み返さないと話の流れを見失う難解さ、いや、少なくとも一度ではよく理解できない意味不明さがとても魅力的な短編集だった。 読んでいくと何となく見えてくるが、結局理解できない、物語全体や登場人物が持つ底知れない喪失感。。 冒頭のバナナフィッシュ日和に何かパンチを食らったような...
何度も読み返さないと話の流れを見失う難解さ、いや、少なくとも一度ではよく理解できない意味不明さがとても魅力的な短編集だった。 読んでいくと何となく見えてくるが、結局理解できない、物語全体や登場人物が持つ底知れない喪失感。。 冒頭のバナナフィッシュ日和に何かパンチを食らったような感想を覚え、そのままの勢いで打ちのめされたような凄い一冊だった。
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2014.1.12読了。 レベッカ・ブラウンの翻訳が好きで、柴田元幸さん訳の本書を読みました。サリンジャー本人が元々繊細でミステリアスな人なのでしょう、と評している方がいらっしゃいましたが、全く同じ印象をもちました。私の知識や読解力がまだまだ未熟であり、この本の半分も理解できてい...
2014.1.12読了。 レベッカ・ブラウンの翻訳が好きで、柴田元幸さん訳の本書を読みました。サリンジャー本人が元々繊細でミステリアスな人なのでしょう、と評している方がいらっしゃいましたが、全く同じ印象をもちました。私の知識や読解力がまだまだ未熟であり、この本の半分も理解できていない感じがします。歳を重ねて、また読み直したい一冊です。
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「メアリ・ジェーン。聞いて。お願い」とエロイーズはしくしく泣きながら言った。「一年生のときのこと覚えてる?あたしがボイシーで買った茶と黄色のワンピース着てたら、ミリアム・ボールにニューヨークじゃそんなワンピース誰も着ないって言われてあたしが一晩じゅう泣いたときのこと?」。エロイー...
「メアリ・ジェーン。聞いて。お願い」とエロイーズはしくしく泣きながら言った。「一年生のときのこと覚えてる?あたしがボイシーで買った茶と黄色のワンピース着てたら、ミリアム・ボールにニューヨークじゃそんなワンピース誰も着ないって言われてあたしが一晩じゅう泣いたときのこと?」。エロイーズはメアリ・ジェーンの腕を揺すった。「あたし、いい子だったわよね」と彼女はすがるように言った。「そうよね?」
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野崎孝さんの訳より、もっとやわらかい感じ。すんなり文章が入ってくる。良くも悪くもゴツゴツした感じはうすまってる。 やはりこの作品は、なにか違和感だとか諦観だとか人とのつながりを求める心だとか求めない心だとかを、さりげなく上手に描いているから素晴らしいのだなと思った。 ふとした...
野崎孝さんの訳より、もっとやわらかい感じ。すんなり文章が入ってくる。良くも悪くもゴツゴツした感じはうすまってる。 やはりこの作品は、なにか違和感だとか諦観だとか人とのつながりを求める心だとか求めない心だとかを、さりげなく上手に描いているから素晴らしいのだなと思った。 ふとした瞬間に、登場人物がどのように妥協して生きていったのかが垣間見えるときがある。その瞬間がたまらない。 あとがきにあった「丸腰の個人」というフレーズに感心した。確かに、この物語の登場人物に当てはまる言葉かもしれない。
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夏期休暇中に読んだ4冊のうちの1冊。発売とともに買ってそのままになっていた柴田元幸訳の『ナイン・ストーリーズ』を読もうと思ったのは夏だからで、僕は“『ナイン・ストーリーズ』といえば夏”というイメージを持っているのだけれど、改めて読み返してみると設定を夏にしている短編が少ないことに...
夏期休暇中に読んだ4冊のうちの1冊。発売とともに買ってそのままになっていた柴田元幸訳の『ナイン・ストーリーズ』を読もうと思ったのは夏だからで、僕は“『ナイン・ストーリーズ』といえば夏”というイメージを持っているのだけれど、改めて読み返してみると設定を夏にしている短編が少ないことに驚いた。それでも、やはり読後感が「夏」なのは、海辺の描写が多い所為か、新潮文庫版のカバーデザイン(麹谷宏による青と緑のドット柄)が染み付いているからだろうか。『三番街とレキシントンのあいだで、財布を出そうとコートのポケットに手を入れたら半分のサンドイッチに手が触れた。彼女はそれを取り出し、道に捨てようと腕を下ろしかけたが、結局そうせずにポケットのなかに戻した。何年か前、部屋のクズ籠に敷いたおがくずのなかでイースターのひよこが死んでいるのを見つけたときも、ジニーはそれを始末するのに三日かかったのだった』(「エスキモーとの戦争前夜」)。ところで、僕は20代の頃、自分が開くパーティーに「ライ麦畑を抱いて眠れ」というタイトルを付けていたことがある。「一晩だけは自分の中の少年を思い切り解放し、あとはそれを胸に秘めて暮らそう」といったぐらいの意味だったのだが、そのお陰で僕をサリンジャー好きだと思っている友人が多いらしく、著者が亡くなったときには思いがけず沢山のメールが届いた。
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