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グローバリズム出づる処の殺人者より の商品レビュー

3.9

16件のお客様レビュー

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2024/02/02

インドのカースト、ハルワイ「菓子職人」に生まれ、茶店で働く運命であったバルラム。 その境遇から逃れるため、車の運転を学び、金持ちの運転手になったが... 最後は怒涛の展開でした。 2009年出版、まだまだインドにはこんなに格差があるのか。

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2017/12/03

大作の誕生を予感させる技量を感じるが、本作の場合、肝となる「温家宝への書簡」というプロットが、筋立てに何も貢献しておらず、惜しい。 殺人に向かって鬱積してゆく低層カーストの男の、魂の揺れは、読者をはぐらかすような軽妙な語り口で書かれる。ガンジス川を訪れる観光客を揶揄する場面など...

大作の誕生を予感させる技量を感じるが、本作の場合、肝となる「温家宝への書簡」というプロットが、筋立てに何も貢献しておらず、惜しい。 殺人に向かって鬱積してゆく低層カーストの男の、魂の揺れは、読者をはぐらかすような軽妙な語り口で書かれる。ガンジス川を訪れる観光客を揶揄する場面などに象徴的であり、21世紀の「読ませ方」としてはそうならざるを得ないことは理解できる。しかし、描かれる状況は過酷だ。 一方で、インド世界に無知な読者を前提にして書かれており、インドの闇を「広告」することが主眼のように思える。いわば外部に向かった告発本。この小説を、同胞であるインドの読者が読んだ時に、彼らに何かを残すかと考えた時に、疑問は残る。

Posted byブクログ

2017/05/16

アラヴィンド・アディガ氏の「White Tiger (邦題グローバリズム出づる処の殺人者より)」を読了。著者はインドで生まれコロンビア大学を卒業の後タイム誌のジャーナリストとなってアジアに赴任したあとに本作を書き下ろし、何とデビュー作でイギリスの文学賞で世界的な文学賞の一つブッカ...

アラヴィンド・アディガ氏の「White Tiger (邦題グローバリズム出づる処の殺人者より)」を読了。著者はインドで生まれコロンビア大学を卒業の後タイム誌のジャーナリストとなってアジアに赴任したあとに本作を書き下ろし、何とデビュー作でイギリスの文学賞で世界的な文学賞の一つブッカー賞を授賞した。 ストーリーはバンガロールで起業し成功した主人公が中国のの首相に書簡を書き自身の殺人を告白するといるかたちで展開する。一見ちょっとしたサスペンスのような雰囲気を醸し出して入るが、実は内容はいまのインドの内情を告発するもので現代インド批判の本となっている。 まず民主主義のない中国の首相にガンジーなどの努力によりイギリスより独立し民主主義が機能していると思われているインドで成功しているビジネスマンからの手紙というスタイル自体が皮肉たっぷりであることに読みはじめてすぐ気付く。確かに議会制はあるが、いまだカーストの縛りに多くの人間とくに地方に居る人間達は縛られていて底から抜け出すのは不可能に近い実情が語られる。 その不可能を可能にしたのが著者が犯した殺人であり、その事件で主人のお金を手に入れ、すぐに都会にのがれそのお金を使い起業し成功した訳である。 もちろん殺人を礼讃しているわけではない。だが今のインドにはびこる癒着に寄る警察の腐敗、法曹界の堕落などが主人公の自慢話の裏にはっきりと読み取る事が出来るようになっていて、インドといアジアの中では多く話題になっている国家でありながらわれわれはその国の実情などはまったくもって知らない事に気付かされる。 その気付きをもとめてジャーナリスト魂を燃やして書いたの が本作なのだろう。  本作の中で耐え忍んでいるインドの民衆は市場で檻にとじこめられ、その脇でどんどんさばかれその肉がたまには檻の上にまでおかれる鶏達のようだという表現がある。これは他人事だろうか?胸に手を当てて一度考えてみる必要があるだろう。行動を起こさないとね。 そんないま日本に蔓延している能天気さの危うさを気付かさせてくれるブッカー賞作品を読むBGMに選んだのはJohn Coltraneの“My Favorite Things"だ。いや久しぶりで爆音できくとやはり凄い。目が覚めた。 https://www.youtube.com/watch?v=YHVarQbNAwU

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2015/01/04

ミステリ風味の物語で内容としては倒叙モノに当たる作品だが、ミステリは単に「味付け」でしかなくて、実際にはインドの現状(と思われる)社会状況を描くことを主眼にした作品。 訳文が非常にうまくて、インドのピリッとした雰囲気、乾いた残酷さがうまく表現されている。多少なりとも現地をイメージ...

ミステリ風味の物語で内容としては倒叙モノに当たる作品だが、ミステリは単に「味付け」でしかなくて、実際にはインドの現状(と思われる)社会状況を描くことを主眼にした作品。 訳文が非常にうまくて、インドのピリッとした雰囲気、乾いた残酷さがうまく表現されている。多少なりとも現地をイメージできる人のほうが楽しめると思うが、そうでなくても、苦い思いで読み下すことが出来る一冊。

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2012/07/25

読んでいると、インドの空気感がよみがえってきます。 あのにおい、熱気、喧騒…インド人の顔。 インド・バンガロールの実業家が自分の過去を中国の首相に向かって語る手紙、という形で書かれています。 訳されているためか、独特の表現というか、一見「?」な皮肉がところどころあり。 でも読ん...

読んでいると、インドの空気感がよみがえってきます。 あのにおい、熱気、喧騒…インド人の顔。 インド・バンガロールの実業家が自分の過去を中国の首相に向かって語る手紙、という形で書かれています。 訳されているためか、独特の表現というか、一見「?」な皮肉がところどころあり。 でも読んでるうちに慣れます。 インドに行ったことはあっても、あまりにも日本と違いすぎてわけのわからないことだらけ。 特に街中に溢れているインド人たちの日常と、あまりにも大きな貧富の差には疑問を感じていました。 この本を読んで、少しはインドという世界について知ることができたかな?という気がします。 インドとか、世界について知りたい!という人ならおもしろく読めると思います。

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2012/02/19

(スエーデンの大学院で学んでいた時分に、学内のポータルにアップしていたものを引っ越しています) One man's monologues as a form of letters to Prime Minister of China. The man first wo...

(スエーデンの大学院で学んでいた時分に、学内のポータルにアップしていたものを引っ越しています) One man's monologues as a form of letters to Prime Minister of China. The man first worked as a chauffeur for a family of wealthy coal merchants, killed his master to steal his money, and economically succeeded as an entrepreneur. The author, Aravind Adiga, is a graduate of Colombia University and mush belong to the top tire of India's social system. He might have seen a lot of real things of lower class people which he depicts in this story very vividly, but I assume he must have used a lot of imagination of how the lower class people really feel. He can never know. But even his imagined descriptions themselves are beyond my imagination so that real (I know the real thing exist in my mind) situations I will never know nor feel. Hopelessness, Hopefulness, Feel of being choked, Greed, Lust, Sympathy, Compassion, Despise on white men, Rivalry against China, etc. many many emotions are mixed in the story to form an ever moving chaos, which can be true to the present Indian society. It reminds me of the fact that there is a vast majority of excluded people in the shadow of a tiny minority benefitting from prospering economy.

Posted byブクログ

2012/01/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ITビジネスの聖地、インド、バンガロールからある男が中国首相へ手紙を綴ってゆく形で物語は進む。彼はインドの90%を占めるであろう「闇」の住人を代表して、彼自身の半生を私達に語る。 どこにでもいる使用人だった彼がなぜ、IT産業の聖地にたどり着いたのか、そしてどうやって闇から抜け出し、成功者へとのしあがったのか。 この本の中で語られているのはインドで、インド人には起こり得る不平に満ちた人生であり、そういった天罰とも呼べるような宿命にインド人はいかにして平伏しているのか、そういった隷属を断ち切った男の物語である。 なぜ私がわざわざ「インドで、インド人には」と言ったかというと、インドを訪れる外国人には決して起こり得ない仕打ちにインド人が耐え忍んでいる、言い換えれば檻に入れられた動物に見られる、あの諦観、己の人生に対する無関心、そうならざるを得ない不平が彼らには日常茶飯事であり、私たちには決して起こり得ないからである。なぜなら私たちは強者だから。外国人がインドで遭う仕打ちといえば、駅で荷物を盗まれるだとか、列車で睡眠薬を飲まされて金を奪われるとか、そういった不遇に過ぎない。 そんな不遇がカワイイものに見えるような不公平がインドには蔓延している。 手段はどうあれ、そんな社会の仕組みに一矢報いた主人公に私は少しばかり感動した。

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2010/10/19

経済ジャーナリストであるインド出身の著者が、 「インドの実情を伝えたかったから」という動機で執筆したデビュー作品。 IT 産業の発展により急速に台頭しつつあるインドが持つ「光」と「影」の 2 面性。 中国の温家宝首相に宛てた手紙という手法で、 下位カースト出身の主人公が、 田舎の...

経済ジャーナリストであるインド出身の著者が、 「インドの実情を伝えたかったから」という動機で執筆したデビュー作品。 IT 産業の発展により急速に台頭しつつあるインドが持つ「光」と「影」の 2 面性。 中国の温家宝首相に宛てた手紙という手法で、 下位カースト出身の主人公が、 田舎の村からバンガロールで成功するまでの、 リアルな半生を滑稽とも取れる筆致で告白する、 殺人を犯した過去をも。 インドの今を強烈に教えてくれる。 2008 年 ブッカー賞受賞作品。

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2011/07/16

多くの国が「グローバル市場への統合による発展」に疑いを抱き始めている中で、中国とならび数少ない成功例としてもてはやされているインド。そのサクセスストーリーの裏面を案内する黒いガイドブックとでもいうべきか。案内人をつとめる「起業家」は、バンガロールの夜の底、7夜にわたり、中国の温家...

多くの国が「グローバル市場への統合による発展」に疑いを抱き始めている中で、中国とならび数少ない成功例としてもてはやされているインド。そのサクセスストーリーの裏面を案内する黒いガイドブックとでもいうべきか。案内人をつとめる「起業家」は、バンガロールの夜の底、7夜にわたり、中国の温家宝首相てて生い立ちをしたためる。やせこけた運転手のこぐリクシャーに貼られたダイエットの広告、社会主義を標榜する政治家に主人が払う賄賂をとどける使用人、滑稽なほどに悲惨な階層間格差と政治腐敗の描写は、自由市場を旗印とするグローバリゼーションが、不自由な人々の存在を不可欠の基盤としていることを鮮やかに伝えている。そのインドとそっくりな中国の首相への手紙という形式がとられている点でも、この邦題は、原題の「ホワイト・タイガー」よりずっとよく作家の意図をつたえている。善良ではあるが、この絶望的な世界の構造がまったく見えていないアメリカ帰りの主人「アショク様」に対して、主人公が愛憎をつのらせながら自己同一化していくさまは圧巻。やがて彼は、この構造の中でひとりの自由な人間として生きのびるためには、逆説的にも殺人を犯し家族を破滅に追いやるしかないと悟り、「すまない、檻の中では生きられない」との(反)人間宣言を故郷へ向けて書き送ることになる。それはまた、外の世界に向けて放たれた矢でもあるのだ。

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2010/08/31

「スラムドッグミリオネア」を見て以来、一度、インドの光と影をえぐった作品を欲していた私にとって、この本はまさに理想そのものだった。 現代版「罪と罰」と表現されているが、私にはピンと来ない。主人公は、殺人を悪いことと理解してはいるものの、それを反省する様子がない。現代版○○という...

「スラムドッグミリオネア」を見て以来、一度、インドの光と影をえぐった作品を欲していた私にとって、この本はまさに理想そのものだった。 現代版「罪と罰」と表現されているが、私にはピンと来ない。主人公は、殺人を悪いことと理解してはいるものの、それを反省する様子がない。現代版○○という表現は、根本的なテーマは変わらず時代背景を捉えた作品であるべきではないのか。その点で考えれば、まったく違う。 大方の小説は、殺人を犯した人間は、いずれ罪の意識にさいなまれ、再生の道を進むことできれいに終わらせるが、これは違う。そこが妙にうまくインドの現状を描ききれている作品に感じた。もちろん、フィクションではあることを忘れてはならない。 ちなみに、この日本語のタイトルはセンスがないと感じた。

Posted byブクログ