待ってる の商品レビュー
何かを待たずにいられないのが、人の世のならい。では、おふくが「待ってる」ものは―?12歳の春、貧しい少女・おふくは、江戸・深川にある料理茶屋『橘屋』で奉公を始めた。美しく気丈な仲居頭のお多代は、おふくを厳しく躾ける。優しくも、温かくもない言葉の裏にある“何か”に気づいたおふくは、...
何かを待たずにいられないのが、人の世のならい。では、おふくが「待ってる」ものは―?12歳の春、貧しい少女・おふくは、江戸・深川にある料理茶屋『橘屋』で奉公を始めた。美しく気丈な仲居頭のお多代は、おふくを厳しく躾ける。優しくも、温かくもない言葉の裏にある“何か”に気づいたおふくは、涙を堪えながらもお多代の下でたくましく成長していく。あさのあつこが少女の成長と人の絆を描く、涙あふれる連作短編集。
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料理茶屋橘屋を舞台にした、7つの短編集。 短編でも、仲居頭のお多代を軸にして、登場人物が重なるので、長編を読んでいる様な気持ちにもなる。 この時代の庶民の暮らしは、働き手のケガや病気で、あっという間に奈落に転がり落ちていく。 そんな時に、橘屋で働く機会にめぐまれ、本人の努力と気構えでどう生きていくか。橘屋を仕切るお多代の魅力が伝わってくる。 お多代は優しくはない。温かくもない。だけど底意地が悪いわけでも陰険なわけでもない。物言いはきつく、奉公人の頬をぶつ。 しかしお多代の叱咤や注意は、いつも的を射て、納得できることばかりだった。 呑み込み、同じ過ちを繰り返さなければ、確実に仕事がはかどる。最も効果的で効率的な手順をお多代は、怒声や小言に包んで伝えているようだ。 「知ってるかいって訊いてるんだ。しゃきっと返事をおし」 「知ってます」 「上等だね。行ってきな」 そんなセリフも魅力的だった。
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橘屋という小料理屋を軸にする短編集。生まれた時から身分が決まってしまうような江戸時代。自分の運命を逆らいながらも受け入れ、健気に逞しく生きる長屋の人々。生活のために仕事をし、仕事を生きる糧にしていく。どの話も最後には小さな光が見えます。
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あさのあつこは、もしかしたら初めてだったかもしれない。少なくともこの数年は読んでない。児童文学が主と思ってたからなんとなく、要チェックの作家さんにはカウントしていなかった。 終盤の「かわいそうも、心配だもいらないよ」は、ああ、と胸を突かれた。 私がシングルマザーやってた時、正にそう思ってたから。要らんわ!って反発すると「面倒見てやってるのに」って言われるしね。 順番は逆になるけど 「一言、言いつけられたら、その裏にある十言を察する。(後略)」 も、これは私の考えの一つでもある。 そんな感じで、久しぶり(初めて?)なのにすごく身に染みて、案外相性いいかも、と思った。 いい本に出合えました。ありがとうございました。
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橘屋という料理茶屋に関わりのある人々、そこで働く仲居頭・お多代が厳しくも温かく人々を見守り、幸せへと導いているようだった。 最初の主人公・おふくはそんなお多代に憧れ、幼馴染との結婚という道ではなく、病に倒れたお多代に代わり、橘屋で行くていく決心をする。その時代には珍しい、男に頼...
橘屋という料理茶屋に関わりのある人々、そこで働く仲居頭・お多代が厳しくも温かく人々を見守り、幸せへと導いているようだった。 最初の主人公・おふくはそんなお多代に憧れ、幼馴染との結婚という道ではなく、病に倒れたお多代に代わり、橘屋で行くていく決心をする。その時代には珍しい、男に頼るのではなく、自分の力で生きていこうとする逞しさを感じた。
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橘家という料亭を軸にいろんな生き様が描かれている。 しっかりと生きるためには、しっかりと腹をくくることが大切な気がする。
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料理茶屋「橘屋」を舞台に、江戸の世をつつましくも懸命に生きる人々を描いた短編集。あさのあつこさんの時代ものは何冊か読みましたが、これが今のところ一番です。 藤沢周平さんが好きだと本人もおっしゃってましたが、これを読んでるとそれが理解できました。
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再読。 「人は変わるものだ。 良くも悪くも、美しくも醜くも、変わるものだ。変われるものだ。」 好きな台詞。この本に出てくる人達は地に足をつけて、懸命に真っ当に生きてる。例え道を踏み外しそうになってもそれを正す人がいる。本当に生きてるというのが伝わってきて、清しい気持ちになる。人と...
再読。 「人は変わるものだ。 良くも悪くも、美しくも醜くも、変わるものだ。変われるものだ。」 好きな台詞。この本に出てくる人達は地に足をつけて、懸命に真っ当に生きてる。例え道を踏み外しそうになってもそれを正す人がいる。本当に生きてるというのが伝わってきて、清しい気持ちになる。人と比べて生きるんじゃない、自分自身と向き合い懸命に生きよう!
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再読。のはずが、意外と内容忘れてて楽しめてます。時代小説読んでて思うこと、江戸時代の人は貧乏な人が多かったんですね…。
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毎回「橘屋」という料理茶屋とそこの仲居頭お多代が 絡んでくる江戸時代ものの連作短編集。 お多代は愛想がいいわけでもなく、やさしいわけでもなく かといって鬼のように怖いわけもなく 一本筋の通った竹のような美しい女性。 毎回話にぴっと辛味というかすっきりとした爽やかさを添...
毎回「橘屋」という料理茶屋とそこの仲居頭お多代が 絡んでくる江戸時代ものの連作短編集。 お多代は愛想がいいわけでもなく、やさしいわけでもなく かといって鬼のように怖いわけもなく 一本筋の通った竹のような美しい女性。 毎回話にぴっと辛味というかすっきりとした爽やかさを添えている。 母親に捨てられて橘屋しか居場所がなくなったおふくや 子供を4歳で亡くし橘屋でさみしさを忘れるように 一生懸命働くおみつや、夫が病気になり八方塞がりになり 途方にくれて橘屋で働かさせてもらうお敬や 橘屋で働いていたところを見染められて大店に嫁ぐことになった おそのなど、いろいろな人が出てくる、どの人も苦労を背負って 生きている。でも生きていく。今みたいにお金がなくて 簡単に機械でキャッシングできるような時代じゃない。 自転車操業の生活が夫の病気や父親の病気など大黒柱が 倒れることによって立ち行かなくなるのは日常茶飯事である。 そんな時代背景だからこそ書ける話だった。 最後お多代とおふくの忠義のあるやり取りも今の時代では ありえないかもしれない。 どの話も最後は救いが見出されていて、他の話にその主人公の その後が書かれていたりして、すっきりと読みやすかった。 とても面白かったし後味も良かった。またじっくり 読み返したい。
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