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ナショナル・ストーリー・プロジェクト(1) の商品レビュー

3.8

40件のお客様レビュー

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2019/05/11

オースターがアメリカのラジオで一般市民から募集した「あなたに起こった現実の話」を集めたもの。 4千もの応募作から選んだ170作だけあって、どれも面白い。 ちょっとしたウィットのような笑える小話。絶望的な悲しい思い出。嘘のようなホントの偶然の話 などなど かなりバラエティに富ん...

オースターがアメリカのラジオで一般市民から募集した「あなたに起こった現実の話」を集めたもの。 4千もの応募作から選んだ170作だけあって、どれも面白い。 ちょっとしたウィットのような笑える小話。絶望的な悲しい思い出。嘘のようなホントの偶然の話 などなど かなりバラエティに富んでいる。 一つづつの話は、1ページから数ページ。 作者により語り方も、事実の切り取り方も違う。 読んでいる時の感覚としては以下のような感じ。 自分の目の前の椅子に、次々に色々な人が座って自分に話しかける、話は5分程度で終わり、次の人がまたやってくる。 最初は語り手が男なのか女なのか若いのか年取っているのかも分からない場合もおおい、だから目の前に座った黒い影が語り出し、語っている間に徐々に輪郭が明るくなりその人自身がうっすらと見える。 小説家が書いた短編集であれば、その小説家のトーンだとか、プロとしての分かりやすい話の運び方によって、ある程度のテイスト、トーンの統一感があるから一つ一つの短編毎を読むのに頭を切り替える必要がない。 だが、この本は、それぞれの語り手が違うので一つ一つの話を読むのに導入部分にいちいち時間がかかる。 だから、さっさと読めるない。 でも、だからこそそ、数ページの中にその人らしさが出ている。そこに惹かれる。 最初の方の話は、自分がなくしたもの、別れた人と巡り巡って再会する、また出会うというような話も多く、ある意味、人に話したくなるオチのある話が多い。 一方、小説や「お話し」だったら必要とされるようなドラマだとか、オチがない話も多い。 それはこの話達が事実からされているから。 常に現実は地続きで終わりはない(あるとしたら死かな?)、そういうなんだか続いていく人生、現実というものをただ単に切り取ったという話に、その切り取り方に「その人そのもの」「その人とその世界」が表れているように思う作品が多いのだと思う。 全体的に淡々とあったことを誠実に、そしてセンシティブに注意深く観察された内容が魅力的に語られているような作品が多いと思う。 そして、教訓めいたメッセージを発するとか、自己主張、自己顕示欲など、話を必要以上に作りこんだような物語がないところが素晴らしい。 ●私自身が特に惹かれたのは以下。 なんとも奇妙な、不安感と愛情 情愛を求めるが、むくわれず、また報われたとしても短く、儚く消えてしまう。喪失感。 ・別れを告げる  刑務所に入っている男が親類の葬式参加するために一時的に牢屋を出て、家族に会い、そしてまた別れる、それだけの話。喪失感、家族への思い、家族、人間関係の儚さ。 ・ハンドバック  なじみの人が、1か月後なぜかいなくなっている。いままで信じていた世界が一部知らないうちにかわっているような足元がぐらっとしたように感じるような話。 ・一千ドル 親子のすれ違い。若いもがきの痛々しさ。 強権的でいて、滑稽な、絶対権力者の父親 ・学ばなかった教訓  しつけの厳しい父親。だけど娘である語り手は  「あの日パパに教わったのは、責任というものをめぐる教訓ではない」 ・雛鳥狂騒曲  小鳥がかわいそうと言いながら周辺の皆を虐げていることは平気。 ・ヴァーティゴ  いう事を聞かない馬(ヴァーティゴ)になんとか力ずくで立ち向かう、マッチョ志向の父だが、上手くいかない無力さ。ただし、チャレンジをし続ける。 不良との小競り合いを淡々と。だけれども何とも言えない空気感と余韻のある話 ・アンディと蛇

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2018/04/26

(01) 物語たちの半分ほどを読み進めた頃,ふと柳田國男の遠野物語のことを思い出した.本書は,読み方によっては現代アメリカの遠野物語になるのかもしれない. 泣ける話,笑える話にも事欠かないが,それ以上に奇妙な話(*02),奇跡的な話に驚かされ,それらの物語は,人物や物事の先や上に...

(01) 物語たちの半分ほどを読み進めた頃,ふと柳田國男の遠野物語のことを思い出した.本書は,読み方によっては現代アメリカの遠野物語になるのかもしれない. 泣ける話,笑える話にも事欠かないが,それ以上に奇妙な話(*02),奇跡的な話に驚かされ,それらの物語は,人物や物事の先や上にある何物か,それはおそらく原題には残る神を示唆するものなのだろう.その意味では,神の跡を示す物語たち,つまり現代の神話篇と呼びたくなるような仕上がりにもなっている. なぜラジオなのか,不特定の人々に,不特定の物語を募るプロセスが,神の降誕には必要な手順であり,儀式であったのかもしれない.瞑想の最終話にはラジオならでは啓示性が現れている. (02) オカルトめいた信仰告白集でもある.リアルなストーリーという点では,2010年前後の日本のテレビに現われた「松本人志のすべらない話」に似通った魔圏が形成されている. 本当か本当でないか,それは他人によってはもちろん,語る本人や語られる当人にとっても証明することはできない.作り話ではない,が前後関係,因果関係はそれが過去の語りである以上,あとから付け加わる箇所もあり,話として整えられ美化される箇所もあり,信じていたいたいという吐露が言葉に現われる箇所もある.こうして語り手によって時間をかけて織られた文章は,どこに作用するのだろうか. 本書は,ストーリーやヒストリーという問題系に意欲的に,そして実践的に取り組んだ作品でもある.

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2017/05/11

序文のように、オースターがなぜこれほどノンフィクションの小文に惹かれるのかといえば、彼自身が小説(創作)というものに対して非常に自己言及的な作家であったからだろう。 分かりやすく笑える話から、素直に泣いていい話まで。 読むものに困ったら何度でも手に取りたくなる、人懐っこい一冊だ...

序文のように、オースターがなぜこれほどノンフィクションの小文に惹かれるのかといえば、彼自身が小説(創作)というものに対して非常に自己言及的な作家であったからだろう。 分かりやすく笑える話から、素直に泣いていい話まで。 読むものに困ったら何度でも手に取りたくなる、人懐っこい一冊だ。

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2015/07/25

日本版の「嘘みたいな本当の話」を読んでみてから、興味をもって本家へ。さすがアメリカというべきか、スケールが大きかったり奇想天外だったりする喜怒哀楽に満ちた「事実は小説より奇なり」がつまっていて、日本版よりも読みでがあった。中学生の娘も(日本版を読んだかどうかはしらないけど)この本...

日本版の「嘘みたいな本当の話」を読んでみてから、興味をもって本家へ。さすがアメリカというべきか、スケールが大きかったり奇想天外だったりする喜怒哀楽に満ちた「事実は小説より奇なり」がつまっていて、日本版よりも読みでがあった。中学生の娘も(日本版を読んだかどうかはしらないけど)この本家を楽しんでいるらしい。続刊も読んでみたい。

Posted byブクログ

2015/05/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ポール・オースターがラジオ番組のために一般の人々から募集した、実体験のアンソロジー。実体験といえど、ジョークのような小話や運命的な出会いなど、小説の原型といえるお話が多く、物語ることがアメリカの国民性に息づいているんだなと感じさせられました。 印象深かったのは一匹の飼い犬のひき起こす喜劇が悪名高き、クー・クラックス・クランの活動を破局に追いやる『ラスカル』、朝鮮戦争の時代を背景に、仔牛の屠殺体験が死の実相を描きだす『抵抗』、アメリカ大陸の真反対の場所で起こる、冗談みたいな人違い『大陸の両岸で』 ささいな実体験も多く、身近に感じる実話の数々。小説みたいな現実って思った以上に近くに転がっているのかもしれませんね。

Posted byブクログ

2015/04/17

ひょんな事がきっかけで、ラジオのリスナーからの投稿で本当にあったお話を放送するという番組が生まれた。そこに登場した短いが実際に市井の人が体験したお話を紹介している。 信じられない様な偶然で起きたお話、辛い過去の体験、心温まるお話等この本を読むと「事実は小説よりも奇なり」とはよく言...

ひょんな事がきっかけで、ラジオのリスナーからの投稿で本当にあったお話を放送するという番組が生まれた。そこに登場した短いが実際に市井の人が体験したお話を紹介している。 信じられない様な偶然で起きたお話、辛い過去の体験、心温まるお話等この本を読むと「事実は小説よりも奇なり」とはよく言ったものだと感心させられる。

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2014/11/18

ポールオースター編集の、アメリカで募集した、人々の実体験の一片をまとめたショートショート集。 読み始めて幾つか衝撃を受けたことがあった。まず、本書はアメリカで、ということがテーマの根底にあるため、感性もアメリカに類すること。そして文章は執筆に対して殆ど素人の寄せ集めを翻訳したもの...

ポールオースター編集の、アメリカで募集した、人々の実体験の一片をまとめたショートショート集。 読み始めて幾つか衝撃を受けたことがあった。まず、本書はアメリカで、ということがテーマの根底にあるため、感性もアメリカに類すること。そして文章は執筆に対して殆ど素人の寄せ集めを翻訳したものなので、特別読みにくいものはないが、うっすらと原文の個性が浮き出ていること。本書に記されているストーリーは、事実に基づいているものであるがゆえに、決して共感を得るためにあるものではないということ。 そのために読むことに疲れたり、飽きたりすることもあった。正直引っかかる話しは少ないと思う。でも、その中にある残りの少数のストーリーは、フィクションでは取り扱えない、取り扱わない、その必要がない、しかし希少で良いものも間違いなく詰まっていた。

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2014/02/07

オースターがレギュラーを務めたラジオ番組に投稿された、リスナーから寄せられた体験談や自伝の切れ端を集めて綴じた1冊。 まえがきに書かれたオースターの言葉が全てです。 時折ハッとする表現。抉る言葉、潤む言葉、温かい笑い、それらを改めて「伝える」ために「書く」ということ。 小説と...

オースターがレギュラーを務めたラジオ番組に投稿された、リスナーから寄せられた体験談や自伝の切れ端を集めて綴じた1冊。 まえがきに書かれたオースターの言葉が全てです。 時折ハッとする表現。抉る言葉、潤む言葉、温かい笑い、それらを改めて「伝える」ために「書く」ということ。 小説とはまた違うコミュニケーションの模索と、その過程に読者も参加できる本です。単に面白い話も多いので、暇つぶしにも最適。一気読みは、しんどいです。

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2014/01/13

企画もそうだが、ポール・オースターのセレクト、さらにはおそらくリライトがすばらしい。家族カテゴリーのいくつかにかなり泣けるものの、「スラップスティック」ではまるで笑えない。これ、本当におかしいのだろうか?

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2014/01/03

ラジオ番組のためにオースターが全米から4,000以上もの実話を集め、精選した、「ふつうの」人々の、ちょっと「ふつうでない」記録。 「誰かがこの本を最初から最後まで読んで、一度も涙を流さず一度も声を上げて笑わないという事態は想像しがたい。」 ひとつひとつのお話が濃密で剥き出しで...

ラジオ番組のためにオースターが全米から4,000以上もの実話を集め、精選した、「ふつうの」人々の、ちょっと「ふつうでない」記録。 「誰かがこの本を最初から最後まで読んで、一度も涙を流さず一度も声を上げて笑わないという事態は想像しがたい。」 ひとつひとつのお話が濃密で剥き出しで、一気に読むよりは手元に置いておいて2,3編ずつじっくり読み返すのが似合う本です。 いろんな人の大切にしていることや、思いを汲んで、存在を形に残す作品やお仕事はとても素敵で、こういうことに関わりたいと強く思いました。 この「至急報」に出会えて、感謝です。

Posted byブクログ