蝶 の商品レビュー
短編8作。 蜻蛉や蝶のような小さな生き物たちを、思わず摘み殺してしまった、子供の頃に自分に感じた小さな残酷さを思い出す。 詩句と情景の美しさが、深く影を落とす。 言い知れない怖さがたまらない。
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現存する中では、個人的に山尾悠子と並び、最も美しい文体を持つ日本人作家の1人。初めて皆川博子を読むなら、三島由紀夫の傑作短編すら凌ぐと称されるこの短編集をオススメしたい。特に後半が絶品揃い。おぞましくも美しい「妙に清らの」を気に入るか否かで、皆川博子が好みかどうかは分かると思う。
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戦中戦後を舞台にした短編集。 *空の色さえ *蝶 *艀(はしけ) *思ひ出すなよ *妙に清らに *竜騎兵は近づけり *幻燈 *遺し文 どの作品にも詩や句が、引用されている。 ただでさえ美しい皆川博子の文が、さらに美しく感じるから日本語というものは奥が深い。...
戦中戦後を舞台にした短編集。 *空の色さえ *蝶 *艀(はしけ) *思ひ出すなよ *妙に清らに *竜騎兵は近づけり *幻燈 *遺し文 どの作品にも詩や句が、引用されている。 ただでさえ美しい皆川博子の文が、さらに美しく感じるから日本語というものは奥が深い。そう、詩句が入ることで、音律が耳元をかすめるように響いてくるのだ。 きっとそれは、虫の音を美しいと感じる日本人の遺伝子を刺激するものだと感じた。 戦争によって人生を狂わされていく人々。 皆川博子は、それを声高に訴える人を描かない。ひっそりと闇に沈み、歪み、狂っていく人を描いている。 耽美であると同時に、怖い。 怖かった。 「幻燈」の語り手のしたたかさと、「遺し文」の語られている女性のはかなさ。それは全く別の方向を向いているようで、根底は同じものなのだと思う。人はそういう矛盾を常に抱いているのだ。 そして、皆川博子はそういうものに向き合っているのだと思う。
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ふとした契機で知った皆川さんの本。 これが最初に読んだものだけれど、やばい。美しい。 舞台は第二次世界大戦前後の日本。 通信、伝達手段が限られている当時の世界は、とても閉鎖的で濃密に思える。 その中での人間との関わりはとても限定的で直接的で、生々しい。 そんな中で彩られる幻...
ふとした契機で知った皆川さんの本。 これが最初に読んだものだけれど、やばい。美しい。 舞台は第二次世界大戦前後の日本。 通信、伝達手段が限られている当時の世界は、とても閉鎖的で濃密に思える。 その中での人間との関わりはとても限定的で直接的で、生々しい。 そんな中で彩られる幻。恐ろしくて気持ち悪くて、読んでいて鼓動が速くなった。 …うん、私には皆川さんの感想を述べられるほどの語彙がないです。 でも、とてもとてもおすすめ。
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昭和の前半、第2次大戦前後の日本を舞台とした短編が8編。 貧困や不具などといったハンディキャップを抱えた者、あるいはそうでないけれども年幼い故に魂の定まらない者たちをそれぞれ登場させ、人として生きる以上誰もが大なり小なり背負っていく様々な業を、この時代特有の、気怠さと活気が入り混...
昭和の前半、第2次大戦前後の日本を舞台とした短編が8編。 貧困や不具などといったハンディキャップを抱えた者、あるいはそうでないけれども年幼い故に魂の定まらない者たちをそれぞれ登場させ、人として生きる以上誰もが大なり小なり背負っていく様々な業を、この時代特有の、気怠さと活気が入り混じったような空気を巧みに活かしながら描いている。 どちらかといえば短編集はあまり読まず興味もそそられず、また詩というジャンルを愛でる才にも恵まれない(各作品、実際にある詩や句を随所に取り込んでいる)私だが、この一冊は、前半こそ少し退屈を感じた作品もあったものの、特に終盤に収められた一群には戦慄を覚えるのを禁じえなかった。 幻想文学、としばしば評される皆川作品だが、これは紛れもなくホラーだ。 ホラー、と堂々と銘打たれているにも拘らずちっともそうではない小説も近年多いが、この書が持つエッセンスはホラーに他ならない。 岩井志麻子作品のテイストとひょっとしたら少しだけ似ているかもしれないが、こちらの方が怖い。 そして美しい。 「竜騎兵は近づけり」が醸し出す異様な緊迫感、「妙に清らの」の、あまりの凄絶さが美にさえ昇華しているかのような終幕の情景。 そして「遺し文」のラストシーンもまた、ともすれば哀しく陰惨なだけの結末になりかねないところを、まるで決して触れることを許されない神性を秘めた造形物であるかのごとく、遥かなる高みまで押し上げている。 優れた感性を持つ作家が拵えた映像化作品も観てみたいような気がした。 好きな作品だけをとればもちろん文句なく星5つだが…。
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幻想的と言い切るには内容が生々しい分、文章のうつくしさが浮き上がって凄まじい。解説に引用されていた”君が見た大きな虚無はふかくぼくらをひきつける”が、この短編集には実に相応しいと…思いました。すきです。
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全体的に、文章が澄んでいる、という印象が強かったです。ストーリー性はそこまで強くありませんが、文章の一つ一つが綺麗でした。 全八つの短編集ですが、お気に入りは表題作の「蝶」、それから、「艀」、「想ひ出すなよ」、「妙に清らの」、「幻燈」です。もちろん、残りが悪いというわけではなく、...
全体的に、文章が澄んでいる、という印象が強かったです。ストーリー性はそこまで強くありませんが、文章の一つ一つが綺麗でした。 全八つの短編集ですが、お気に入りは表題作の「蝶」、それから、「艀」、「想ひ出すなよ」、「妙に清らの」、「幻燈」です。もちろん、残りが悪いというわけではなく、特に印象が強いものを上げています。 現代に生きる私には、戦後の生々しい暮らしぶりや、男尊女卑など、少々目に付く部分もあります。 でも、それらを踏まえての静かな男女のやり取りがとても好きです。 薄い本ですからすぐに読みきれました。
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