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民族とネイション の商品レビュー

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2010/09/25

それはもう・・。もつれた糸を丁寧に解くような文です。 でも、それがアポリアたる所以。 控えめで(かっこ書きがあまりに多いかも)、緻密で。 それらも好感が持てました。 結論は「紛争が悪循環しないうちになんとかしましょうよ」というものでしたが、それはどうなんかなぁ・・・とも思います。...

それはもう・・。もつれた糸を丁寧に解くような文です。 でも、それがアポリアたる所以。 控えめで(かっこ書きがあまりに多いかも)、緻密で。 それらも好感が持てました。 結論は「紛争が悪循環しないうちになんとかしましょうよ」というものでしたが、それはどうなんかなぁ・・・とも思います。 そんなことは誰だってわかっていますからね。 でも、世界の色々なことが勉強になりました。

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2010/08/08

 本書は19世紀以降、近代西欧社会に始まるエスニシティとnation stateにおける「民族」の概念、そしてその受容に対する姿勢について、広く浅く歴史を紐解きながら解説していく。  ネイション意識を「創造の共同体」と取るべきか、それとも「歴史の中の連続性」が次第に形作っていっ...

 本書は19世紀以降、近代西欧社会に始まるエスニシティとnation stateにおける「民族」の概念、そしてその受容に対する姿勢について、広く浅く歴史を紐解きながら解説していく。  ネイション意識を「創造の共同体」と取るべきか、それとも「歴史の中の連続性」が次第に形作っていった自然発生的な概念なのか。多くの実例が引き出され、著者も読者も様々な視座から考察が可能となっている。だが結局答えはどちらでもある、としか言えないし、本書内でも著者はこの問題について結論を避ける。  そもそもヨーロッパの極一部から生まれた「ナショナリズム」が「進歩した」西洋文明と共に布教、または受容されていく中で、違った形に変質していくことは必然であろう。オスマン帝国や清のような独自の文化ヘゲモニー観を持つマルチ・エスニシティ国家。ハプスブルク帝国やロシア帝国で行われた「公定ナショナリズム」の試みと挫折。西洋の植民地から新たに独立するやいなや国家としての共同体意識の欠落に直面したインドネシアのような国々。それぞれが言語・文化・土地・風俗などで歴史的に形成されてきたエスニシティ概念と、国家=共同体の構成員資格としての「民族意識」形成の間に生じた様々な問題に向かい合ってきた。これらを一義的に「ナショナリズム」という言葉で片付けるようなことは不可能であり、この近代社会の難問に取り組む姿勢にこそ、本書の知的面白さが潜んでいるといえる。

Posted byブクログ

2009/10/07

世界史の知識が乏しいので難しかった。 ロシアがグルジアやチェチェンで紛争を起こすのは「在外ロシア人」を保護するためだということがわかった。アメリカのメルティングポット論で、融合の目標とされたのは、「WASP(白人・アングロサクソン・プロテスタント)」をスタンダードとしたもの。との...

世界史の知識が乏しいので難しかった。 ロシアがグルジアやチェチェンで紛争を起こすのは「在外ロシア人」を保護するためだということがわかった。アメリカのメルティングポット論で、融合の目標とされたのは、「WASP(白人・アングロサクソン・プロテスタント)」をスタンダードとしたもの。とのこと。バルトの人々の目から見れば、第二次世界大戦終了期にやってきたソ連軍は「ファシズムからの解放者」ではなく「占領者」でしかないことがわかった。民族間の違いは深いものだと理解しておかなければと感じた。

Posted byブクログ

2009/10/07

そもそもタイトルが含む学術的領域が広すぎるので、どのような解説がなされ自分の頭の中が整理されるかだけを期待していましたので、それには十分答えうる良書だと思いました。ソ連・ロシアを専門とされる著者・塩川氏が、域内の民族問題を中心に論じられている箇所はこれまでにヨーロッパ人が描いた植...

そもそもタイトルが含む学術的領域が広すぎるので、どのような解説がなされ自分の頭の中が整理されるかだけを期待していましたので、それには十分答えうる良書だと思いました。ソ連・ロシアを専門とされる著者・塩川氏が、域内の民族問題を中心に論じられている箇所はこれまでにヨーロッパ人が描いた植民地の民族に関することや、本書でも言及のある『想像の共同体』を書いたベネディクト・アンダーソンが自身のインドネシアでの滞在経験をもとに表したアジア民族観が有名な中では今までにないエリアに光があたっています。 特に個人的に参考になったのはポーランドやバルト三国とソ連との関係です。ポーランドは20世紀における領土的蹂躙の歴史から他の国よりもはるかにおおくの経済的・人的被害をこうむったというイメージが先行して頭の中に埋め込まれてしまっていましたが、塩川氏の描き出すポーランドは領土的大国であり、周辺諸国に住まう民族と近しい人々が国内領土の周辺に住まうことをどのように捉え、国家として巧妙に利用してきたかが描き出されています。このポイントにおいて、私のポーランド観は変わったといえます。 著者も述べている通り、民族や国家という言葉にたいして個々人が抱く帰属意識の濃淡はさまざまですし、他者に利用されることでイズムが燃え広がることも広く知られていますが、その定義も世界的に見ればバラバラでまずは同じ言葉を使っていながらも意味が異なることが専門家である学会においてさえ今なお存在することが、筆者の経験談から示されます。民族や帰属意識、国家観にかんする学問とは、個々人や集団のアイデンティティをいかに定めるかと同意味ですから古くからあるものですが、事例の多彩さも地域性の色合いもまったく異なりがちであるがゆえに世界的統一見解を生み出しにくいものなのですね。 副題につけられた「ナショナリズムという難問」とは言い得て妙です。ナショナリズムとパトリオティズムの違いへの無理解、日本国籍をとった韓国人を「在日韓国人」と呼ぶ意識の根底にある日本人のエスニシティへの視点、エスニシティへの一方的な危険視、などなど読んでいて自分が民族問題からはなれている間に忘れてしまったこの問題の多様であるがゆえに求められる寛容さを取り戻せたかな?とも思うのです。帯に「入門書」と書かれている通り、この本は入門書です。ここから次に進むための

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2009/10/07

 民族、あるいはネーションという概念及び議論について学部生や一般向けにまとめられた本。正直、ソ連史研究の第一人者が一般的な命題を論じるとは驚いた。しかも無理矢理自らのところに引きずり込むという歴史にありがちな手段や方法ではなく論じている点は評価出来る。  綿密性や実証性に拘る筆者...

 民族、あるいはネーションという概念及び議論について学部生や一般向けにまとめられた本。正直、ソ連史研究の第一人者が一般的な命題を論じるとは驚いた。しかも無理矢理自らのところに引きずり込むという歴史にありがちな手段や方法ではなく論じている点は評価出来る。  綿密性や実証性に拘る筆者らしく議論を取り上げてはその問題点や課題を挙げたり、また文末の文献紹介の前に一文をふしたりと・・・この辺は読み手の好き好きでしょうね。

Posted byブクログ