自然な建築 の商品レビュー
自然な建築とは場所と幸福な関係を結んだ建築。 自作の建築の素材やディテール、問題点や解決方法などを紹介。 ルーバーにより光が細かい粒子となり、水面の上で光の粒子がダンスをする、という表現が素敵。 是非、実作を見に行きたい。
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「偉大な建築家は、偉大な嘘つきである」という言葉を聞いたことがあるけど、まさにそのとおりかもしれない。 昔は隈さんこんなこと思ってもなかったんじゃないかなぁ。だけど、まるでその当時から「自然な建築」を考えてたかのように、筋の通った話を書いてるところがすごいなぁと思う。 最近、...
「偉大な建築家は、偉大な嘘つきである」という言葉を聞いたことがあるけど、まさにそのとおりかもしれない。 昔は隈さんこんなこと思ってもなかったんじゃないかなぁ。だけど、まるでその当時から「自然な建築」を考えてたかのように、筋の通った話を書いてるところがすごいなぁと思う。 最近、日本史の授業で習った『日本書紀』の中の聖徳太子みたい。 聖徳太子が本当にあんなに超人的な力を持っていたのかどうかはわからないけど、日本書紀が書かれた当時の日本には聖徳太子のような人物像が必要であった。だから、まるで昔からそういう人がいたかのように聖徳太子は創りだされた。それでも、今もなお聖徳太子は信じられている。 歴史は往々にしてその時代の要求にしたがって書かれる。 建築家だって当然そうだろう。 昔、ある考え方で建てた建築物を、今、昔とは全く違った解釈で説明したりする。それを悪いとは思わないし、むしろ建築家として必要な素養かもしれない。だからといって、今流行りのあいまいとかグラデーションとかいう言葉を使って説明するのはいかがなものか。考え方がしっかりしていて読んでてもおもしろいと思うけど、そういう言葉を使っちゃうと信用できなくなっちゃう。 それにしても、言葉の巧みさはさすが。 P.13 自然素材か否かの境界は極めてあいまいである。そこに線を引く行為に安住してはいけない。線引からは何も生まれない。線引きは何も正当化しない。我々は、線引きの先に行かなくてはいけない。自然な建築とは、自然素材で作られた建築のことではない。当然のこと、コンクリートの上に、自然素材を貼り付けただけの建築のことではない。 あるものが、それが存在する場所と幸福な関係を結んでいる時に、我々は、そのものを自然であると感じる。自然とは「関係性」である。自然な建築とは、場所と幸福な関係を結んだ建築のことである。場所と建築の幸福な結婚が、自然な建築を生む。 P.34 虹を作るのは水蒸気という粒子の集合体である。太陽と粒子と受容者、その三者の「関係性」によって、虹は出現する。正確にいえば、その「関係性」こそが虹なのである。 隈さんが、竹で鋼管コンクリートと同じような仕組みを試したりしているとは知らなかった。こういうことに関してはその粘り強さが本当にすごい。そういう新しい構造を考えたら新しいものができるもんね。いやーすごい。 思想もそうだけど、こういう泥臭い部分も建築のおもしろさの一つだね。
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コンクリートの表面に薄いお化粧をペーストしただけの建築を嫌い、自然に近づけるべく、杉・竹のルーバー、石の格子、和紙の壁を使う。多くのフォロワーを生み出している隈建築のこれらの特徴はどうして生まれたか、その思想が分かりやすく書かれている。過去にも大きな変遷のあった氏の建築が、これか...
コンクリートの表面に薄いお化粧をペーストしただけの建築を嫌い、自然に近づけるべく、杉・竹のルーバー、石の格子、和紙の壁を使う。多くのフォロワーを生み出している隈建築のこれらの特徴はどうして生まれたか、その思想が分かりやすく書かれている。過去にも大きな変遷のあった氏の建築が、これからどのような方向に向かうのか興味深い。
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タイトルのまんまの内容で面白かった。 物作りの現場と建築のデザイナーは、決定的に隔離されていて、一度現場が始まってしまったら、図面の修正は困難を極める、という節があった。図面の修正は、しばしば行われるものだと考えていたが、そんなに甘いものではないということがわかった。 杉を遠...
タイトルのまんまの内容で面白かった。 物作りの現場と建築のデザイナーは、決定的に隔離されていて、一度現場が始まってしまったら、図面の修正は困難を極める、という節があった。図面の修正は、しばしば行われるものだと考えていたが、そんなに甘いものではないということがわかった。 杉を遠赤外線で焼くと、不燃化のための液体が通り、燃えない木ができるということを知る。それと、竹は油抜きを行いその後油に漬けると強くなるということを知る。職人の知恵。感服。 自然素材を使うのは難しい。どんなに慎重に計画しても、なお予測できない問題が起こる。だからこそ、自然素材なのである。この節は一番印象に残っている。著書の核を簡潔に言い表していると感じたからである。 竹のジョイントは難解だ。難しいからこそ、見たことがない解答があらわれるチャンスである。過去の繰り返しは最も簡単である。繰り返しからは感動は生まれない。新しい組み合わせが、新しい解答を要求する。大前氏の言葉に似ていたので、頭に残った。こういう発想が、建築を発展させていくのだと感じる。
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20Cはコンクリートの時代。コンクリートは場所(環境)との関係を断ち切り、自然のみならず建築を単一化、固定化していくものであったとする。杉、竹、和紙等の素材を用いた建築をヒントに、21Cの二項対立を超えた建築を作ることが必要とする。
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きっと、たくさんあった仕事のなかでも特にお気に入りだったのだろう。 創造することに対して、愛情を感じられる一冊だった。 コンクリートという魔法の素材が汎用している世の中に対して、一石を投じたい! ではなくて、やはり自然な考え方。 そこにあるものを使って、そこになじむ家、建物を...
きっと、たくさんあった仕事のなかでも特にお気に入りだったのだろう。 創造することに対して、愛情を感じられる一冊だった。 コンクリートという魔法の素材が汎用している世の中に対して、一石を投じたい! ではなくて、やはり自然な考え方。 そこにあるものを使って、そこになじむ家、建物を作りましょう。 基本だし、すべてがつまっている考え方だと思う。 建築のいい悪い、古い新しいは判断できないけれど、たぶん気に入ると思う。
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隈さんの建築は一見すると何の変哲もない作品が多い。 ただ、その裏には隠された苦労や工夫が存在する。 それを知ることができた。 そして、有名な建築家にありがちな、 「わがまま」な考えを持ちながらも、 それを「謙虚」な姿勢で実現する 仕事に対する考え方も魅力的である。 少し矛盾を感じ...
隈さんの建築は一見すると何の変哲もない作品が多い。 ただ、その裏には隠された苦労や工夫が存在する。 それを知ることができた。 そして、有名な建築家にありがちな、 「わがまま」な考えを持ちながらも、 それを「謙虚」な姿勢で実現する 仕事に対する考え方も魅力的である。 少し矛盾を感じさせるような点もあるが、 それに対して本人も認識しているようであり、 その「胸をはれない」現実を認める事こそ、 自然な建築だとしている。 難解な語彙もほとんど無く読みやすくてオススメ。
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2008/12 自らが設計している建築に自然の素材を中心的に使っている著者が、主にメーンの素材に焦点を当てた自らの代表作を語っている。この論の中で自然素材に対しての著者の考え方を読み取ることができ、なかなか興味深い一冊。
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建築の本を読むのは、相当久しぶりです。著者は、隈研吾氏でこれまた有名人です。 本書を読んで感じた事は、「読みやすい」という事、これに尽きます。 しかし、こう思ったのは私が建築出身だからですね。一般の方がこれを読んで、どこまで 理解できるのか。または彼の矛盾を見抜けるのか。疑問に思...
建築の本を読むのは、相当久しぶりです。著者は、隈研吾氏でこれまた有名人です。 本書を読んで感じた事は、「読みやすい」という事、これに尽きます。 しかし、こう思ったのは私が建築出身だからですね。一般の方がこれを読んで、どこまで 理解できるのか。または彼の矛盾を見抜けるのか。疑問に思います。 内容は、自然な建築を作る。その土地固有の素材や工法を使用して、その土地ならではの 建築を作る事が自然な建築だ。20世紀はコンクリートの時代だったが、コンクリートの 幻想はもう見えないだろう。素材を十分に活かして建築を作ろう。ってな感じです。 まぁ、言いたい事は大体分かりますが、「弱い建築」「ライプニッツのモナド論」など 流行の最先端ですよね。また「編む」という行為で建築を作る話が出てきていますが、 これまたゼンパー(ドイツの建築家)から引用しているという感じが拭えません。 そもそも、彼の言う自然な建築には私は懐疑的なので、このように思ってしまうのかも しれませんけどね。 しかし、コンクリートで躯体を作りそのテクスチャーを化粧するという行為を嫌っている わりには、根本的には同じ事である「竹の中にコンクリートを流し込む」という事を 行っているんですよね。何が違うのか?私には全く理解に苦しみます。 また、毎回思うのは建築を表現する時の難解な言葉ですね。抽象的で恣意的な言葉を 読んでいくと、建築の世界は相変わらず伝統という呪縛に縛られているなと思います。 隈研吾氏の作品が好きな人には、よい内容だと思います。一つ一つの作品について 詳しく述べられていますからね。ただ、私のような人には読んでも後味の悪いものと なるでしょう。
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