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テロルの決算 新装版 の商品レビュー

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77件のお客様レビュー

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2024/09/05

沢木耕太郎の二矢という少年への強い思いが伝わってくる。普通の17才の「素直さ」「狂気」「儚さ」が見事に伝わってくる作品となっている。近年では安倍晋三の銃撃事件があったが、あの事件で、頭をよぎったのは、この「テロルの決算」だった。 まだ、読み終えていなかったこの小説のあとがきは、...

沢木耕太郎の二矢という少年への強い思いが伝わってくる。普通の17才の「素直さ」「狂気」「儚さ」が見事に伝わってくる作品となっている。近年では安倍晋三の銃撃事件があったが、あの事件で、頭をよぎったのは、この「テロルの決算」だった。 まだ、読み終えていなかったこの小説のあとがきは、二矢が「生きていたら」という、言葉が胸を打つ。二矢を引き立てるために、他の人物を事細かく書くことで、二矢に寄り添いそして二矢を追ってきた沢木耕太郎にとってさらに思い入れの強い人物となっていたのだろう。 私にとっては、とてもいい作品であった。

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2024/05/13

現実に起きたこの事件は知らなかったが、小説として書き起こされた当時の情景に息を呑む思いを感じる。17歳の少年が人を殺し冷静に取り調べを受け自決する。物語終盤の以下の言葉が少年テロリストのものに思えないが、そう思って読むと様々な感情が湧き起こってくる。 「私の人生観は大義に生きるこ...

現実に起きたこの事件は知らなかったが、小説として書き起こされた当時の情景に息を呑む思いを感じる。17歳の少年が人を殺し冷静に取り調べを受け自決する。物語終盤の以下の言葉が少年テロリストのものに思えないが、そう思って読むと様々な感情が湧き起こってくる。 「私の人生観は大義に生きることです。人間必ずや死というものが訪れるものであります。その時、富や権力を信義に恥ずるような方法で得たよりも、たとえ富や権力を得なくても、自己の信念に基づいて生きてきた人生である方が、より有意義であると信じています。自分の信念に基づいて行った行動が、たとえ現在の社会で受け入れられないものでも、またいかに罰せられようとも、私は悩むところも恥ずるところもないと存じます」

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2023/12/15

社会党委員長の浅沼稲次郎が渋谷公会堂で行われた立会演説会の演説の最中にテロリストの若者と交錯した場面はテレビ映像で何回か見たことがあった。 この本は17際の少年がなぜ暗殺に及んだのか、また、その時現場にいた多くの人たちが何を見て何を感じたのか克明に描いている。 当時の政治情勢含め...

社会党委員長の浅沼稲次郎が渋谷公会堂で行われた立会演説会の演説の最中にテロリストの若者と交錯した場面はテレビ映像で何回か見たことがあった。 この本は17際の少年がなぜ暗殺に及んだのか、また、その時現場にいた多くの人たちが何を見て何を感じたのか克明に描いている。 当時の政治情勢含めて詳細に描かれた秀作だと思う。

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2023/11/13

 社会党政治家が右翼少年に刺殺された事件がテーマとなったノンフィクション作品。二人の過去を辿りながら、社会党政治家側の視点、右翼団体の視点、そして、テロ至るまでの経緯が丁寧に描かれている。  戦争、安保闘争、学生運動、その時々の人々の考えが伝わってくる、とても学びの多い作品だった...

 社会党政治家が右翼少年に刺殺された事件がテーマとなったノンフィクション作品。二人の過去を辿りながら、社会党政治家側の視点、右翼団体の視点、そして、テロ至るまでの経緯が丁寧に描かれている。  戦争、安保闘争、学生運動、その時々の人々の考えが伝わってくる、とても学びの多い作品だった。それぞれの転換期にどちらに世の中が傾いたか。世代間の考え方の違いは、歴史の積み重ねであることを感じた

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2023/10/06

沢木の処女作で代表作。最初の単行本刊行は1978(昭和53)年のことで、それからもう45年も経った。最初の文庫化も1982(昭和57)年、やはり40年以上が過ぎた。新装版も2008(平成20)年、それから15年も経った。 山口二矢という右翼少年による浅沼稲次郎暗殺事件は、1960...

沢木の処女作で代表作。最初の単行本刊行は1978(昭和53)年のことで、それからもう45年も経った。最初の文庫化も1982(昭和57)年、やはり40年以上が過ぎた。新装版も2008(平成20)年、それから15年も経った。 山口二矢という右翼少年による浅沼稲次郎暗殺事件は、1960(昭和35)年のことで、それからもう60年以上も経った。だが、内容は今なお、色褪せてないように思う。

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2023/09/23

もともとノンフィクションは好きだが、文章が上手く、緻密で広い関係者からのヒアリングに基づきストーリーが作られた秀作。戦後に個人主義が進み、今は人間関係が薄い時代になっているが、まだまだ人間の濃さが残っていたのを感じる。

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2023/05/26

昨今の政治家襲撃に関連して紹介されていたので手に取った作品 恥ずかしながら全く知らない事件であり、こうも大きな事件が知られずにいたものかと自分の無知を棚に上げておもったりなどした。 テロに至る若者の頑なさと被害政治家の愚直さが辛かった 起こるべきテロなんてものはないけれど、...

昨今の政治家襲撃に関連して紹介されていたので手に取った作品 恥ずかしながら全く知らない事件であり、こうも大きな事件が知られずにいたものかと自分の無知を棚に上げておもったりなどした。 テロに至る若者の頑なさと被害政治家の愚直さが辛かった 起こるべきテロなんてものはないけれど、それにしたってどうしてと思わずにはいられない。

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2023/02/06

読むのに時間がかかり疲れた 間違いなく読み応えはあるが 時代も古いし 正確に認識できていない言葉が出てくると 例えば 安保闘争ってなんだっけ? とググったりを繰り返した テロは誠に手前勝手な迷惑行為であるが その全てを否定することも難しいのではないかと思ってしまう

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2023/01/16

沢木耕太郎(1947年~)氏は、横浜国大経済学部卒のノンフィクション作家、エッセイスト、小説家、写真家。著者が1974~5年に香港からロンドンまでを旅した記録『深夜特急』(発表は1986~92年)は、当時のバッグパッカーのバイブル的存在としてあまりにも有名。本作品で大宅壮一ノンフ...

沢木耕太郎(1947年~)氏は、横浜国大経済学部卒のノンフィクション作家、エッセイスト、小説家、写真家。著者が1974~5年に香港からロンドンまでを旅した記録『深夜特急』(発表は1986~92年)は、当時のバッグパッカーのバイブル的存在としてあまりにも有名。本作品で大宅壮一ノンフィクション賞、『バーボン・ストリート』で講談社エッセイ賞、『凍』で講談社ノンフィクション賞、その他、菊池寛賞等を受賞。 本書は、1978年に出版、1982年に文庫化されたものを、2008年に新装版化したものである。 私は、1980年代にバッグパックを背負って海外を旅し、沢木の作品はこれまでに、上記の各賞受賞作をはじめ、『敗れざる者たち』、『流星ひとつ』、『キャパの十字架』、『旅の窓』、『チェーン・スモーキング』、『世界は「使われなかった人生」であふれてる』、『旅のつばくろ』、『作家との遭遇』、『あなたがいる場所』など幅広く読み、最も好きな書き手は誰かと問われれば迷わず沢木の名前を挙げるファンなのだが、本書はこれまで未読だった。 本作品は、1960年10月12日に日比谷公会堂で開催された自民党・社会党・民社党3党首演説会で、17歳の右翼少年・山口二矢(おとや)が、壇上で演説中だった社会党委員長・浅沼稲次郎を刺殺した事件を、二人がそれまでに辿った人生を含めて描いたものである。 読み終えて、改めて沢木がなぜこの作品を書いたのかを考えてみると、あとがきに、「最大の動因は、私自身の、夭折者への「執着」に近いまでの関心にあったような気がする」と書かれているのだが、それは、二矢が、浅沼を刺し殺したときに「完璧な瞬間」を味わい、完璧な時間を生きたこと、そして、その直後に自死し、「もし生きていたら」というような仮定を鋭く撥ね返してしまう、宿命としか言いようのない人生を完結したことに、強く心を動かされたということなのである。 そして、そのような二矢の明確で直線的な人生に対し、浅沼の、よろめき崩れ落ちそうになりながらも決して歩むことを止めなかった、愚直な人生が、強烈なコントラストを為していることが、作品により明確な形を与えることになった。 私は、事件当時はまだ生まれておらず、その頃の社会主義運動の広がり(と、それに対する右翼的運動の先鋭化)についての肌感覚がないのだが、そのため、二矢に対しても浅沼に対しても、また、(当時の)右翼に対しても社会主義者に対しても、思想的・感情的な思い入れはないし、また、沢木もどちらかに肩入れしたような描き方は一切していない。 尚、このタイミングで読むと、否応なく昨年の安倍元首相銃撃事件が思い出されるのだが、沢木は、どうしたら政治テロが避けられるかという視点では、ほとんど何も書いていないので(そもそも、同事件は“政治”テロではないが)、そうした内容を期待する向きは肩透かしを食らうことは付言しておきたい。 (2023年1月了)

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2022/12/09

私はテロという暴力を肯定しない。しかし加害者である個人を否定しない。その尊厳を守るべき社会は、私たちが担う責任の集約でもあり為政者はその代表となる。民主主義社会の過渡期に起きた暗殺事件、被害者の政治家・浅沼稲次郎と加害者の右翼思想青年・山口二矢、ふたりは面識もなく現場となった日比...

私はテロという暴力を肯定しない。しかし加害者である個人を否定しない。その尊厳を守るべき社会は、私たちが担う責任の集約でもあり為政者はその代表となる。民主主義社会の過渡期に起きた暗殺事件、被害者の政治家・浅沼稲次郎と加害者の右翼思想青年・山口二矢、ふたりは面識もなく現場となった日比谷公会堂で初めて対峙する。偶然が重なった警備の穴にするりと足を踏み入れた山口の決意はどれほど熟成されたものなのか、それとも当日の新聞朝刊に載った記事による衝動的な狂騒だったのか、夭折となった山口の本心は知る由もないが、最後の章で垣間見せる人情に感嘆する。彼は狂人ではない、思想の違いがこれほど常軌を失わせてしまう悲劇なのだ。その後の日本や世界の動向を知れば山口は嘆くのだろうか。ひとりの力で変革はできないが、声をあげる非暴力な “さざなみ” はやがて歴史を変える “濁流” へとつながるかもしれない。山口は焦った、その先の理想へ早く辿り着きたかった。答えは出なくてもいい、考える過程こそ大切であり、無関心でやり過ごすノンポリは愚行だと断言する。

Posted byブクログ