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幻影の書 の商品レビュー

4.2

46件のお客様レビュー

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2024/08/04

若い頃、ポールオースターを読むのがかっこいいと思っていた時期があって、著作を読んだような気がするけれど、全然思い出せない…。 『あの本、読みました?』 で激推しされていた本著は、妻と子を亡くした男が無声映画の俳優の人生を追ったもの。 主人公、デイヴィッド・ジンガ―の頭の中の思い...

若い頃、ポールオースターを読むのがかっこいいと思っていた時期があって、著作を読んだような気がするけれど、全然思い出せない…。 『あの本、読みました?』 で激推しされていた本著は、妻と子を亡くした男が無声映画の俳優の人生を追ったもの。 主人公、デイヴィッド・ジンガ―の頭の中の思いが淡々と1人称でひたすら描かれていています。考え方が重くて暗く、イライラしているデイヴィッド。そのイライラぶりや、妻の親友とぶつかるところなど、もどかしさを感じます。 ポールオースターの十八番、物語の中の物語が私はあまり合わなかったけれど、淡々とした文章の中に暗くて強い美しさを感じました。不穏な雰囲気は特別なものでした。

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2022/04/04

ポール・オースターという作家は本当に不思議だ。理知的な書き手であることは疑いえないのだが、計算ずくで書いているとは思えない「天然」のストーリーテラーとしての才をも同時に感じさせる。この長編でもオースターは、右へ左へと自由自在に転がして私たちを誘導していく(ツッコミどころが多いと言...

ポール・オースターという作家は本当に不思議だ。理知的な書き手であることは疑いえないのだが、計算ずくで書いているとは思えない「天然」のストーリーテラーとしての才をも同時に感じさせる。この長編でもオースターは、右へ左へと自由自在に転がして私たちを誘導していく(ツッコミどころが多いと言えば多いのだが、それを言い出せばこの物語そのものが語り手の妄想だったという可能性すら考慮しなくてはならなくなる)。誰にも見せないためにわざわざ作られる映画、というカフカばりの喜劇的なモチーフ。オースターのコミカルな側面が一皮剥けた

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2021/08/31

『無声映画役者に振り回された人たちの物語の物語』 実在するかのような映画の描写、実際に目の前で起きているかのような回顧録、これらが、入れ子になって重なりあい、ますます物語に引き込まれていく。複雑だけど自然な繋がりを持つ構成と目に浮かぶような細やかな描写は、さすが、オースター!

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2019/09/08

「世にごく稀にいる、精神が最終的に肉体に勝利を遂げる人物」「年齢はこうした人々を貧しくしない。老いさせはしても、彼らという人間を変えはしない。長生きすればするほど、彼らは自分の本質をますます豊かに、消しがたく体現していく。」

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2019/02/20

翻訳小説には、ありがちな拒否反応が私にはあります。幼稚ですが登場人物が、分からなくなってしまう。そんな私が何故が読みました。分かりやすかったです。何層にも重なるストーリーに魅力があります。

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2017/12/07

存在の不確かなモノを追う物語 オースターの小説には,このパターンが多いと思うが,その中では,現実味のある読み応えのある内容だった。 主人公が追っていくうちに,存在の不確かなモノの存在がだんだん現実味を帯びてくる。 ふわふわ漂っていた物語が,最後はしっかり着地したような感じで,とて...

存在の不確かなモノを追う物語 オースターの小説には,このパターンが多いと思うが,その中では,現実味のある読み応えのある内容だった。 主人公が追っていくうちに,存在の不確かなモノの存在がだんだん現実味を帯びてくる。 ふわふわ漂っていた物語が,最後はしっかり着地したような感じで,とても面白く読めた。

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2017/09/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

久々のオースター作品。嵌まってしまうとやはり面白い。 オースターの本って、嵌まるまでちょっとツラいねんな。みっちり詰まった活字に、微細な情景描写、勢いで上っ面なでるように活字を流してしまうと、途中で描写が分からなくなりページを戻るはめに陥ったり… でも、リズムに乗ってしまうと、のめり込んで行ける。この本もそう、最初の方はぎこちなくページを繰ったり戻ったりしてたけど、のめり込んだらしめたもの、語り手ジンダーと主人公ヘクターの数奇な人生を共に歩んでいるような感覚で、現実を忘れそうになるくらい読み耽ってしまう。 映画を作ること、小説を書くこと、外国文学を訳すこと、評論を書くこと…ジンダーもヘクターも数奇な人生を送る中で、その横に必ずあったものがそういう表現活動だった。人との付き合いをほぼ絶ってしまっても、彼らの愛した人々が次々とこの世を去ったとしても、彼らは絶望の淵にしがみついて生を諦めきれず、創作活動を続けた。 その生きざまが、悲劇にも喜劇にもなる。オースター自身が小説も映画も創作する表現者である故、勘所をついた文の面白いこと嵌まること。想像していたほど重厚な文学ではなく、かといってエンターテイメント性だけを押しだした小説でもない。小説としてだけでも十分に楽しいが、孤独とか創作とか継続とか、そういう生きて行く上でやっていくことを濃密に考えさせられる小説、濃い読書の時間をもてて本当に良かった。

Posted byブクログ

2017/05/21

読み出したらとまらない。 ストーリーテラーってこういう作家のことを言うのか。 ニューヨーク三部作は、抽象的な部分も大きかったが、この本では、家族を亡くした主人公の話、突然いなくなった俳優の話、映画の中の話などが重なって、完成度が高くなっている。

Posted byブクログ

2017/05/05

無声映画の描写が素晴らしい。柴田元幸氏の翻訳の真骨頂だろう。 物語は後半に向かい怒涛の展開を見せ、わずかな希望を残すにとどまるが、起きてしまったことに比べれば読後の絶望感は意外なほど軽かった。 文章が端正さを極めているからだろうか。 「面白い本を読んだ」と心から思えた。

Posted byブクログ

2017/04/23

はじめて読むポール・オースター。 圧倒された。 「緻密」というしかない記述の濃さ、厚さ。 自然さゼロの、限りなく人工的な展開とそれを支える言葉たち。 はじめは読んでいるつもりが空転していることに気づき、舌打ちしながらページを繰った。が、次第にリズムが合い始めたのか、言葉の海に溺れ...

はじめて読むポール・オースター。 圧倒された。 「緻密」というしかない記述の濃さ、厚さ。 自然さゼロの、限りなく人工的な展開とそれを支える言葉たち。 はじめは読んでいるつもりが空転していることに気づき、舌打ちしながらページを繰った。が、次第にリズムが合い始めたのか、言葉の海に溺れることなく泳ぎ切れた。 ふうっ!(充足のため息)

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