天使のナイフ の商品レビュー

薬丸岳【著】

2023/01/06

『少年法の精神によれば、子どもの犯罪は環境に作用されておこるもの』
『可塑性に富んだ子どもは多くの手助けがあれば立ち直っていく」』
子どもに罪はなく、大人が、社会の一員であるあなたも加害者側だと言わんばかりの少年法の精神。不幸にも犯罪に巻き込まれ、加害者が未成年だと知った時の絶望感は他の小説でも何度も読んできた。
年齢関係なく罪の内容で裁いてよって、被害者遺族が求める情報は教えてよって思う。
結局この小説の黒幕も同じ。私利私欲の為に殺し、学び、今度は殺人をしむける。更生どこいった？今回の事件の元凶だけに本当に腹立たしい。
主人公を中心に犯罪者と犯罪被害者がつながりすぎている感はありますがぶっちぎりの乱歩賞、解説までいっき読みでした。

2022/12/04

少年法というとても重たいテーマで書かれた作品。
被害者と加害者の心の内。
簡単に面白かったと表現してはいけないと思う。
この作品を読んで、自分に何か出来るわけではないが、様々な事を考えさせられた。

2022/10/08

現代の闇かどうかわかりませんが少年犯罪の難しさを扱った作品で、私も『少年犯罪』に対する考え方が少しだけ変わった気がします。
タイトルも、社会が少年犯罪をどのように扱うか、どのようにして課題を解決していかなければならないのかを表すようなタイトルだなと、読み終わって感じました。

2022/09/12

少年法の是非や、加害者、被害者にとっての事件、罪の償い。結論が出しづらい問題なだけに、少し置き去りにされている部分が幾つかみられるが、そこを補えるだけの内容はあるように思える。

2022/09/05

流れるような展開に魅了されました。主要人物のほとんどが未成年犯罪に巻き込まれているという設定に驚き、黒幕の黒幕に驚きました。加害者も被害者も大きな苦しみを伴う辛さが伝わってきます。何があっても残されたものを守るため前を向く大切さを知った思いです。今まで悲しみや怒りしか感じなかった主人公が教師だった夫を失いながらも残された子供や自分自身の未来に向かって歩んでいる人に会って心境が変わった場面が印象的でした。ハッピーな気分にはなりませんが、面白かったです。大好き度❤️

2022/07/21

感想
本のタイトルである天使のナイフ。多くの人が納得するための公的な法と個人が納得するための「私法」。そのあり方が物語を通して問われる。

2022/07/06

少年法について考えさせられる。

スタートは、新妻を生後3ヶ月頃の娘の前で殺され、その犯人たちは中学生だった。そのため、被害者家族としては、全く納得できない、裁判にならず矯正施設のようなところで更生を目的に暮らす。そんな生ぬるい、と思わず
「国家が裁かないなら、自分で殺す」
そんなことを、つい気を許したジャーナリストの前で口走ってしまう。（この主人公、桧山自体、未成年の頃、両親を同時に交通事故で亡くしている）

冷静なもう一人の自分は、警察ができないことを単独で、しかも小さな子がいる素人ができるか?と思う。
少年犯罪の被害者になり加害者になり第三者になり、ここまで、そんな経験をした人ばかり、集まるか、と言うと…

犯人のうち保護観察が終わり、普通の生活を送っていた一人が、この桧山の勤務先の近くで殺される。
その時間にアリバイがなく、警察にマークされ疑われる。
一人で事件を追い求める最中、もう一人の犯人が駅のホームで突き落とされる。この現場に、またもや桧山はいた。
そして、最後の三人目も何者かに殺される。

結果的に、予想もしていない人物が犯人なのだが、出てくる人物全て、何かの事件に関連している。何と新妻が中学生の時、殺めた男の娘が拡張型心筋症という難病で海外に渡り手術するにはまだ資金不足だった、不足分1000万円を振込したのは、新妻だった。さらに、その振込の半分を担ったのは、新妻が幼かった頃、えっちゃんを殺しその後弁護士になった男。たくさんの少年犯罪が連載している。

でも桧山の伝えたいことは、一貫して一つ。
日本の法律は抜けばかり。罪を犯した人間の更生の一番は、被害者家族に対し償うこと。心から謝罪して、その後反省してほしい。
それはそうだと思う。
加害者が被害者家族に謝罪に行っても、感情を逆なでするだけで、なんの解決にもならない、そんなことを、元犯罪を犯した弁護士が言うなんて。
最初から登場する、ジャーナリストはもともとは、矯正施設で働く立場だった。仕事内容で、なぜ謝罪がないのか、納得できなくなり、退職してフリーのジャーナリストになった。

なんとも、悲しい日本の現実を感じた。

2022/06/13

「少年犯罪」に対する強いメッセージ性のある作品でした。にしても、どんでん返しのどんでん返し‼︎想像つかないような結末でした…

ただ少し興醒めしてしまったのが、祥子も桧山も色々と事件に関わりじゃない？（汗）人間、不幸に見舞われるときはとことん見舞われますが、こんなにも人の死に接している機会が多いと、そんな偶然続くか…？って思っちゃいました。

2022/06/13

妻が少年3人によって殺された

4年後、加害者の少年が次々と殺される

なぜ殺されたのか。調べていくうちに妻の過去が徐々に明らかになっていく

少年犯罪の闇と被害家族の苦しみがリアルに描かれている

疑う警察、犯人の目的は、妻の秘密とは何なのか。

読み手を飽きさせること無く一気読みさせる程完成度の高い作品

2022/05/16

　少年犯罪とその周辺の関わる人を、丁寧にかつ臨場感たっぷりに描き、ほぼ一気読みになるくらい引き込まれてしまった。
　少年法の功罪、更生、贖罪etc. 難しい問題に真正面から向き合いながら、物語は加速度的に展開し、読み手にスリルだけでなく、思考・想像・判断を要求している気になってしまう。
　重厚さの中にミステリーとエンタメ感が溢れ、心動かされる一冊だった。