アブサロム、アブサロム! の商品レビュー
2201219*読了 架空の郡で起きた一族をめぐる物語。 主人公として狂気じみた男性が出てくるものの、彼の口から直接語られるのではなく、彼が祖父に伝えた話を父から聞かされて…であったり、彼と婚約することになったが破棄した女性の過去として聞かされたりと、ありきたりではない体裁がとら...
2201219*読了 架空の郡で起きた一族をめぐる物語。 主人公として狂気じみた男性が出てくるものの、彼の口から直接語られるのではなく、彼が祖父に伝えた話を父から聞かされて…であったり、彼と婚約することになったが破棄した女性の過去として聞かされたりと、ありきたりではない体裁がとられている。 また、長すぎる手紙や長々とした心理は異なるフォントで書かれている点も今まで読んできた全集になく、独自性がありました。 世界文学全集を読んできて感じるのは、黒人の存在や在り方。 日本に生まれ生きていて、親族も皆日本人である自分にとっては、黒人というのはあまりにも遠いところにいる人。 だからこそ、彼らの歴史や不当な扱われ方をしてきたことに対して疎い。 この小説でも黒人の血が混じっているであったり、娘なのに黒人奴隷の子どもであるから扱いが違ったりと、明らかな差別がある。 これを当時のアメリカ人が読んでどう感じるのか。 そして、この小説においては南北戦争の様子も欠かせないけれど、それだってわたしはよく知らない。 日本以外の国で起こったことや、国外からの視点についてはまだまだ知識が乏しいと痛感。 それにしても、出てくる人の誰に共感しようもなくて、サイコパスさが感じられる小説でした。 おもしろいんだけれど、え?大丈夫?となる突拍子もなさが頻出。 独特の味わいがある小説だと思います。 そして、この小説自体もフォークナー氏が作り出した世界の一部でしかなくて、その世界にまつわる小説をたくさん書いているところも個性が強いですね。
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やっと読了。 まあ間に他の本をいろいろ読んでいたこともあるが、なかなか終わらなかった。しかし、中断して戻ってきても大丈夫な内容で楽しめた。 我が愛する『百年の孤独』の元ネタだという話を目にして、これは読まねばなるまいと思ったわけだが、架空の広大な土地の架空の一族の壮大な物語、とい...
やっと読了。 まあ間に他の本をいろいろ読んでいたこともあるが、なかなか終わらなかった。しかし、中断して戻ってきても大丈夫な内容で楽しめた。 我が愛する『百年の孤独』の元ネタだという話を目にして、これは読まねばなるまいと思ったわけだが、架空の広大な土地の架空の一族の壮大な物語、という意味ではマルケスのほうが数段上だなと思った。 こっちは結局、老トマス、トマス・サトペンがあちこちに作った子どもがうろうろする話だもの100年間、とはいえこの1作だけでそう言ってはいけないのであって、フォークナーの他の作品がヨクナパトーファを舞台に繰り広げられているとか、こういうの好きだなあ。 巻末に年表があって人間関係を把握するのにとても役立った。
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フォークナーは手ごわいと、選者の池澤夏樹が書いているが、自分はこのような作品が好きだ。少なくと欧州の文学と米国の文学との違いを最も感じさせる作品の一つではないかと思う。バルザックを思わせるような長く綿密な描写だが、フランス文学の持つような歴史の重みのようなものではなく、土の臭いの...
フォークナーは手ごわいと、選者の池澤夏樹が書いているが、自分はこのような作品が好きだ。少なくと欧州の文学と米国の文学との違いを最も感じさせる作品の一つではないかと思う。バルザックを思わせるような長く綿密な描写だが、フランス文学の持つような歴史の重みのようなものではなく、土の臭いのする土地とそこに生きる人生のようなものを感じる。 マルケスなどにも大きな影響を与えたと云われている。確かに百年の孤独の民話語りのような雰囲気は似ていると思うが、本作では登場人物の語りだけではなく、神の視点からの心理描写も多用れているし、物語がスパイラルに展開される。百年の孤独にはそのような手法は殆ど見られないと思う。どちらかというと意識の流れ派へ与えた影響のほうが強いのではないだろうか。
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100年の間閉ざされていた部屋の湿度と匂いが感じられる。 まずおかしいのが「カッコ、が終わらないんです。 」が出てこない。「なんたらかんたら「なんたらかんたら、と永遠に話が続く。芥川の「藪の中」と同じで全て誰かの視点から語られているから何が真実かわからない。何重ものレイヤーで思...
100年の間閉ざされていた部屋の湿度と匂いが感じられる。 まずおかしいのが「カッコ、が終わらないんです。 」が出てこない。「なんたらかんたら「なんたらかんたら、と永遠に話が続く。芥川の「藪の中」と同じで全て誰かの視点から語られているから何が真実かわからない。何重ものレイヤーで思い出が浮かび上がり、そのシーンが近づいたり遠のいたりする。匂いを感じる文体。そして土の感触。血の強さ。蜃気楼。 書いている時点で話に含まれている人が全員死んでいる。というもの絶対におかしい。 ベラスケスの「ラス・メニーナス」に対峙している時と同じ感覚になる。 こちらが入っていける空間になっている。でも入っていった世界はほんとは全員死んでる。こっちが物語を見ているはずが作者がこちらを見ている。永遠ループ。
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※このレビューにはネタバレを含みます
「フォークナーは手強い」と、池澤夏樹が書いていたが、その言葉にうそはない。はじめて読んだときは最初の数ページで本を置き、あとが続かなかった。まだ、準備ができていなかったのだ。池澤は言う。「普通の小説を読むことはちょっとした小旅行に似ている。読者は数日だけ自分の家を離れて他の地に行く。他人の人生を生きてすぐに戻ってくる。(中略)しかし、フォークナーを読むことはそのままヨクナパトーファ郡に移住することである」と。 ヨクナパトーファ郡とは、南部にある架空の地である。フォークナーのすべての作品は、そこを舞台としている。そればかりではない。一つの作品に登場する人物は、同じ人格を備えたままで、別の作品に登場したり、同じ事件が別の角度から語られたりもする。まるで、実在の土地があり、そこに暮らす人々を、そこに暮らす作家が長い時間をかけて取材し、それらの人々の人生を物語っているかのようだ。フォークナーの小説世界というのは、すべての作品が寄り集まってとてつもなく大きな一つの作品を構成していると言える。ヨクナパトーファ・サーガと呼ばれる所以である。 それだけに、一つの作品を一度読んで、ああ面白かったというわけにはいかない。もちろん、一つの作品は一つの作品で独立した作品として成立している。しかし、この作品の後半に突然語り手の対話の相手としてシュリーブというカナダ人が闖入してくる。ヨクナパトーファ郡に長く住んでいる読者にとっては顔見知りなのかもしれないが、行きずりの読者にとって唐突な感は否めない。しかし、裏を返せば移住期間が長くなればなるほど、顔なじみもでき、住み心地もよくなる仕掛けになっている。 『アブサロム、アブサロム!』で描かれるのは、トマス・サトペンという男の一代記である。生まれ育ちのよくない男が幼い頃に受けた屈辱的な仕打ちに発奮し、世間を見返すために豪邸を建て家族を作ろうとする。上流の家から妻をめとり、一男一女をもうけるが、妻は若くして死に、娘は結婚を前にして未来の夫に死なれ、息子は家を出て行方不明となる。男はそれでも懲りずに自分の子孫を残そうとするのだが…。親と子の葛藤、男女の愛憎に加えて、兄妹愛、人種問題、奴隷制、よくもまあこれだけ詰め込んだものだと思うほどのどろどろの人間模様。それらが行き着く先は因果応報といえばいいのか、宿命的な悲劇といえばいいのか。 あらすじだけを書けば近頃流行りの昼メロのようで、なんとも通俗的に思えるかもしれないが、なかなかどうしてそんなものではない。まず、サトペンという人物が尋常でない。よく言えば神話的、悪く言えば怪物的な人物として造型されている。この小説では、多くの人物の口を借りてサトペンの行状が語られるが、語り手は自分の眼が捕らえたサトペンの姿を語るだけで、それらをどう重ねてみてもくっきりとした人物像は浮かび上がってこない。サトペンという謎を追いかけて読者は最後まで引きずられていかざるを得ない。 最後に、題名の「アブサロム、アブサロム!」だが、これは旧約聖書の『サムエル記』にあるダビデ王の言葉だそうだ。ダビデの数ある息子の一人、アムノンは妹のタマルを愛するようになる。近親相姦の禁忌を怒って同じく息子のアブサロムがアムノンを殺す。しかし、アブサロムは王の部下によって殺されてしまう。愛する息子を失ったダビデ王の嘆きが題名の由来である。 出自や家系、血のつながりというものに強いこだわりを見せるのは、作者が南部の出身であるからか。フォークナーは戦後来日した際、自分も敗戦国の人間ですと自己紹介したという。栄華を誇ったいくつもの有力な家系が、南北戦争の敗北を境にして、没落、頽廃してゆく、作家の目はそれを見てきた。フォークナーの小説が、人間の業のようなものを深くえぐり出してみせるのは、決してそれと無縁ではないだろう。
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恥ずかしながら初フォークナー。どれを読むべきかわからずテキトーに取ったんだが、フォークナーの長編は彼の作った架空の群の架空の町が舞台となっているということでこれ一冊では終われない感じだ。 複数の人物の独白から形作られるトマス・サトペンという人物を通して、南部の歴史や一族の因習が...
恥ずかしながら初フォークナー。どれを読むべきかわからずテキトーに取ったんだが、フォークナーの長編は彼の作った架空の群の架空の町が舞台となっているということでこれ一冊では終われない感じだ。 複数の人物の独白から形作られるトマス・サトペンという人物を通して、南部の歴史や一族の因習が浮かび上がる。 初めに語り始めるのは、サトペンの妻エレンの妹のローザで、サトペンを悪魔と憎みながらも、寄る辺ない田舎娘の憧れと執着を覗かせる。 ローズが語る相手はクエンティン・コンプソン。祖父がサトペンと交流があった大学生。 話の構造はなかなか入り組んでいて、ローザがクエンティンに話したことと、クエンティンの父がクエンティンの祖父から聞いたことをクエンティンに話し、さらにクエンティンは学友シュリーブに話しながら分析する、という感じ。 複数の人物がそれぞれの目線から語るので、起きた事件が先に語られ(誰かの死とか)、その詳細が後で語られ、そのさらに後でその人物たちの心情を考えていく、という仕立てはミステリーっぽくもある。 題名や登場人物の名前はギリシア古典や旧約聖書から来ていて、悲劇を予想させるものだが、登場人物像やそれぞれの執着したものがはっきりしていて、それが崩壊するさまが激しくも滑稽でもある。
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こりゃまたビッシリ独白が続いたもんだ。凄くシンプルな事実を、遠巻きながらに延々と語られるグッタリ感たるや、まるで諸行無常の響きのようでありました。読んだなあという手ごたえ感たっぷりでした。 ところで、冒頭の文章でこの本は9月のまだ暑い時期に読むべきだと思って読み始めたけど、読み終...
こりゃまたビッシリ独白が続いたもんだ。凄くシンプルな事実を、遠巻きながらに延々と語られるグッタリ感たるや、まるで諸行無常の響きのようでありました。読んだなあという手ごたえ感たっぷりでした。 ところで、冒頭の文章でこの本は9月のまだ暑い時期に読むべきだと思って読み始めたけど、読み終わった今となっては冬の時期に読んだほうがよかったかも。次に読むときは冬、そう覚えておこう。
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聖書のダビデ王の子息のエピソードにちなんだ話である。トマス・サトペンという男(ダビデの立場)の生き様を縦糸にとりながら、宿命を避けようとした男がより大きな宿命の渦に取り込まれる様を描いた。
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ノーベル賞作家であるフォークナーは、ハリウッド映画の脚本家をしていた時代がありました。 まるで映像が浮かんでくるかのような情景描写は秀逸です。 フォークナーの作品の主題はアメリカ南部の差別と人間の苦悩です。 驚かされるのは作品のほぼすべての舞台が同じで年代順にどこかで繋が...
ノーベル賞作家であるフォークナーは、ハリウッド映画の脚本家をしていた時代がありました。 まるで映像が浮かんでくるかのような情景描写は秀逸です。 フォークナーの作品の主題はアメリカ南部の差別と人間の苦悩です。 驚かされるのは作品のほぼすべての舞台が同じで年代順にどこかで繋がっているのだそうです。 この『アブロサム!アブロサム!』はその中でサトペンという軍人にスポットを当てた物語です。 それにしてもこの作品を読み通すのは苦労しました。 重いです。 重いですが、それだけに読後感は充実しています。 読書好きは抑えておきたい作家の一人です。
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[ 内容 ] [ 目次 ] [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った...
[ 内容 ] [ 目次 ] [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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