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一朝の夢 の商品レビュー

3.9

17件のお客様レビュー

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2020/04/17

先日「菊花の仇討ち」を読み終わり、そういえばシリーズを最初から読んだかどうか分からなくなったのでシリーズ第一作を読んでみた。 既読感がないので読んでいなかったらしい。 これが梶さんの単行本デビュー作になるのだが、それだけに力が入っている。 「菊花の仇討ち」を読んだ時は、シリーズ...

先日「菊花の仇討ち」を読み終わり、そういえばシリーズを最初から読んだかどうか分からなくなったのでシリーズ第一作を読んでみた。 既読感がないので読んでいなかったらしい。 これが梶さんの単行本デビュー作になるのだが、それだけに力が入っている。 「菊花の仇討ち」を読んだ時は、シリーズの第一作がこれ程重いとは思わなかった。 しかもこの作品はシリーズ第一作にしてシリーズ完結編でもあった。 つまり、第二、第三作(さらなる続編があるかも知れない)とあって、第一作に繋がるのだった。 「菊花の仇討ち」に登場した杏葉館(鍋島直孝)や、三好も登場する。 時間設定としては、中根興三郎が三十歳、そして時代は幕末の騒乱、混乱、闘争へと向かう頃。 事の始まりは、興三郎の幼馴染・里恵が質の悪い商人から多額の借金をしていて窮地に陥っていることを知り、興三郎が自身が育てた見事な変化朝顔を里恵に譲って助けたこと。 変化朝顔を花合わせに出品したり他者の朝顔と競ったり、ましてや投資のネタに使われることを好まない興三郎だが、そのことをきっかけに様々な人々と関わることになり、更には安政のあの大事件にも関わることになる。 この辺りの話の広げ方は面白かった。変化朝顔と政治の世界をこんな風に繋げるとは、上手いなと思った。 第三作では下男の藤吉に嫁取りのことをしつこく言われているが、この作品では里恵という出会いがある。彼女はバツイチで息子がいるが、良い女性だし、息子の小太郎は朝顔に興味を持っている。 ついに興三郎も嫁取り成功かと喜んでいたが、こんな展開になるとは。 興三郎の朝顔オタク振り、普段は名簿作成係という日陰の身で他人からは侮られているのは第三作と同じだが、この作品では意外にも感情を露にしたり、アクションも見せたりしている。 興三郎という日陰の役人の目を通して、変化朝顔の作り手の目を通して見る混乱の世界。 どちらに付くことも出来ない、どちらが正しいとも悪いとも言えない。ただ誰も失いたくない、誰も傷付いて欲しくない、ただそれだけを願うことがこれ程困難なこととは。 「一朝の夢」とは、夢の黄色花。変化朝顔を懸命に作る人の真心が朝顔に通じたとき、一生に一度の褒美として朝顔が見せてくれる黄色い花。 これ程辛い思いをしても朝顔と向き合うことを止めなかった興三郎に朝顔はどう応えてくれるのか。

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2017/09/30

朝顔に己れの道を見出だし歩いて行くとは素晴らしい。この夏は我が家も朝顔のカーテンをびっしり張るつもりです。

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2017/01/30

知人に薦められて読んだ、初梶よう子さん作品。 うだつの上がらない朝顔好きの(閑職)同心が、試行錯誤を繰り返してようやく夢のような幻の黄色い朝顔を咲かせるだけの話かと思いきや、いや、朝顔好きの同心が主人公には変わりないし結局咲かせることができるのだけれども。 (日本人ならわりと...

知人に薦められて読んだ、初梶よう子さん作品。 うだつの上がらない朝顔好きの(閑職)同心が、試行錯誤を繰り返してようやく夢のような幻の黄色い朝顔を咲かせるだけの話かと思いきや、いや、朝顔好きの同心が主人公には変わりないし結局咲かせることができるのだけれども。 (日本人ならわりと知名度の高いであろう)「桜田門外の変」の前後譚だった。 史実にミステリー要素をからめて、なかなか読みごたえのある作品だと思いました。まぁ、でもいくら史実とはいえ、人が血を流しすぎるお話はあまり好きではないし、最後はなんだか駆け足が過ぎるなぁ、と感じたので☆は3つ。 江戸時代末期。 ひょろりと背だけが高く、しかし外見に反して心根はとてもやさしい中根興三郎は、名簿作成係の閑職に追いやられているのに、「暇なほうが朝顔の世話ができる」と不満もない。(むしろ喜んでいる?)30歳を超えた今も結婚の気配はなく、爺やには「坊ちゃん」と呼ばれてことあるごとにお説教されてはそのひょろ長い体を小さく縮めてしまう。 自信はないけれど、たぶん自分を卑下しているだけ。 流れに逆らうことはないけれど、物事の本質をすっと見抜ける目を持っていて、折れることがない。まるで柳のような人だと思う。 そんな気性の主人公は好ましい。 エピローグは、以前読んだ朝井まかてさんの『先生のお庭番』と同じようにも思えますが、主人公が失踪した後のエピローグだからか、感動はこちらの方が薄かったです。

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2015/09/20

2015.9.3 朝顔同心が朝顔を中心に問題を解決していく 歴史上の人と関わると、先が読めて哀しい。

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2015/07/24

格好よい主人公ではないのだが、だんだんといい男に思えてくる。こういう男が格好よいといわれるのは日本だからか? もの言わないんだけどなあ。

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2014/04/12

一本調子の男気とは違い、つかみ処がないようでいて事の本質を見据えた男の魅力は、女性なればこそ描けるのかもしれない。何やら新しい一著にめぐり会った喜びを得た。

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2014/01/09

悲しい、哀しいようっ。 うう、読後感は悪くはない、むしろいい方なのですが、いかんせん、 哀しすぎです。 美しく咲いた大輪の黄色い朝顔が 誰でもなく、ただ咲いていた朝顔の前で、ほほ笑みあえていた、 まるで夢のようなひとときと重なって、切ない。 あの地震後のお話ですね。 あいかわら...

悲しい、哀しいようっ。 うう、読後感は悪くはない、むしろいい方なのですが、いかんせん、 哀しすぎです。 美しく咲いた大輪の黄色い朝顔が 誰でもなく、ただ咲いていた朝顔の前で、ほほ笑みあえていた、 まるで夢のようなひとときと重なって、切ない。 あの地震後のお話ですね。 あいかわらず、ひょろりと高い身体をもてあましたように歩く興三郎に あいかわらずだなあっと思いつつも、幼い頃の知り合いの女性を 救うために、育てた朝顔をゆずったりするところに、 おお、やるじゃんっとにやりとしたり。 里恵さんとうまくいってくれたらいいなあっとのんびり思っている間にも 周りでは、なにやらキナ臭い出来事や、怪しい人がちらちらと。 そうこうしているうちにとりかえしのつかないことに・・・・。 うう、なぜだ。なぜ、こんなことにっ。とゆー興三郎の哀しみと憎しみに めっちゃ同調。 あ、そうそうビックリしたのは鈴やさんでした。 最初はなんか福福しい、いい人っぽかったのに、段々、雲行きが怪しくなり、最後にはもうサイアクなことに・・・・・。え?この人そーゆー役回りだったの~っと。 それしかできないのです、といいつつも抜刀術(まあ最初の一撃だけだが) がすごい興三郎がカッコいいのです。まあ、守りたかったものは その手からすり抜けてしまったわけですが・・・・・。 楽しかったと言いっぱなしでいってしまったと泣くシーンにうるうるでした。 にしても藤吉と離れて興三郎大丈夫だったのでしょうか? みんな大丈夫だと信じてましたが、ちょっと心配。 でも、まあ、そうですね、どこかで元気に朝顔にほほ笑みかけている姿しか浮かばないのも確かで。 たとえ一朝の夢でも、 それは生きる糧となる。

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2013/07/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

東野『夢幻花』黄色の朝顔繋がりから読んだ本。北町奉行所閑職の同心中根興三郎は、兄の急死で跡を継ぐが、朝顔栽培を唯一の生きがいとしている。世の中は井伊大老と水戸徳川家の確執や、尊王攘夷の機運が高まり不穏だが無縁な日常を送っていた。同じ町奉行定橋同心だった西沢の娘里恵の勤める「めし処」で、店主から借金返済を求められる里恵を救うため、朝顔の鉢植えを譲り渡した事から、交際範囲が広がり江戸朝顔界の重鎮、鍋島直孝を通じ宗観と呼ばれる壮年の武家と知り合うことになるが…。お互い不器用な興三郎と里恵の悲恋が悲しい。

Posted byブクログ

2014/02/07

閑職に就いている朝顔を育てることが生きがいな同心の興三郎と、朝顔を通じて知り合った宗観や、当時の大老である井伊直弼とその生命を狙う者どもが行き交う桜田門外の変のあたりの時代のお話。朝顔栽培がメインなのか、桜田門外の変がメインなのか困ったけれど、どちらも大事だった。なんともやりきれ...

閑職に就いている朝顔を育てることが生きがいな同心の興三郎と、朝顔を通じて知り合った宗観や、当時の大老である井伊直弼とその生命を狙う者どもが行き交う桜田門外の変のあたりの時代のお話。朝顔栽培がメインなのか、桜田門外の変がメインなのか困ったけれど、どちらも大事だった。なんともやりきれない物語。

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2012/06/30

朝栽培だけが生きがいの同心、中根興三郎を通して見る「桜田門外の変」が描かれている。 松本清張賞受賞、宮部みゆき選考委員絶賛とも帯に惹かれ手に取った。 物語の初めは良い。 読書を違和感なく幕末の世界へ誘ってくれる。 しかしそ中盤から後半の歴史的事件が絡んでくるに連れて、説明不足のせ...

朝栽培だけが生きがいの同心、中根興三郎を通して見る「桜田門外の変」が描かれている。 松本清張賞受賞、宮部みゆき選考委員絶賛とも帯に惹かれ手に取った。 物語の初めは良い。 読書を違和感なく幕末の世界へ誘ってくれる。 しかしそ中盤から後半の歴史的事件が絡んでくるに連れて、説明不足のせいか状況が掴めない場面が多かった。 場面展開もやや唐突。 勢いは良かったがもう少し推敲が必要だと生意気にも思いました。 しかし読了後の心地は良かった。 久々に時代小説を読んだという気がした。 時代小説の新しい切り口を求めている人にお薦めです。

Posted byブクログ