1,800円以上の注文で送料無料

日本沈没 第二部(下) の商品レビュー

3.6

26件のお客様レビュー

  1. 5つ

    4

  2. 4つ

    10

  3. 3つ

    4

  4. 2つ

    3

  5. 1つ

    1

レビューを投稿

2025/07/16

1973年に発表され、社会現象ともなった小松左京(1931~2011年)氏の『日本沈没』の続編で、2006年に小松左京氏と谷甲州(1951年~)氏の共著(執筆は谷氏)として刊行された。「続」ではなく「第二部」とされているのは、小松氏にはもともと、難民となって世界中に散っていった日...

1973年に発表され、社会現象ともなった小松左京(1931~2011年)氏の『日本沈没』の続編で、2006年に小松左京氏と谷甲州(1951年~)氏の共著(執筆は谷氏)として刊行された。「続」ではなく「第二部」とされているのは、小松氏にはもともと、難民となって世界中に散っていった日本人の行く末を描く第二部の構想があったためで、小松氏と氏を慕う若手SF作家(谷氏や森下一仁氏)を中心に執筆プロジェクトが立ち上げられ、老齢であった小松氏の代わりに谷氏が執筆を担当したものである。 舞台は、日本が沈没した25年後の世界で、日本人は、ニューギニアやカザフスタンなど世界各地に散らばり、難民として様々なコミュニティを形成して生活し、また、日本の政府機能はオーストラリア北部のダーウィンに間借りする形で存続し、第一部で科学者として登場した中田が首相を務めていた。 テーマは、「日本人とは何か」、「国家とは何か」という壮大なもので、具体的には、故国・日本を知らない若い世代が増える中で、日本人としてのアイデンティティが失われつつあることへの危機感が描かれる一方、中田首相は、旧日本海に巨大な人工島を建設して、世界に散った日本人を再び集める計画を進めるが、その過程で、日本政府が開発したスーパーコンピューター「地球シミュレータ」が地球の寒冷化を予測し、世界規模での難民化が新たな課題となるのである。 尚、全体の構成は以下の通りである。 <上巻>序章:竜を悼む、第1章:慰霊祭、第2章:彷徨える日本人、第3章:日本海、第4章:難民たち <下巻>第5章:地球シミュレータ、第6章:凍る山河、第7章:流氷の海、第8章:政変、終章:竜の飛翔 私は、第一部が社会現象になった頃、小学生だったが、家にもカッパノベルズ版の同書はあった。その第一部を最初に読んだのは、はるか以前のことであるが、第二部は気にはなりながら、今般漸く読む機会を得た。 読み終えてまず感じたのは、この本は今こそ読まれるべきだということだ。というのは、近年、トランプのアメリカをはじめとした少なからぬ国で自国ファースト主義が支持されるようになっており(日本も例外ではない)、本書の「民族(日本人に限らない)とは何か」、「国家(日本国に限らない)とは何か」というテーマは、今まさに問われるべきものだからである。 私は、本書の各場面をそれなりに楽しみながら読んだが(やや冗長と感じる部分も正直あったが。。。)、強烈に印象に残ったのは、下巻で、中田首相と鳥飼外相が、将来の日本人・日本のあるべき姿について、激論を交わす場面である。そのとき、中田首相は、日本人としてのアイデンティティを維持するためには、愛国主義(パトリオティズム)やナショナリズムが大事だと主張し、一方の鳥飼外相は、世界市民主義(コスモポリタニズム)こそ重要だと反論した。そして、物語の最後では、地球規模での危機が避けられないものと認識した中田首相は、自らの後を鳥飼外相に託すのである。 私は、パトリオティズムとコスモポリタニズムのどちらかが正解だとは思わないし、鳥飼外相がコスモポリタニズムで成功した唯一の民族と言ったユダヤ人の国家イスラエルが、現在ガザで未曽有の大虐殺を行っていることも事実だ。 大事なことは、自分にとって気持ちのいい主義・主張を鵜呑みにするのではなく、様々な異なる立場を受け入れつつ、自らの頭で考えることなのだ。そして、短絡的な自国ファースト主義が声高に唱えられる今こそ、それが最も求められると思うのである。 (2025年7月了)

Posted byブクログ

2022/08/17

日本列島の沈没は、序章にすぎなかった…。地球寒冷化…今実際に問題になっているのは温暖化だけれども視点が変わっていて興味深く読めました。日本で手掛けた地球シュミレーターが最悪の異変を示し、大きな外交問題にも発展する。2部の上巻は、スケールの大きな内容だけれど興奮するほどの感覚は味わ...

日本列島の沈没は、序章にすぎなかった…。地球寒冷化…今実際に問題になっているのは温暖化だけれども視点が変わっていて興味深く読めました。日本で手掛けた地球シュミレーターが最悪の異変を示し、大きな外交問題にも発展する。2部の上巻は、スケールの大きな内容だけれど興奮するほどの感覚は味わえませんでしたが、下巻は違いました!引きこまれるように読めました。ラストがちょっと納得いかない感はありますし、第2部より前作のほうが好きだなぁ…という思いはありますが、読み終えましたの充足感はかなりありました!

Posted byブクログ

2021/12/20

なかなか、なかなか大変なお話であった。 色々、色々考えさせられるお話であった。 本当にこんな時代が訪れる未来があったとしても、その頃に私はきっと生きてはいないだろうけど、今こんな状況に陥ってしまったら、私はそんな中で生きて行けるバイタリティを持ち合わせていない。 だから、な...

なかなか、なかなか大変なお話であった。 色々、色々考えさせられるお話であった。 本当にこんな時代が訪れる未来があったとしても、その頃に私はきっと生きてはいないだろうけど、今こんな状況に陥ってしまったら、私はそんな中で生きて行けるバイタリティを持ち合わせていない。 だから、なんか、もうちょっと頑張って日々の生活を送ろうと思ってしまった。 なんか、この作品の感想じゃないな…

Posted byブクログ

2021/06/21

1 前編の「日本沈没」は、小松左京氏の著作です。日本列島が海底に沈むという、奇想天外な物語です。発刊当時は、大ベストセラーとなり、日本推理作家賞などを受賞しました。地球物理学の解説が盛り込まれ、修士論文に値すると高評価もあったそうです。 2 第二部上では、国土を失った日本人達...

1 前編の「日本沈没」は、小松左京氏の著作です。日本列島が海底に沈むという、奇想天外な物語です。発刊当時は、大ベストセラーとなり、日本推理作家賞などを受賞しました。地球物理学の解説が盛り込まれ、修士論文に値すると高評価もあったそうです。 2 第二部上では、国土を失った日本人達が、世界各地に散らばって、地域住民と問題を起こしながらも、懸命に生きようという生き様が描かれています。この第二部では、日本沈没は、次なる災害の前触れにすぎず、地球が寒冷化し、北半球の中緯度地帯以北が氷結してしまいます。生き残った人類は僅かな土地でいき続けなければならなくなります。 3 本書の中から、気になった箇所を意見を交えて、2点書きます。 (1)「日本は資源に乏しく、狭隘な土地に1億人もの国民が暮らしていた。洗練された最先端の技術が、国を支えた。さらに、高い教育水準と勤勉さ及び組織力が、技術レベルを嵩上げした」 ⇒ 森嶋道夫氏の著書の一節です。「日本は資本主義の優等生だが、このまま進行すると、途上国に工業振興のチャンスを与えず、すべての国を食い潰してしまう」です。自分達の繁栄だけを望んでいると、必ずしっぺ返しがあるという事です。何事も、節度とバランスある行動が必要です。 (2)「アメリカは自分達の生き残りを最優先にして、情報を操作している。圧倒的多数を占める途上国の住民を見殺しにする事も厭わない」 ⇒ 世界情勢に目を向けると、各地で大国のエゴが散見します。それに対し、 我々が出来る事を思い浮かびません。そうは言っても、普段から世間情勢に関心を持ち、例えば、選挙には立候補者を吟味する等、ちょっとした事の積み重ねが大切と思います。 4 日本沈没第二部上下を読んだ感想まとめです。 (1)良かった点⇒災害大国である日本では、災害を避ける事は出来ません。地震や台風、それにコロナもあります。備えは、難しいものの、普段からの心構えが基本です。私の信条は、“良くない事には、最悪の事態を想定して当たる”です。 (2)要望⇒①登場人物が多彩で、混乱する事があります。他の小説で人物リストが最初についていました。本書もあるといいですね。 ②各地で暮らす人達の切実さが伝わりません。もう少し、庶民を登場させて、発言させる場面があると良い。読者の立場に配慮したシナリオ作りが欲しいと思います。 ◆何れにしても、災害国に生まれ育ち、これからも生活し続けなければならない我々への有益な警鐘には違いありません。

Posted byブクログ

2020/08/24

作者は、本来、日本国土をなくした日本人を描きたかったみたいだが、日本を沈めるのに手間がかかって…なので、こっちがメインなのかな? 日本沈没後、25年が経ち、世界各地に散らばって生きる日本人。 日本人のアイデンティティは?国土復活?など悩ましい問題が続々。 これを読むと、まず、ユダ...

作者は、本来、日本国土をなくした日本人を描きたかったみたいだが、日本を沈めるのに手間がかかって…なので、こっちがメインなのかな? 日本沈没後、25年が経ち、世界各地に散らばって生きる日本人。 日本人のアイデンティティは?国土復活?など悩ましい問題が続々。 これを読むと、まず、ユダヤ人を思い浮かべるけど、日本人として国土再興が良いのか、華僑の人達のように、各地に散らばって、溶け込みながら、日本人のアイデンティティを残すかは考えさせられるな。 地球上に土地ないから、再興するなら、空へか…

Posted byブクログ

2019/08/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

日本が沈没してから25年。 国土は失っても主権と「国民」を保っていた日本も中国やアメリカといった「愛国心」が強い大国に翻弄されて、結局は「コスモポリタン」として世界各地で生きていくことになり、最終的には宇宙へ飛び出す…といった感じでした。 確かにこの流れはわかるのだけど、小説として楽しめるかと言われると紙面が足りなかったのか、一部にあった人間関係を収束できたようには思えず、ちょっと物足りなく思ってしまいました。 最後に「日本人」が君が代を歌うシーンがあるんだけれど、そのときに皇室はどうなったのか全く描かれていなかったことに気が付きました。 この本が描かれたのは13年前で、その頃はまだ平成。 秋篠宮家による皇室の多大なるイメージ下げもなかった頃だから、もっと皇室は大事に思われていただろうし、だからこそ描かれなかったのかな。

Posted byブクログ

2019/01/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

第二部はあまり評判が良くないようであったが、私は非常に楽しめた。 ただ、第一部では小野寺と阿部玲子との関係性や、「異変」を前に各個人がどのような思惑で動くかといった個人レベルでの感情の動きがよく見えて面白かったが、第二部では政治的な駆け引きや「異変」後の世界情勢等の描写が多く、それでいてページ量は第一部と同じ程度のため、個人の感情の動きや思惑があまり見えづらかったのが残念だった。特に小野寺が25年の間、どのように生活してきたかの描写が少ないため、阿部玲子と再開した際のp375「無にしてしまうには、この26年間は重すぎる」の重たさが伝わったこなかったのがもう一つ物足りなかったように思う。 ただし、沈没後の日本や日本人の有り様といった議論については面白く読めた。中田首相の愛国心と、鳥飼外務相のコスモポリタニズムの議論も興味深く読めたと思う。 最後の宇宙への移住(?)の落ちももう少し情報量があっても良いように思ったのだが…(あれでは解釈の幅がありすぎて…)

Posted byブクログ

2018/10/20

33年を経て完結した日本沈没。沈没後の世界を描写。小松左京のアイデアをもとに谷甲州が執筆したとのこと。面白かった。

Posted byブクログ

2018/06/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

この下巻では、日本列島が沈没した原因で東アジアの気候が変動し、その煽りを喰って中国が北朝鮮に侵攻し、政府があるプロジェクトを実行し。

Posted byブクログ

2018/04/14

第二部は日本列島が沈没してから25年後の物語。国土は消失しても国は存在しているという話。地球規模の気候変動と、地球規模の事案を取り扱う場合、国民、あるいは地球人はどのような目線で活動しなければならないのか?小松左京とそのチームが来るべき真のボーダーレス社会における人類のありようを...

第二部は日本列島が沈没してから25年後の物語。国土は消失しても国は存在しているという話。地球規模の気候変動と、地球規模の事案を取り扱う場合、国民、あるいは地球人はどのような目線で活動しなければならないのか?小松左京とそのチームが来るべき真のボーダーレス社会における人類のありようを問うた作品に仕上がっている。 タイトルから本書を手に取ると、どうしても国土やマントル、マグマ、といった地殻変動方面の目線になってしまう。これは日本が地震や火山、津波に強い関心を持っているからしょうがないことではある。しかし本書が見据える視点は地球規模の地殻変動や気候変動をトリガーにした地球人としての振る舞いについて目を開かせようとしているのではないだろうか。 考えてみると、既に国籍をもつ国を離れて暮らしている人は相当いるし、国籍そのものを変えている人も大勢いるわけで、国や国土といった概念は我々(というとステレオタイプだが)日本人のもつイメージとはすでに大きく変動しているような気もしてきた。しかも本書ではそれが20世紀に記されているわけで。先見の明というか、自身の視野の狭さに愕然としつつ、目を開いていかねばという感慨にふけるのである。

Posted byブクログ